1 gずつでは釣り合わない
水素1 gと酸素1 gを反応させると、水素の9割近くが余る。原子や分子は質量ではなく個数の比で結びつくのに、はかりが読めるのは質量だけだからだ。物質量は、その個数と質量を結ぶ量で、単位はmol(モル)である。
1 molの大きさは、今は個数そのもので決まっている。2019年5月20日に発効した国際単位系(SI)の定義で、1 molはちょうど個の粒子を含む量になった。それまでは炭素12の0.012 kgに含まれる原子の数で決めていたので、個数のほうが測って求める値だった。
その測定の歩みは、ジャン・ペランの1926年のノーベル賞講演で読める。気体の性質からの見積もりはからまで開いていたが、液の中の微粒子の分布を数えたペランはを得た。ペランはこの数をアボガドロ数と呼んでいる。
個数と質量と体積をmolに直す
は物質量(mol)、は粒子の数、はアボガドロ定数、は質量(g)、はモル質量(g/mol)、は気体の体積(L)を表す。モル質量は1 molあたりの質量で、数値は原子量や分子量、式量に等しい。
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粒子の数を1 molあたりの数で割る
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質量を1 molあたりの質量で割る
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気体の体積を1 molあたりの体積で割る
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二酸化炭素8.8 gをmolに直す()
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0.20 molを分子の数に直す
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0.20 molを体積に直す
手順5のは、定義の値を2桁に丸めたものだ。定義の値との差は0.4%ほどで、共通テストも「アボガドロ定数を/molとする」と問題文で指定する。問題に値が書いてあれば、その値で計算すればよい。
個数のまま数えないのは、桁が大きすぎるからである。水1滴を0.05 gとすると、物質量は約0.0028 molで、分子は約個になる。1秒に1個ずつ数えても、約年かかる。
1 gずつの水素と酸素も、molに直すと余る理由が見える。反応式はで、係数の比は物質量の比を表す。
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水素1 gをmolに直す()
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酸素1 gをmolに直す()
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反応する水素は酸素の2倍である
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余る割合を求める
22.4がずれるとき
22.4 L/molは、0 °C、 Paで理想気体が占める体積である。実在の気体では少しずれる。
| 気体 | 0 °C、101.325 kPaの1 molの体積 |
|---|---|
| 理想気体 | 22.414 L |
| 水素 | 22.428 L |
| 窒素 | 22.404 L |
| 二酸化炭素 | 22.263 L |
有効数字3桁で計算するなら、水素と窒素は22.4のままでよい。いちばんずれる二酸化炭素でも、小さいほうへ0.7%にとどまる。分子どうしが引き合うぶん縮むのだ。もっとも、ここに挙げた気体のずれは1%に満たないので、種類によらない値として計算に使える。どこまで薄ければ理想気体とみてよいかは、理想気体の状態方程式で追える。
もう1つの落とし穴は条件である。2024年から2026年の共通テストの化学基礎と化学(本試験と追試験の12冊)に、「標準状態」という語は出てこない。問題文は「0 °C、 Pa」のように、温度と圧力の数値で条件を書く。圧力の基準が資料で違うことを考えると、この書き方がいちばん確かだ。基礎物理定数の表CODATAは標準状態の圧力を100 kPaとし、この圧力での理想気体の体積として、22.414 Lと別に22.711 Lも載せている。
圧力が1.3%低いぶん、体積が1.3%大きい。温度が変わると差はもっと開き、25 °C、101.325 kPaなら約24.5 L/molになる。だから22.4を使う前に、問題文の温度と圧力を確かめる。
質量と体積と個数を行き来する
原子量はH=1.0、C=12、N=14、O=16、Mg=24、アボガドロ定数は/molとする。気体の体積は0 °C、 Paの値で、1 molを22.4 Lとする。
例題 1基本水の分子を数える
水9.0 gについて、(1)物質量(2)水分子の数(3)含まれる水素原子の数を求めよ。
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(1)水のモル質量は18 g/molである。
(2)を掛ける。
(3)分子1個に水素原子は2個あるので、2倍にする。
例題 2基本気体の体積から質量へ
窒素5.6 Lについて、(1)物質量(2)質量(3)分子の数を求めよ。
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(1)体積を22.4 L/molで割る。
(2)窒素のモル質量は28 g/molである。
(3)を掛ける。
例題 3入試マグネシウムから出る水素
マグネシウム0.36 gに十分な量の塩酸を加えると、次の反応が完全に進んだ。
(1)反応したマグネシウムの物質量(2)発生した水素の体積(3)反応した塩化水素の物質量を求めよ。
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(1)質量をモル質量で割る。
(2)係数の比から、水素も0.015 molである。
(3)係数の比から、塩化水素はマグネシウムの2倍である。
質量の比ではなく、物質量の比で比べている点が要になる。
例題 4入試気体の密度から分子量を読む
(1)ある気体の密度は、0 °C、 Paで1.25 g/Lである。この気体の分子量を求めよ。(2)窒素と酸素を物質量の比4:1で混ぜた空気の平均のモル質量を求めよ。(3)この空気の密度を有効数字3桁で求めよ。
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(1)1 molの体積が22.4 Lなので、1 molの質量は次のようになる。
(2)それぞれのモル質量に、物質量の割合を掛けて足す。
(3)1 molあたりの質量を、1 molの体積で割る。
ドライアイスと混合気体で問われた換算
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎 第1問 問5:密度の分かったドライアイス1.10 cm³が全部気体になったときの、0 °C、 Paでの体積を選ぶ。体積から質量、物質量、気体の体積へと、換算を3回つなぐ。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
- 2025年 大学入学共通テスト 追試験 化学基礎 第1問 問6:質量で示した一酸化炭素、体積で示したアンモニア、質量で示したヘリウムとネオンの混合気体を、分子の数が多い順に並べる。出典は大学入試センター「令和7年度 追・再試験の問題」。
- 2024年 大学入学共通テスト 追試験 化学基礎 第1問 問6:原子量と密度の分かった単体1.0 cm³に含まれる原子の数を求める。出典は大学入試センター「令和6年度 追・再試験の問題」。
- 2024年 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎 第1問 問10:同じ温度、圧力、体積の容器に入れた気体の質量の比から混合気体のモル質量を出し、グラフから成分の割合を読む。出典は大学入試センター「令和6年度 本試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「化学基礎」3(3)ア(ア)㋐、91-92ページ
- Bureau International des Poids et Mesures, The International System of Units (SI), 9th edition(2019)、2.3.1節(モルの定義)
- J. Perrin, "Discontinuous Structure of Matter", Nobel Lecture (1926)
- National Institute of Standards and Technology, "CODATA Value: molar volume of ideal gas (273.15 K, 101.325 kPa)", "(273.15 K, 100 kPa)", "standard-state pressure"
- National Institute of Standards and Technology, "Thermophysical Properties of Fluid Systems"(水素、窒素、二酸化炭素の273.15 K、0.101325 MPaの値)
- 大学入試センター「令和6年度 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎」「令和6年度 追・再試験 化学基礎」「令和7年度 本試験 化学基礎」「令和7年度 追・再試験 化学基礎」。「標準状態」の語の有無は、令和6〜8年度の本試験と追・再試験の化学基礎、化学で確認