ジョーンズ多項式(結び目を式で見分ける)

Jones polynomial

右手と左手の三つ葉を、tと1/tの入れ替えで見分ける。

交差を1か所ずつ入れ替えてほどく規則だけで計算できる、結び目の多項式。鏡に映した三つ葉を見分け、統計力学のポッツ模型や量子計算ともつながる。

年代
1984年
習う
大3以上・幾何・結び目理論
レベル
大学(例題 4 問)
人物
ヴォーン・ジョーンズ、ジョーン・バーマン、ルイス・カウフマン、ジェームズ・W・アレクサンダー、エドワード・ウィッテン、村杉邦男
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

手帳に残った8日間

1984年5月14日と22日。コロンビア大学のジョーン・バーマンは、毎日の予定を書く手帳に、ヴォーン・ジョーンズと会った日を2つ記していた。結び目を式で見分ける新しい多項式は、この8日間に生まれる。

紐で三つ葉結び目を作り、両端をつないで輪にする。同じ手順を鏡に映した向きでたどれば、できあがるのはもう1つの三つ葉だ。この2つは、紐を切らない限り、どう動かしても重ならない。

それなのに、1928年から結び目研究の中心にあったアレクサンダー多項式は、2つに同じ式を返す。ジョーンズの多項式は違った。交差の符号がすべて正になる三つ葉(右手の三つ葉と呼ぶ)にはを、鏡に映した左手の三つ葉にはを返す。をに替えると、式も鏡の向こうへ移る。

左は交差の符号がすべて正の右手の三つ葉、右はそれを点線で鏡に映した左手の三つ葉。ジョーンズ多項式は、tと1/tを入れ替えた式になる。

バーマンは2023年に改訂した追悼の文章で、ジョーンズ多項式の発見は「この2回の面会のあいだ」と特定できるとし、その根拠に手帳の記録を挙げている。

ジョーン・バーマン1927–組みひもと結び目を研究し、ジョーンズ多項式の誕生に立ち会った

2人を引き合わせたのは、お茶の席の雑談だった。1984年の早春、ペンシルベニア大学にいたジョーンズは、近くのプリンストン高等研究所へ講演を聞きに行き、お茶の時間にキャロライン・シリーズと話した。自分の研究に組みひも群の表現が思いがけず現れた、と打ち明けると、シリーズは「それならジョーン・バーマンに相談するといい」という意味のことを言ったという。バーマンは組みひもの本を書いた人だった。

5月14日、ジョーンズは自分の行列の表現と、「トレース」と呼ぶ量をバーマンに説明した。バーマンは、結び目を閉じた組みひもとして調べるならマルコフの定理が要になる、と指摘した。それからの8日間に、ジョーンズは代数の尺度を少し変えるだけで、トレースをマルコフの定理が求める規則に合わせられると気づく。5月22日に持ってきたのは、結び目や絡み目の型だけで決まる多項式だった。

ただ、それが新しい式かどうかは、まだ分からない。

似た性質をもつアレクサンダー多項式が、すでにあったからだ。バーマンの回想によれば、ここで偶然が手を貸した。研究室の書類棚に、好奇心から計算しておいた組みひもの一覧が入っていた。閉じるとアレクサンダー多項式が自明になる組みひもの、無限に続く族である。ジョーンズが持ってきた多項式は、その絡み目を自明なものと見分けた。だからアレクサンダー多項式ではありえない。2人は一緒にそう確かめた。

1980年代の大学の研究室。引き出しが半分開いた灰色の書類棚と、手帳を置いた机がある。人はいない(画像生成 AI で描いたイメージ)
バーマンの研究室の書類棚には、アレクサンダー多項式が自明になる組みひもの計算が入っていた(本人の回想)画像生成AIで描いたイメージ

5月31日の日付で、ジョーンズはバーマンに手紙を書いている。多項式の導き方を、バーマンのためにまとめ直した手紙だった。6年後に京都で開かれた国際数学者会議で、バーマンはジョーンズの仕事をこう紹介している。「その不変量は、それまでの60年、すぐ近くの分野で研究が盛んだったにもかかわらず、トポロジーの研究者にまったく見落とされていた。完全な驚きだった」。

起源

煙の輪から作用素環へ

結び目を表にする仕事は、物理学から始まった。1867年、エディンバラのP・G・テイトは、箱から煙の輪を打ち出す実験をした。輪はぶつかって揺れても、やがて元の形に戻る。これを見たウィリアム・トムソン(のちのケルビン卿)は、原子を結ばれた渦の輪と考え、元素の違いを結び目の違いで説明しようとした。

