腎臓の濃縮率と原尿量

Renal concentration ratio and filtrate volume

ろ過されたイヌリンは、1つも血液に戻らずすべて尿へ出る。

濃縮率は尿中と血しょう中の濃度の比である。再吸収も分泌もされないイヌリンなら、尿量に濃縮率を掛けて原尿量が出て、ほかの物質の再吸収率も分かる。

年代
1935年(シャノンとスミスのイヌリンの論文)
習う
高1・生物基礎・ヒトの体の調節
レベル
基本(例題 3 問)
人物
ジェームズ・シャノン、ホーマー・スミス
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

1つも戻らない物質

腎臓がろ過する量を測るとき、物差しにはイヌリンという物質を使う。日本腎臓学会誌の論文によると、イヌリンは体内で代謝されず、血しょうのタンパク質とも結びつかない。糸球体ですべてろ過され、尿細管では再吸収も分泌もされない。糸球体を通ったイヌリンは、尿細管を素通りして、そのまま尿に出てくるのだ。

腎臓は血しょうをろ過して原尿をつくり、その大部分を血液に戻してから、残りを尿として出す。原尿は腎臓の中の細い管を流れていて、外からは量を測れない。そこで、尿に出たイヌリンの量から、原尿の量を逆算する。

イヌリンを使ったヒトの研究には、ジェームズ・シャノンとホーマー・スミスが1935年に出した、正常な人とフロリジンを与えた人でのイヌリン、キシロース、尿素の排泄についての論文がある。日本では、検査に使うイヌリンの注射液が2006年6月に薬価基準に収載され、同じ年の8月に販売が始まった。

途中の計算

入った量と出た量を等しくおく

同じ時間のあいだの尿量を、原尿量をとする。物質の血しょう中の濃度を、尿中の濃度をと書き、イヌリンには添え字を付ける。濃縮率はである。

  1. ろ過されたイヌリンの量を出す

  2. 尿に出たイヌリンの量を出す

  3. 再吸収も分泌もないので、2つを等しくおく

  4. について解く

原尿120 mLの中のイヌリン12粒が、水の99%が血液へ戻ったあとも12粒のまま尿1.2 mLに入る。体積が100分の1になるので濃さは100倍、つまり原尿量は尿量の100倍である。

手順1では、原尿中のイヌリンの濃度を血しょう中と同じとみている。手順4は、尿量に濃縮率を掛けると原尿量になるという意味だ。たとえば血しょう中のイヌリンが0.20 mg/mL、尿中が20 mg/mLなら濃縮率は100になる。尿が1分に1.2 mL出ていれば、原尿は1分に120 mLつくられている。1日に直すと原尿は約170 L、尿は約1.7 Lで、水の99%が血液に戻っている計算になる。

では、ほかの物質は、どれだけ血液に戻ったのか。ろ過された量から尿に出た量を引けばよい。

  1. 物質Aのろ過量から、尿に出た量を引く

  2. ろ過量で割って割合にする

  3. 手順4のを入れてを消す

濃縮率を棒で比べると、イヌリンが100、尿素が50、尿に出ない物質Yが0。イヌリンの濃縮率で割った値が尿に残る割合で、尿素は半分が残り、再吸収率は50%になる。

手順7を見ると、再吸収率は2つの濃縮率の比だけで決まり、尿量も原尿量もいらない。濃縮率がイヌリンの半分なら半分が戻り、尿に出ない物質なら濃縮率は0で、すべて戻る。逆に、濃縮率がイヌリンより大きい物質は、ろ過だけでは説明がつかない。尿細管が血液から尿へ分泌していると読める。

応用

物差しの物質で測る検査

手順4のを、医療では糸球体濾過量(GFR)と呼ぶ。腎臓の働きを表す量である。先の論文によると、イヌリンが冒頭の性質をもつため、イヌリンクリアランスは古くからGFR測定のゴールドスタンダードとされてきた。日本腎臓学会の委員会も2013年の文書で、イヌリンクリアランスによるGFR測定を重要な検査と位置づけている。

検査の中身は、手順1〜4の計算そのものだ。同じ論文の方法では、イヌリンを点滴で入れ続け、30分ごとにためた尿に出たイヌリンの量と血中の濃度から、GFRを出している。測り方の筋は単純だが、手間は大きい。決まった時刻に点滴の速さを変えたり採血や採尿をしたりする必要があり、乳幼児では膀胱にバルーンを留めておかなければならない。

論文の著者らによると、この検査がやや敬遠されているのは、こうした手間のためだという。一方で、腎障害が進むほど、24時間クレアチニンクリアランスと真のGFRとの開きが大きくなることも知られている。物差しにする物質が、手順3の「再吸収も分泌もない」をどこまで満たすかで、測れる値の確かさが変わるのだ。

例題と解説

尿素と物質Xの行き先を追う

ある人の血しょうと尿の成分を、同じ1時間で調べた。尿量は60 mLで、濃度は次のとおりである。

物質血しょう中(mg/mL)尿中(mg/mL)
イヌリン0.2025
尿素0.2515
物質X0.0102.5

例題 1基本原尿量を求める

この1時間の原尿量と、1日に直した原尿量を求めよ。また、原尿の水のうち血液に戻った割合を求めよ。

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イヌリンの濃縮率はである。尿量に掛ける。

1時間に7.5 Lで、1日では Lになる。尿は原尿のなので、戻った水の割合は次のとおりである。

約99.2%が血液に戻っている。

例題 2基本尿素の再吸収率

尿素の濃縮率、再吸収量、再吸収率を求めよ。

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濃縮率はである。ろ過された尿素は mg、尿に出た尿素は mgなので、再吸収量は次のようになる。

再吸収率はで、52%である。手順7の式でも、と同じ値が出る。

例題 3入試濃縮率がイヌリンを超える物質

物質Xは、糸球体で血しょうと同じ濃度のままろ過されるとする。物質Xが尿細管で分泌されているといえる理由を述べ、この1時間に分泌された量は少なくとも何mgかを求めよ。

解説を見る

物質Xの濃縮率はで、イヌリンの125の2倍ある。ろ過だけなら濃縮率はイヌリンを超えないので、尿細管で血液から尿へ加えられている。 ろ過された量と、尿に出た量を比べる。

差の75 mgが、尿細管で加わった正味の量である。同時に一部が再吸収されていれば、分泌された量はもっと多い。だから、分泌された量は少なくとも75 mgといえる。

入試・大会での出題

生物学オリンピックの尿と血しょう

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第6節「生物基礎」3(2)ア(ア)㋑ 体内環境の維持の仕組み、120-121ページ
  2. 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』(2017)、第2章 第2節 第2分野2(3)ア(ウ)㋐ 生命を維持する働き、89-90ページ(腎臓の働き)
  3. 亀井宏一、伊藤秀一、飯島一誠「採尿を必要としないイヌリンクリアランスの測定の試み」、日本腎臓学会誌53(2), 181-188 (2011)
  4. 日本腎臓学会 疫学研究小委員会「腎機能検査薬「イヌリード注」から添付生理食塩水及び溶解注入針が削除されることに関しての対応策」(2013年8月)
  5. J. A. Shannon, H. W. Smith, "The excretion of inulin, xylose and urea by normal and phlorizinized man", Journal of Clinical Investigation 14(4), 393-401(1935)(書誌はCrossrefで確認)
  6. 日本生物学オリンピック「日本生物学オリンピック2019予選試験問題」「同 解答・解説」「日本生物学オリンピック2022予選 問題」「同 解答・解説」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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