ビオ・サバールの法則

Biot-Savart law

磁針の振れから導いた折れ線の法則を、ビオは4年後に改めた。

電流の短い部分が作る磁場を与える式。導線に沿って足すと、高校で習う直線電流の磁場の式も円電流の磁場の式も、この1本から出る。

年代
1820年(ビオとサバールの発表)
習う
大1・電磁気学・静磁場
レベル
大学(例題 4 問)
人物
ジャン=バティスト・ビオ、フェリックス・サバール、ピエール=シモン・ラプラス、フェリックス・サヴァリ
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

磁針の振れから素片の式へ

高校で別々に出てくる2つの式、直線電流のと円電流のは、同じ1本の式を別の形に沿って足した結果である。分母のが片方にだけ残る理由も、足し算を追うと分かる。その1本が、電流の短い部分が作る磁場を与えるビオ・サバールの法則だ。

発端は1820年、エルステッドが電流で磁針が振れることを報告したことにある。パリの科学アカデミーでは9月にアラゴが実験を再現し、10月30日にジャン=バティスト・ビオとフェリックス・サバールが測定を発表した。長い直線の導線のそばで小さな磁針を振らせ、周期から力を求めると、力は導線からの距離に反比例した。ふたりはこれを、電流で磁化された導線が磁極に及ぼす力と考えていて、磁場という言葉は使っていない。

短い部分ごとの法則は、この測定から生まれた。ビオの記述によると、導線を細かく分けた1片の力が距離の2乗に反比例すると結論づけたのはラプラスだが、計算の中身を公表した形跡はない。ふたりは12月18日に折れ曲がった導線の測定も発表し、ビオは1821年の著書で、力は折れの角に比例すると書いた。

この角の法則は、のちに誤りと分かる。1823年にフェリックス・サヴァリが計算で角の半分のタンジェントを出し、ビオは測り直して1824年の著書で改めた。例題4では、その式を手で確かめられる。

途中の計算

直線と円に沿って足す

式のは電流の短い部分で、電流素片と呼ぶ。は素片から測る点へ向かう長さ1のベクトル、はその距離である。大きさだけなら、とのなす角を使ってと書ける。向きは右ねじの向きで、次の2つの例ではどの素片の磁場も同じ向きにそろうので、大きさをそのまま足せる。

まず直線である。軸に沿う電流から距離の点Pをとり、高さの素片を考える。素片とPの距離をとする。

  1. 素片がPに作る磁場を書く

  2. 図形からとを読む

  3. 代入する

  4. と置いて角に替える

導線の上の高さzの素片と点Pを結ぶ線がρで、Pから導線へ下ろした垂線との角がαである。z = a tan αと置くと、導線に沿う和が角の積分になる。
  1. 代入して約分する

  2. 導線の両端の角からまで積分する

  3. 無限に長い電流なので、とする

円はもっと短い。半径の円電流の中心では、どの素片も距離がで、は半径と直角である。

  1. 、を入れる

円電流の素片dlは半径と直角で、中心までの距離はどの素片でもRである。
  1. 1周足すとの和は円周になる

  2. 約分する

では、分母の違いはどこから来たのか。直線ではに積分の2が掛かるだけで、が残る。一方、円では円周が掛かるので、が消える。だから同じ電流でなら、円の中心の磁場は直線の倍になる。

高校の物理で扱うのは、文部科学省の解説によると、直線電流の回り、円形電流の中心、ソレノイドの内部の磁界である。磁場の強さを使って、と書く形でも、真空ならなので内容は同じだ。

中心から軸に沿って離れた点も、同じ足し算で届く。円の面から距離の軸上では、素片が作る磁場のうち軸に沿う成分だけが残り、ほかは向かいの素片と打ち消し合う。

  1. 素片までの距離と軸に沿う成分を書く

  2. 1周足す

を入れると手順10に戻る。

応用

2枚のコイルで一様な磁場を作る

手順12は、実験室の道具の設計式になる。同じコイルを半径と等しい間隔で向かい合わせたものがヘルムホルツコイルで、中点の磁場は手順12にを入れて2倍すれば出る。巻きなら、さらに倍になる。