テイトは1876年から結び目の分類に打ち込み、1877年までに交差が7つまでの結び目を並べた。交差の上下が交互に入れ替わる交代結び目を中心に、図を描いては同じものを見分けていく。しかし、2つの図が同じ結び目かを決める理論は無く、頼りは直観だった。

渦の原子は誤りだったが、結び目の問題は数学に残った。1926年から翌年にかけて、アレクサンダーとブリッグス、そしてライデマイスターが、同じ結び目を表す図どうしは3種類の局所的な変形で移り合うことを示す。今はライデマイスター移動と呼ばれる変形である。1928年にはアレクサンダーが、結び目の図から計算できる多項式を発表した。

アレクサンダーの計算は、図が平面を分ける領域から始まる。交差が個のつながった図で、交差を頂点、交差どうしを結ぶ弧を辺とみると、頂点は個、辺は本。オイラーの多面体定理を平面の図に当てはめると、頂点の数から辺の数を引いて領域の数を足せば2になるので、領域は個だ。アレクサンダーは交差ごとに周りの領域の関係を書き、その行列から2列を除いた行列式を多項式にした。

では、56年後の新しい式は、どこから来たのか。

答えは結び目の外にあった。

ジョーンズはジュネーブで学位を取った作用素環の研究者で、1983年の論文「部分因子環の指数」で、フォン・ノイマン環のうちII₁型因子環について、部分因子環の指数が取れる値を決めた。4以上の実数か、(は3以上の整数)のどれかしかない。この証明に、射影が並ぶ代数の塔が現れる。

ジョーンズは、この関係式が組みひも群の関係式によく似ていることに気づいた。カウフマンによれば、この代数はテンパリーとリーブが1970年代初めに行列の代数として見つけていたもので、ジョーンズは作用素環の側から再発見したことになる。1983年に京都の研究集会で講演したとき、ジョーンズは組みひも群の表現をすでに話していた。もっとも、バーマンによれば、その講演の報告には結び目との関係に気づいた跡が見当たらないという。

1985年、ジョーンズは『アメリカ数学会報』(Bulletin of the AMS)の第12巻第1号に、論文「フォン・ノイマン環による結び目の多項式不変量」を載せた。さらに、この多項式が、交差を1か所だけ変えた3つの図を結ぶ関係式を満たすことも示す。とはその交差の上下だけが違い、はその交差を向きに沿って分解した図である。

形は、コンウェイが1970年に整えたアレクサンダー多項式の関係式に似ている。違うのはとにかかるとの重みだ。この偏りが、右手と左手を分ける。

統計力学の側では、同じ代数がすでに知られていた。バーマンの講演が例に挙げるのはポッツ模型である。平面の格子の点に原子を並べ、原子ごとに何通りかのスピンを選ぶ。2通りの場合がイジング模型で、分配関数は、すべてのスピンの選び方にわたる和として書ける。

厳密に解ける模型を調べる物理学者は、行から行への影響を転送行列で表していた。イジング模型で転送行列が生み出す代数、つまりテンパリー・リーブ代数が、ジョーンズの代数そのものだった。転送行列が満たすべきヤン・バクスター方程式も、組みひもの関係式と同じ形をしている。バーマンによれば、ポッツ模型と絡み目の関係を最初に報告したのは、1987年に出たジョーンズの論文だった。

分配関数が「状態の和」だと知ったルイス・カウフマンは、ジョーンズ多項式も、結び目の図から作る状態の和に分けられないかと考えた。カウフマンは1980年から、交差をほどいて1本の閉じた曲線にする道筋の和として、アレクサンダー多項式を書き直す研究をしていた。辺を1度ずつ通る道筋を最初に考えたのはケーニヒスベルクの橋を論じたオイラーで、カウフマンはこの道筋をジョルダン・オイラー道と呼んでいる。

カウフマンの2022年の回想によると、「かっこ」の規則を思いついたのは、1985年にイタリアのボローニャへ向かう飛行機の中だった。かっこがジョーンズ多項式を正規化する前の形だと気づいたのは、着いてすぐ観光に送り出されたベネチアで、その年の秋のことだったという。

