体積が整数の比で結びつく
1808年、ジョゼフ・ルイ・ゲイ=リュサックはフィロマティック協会で、気体どうしが結びつくときの体積を発表した。酸素100に水素200、塩化水素100にアンモニア100、窒素100に水素300。比はいつも1対1、1対2、1対3という簡単な整数になった。今の化学反応式で書けば、これは係数の比そのものである。
反応のあとの体積の縮み方も、気体によって違った。1809年に出た論文によると、窒素と水素からできたアンモニアは、もとの2つを合わせた体積の半分に縮む。ところが、窒素と酸素を同じ体積ずつ合わせた一酸化窒素は、縮まずに合計の体積のままだった。
これは奇妙である。同じ体積に同じ数の粒が入っていると考えると、窒素の粒と酸素の粒が1つずつ結びつく一酸化窒素は、もとの1体積分しかできないはずだ。では、1と1からなぜ2が生まれるのか。アメデオ・アボガドロは1811年、『ジュルナル・ド・フィジック』に載せた論文で、どの気体でも同じ体積には同じ数の分子が入っていると考えた。そのうえで、単体の気体の分子はいくつかの粒が結びついたもので、反応するときに半分ずつに分かれるとした。窒素と酸素の分子がそれぞれ2つに割れて組み替われば、1体積と1体積から2体積ができる。
しかし、この仮説が広く認められたのは、半世紀近くあとだった。1860年、ドイツのカールスルーエで最初の国際化学会議が開かれ、アボガドロの仮説から原子量を決める道筋を示したスタニズラオ・カニッツァーロの講義の概要が配られた。その考えは、10年ほどで化学者に広まった。
体積の比を係数の比に読み替える
は気体の体積、は物質量、は絶対温度、は圧力を表す。温度と圧力がそろっていれば、次の計算が成り立つ。
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どの気体でも体積は物質量に比例する
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2つの気体A、Bで比をとるとが消える
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反応式の係数は物質量の比を表す
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手順2で物質量を体積に置き換える
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一酸化窒素ができる反応に当てはめる
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アンモニアができる反応では体積が半分になる
手順2の割り算でが消えることが、この計算の要である。つまり、の値を知らなくても、比なら求められる。は0 °C、 Paで22.4 L/molになり、温度や圧力を変えると値も変わるが、同じ条件ならどの気体でも等しい。22.4という値の使い方は物質量で、温度と圧力でがどう変わるかは理想気体の状態方程式で追える。
体積の比が係数の比になるのは、比べるものがすべて気体のときだけだ。水素と酸素から水ができる反応は、1気圧で100 °Cを超えていれば体積が2対1対2で並ぶ。しかし室温に戻すと水は液体になり、その体積は気体に比べてほぼ0とみなせる。
密度の比が分子の質量の比
同じ温度と圧力で同じ体積の気体を比べると、中にある分子の数が等しい。だから質量の比は、そのまま分子1個あたりの質量の比になる。アボガドロは1811年の論文で、この考えをさっそく使っている。空気を1とした密度が酸素で1.10359、水素で0.07321であることから、酸素の分子は水素の分子より15.074倍重いとし、窒素も密度0.96913から13.238倍とした。
今の原子量で計算すると、2つの比は15.87と13.90で、どちらもアボガドロの値より5%ほど大きい。一方、酸素と窒素の比はで、今の1.142とほとんど変わらない。ずれは、2つの比に共通する水素の密度から来ている。今の分子量を空気の平均の分子量28.96で割ると、空気を1とした密度は酸素1.105、窒素0.967で、アボガドロの値とほぼ同じになる。水素は0.0696で、アボガドロの0.07321はこれより5%ほど大きかった。
同じ考え方は、化学基礎で行う実験にもなっている。学習指導要領解説には、分子量の分かった気体と分からない気体を同じ体積で比べ、質量から分子量を求める実験が例に挙がっている。容器の容積も、そこに入った分子の数も知らなくてよい。
燃焼の前後で体積を数える
例題 1基本アンモニアの合成
窒素2.0 Lと水素9.0 Lを混ぜ、窒素がすべて反応するまでアンモニアを合成した。体積はすべて同じ温度と圧力で比べる。(1)残る水素(2)できるアンモニア(3)反応後の気体の全体積を求めよ。
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反応式の係数の比が、体積の比になる。 (1)窒素2.0 Lと反応する水素は3倍の6.0 Lなので、残りは次のとおり。
(2)アンモニアは窒素の2倍である。
