6と−12をどう割るか
はに分かれる。掛け戻すとの係数は、定数項はで、真ん中の係数1は、斜めに掛けたとの和にあたる。この斜めの積の和が合う組を探す手順が、たすき掛けだ。
中学校の乗法公式は、2つの1次式での係数がどちらも1という特別な場合にすぎない。文部科学省の解説も、中学校の乗法公式のほかに数学Iで新しく扱う公式を、の1つだけとしている。
積に分けると、方程式の解がそのまま読める。1621年に没したイングランドのトマス・ハリオットは、3次方程式の解を、、とすれば、方程式がと書けることに気づいていた。
斜めの積を表で探す
をに分けたいときは、右辺を展開して係数を見比べる。
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分配法則で4つの積に分ける
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の項をまとめる
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の係数と見比べて3つの条件にする
なら、、で、とは正にそろえてよい。2つの1次式を入れ替えても同じなので、の組はとで足りる。ただし、は負だから、との符号は逆になる。つまり、斜めに掛けたとも符号が逆で、その和の大きさは絶対値どうしの差に等しい。符号はあとに回し、2つの積を絶対値で比べて、差が1になる組を表で探せばよい。
| 、の絶対値 | 、 | 、 |
|---|---|---|
| 1と12 | 6(×) | 21(×) |
| 2と6 | 6(×) | 6(×) |
| 3と4 | 14(×) | 1 |
| 4と3 | 21(×) | 6(×) |
| 6と2 | 34(×) | 14(×) |
| 12と1 | 71 | 34(×) |
差が1になるのは、、で絶対値が3と4の1か所しかない。和をにするには大きいほうの積9を正にとるので、、と決まり、が出た。
表の(×)は、1次式の係数に共通の約数が出てしまう組を示す。たとえば、での絶対値が4なら、は2でくくれる。ところが、の係数6、1、−12には1より大きい共通の約数がなく、そうした因数は現れない。だから、(×)を先に外せば、調べる組は12から2に減る。
符号の決め方も、とを正にしておけば2通りで済む。ならとは同じ符号で、その符号はと同じ。なら符号は逆になり、絶対値の大きいほうの積にの符号を付ける。
では、表を全部埋めても差が合わないときは、どこで諦めればよいのか。答えは、判別式で先に分かる。
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判別式に3つの条件を入れる
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2乗を展開する
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の項をまとめて差の2乗にする
整数で分かれるなら、判別式は斜めに掛けた2つの積の差を2乗したものだから、必ず平方数になる。の判別式も、で17の2乗だ。逆に、係数が整数の2次式でが平方数なら、解の公式の根号が外れて2つの解は有理数になり、係数が整数の1次式の積に組み直せる。解は、つまりとなので、ここからを組み立ててもかまわない。
近道がもう1つある。とを掛けると、どの組でもになるのだ。和がで積がの2数を探すと考えれば、の約数の組からとがすぐに見つかるはずだ。
が平方数でなければ、表を探さずに打ち切ってよい。たとえば、はで、整数の範囲では分かれない。このときは二次方程式の解の公式に進み、と求めるのが早い。
はね返る速さを1行で読む
因数分解がいちばん効くのは、はじめから解が1つ分かっている2次方程式だ。物理の弾性衝突が、その典型。
質量2.0 kgの球Aが速さ4.0 m/sで進み、止まっている質量3.0 kgの球Bに正面から当たる。運動エネルギーが失われない弾性衝突とし、衝突後のAの速度を、Bの速度をと置く。運動量と運動エネルギーの保存から、式が2つ立つ。
1つ目の式をと直して2つ目に入れ、分母を払って整理すると、の2次方程式が残る。
この方程式はを必ず解にもつ。AがBをすり抜けたと考えても、2つの保存の式はそのまま成り立つからだ。が因数に入ると分かれば、もう一方の1次式は、と、定数項を作るで決まる。
衝突後のAは m/sで来た向きへはね返り、Bは m/sで進む。解の公式でも同じ答えは出るが、因数分解なら「すり抜けた場合」と「はね返った場合」が2つの因数として並んで見える。式の意味まで読めるのがありがたい。
もっとも、使いどころは数学Iの中にも多い。2次不等式は、と書けた時点で、解がと読めた。
文字が混ざっても斜めに掛ける
例題 1基本定数項が正の式
を因数分解せよ。
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なので、とは同じ符号で、と同じく負になる。の組はだけである。絶対値が2と4の組なら、斜めに掛けた積を絶対値で足してと合う。、として次のようになる。
判別式はで、平方数になっている。
例題 2基本定数項が負の式
を因数分解せよ。
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なので、とは符号が逆である。斜めに掛けた積の差が絶対値で5になる組を探すと、、で、の絶対値が3と2のとき、との差が5になる。は負なので、大きいほうの積9を負にとり、、とする。
例題 3入試文字が2つある式
を因数分解せよ。
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について整理する。
を含まない部分を先に因数分解する。
の係数2をに分け、とを斜めに掛ける。となり、の係数に合う。
例題 4入試判別式で候補を数える
を1以上50以下の整数とする。が、係数が整数の1次式2つの積に分かれるようなをすべて求めよ。
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判別式が、整数の2乗になればよい。は奇数なのでも奇数で、よりである。
奇数の2乗は8で割ると1余るので、は必ず整数になる。を入れるとで、ではとなって50を超える。たとえばなら、ならと、実際に分かれる。答えは7個である。
係数に文字が残る共通テスト
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A第1問〔1〕(2):2つの文字、を係数に含むの方程式で、としたあと、を係数に残したまま左辺をの形に因数分解する。続けて、の値によって解がどう変わるかを問う。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第1節「数学Ⅰ」3(1)ア(ウ)・イ(イ)、36-37ページ
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』(2017)、第3章 第3学年 A(2)簡単な多項式、137-139ページ
- J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Thomas Harriot", MacTutor History of Mathematics Archive (2000)
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 数学Ⅰ,数学A」