ファラデーの電気分解の法則

Faraday's laws of electrolysis

水を分けて出た気体の体積で、通った電気の量を量った。

電気分解で変化する物質の量は、流れた電気量に比例する。電気量Itをファラデー定数で割れば電子の物質量になり、反応式から生成量が決まる。

年代
1833〜1834年
習う
高2・化学・物質の変化と平衡
レベル
基本(例題 3 問)
人物
マイケル・ファラデー
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

気体の体積で電気を量る

電流計の針は、いま流れている電流の強さを指す。では、30分のあいだに通った電気の量は、どう量ればよいのだろうか。

ロンドンの王立研究所で研究していたマイケル・ファラデーは、薄い硫酸を電気で分解し、出てきた気体の体積で電気の量を量る器具を作った。1834年1月に王立協会が受け取った連作『電気の実験研究』の第7編で、ファラデーはこの器具をvolta-electrometerと呼び、水は通った電気の量にちょうど比例して分解される、と書いている(732節)。いまの電量計にあたる器具だ。

比例そのものは、前の年の第3編にすでに出てくる。1833年1月に朗読された第3編の377節には、電流が物質を分ける働きは、磁針を振らせる力と同じく、通った電気の絶対量に正比例し、この場合だけでなくおそらくすべての場合にそうなる、とある。第7編の783節で、ファラデーはこれを第3編で発表した法則として引く。塩化スズなどでも量り比べ、水だけでなく電気で分解される物質に広く成り立つと結論した(821節)。

同じ第7編で、ファラデーは2人の友人と相談し、電流が物質に出入りする面を電極(electrode)、陽極(anode)、陰極(cathode)と呼ぶことにした(662〜663節)。電極へ向かって動く物質はイオン(ion)と名づけ(665節)、電気分解で出てくる量の割合を電気化学当量と呼んで、水素1、酸素8、鉛104、スズ58という値を並べている(824節)。

途中の計算

電流×時間から電子の数へ

この計算の道すじ。 電流と時間から電気量を出し(手順1)、電子1 molの電気量であるファラデー定数で割って、電子の物質量にする(手順2〜4)。最後に、反応式から電子何個で何が1個できるかを読み、できた物質の量を出す(手順5〜7)。

は電流で、単位はA(アンペア)。は電流を流した時間で、単位はs(秒)だ。電気量の単位はC(クーロン)で、1 Aの電流が1秒流れたときの電気量が1 Cである。

電池と電流計と電解槽をつないだ回路で、電流Iと流した時間tの積が電気量Q = Itになる。Qをファラデー定数F ≈ 9.65 × 10⁴ C/molで割ると、電子の物質量になる。

は電子の物質量(mol)を表す。物質量は粒子の数を、個を1 molとするまとまりで数えた量である。はファラデー定数で、電子1 molがもつ電気量の大きさだ。

  1. 電流と時間を掛けて、電気量を出す

横に時間t、縦に電流Iをとったグラフ。2.00 Aの電流を1930 s流すと、グラフの下の長方形の面積が電気量Q = 2.00 × 1930 = 3860 Cになる。

電流が一定なら、電気量はグラフの長方形の面積にあたる。2.00 Aで32分10秒、つまり1930 s流すと、 Cになる。

  1. 電子1個の電気量の大きさに、1 molの粒子の数を掛ける

  2. 2つの定数の値を入れる

  3. 電気量を、電子1 molの電気量で割る

はアボガドロ定数、は電気素量と呼ばれる。どちらも2019年に改定された国際単位系(SI)で値が決められ、誤差の無い値になった。米国国立標準技術研究所(NIST)の値では2つの積が96485.33212…C/molで、これを3けたに丸めた C/molを計算に使う。共通テストの問題文も、この値を指定している。

手順1の3860 Cなら、 molである。では、この電子で陰極に何がどれだけできるのか。硫酸銅(II)水溶液を、白金の電極で電気分解する場合を考える。電池の+につないだ電極が陽極、−につないだ電極が陰極だ。

  1. 陰極で、銅(II)イオンが電子を受け取る式を書く

  2. 電子2 molで銅1 molなので、電子の物質量を2で割る

  3. 銅のモル質量63.5 g/molを掛けて、質量にする

銅のイオン3個が、電子を2個ずつ受け取って銅の原子3個になる。電子6個で銅3個、電子0.0400 molなら銅0.0200 molで、電子の数の半分だけ銅ができる。

イオンの右上の2+は、電子を2個失った陽イオンであることを示す。だから元の原子に戻るには、電子が2個要る。式の係数の比が、手順6で2で割った理由である。手順7のモル質量は1 molあたりの質量で、銅が固体になって電極に出てくることを析出という。

陽極では、水分子が電子を失って酸素ができる。電子4 molで酸素1 molなので、0.0400 molの電子ではが0.0100 mol出る。0 °C、 Paで気体1 molは22.4 Lなので、体積は Lだ。

電子4個が回路を回るあいだに、陽極では水から酸素の分子が1個、陰極では銅の原子が2個できる。電子0.0400 molなら、陰極に銅0.0200 mol(1.27 g)、陽極に酸素0.0100 mol(0.224 L)。

できる物質は違うが、陽極で出ていく電子と陰極で受け取る電子は、同じ時間でいつも同じ数になる。回路の途中で電子が増えたり消えたりしないからだ。

電流と時間のつまみを動かすと、回路を流れる電子の数と、陰極の銅、陽極の酸素の量が一緒に変わる。棒の長さの比は、どの値でも電子4、銅2、酸素1のままだ。電流を2倍にしても、時間を2倍にしても、できる量は2倍になる。

