1 Lは1000 gではない
溶液1 Lの質量を、つい1000 gとみてしまう。水ならほぼそれで合うが、溶けている物質が多いほどずれていく。20%のショ糖水溶液1 Lに溶けているショ糖も、200 gではない。米国標準局の表によると、この液の20 °Cでの密度は1.0810 g/cm³で、1 Lは1081 g、ショ糖はその20%の約216 gにあたる。
質量で割る濃度と体積で割る濃度は、密度がなければつながらない。米国標準局の1942年の資料によると、1900年にドイツの標準検定委員会が、F・プラトーがJ・ドムケ、H・ハルティングと精密に測ったショ糖水溶液の密度の表を出した。この表をもとに、溶液100 gあたりのショ糖のグラム数や、溶液100 mLあたりのグラム数を並べた表が、数多く計算されたという。
溶液1 Lを基準に取る
を質量パーセント濃度(%)、を溶液の密度(g/cm³)、を溶質のモル質量(g/mol)、をモル濃度(mol/L)とする。モル濃度は溶液1 Lあたりの物質量なので、溶液をちょうど1 Lとって考えれば、最後に割り算をしなくて済む。
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溶液を1 L、つまり1000 cm³とる
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密度を掛けて溶液の質量にする
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を掛けて溶質の質量にする
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モル質量で割って物質量にする
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溶液1 Lあたりの量なので、そのままモル濃度になる
式の1000は、1 Lが1000 cm³であることから来る。g/cm³にcm³を掛けてg、gをg/molで割ってmolと単位を追えば、式の形を忘れても組み立て直せる。密度をg/mLやkg/Lで書いても数は同じだ。g/Lで書けば1081 g/Lのように初めから1000倍した数になるので、式の1000は要らない。冒頭のショ糖水溶液なら、モル質量を342 g/molとして mol/Lだ。
逆に、モル濃度から質量パーセント濃度を出したいときは、手順5を解き直せばよい。
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手順5をについて解く
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0.632 mol/Lを入れて戻るかを確かめる
同じ液を、溶媒1 kgあたりの物質量で表すのが質量モル濃度である。高校では、化学基礎のあとの「化学」で習う。溶液1 Lの中の水は gなので、手順は1行で済む。
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0.632 molを水0.865 kgで割る
つまり、分母を溶液の体積から溶媒の質量に変えただけで、数は16%ほど大きくなった。質量パーセント濃度から質量モル濃度へは、溶液を100 gとれば密度なしで直せる。溶質 gと水 gから、 mol/kgだ。
濃くなるほど開く2つのmol
米国標準局の表の密度を使い、ショ糖水溶液の2つの濃度を並べると次のようになる。
| 質量パーセント濃度 | 密度(20 °C、g/cm³) | モル濃度(mol/L) | 質量モル濃度(mol/kg) |
|---|---|---|---|
| 1% | 1.0021 | 0.0293 | 0.0295 |
| 10% | 1.0381 | 0.304 | 0.325 |
| 20% | 1.0810 | 0.632 | 0.731 |
| 40% | 1.1764 | 1.38 | 1.95 |
1%ではほとんど同じ数なのに、40%では質量モル濃度がモル濃度の1.4倍まで開く。モル濃度の分母には溶けたショ糖が占める体積まで入り、質量モル濃度の分母は水だけだからだ。濃い液ほど、2つを取り違えたときの誤りも大きくなる。
では、どちらを使えばよいのか。溶液の体積は温度で変わるが、質量は変わらない。だから、温度によらない数で比べたいときは、質量パーセント濃度か質量モル濃度を選ぶ。文部科学省の解説でも、「化学」の実験の例に、希薄溶液の凝固点を測って凝固点降下と質量モル濃度の関係を見いだすものが挙がっている。
一方、医療の場面には、密度を使わずにmol/Lへ直せる濃度もある。第十八改正日本薬局方の生理食塩液は、塩化ナトリウム9 gに注射用水を加えて全量を1,000 mLにした液で、含量の規格は0.85〜0.95 w/v%である。分母が溶液の体積なので、モル質量58.44 g/molで割るだけで mol/Lが出る。国際単位系の文書によると、物質量を体積で割った量は、臨床化学では「substance concentration」と略して呼ばれる。
溶液を薄めてモル濃度を調整する計算は、モル濃度で練習できる。質量パーセント濃度そのものの意味は質量パーセント濃度で、密度の単位の扱いは密度で読める。
ラベルの%をmol/Lに読み替える
原子量はH=1.0、O=16、Na=23、S=32、Cl=35.5とする。
例題 1基本質量パーセント濃度をモル濃度に直す
質量パーセント濃度20%、密度1.22 g/cm³の水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度を求めよ。
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溶液1 Lの質量は gで、NaOHはその20%である。
NaOHのモル質量40 g/molで割る。
例題 2基本モル濃度を質量パーセント濃度に直す
3.0 mol/L、密度1.18 g/cm³の希硫酸の質量パーセント濃度を求めよ。
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溶液1 Lは1180 gで、その中に硫酸が3.0 molある。H₂SO₄のモル質量は98 g/molなので、硫酸の質量は gになる。
約25%である。手順6の式に入れても同じ値が出る。
例題 3入試モル濃度から質量モル濃度へ
2.00 mol/L、密度1.08 g/cm³の塩化ナトリウム水溶液について、(1)質量パーセント濃度(2)質量モル濃度を、それぞれ有効数字3桁で求めよ。
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溶液1 Lで考える。溶液の質量は1080 g、NaClは gである。 (1)溶液全体で割る。
(2)水は gなので、水1 kgあたりに直す。
例題 4入試濃度の表示から密度を出す
試薬の塩化ナトリウム水溶液のラベルに、質量パーセント濃度10.0%と、モル濃度1.83 mol/Lが並んで書かれている。この溶液の密度を有効数字3桁で求めよ。
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手順5の式をについて解く。
、、を入れる。
2つの濃度の表示がそろっていれば、密度を測らなくても求まる。
記号で組み立てる逆向きの式
- 2026年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第1問 問3:体積(L)と質量(g)が分かっている溶液について、モル濃度と溶質のモル質量から、質量パーセント濃度を表す式を選ぶ。手順6の換算を、溶液1 Lではなく、体積 Lと質量 gのまま組み立てる形になる。出典は大学入試センター「令和8年度 追・再試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「化学基礎」3(3)ア(ア)㋐ 物質量と内容の取扱い、91-92ページ、同ア(イ)㋐ 酸・塩基と中和、93ページ、第5節「化学」3(1)ア(イ)㋑ 溶液とその性質、102ページ
- F. J. Bates and Associates, Polarimetry, Saccharimetry and the Sugars, Circular of the National Bureau of Standards C440 (1942), pp. 253-254(ショ糖水溶液の密度の研究)、table 113, p. 626(20 °Cの密度)
- Bureau International des Poids et Mesures, The International System of Units (SI), 9th edition(2019)、2.3.1節(amount concentration)、Table 5
- 厚生労働省『第十八改正日本薬局方』(2021)、医薬品各条「生理食塩液」
- 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 追・再試験 化学」