半径15 cm、130巻き、1.0 Aなら、0.78 mTになる。この配置の強みは中点付近の平らさにあり、中点から軸に沿って3 cm離れても、磁場の低下は0.18%にすぎない。1枚のコイルなら、中心から同じだけ離れると約5.7%も落ちる。

定数の扱いは2019年に変わった。それまで N/A²は定義で決まる値だったが、今は測定で決まり、CODATA 2022の値は N/A²である。もっとも、例題の桁なら差は見えない。

ただし、この式が成り立つのは、時間で変わらない電流が閉じた回路を流れるときである。電流素片だけを取り出して測ることはできず、実験で確かめられるのは閉じた回路で足した結果だけだ。アシスとシャイブもホフマンの反例を引いて、直線のだけでは素片の形が1つに決まらないと指摘している。電流や磁場が時間で変わるなら、マクスウェルの方程式まで戻ることになる。

例題と解説

折れ線と四角で足し算を試す

例題 1基本直線と円を比べる

真空中で1.0 Aの電流を流す。 N/A²とする。(1)長い直線電流から10 cm離れた点の磁束密度を求めよ。(2)半径10 cmの1巻きの円電流の中心の磁束密度を求めよ。(3)(2)は(1)の何倍か。

解説を見る

(1)手順7に入れる。

(2)手順10に入れる。

(3)比は倍で、およそ3.14倍である。

例題 2入試半円と2本の直線

半径の半円の両端から、同じ向きに無限に伸びる2本の平行な直線がつながったU字の導線に、電流を流す。半円の中心Oの磁束密度の大きさを求めよ。 A、 cm、 N/A²の値も求めよ。

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半円は手順10の半分である。

2本の直線は、Oから距離で、手順6の角が0からまでの導線である。1本あたり次のようになる。

どの部分の磁場もOで同じ向きを向くので、足し合わせる。

数を入れると Tなので、次の値になる。

例題 3入試正方形と円のどちらが強いか

1辺の正方形コイルと、同じ長さの導線で作った円形コイルに、同じ電流を流す。それぞれの中心の磁束密度の比を求めよ。

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正方形の1辺は、中心から距離で、手順6の角がからまでの導線である。

4辺は同じ向きなので4倍する。

円は周がなのでである。

比は次のとおりで、正方形のほうが約15%強い。

辺の中点は中心からで、円の半径より近い。

例題 4大学ビオが測り直した折れ線

無限に長い導線を点Mで折り曲げ、2本の腕を平面の中で点Pと反対の側へ、直線PMの延長から角ずつ開いて伸ばす。PMの長さはである。(1)Pの磁束密度を求めよ。(2)の場合と、角に比例するとしたビオの最初の式を比べよ。

解説を見る

(1)1本の腕は、Pからの垂直距離がの半直線である。手順6で、遠い端の角は、Mの端ではになる。

2本の腕の磁場はPで同じ向きなので2倍し、半角の公式でまとめる。

(2)ではで、まっすぐな導線の手順7に戻る。直線との比は、でである。ビオの最初の式ではとなり、約2割も大きい。もっとも、直線を1とした差は55°付近で最大になっても0.09ほどである。ビオ自身も1824年の著書で、実験の不完全さのために、ほかの法則でも当てはまる余地があったと振り返っている。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第3節「物理」3(3)ア(イ)㋐ 電流による磁界について、75ページ
  2. A. K. T. Assis, J. P. M. C. Chaib, "Nota sobre o Magnetismo da Pilha de Volta", Cadernos de História e Filosofia da Ciência 16, 303-309(2006)(BiotとSavartの1820年の報告の訳と注)
  3. A. K. T. Assis, J. P. M. C. Chaib, Ampère's Electrodynamics(Apeiron, 2015)、第6章と第9章6〜7節
  4. 京都大学 全学共通科目「物理学基礎論B」シラバス(2026年度後期・主として1回生)
  5. P. J. Mohr, D. B. Newell, B. N. Taylor, E. Tiesinga, "CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2022", arXiv:2409.03787
  6. 国際度量衡局(BIPM)「The International System of Units (SI), 9th edition」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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