物理学からの説明は1989年に届く。エドワード・ウィッテンは、ジョーンズ多項式を、チャーン・サイモンズ理論という3次元のゲージ理論のファインマン積分として読み直した。翌年の国際数学者会議にマイケル・アティヤが寄せた紹介文によれば、平面の図にも組みひもにも頼らず、3次元のまま説明できるのは、当時これだけだった。

1990年8月21日、京都。国際数学者会議の開会式が国立京都国際会館のイベントホールで開かれ、フィールズ賞が4人に贈られた。ウラジーミル・ドリンフェルト、ジョーンズ、森重文、ウィッテンである。森は小平邦彦、広中平祐に続いて、日本で3人目の受賞者になった。

緑の山を背に、台形を組み合わせた形のコンクリートの大きな会議場が、手前の池に映っている。人はいない(画像生成 AI で描いたイメージ)
1990年8月21日、国立京都国際会館で国際数学者会議の開会式が開かれ、フィールズ賞が4人に贈られた画像生成AIで描いたイメージ

講演録を並べて読むと、4人のうち3人の仕事が、この多項式とつながっている。ウィッテンの業績を紹介したファデーエフは「結び目」の節を立て、ドリンフェルトの量子群を、バーマンはジョーンズの発見とつながる分野として挙げた。当のジョーンズは、ラグビーのニュージーランド代表「オールブラックス」のジャージ姿で会議の講演に立ったと伝えられる。

ヴォーン・ジョーンズの肖像(画像生成 AI で描いたイメージ)
ヴォーン・ジョーンズ1952–2020作用素環の研究から、結び目のジョーンズ多項式を見つけた画像生成AIで描いたイメージ
証明

かっこの規則から関係式を導く

記事の顔の式を、カウフマンのかっこから導く。向きを付けない結び目の図に変数のローラン多項式を対応させ、交差の無い輪だけになるまで交差を1つずつ分解する、という計算である。

交差を囲む4つの領域のうち、上を通る弧を反時計回りに回したときに通る2つを、Aの領域と呼ぶ。Aの領域どうしをつなぐ分解がA分解、残る2つをつなぐ分解がB分解である。ライデマイスター移動の2番目で重ねた2本の弧については、交差を外して離した図を、2本が折り返して向かい合う図をと書く。

  1. 交差を1つ選び、2通りに分解した図の和にする

    斜線の2つがAの領域。Aの領域を縦につなぐのがA分解で係数はA、横につなぐのがB分解で係数はA⁻¹になる。
  2. 交差の無い輪個の図には、のべきを当てる

  3. 2番目の移動の2交差を分解すると、4項のうち3つが、1つがになる

  4. の値で括弧の中が0になり、2番目の移動で値は変わらない

  5. 1番目の移動の正のねじれは、A分解で輪が2つ、B分解で輪が1つになる

  6. 交差の符号の和で正規化すると、ねじれの因子が打ち消される

  7. 正の交差では、A分解が向きに沿った分解、B分解がもう1つの分解になる

    正の交差L₊と負の交差L₋は上下だけが違う。L₀は向きに沿って分解した図、L∞はもう1つの分解の図。
  8. 負の交差では、AとBの役が入れ替わる

  9. 手順7に、手順8にを掛けて引き、を消す

  10. を使い、を掛けてで書く

  11. とおいてとし、両辺にを掛ける

3番目の移動での不変性は、交差を1つ分解してから2番目の移動を使えば従う。これでは向き付きの絡み目の不変量になり、関係式を満たす。逆に、関係式と「自明な結び目なら」だけで、どの絡み目のも決まる。交差の上下を何か所か入れ替えれば、どんな結び目もほどけるからだ。

鏡像の式はどうなるか。鏡に映すととが入れ替わる。入れ替えた関係式は、をに替えると元の形に戻り、自明な結び目の値1も変わらない。値はこの2つで決まるので、鏡像の多項式はになる。

途中の計算

三つ葉を8つの状態に分ける

右手の三つ葉で、手順1と2を最後まで使い切る。3つの交差をそれぞれA分解かB分解にする方法は通りあり、それぞれを状態と呼ぶ。状態ごとに、A分解の数からB分解の数を引いた指数をに、輪の数から1を引いた指数をにつけ、全部を足す。