学習指導要領の解説によると、「化学」では硫酸銅(II)や水酸化ナトリウムの水溶液を中心に電気分解を取り上げ、ファラデーの法則を扱う。酸化と還元が電子のやり取りであることは、化学基礎ですでに学んでいる。

応用

1 molの電子で出る量

電子1 molでできる物質の質量は、モル質量を、粒子1個がやり取りする電子の数で割った値になる。銅は1個あたり2個で、陽極の酸素も、電子4個で原子2個なので原子1個あたり2個である。

電子1 molで出る質量を、モル質量 ÷ 1個あたりの電子の数で出した表。水素1.008、酸素8.00、鉛103.6、スズ59.4で、ファラデーが1834年に並べた1、8、104、58にほぼ合う。

ファラデーが824節に並べた電気化学当量は、水素を1としたこの値の比にあたる。たとえば鉛はで、ファラデーの104に近い。

ただし、ファラデーはこの数に「およそ」(nearly)と断っている。実験の平均は鉛が100.85、スズが58.53で、鉛の不足は気体の一部が溶けたためだと考えた(792、795節)。それでも190年ほど前の実験が、いまのモル質量から出す値に数%まで迫っていた。

工場の電気分解でも、計算は同じだ。アルミニウムはでできるので、1 kgでは mol、電子はその3倍の約111 molが要る。電気量は約 Cで、10万Aの電流でもおよそ107秒かかる計算になる。

例題と解説

電気量と生成量の例題

例題 1基本銀の析出量

硝酸銀水溶液を白金電極で電気分解し、0.500 Aの電流を16分5秒流した。陰極に析出する銀は何gか。 C/mol、銀のモル質量を108 g/molとする。

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16分5秒は sである。電気量を出す。

ファラデー定数で割って、電子の物質量にする。

陰極ではなので、電子1 molで銀1 molができる。

例題 2基本必要な時間を逆に求める

硫酸銅(II)水溶液を1.00 Aで電気分解して、陰極に銅を0.635 g析出させたい。何秒流せばよいか。 C/mol、銅のモル質量を63.5 g/molとする。

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銅の物質量は molである。銅1 molに電子2 molが要るので、電子は0.0200 mol要る。

をについて解き、とする。

32分10秒である。

例題 3入試直列につないだ2つの電解槽

白金電極を入れた硫酸銅(II)水溶液の電解槽Aと、白金電極を入れた硝酸銀水溶液の電解槽Bを直列につなぎ、0.400 Aで電気分解した。Aの陰極に銅が0.127 g析出した。(1)流した時間は何秒か。(2)Bの陰極に析出した銀は何gか。(3)A、Bの陽極で発生した気体は、合わせて0 °C、 Paで何mLか。 C/mol、銅63.5 g/mol、銀108 g/molとし、この条件で気体1 molは22.4 Lとする。

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直列につなぐと、2つの電解槽を同じ電子が通る。Aの銅から、電子の物質量を出す。

(1)電気量は Cなので、時間は次のとおり。

(2)Bの陰極では電子1 molで銀1 molができる。

(3)A、Bとも陽極では水が電子を失って酸素が出るので、それぞれ電子の4分の1、 molの酸素ができる。合わせて molである。

入試・大会での出題

電気量から析出量を問う出題

  • 2026年 大学入学共通テスト 本試験 化学 第2問 問2:硝酸銀と硝酸鉛(II)の混合水溶液を電気分解し、陰極に析出した銀と鉛の質量から、流した電気量を求める。価数の違う2つのイオンが受け取った電子を足し合わせる。出典は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」。
  • 2024年 大学入学共通テスト 本試験 化学 第3問 問4 c:塩化ニッケル(II)水溶液の電気分解で、陰極でニッケルの析出と水素の発生が同時に起こる。陽極の塩素と陰極の水素の体積から、析出したニッケルの質量を表す式を選ぶ。出典は大学入試センター「令和6年度 本試験の問題」。
  • 2024年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第2問 問4 b:硫酸銅(II)水溶液の電気分解で析出する銅と電気量の関係のグラフをもとに、酸化アルミニウムの溶融塩電解で得るアルミニウムのグラフを選ぶ。出典は大学入試センター「令和6年度 追・再試験の問題」。
  • 2025年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第2問 問4 b:酸化アルミニウムの溶融塩電解で、一定時間に生成したアルミニウムと減った陽極の炭素の質量から、流した電流と生じた二酸化炭素の物質量を求める。出典は大学入試センター「令和7年度 追・再試験の問題」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第5節「化学」3(2)ア(ア)㋒ 電気分解、103〜104ページ
  2. M. Faraday, Experimental Researches in Electricity, Vol. 1, 2nd ed. (London: Richard and John Edward Taylor, 1849)、Third Series(1833年1月に王立協会で朗読)§377、Seventh Series(1834年1月受理)§§662-665, 704-736, 783, 792, 795, 821, 824。Project Gutenberg
  3. NIST, CODATA 2022 recommended values, "Faraday constant" "Avogadro constant" "elementary charge"
  4. NIST, "Definitions of SI Base Units"
  5. 大学入試センター「令和6年度 本試験の問題」「令和6年度 追・再試験の問題」「令和7年度 追・再試験の問題」「令和8年度 本試験の問題」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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