2本の法則を掛け合わせる
閉じ込めた気体の圧力を2倍にし、同時に絶対温度を1.2倍にすると、体積は0.6倍になる。圧力の効き目だけなら体積は倍、温度の効き目だけなら1.2倍で、2つを掛けたが答えだ。ボイル・シャルルの法則は、この掛け算をの1本の式にしたものである。
もとになった2本の法則には、それぞれ測定の歴史がある。Jの字の管で空気を押し縮めた表はボイルの法則で、シャルルが結果を発表しなかった事情はシャルルの法則で読める。物質量まで入れた式へ進む一歩は、理想気体の状態方程式でたどれる。
途中に1つ状態をはさむ
は圧力、は体積、は絶対温度を表す。物質量を変えずに、状態1(、、)を状態2(、、)に移すとする。3つを一度に動かさず、温度はのまま圧力だけをにした途中の状態を考え、その体積をとおく。
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状態1から途中まで、温度一定でボイルの法則を使う
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途中の体積を求める
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途中から状態2まで、圧力一定でシャルルの法則を使う
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手順2のを代入する
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両辺にを掛ける
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状態1と状態2はどれを選んでもよい
ただし、途中の状態は計算のための足場にすぎない。気体が実際にこの道を通るわけではないが、先に圧力一定で温度を変え、あとから温度一定で圧力を変えても、手順5と同じ式にたどり着く。の値は状態だけで決まり、通った道によらないからだ。
手順5をについて解くと、となる。つまり、もとの体積に「圧力の比」と「温度の比」を順に掛ければよく、冒頭の0.6倍はこの2つの比を掛けた値にあたる。
そろえる単位、変えてはいけない物質量
単位の取り違えがいちばん大きく効くのは温度である。1.0 atm、27 °C、2.0 Lの気体を2.0 atm、77 °Cにすると、体積は次のようになる。
温度を°Cのままとして入れても計算はできてしまうが、答えは2.85 Lになり、2倍以上も外れる。が一定になるのは、温度を0 Kから、圧力を真空から測ったときだけである。つまり、温度は絶対温度で、圧力は圧力計の読みに大気圧を足した絶対圧で入れる。0の位置さえそろえば、単位の大きさは比で消える。圧力をatmからkPaに直してもで、比は変わらない。
温度と圧力が一緒に動く身近な例は、注射器や空気入れを速く押す場面である。先をふさいだ注射器に Pa、20 °Cの空気を30 mL閉じ込め、15 mLまで一気に押し込んだとする。温度が50 °Cに上がったなら、圧力は次のようになる。
ボイルの法則だけで見積もった Paより1割高い。押さえたまま熱が逃げて20 °Cに戻れば、圧力も Paまで下がる。
では、この式が使えないのはどんなときか。気体の量が変わるときである。は物質量に比例するので、タイヤに空気を足す、ボンベから気体を出す、反応で分子の数が変わる、といった場面では一定にならない。なら、3分子が2分子に減る。このときはに物質量を入れて計算する。問題文に「コックを開く」「燃焼させる」「一部を取り出す」とあれば、物質量が変わっていないかを先に考えると迷わない。
シリンダーとボンベで3つの量を動かす
例題 1基本圧力と温度を上げたときの体積
Pa、27 °C、3.0 Lの気体を、 Pa、127 °Cにした。物質量は変わらないものとして、体積を求めよ。
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温度をケルビンに直すと、27 °Cは300 K、127 °Cは400 Kになる。
例題 2基本温度を求める
1.0 atm、27 °C、6.0 Lの気体を、物質量を変えずに1.5 atm、5.0 Lにした。温度は何 °Cになったか。
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27 °Cを300 Kに直し、手順5をについて解く。
セルシウス温度では °Cである。
例題 3入試ボンベに残った気体
容積10 Lのボンベに、27 °C、 Paの気体が入っていた。気体の一部を使ったあと、ボンベを47 °Cの部屋に置くと、圧力は Paになった。圧力はどちらも真空を0とした値である。(1)前後の状態をボイル・シャルルの法則で結べない理由を述べよ。(2)使った気体ははじめの量の何%か。
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(1)気体を使ったので、物質量が変わっている。は物質量に比例するので、前後で等しくならない。 (2)体積は同じ10 Lなので、物質量はに比例する。残った割合は次のとおり。
残りが60%なので、使った気体は40%である。
例題 4入試おもりを足して温めるピストン
なめらかに動くピストンでシリンダーに気体を閉じ込めた。はじめ気体は7 °C、 Paで、ピストンは底から20 cmの高さにある。ピストンにおもりを足して気体の圧力を Paにし、同時に77 °Cまで温めた。(1)ピストンの高さを求めよ。(2)温めずにおもりを足しただけなら、高さはいくらか。
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(1)断面積が一定なので、体積の比は高さの比に等しい。7 °Cは280 K、77 °Cは350 Kである。
圧力と絶対温度がどちらも1.25倍になり、2つの効き目が打ち消し合って高さは変わらない。 (2)温度が280 Kのままなら、圧力の比だけが効く。
3つの量が同時に動く出題
- 2024年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第1問 問3:乾燥空気を圧縮すると、体積が小さくなると同時に温度も上がる。はじめの温度と圧力、圧縮後の体積の割合と温度から、圧縮後の圧力を選ぶ。出典は大学入試センター「令和6年度 追・再試験の問題」。
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 物理 第1問 問1:山頂でふたをした空のペットボトルが、ふもとでへこむ現象を注射器で調べる。山頂とふもとの大気圧と絶対温度、注射器に閉じ込めた空気が縮んだ体積から、山頂の大気圧を表す式を選ぶ。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第5節「化学」3(1)ア(ア)㋑、99-101ページ。第3節「物理」3(1)ア(オ)㋐、69ページ
- R. Boyle, "A Defence of the Doctrine Touching the Spring and Weight of the Air" (1662)。表の転載はChemTeam「Robert Boyle and His Data」
- J. L. Gay-Lussac, Annales de chimie 43 (1802), 137。英訳の抜粋はLe Moyne College「The Expansion of Gases by Heat」
- Bureau International des Poids et Mesures, The International System of Units (SI), 9th edition(2019)、2.3.1節(セルシウス温度と熱力学温度の関係)
- 大学入試センター「令和6年度 大学入学共通テスト 追・再試験 化学」
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 物理」