(3)残った水素とアンモニアを足す。
反応前の11.0 Lから4.0 L減った。減った分は、反応した窒素の体積の2倍にあたる。
例題 2基本プロパンを燃やす空気
プロパン1.0 Lを完全燃焼させる。
(1)必要な酸素(2)体積で20%の酸素を含む空気なら、その空気の量(3)室温に戻したときの二酸化炭素の体積を求めよ。体積はすべて同じ温度と圧力で比べ、室温で水は液体とする。
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(1)係数の比から、酸素はプロパンの5倍である。
(2)空気の20%が酸素なので、5.0 Lの酸素を含む空気は次のようになる。
(3)二酸化炭素はプロパンの3倍で、3.0 Lである。水は液体になるので、気体の体積には数えない。
例題 3入試燃やしたあとの体積から組成を決める
一酸化炭素とメタンの混合気体30 mLに酸素100 mLを加え、完全燃焼させた。もとの温度と圧力に戻すと、気体の体積は85 mLになった。水は液体になり、その体積は無視できる。(1)混合気体中の一酸化炭素とメタンの体積を求めよ。(2)燃焼後の気体を水酸化ナトリウム水溶液に通して二酸化炭素を除くと、何mL残るか。
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一酸化炭素を mL、メタンを mLとする。反応式は次の2つである。
(1)できる二酸化炭素は mL、使われる酸素は mLである。燃焼後の気体は二酸化炭素と残った酸素なので、次の式が成り立つ。
とを連立して解くと、、。一酸化炭素は10 mL、メタンは20 mLである。 (2)二酸化炭素30 mLを除くと、残るのは酸素だけになる。
例題 4入試同じ容器に詰めた気体の質量
同じ容積の容器に、同じ温度と圧力で酸素と気体Xを別々に詰めて質量をはかると、気体Xは酸素の1.375倍だった。原子量はH=1.0、C=12、O=16とする。(1)気体Xの分子量を求めよ。(2)気体Xは二酸化炭素かプロパンのどちらかだという。この測定だけで見分けられるか。
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(1)温度、圧力、体積が同じなので、分子の数が等しく、質量の比は分子量の比になる。酸素の分子量は32である。
(2)見分けられない。分子量を計算すると、二酸化炭素は、プロパンはで、どちらも44になる。燃やして水ができるかどうかなど、別の性質を調べる必要がある。
体積から物質量の比を読む出題
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎 第2問 問3 b:レイリーが空気から取り出した、純粋な窒素よりわずかに密度の大きい気体が題材。その気体をアルゴンと窒素の混合気体とみて、密度の差の割合から、アルゴンの体積百分率を求める。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 化学 第1問 問2:理想気体と実在気体について、3つの記述の正誤を選ぶ。1つ目の記述は、温度と圧力が同じ2つの気体を体積比で混ぜたとき、分圧の比が体積比に等しくなるかを問う。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
- 2026年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第3問 問3:亜鉛と銀の混合物を希塩酸と希硝酸で順に溶かし、発生した水素と一酸化窒素の体積を同じ温度と圧力で測る。2つの体積と反応式から、亜鉛と銀の物質量の比を選ぶ。出典は大学入試センター「令和8年度 追・再試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「化学基礎」3(3)ア(ア)㋐㋑、91-92ページ
- J. L. Gay-Lussac, Mémoires de la Société d'Arcueil 2 (1809), 207。英訳はLe Moyne College「Memoir on the Combination of Gaseous Substances with Each Other」。フィロマティック協会での発表(1808)は同サイトの一覧による
- A. Avogadro, Journal de Physique 73 (1811), 58-76。英訳(Alembic Club Reprint No. 4)はLe Moyne College「Essay on a Manner of Determining the Relative Masses of the Elementary Molecules of Bodies」
- Science History Institute, "Stanislao Cannizzaro"
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎、化学」「令和8年度 大学入学共通テスト 追・再試験 化学」