  1. 3つともA分解の状態は輪が2つ

  2. A分解2つ・B分解1つの3状態は輪が1つ

  3. A分解1つ・B分解2つの3状態は輪が2つ

  4. 3つともB分解の状態は輪が3つ

  5. 4つを足し、を代入する

  6. 符号はすべて正でなのでを掛ける

  7. を代入する

    上下を入れ替えると上を通る弧の傾きが逆になり、Aの領域が縦の2つから横の2つへ移る。A分解とB分解が入れ替わる。
  8. 鏡像では全ての交差でAとBが入れ替わり、になる

手順5で、の1乗の項はちょうど消える。つまり、8つの状態から8つの項が出ても、残るのは3つだけだ。

たとえば8の字結び目なら交差は4つで、状態は16通りある。同じ計算でになり、をに替えても変わらない。8の字結び目は、実際に紐を動かすと鏡像に重なる結び目である。ただし、が左右対称だからといって、鏡像に重なるとは限らない。カウフマンも、ジョーンズ多項式が鏡像を見分けられるのは「しばしば」だとしている。1

応用

箱の中で絡まる紐

鞄に入れたイヤホンのコードは、取り出すたびに絡まっている。2007年、カリフォルニア大学サンディエゴ校のD・M・レイマーとD・E・スミスは、この現象を実験で調べた。紐を箱に入れて転がし、できた結び目をデジタル写真から読み取って、計算機でジョーンズ多項式を求めたのである。

写真から読めるのは、紐がどこで交わり、どちらが上を通るかだ。状態和に要る情報は、それで全部そろう。交差が個なら状態は通りで、11個なら2,048通りになる。

結び目を描くのに要る交差の最少の数を、交差数と呼ぶ。3,415回の試行で、交差数が11までの素な結び目が120種類現れ、交差数が7以下の素な結び目は1つ残らず現れた。素な結び目とは、2つの結び目をつなぎ合わせた形に分けられないものをいう。

実験台の上に、絡まった紐が入った透明な小箱と、白い紙の上の紐を真上から狙うカメラがある。人はいない(画像生成 AI で描いたイメージ)
2007年、レイマーとスミスは箱の中で紐を転がし、できた結び目をジョーンズ多項式で見分けた画像生成AIで描いたイメージ

もう1つの使い道は、交差数を決めることだ。つながった図から計算したジョーンズ多項式では、最高次と最低次の差、つまり幅が、図の交差の数を超えない。だから幅を見れば、交差数の下限が分かる。1987年、カウフマン、村杉邦男、シスルスウェイトの3人は、それぞれ独立に、既約な交代図式なら幅と交差の数が等しいことを示した。既約とは、ひねるだけで消せる交差が無いことをいう。交差数についてのテイトの予想が、こうして100年近くたって解けた。

たとえば右手の三つ葉では、の幅はになる。だから三つ葉は、交差を2つ以下にした図では描けない。8の字結び目の幅はで、交差は4つが最少である。

紐をいくら眺めても確信できないことが、式の両端を見るだけで決まる。

例題と解説

交差を数え直す問題

例題 1基本負のねじれを1つ入れた輪

輪に小さなねじれを1つ入れ、その交差の符号を負にした図がある。とを求めよ。

解説を見る

負の交差では、A分解が向きに逆らう分解になり、輪は1つのままである。B分解は向きに沿った分解で、輪が2つに分かれる。

を代入する。

なので、を掛ける。

ねじれを入れても、自明な結び目の値1は変わらない。

例題 2基本ホップの絡み目

2つの輪が正の交差2つで1回だけ絡み合った図(正のホップの絡み目)がある。を求めよ。

解説を見る

状態は4通りある。2つともA分解なら輪は2つ、片方だけA分解の2状態は輪が1つ、2つともB分解なら輪は2つになる。

をまとめて代入する。

なのでを掛ける。

を代入する。

成分が2つの絡み目では、の指数が半整数になる。

例題 3大学での値

(1)どんな結び目でもであることを示せ。

(2)成分が個の絡み目ではであることを示せ。

解説を見る

(1)関係式にを代入すると、右辺の係数が0になる。

つまり、交差の上下を入れ替えても、での値は変わらない。どんな結び目も、交差の上下を何か所か入れ替えればほどけるので、は自明な結び目の値1に等しい。右手の三つ葉なら、8の字結び目ならで、どちらも1になる。

(2)成分が個でも、交差の上下を入れ替えれば、互いに離れた個の自明な輪にできる。交差の無い個の輪は、かっこがでだから、になる。を代入する。

例題2のホップの絡み目はで、と合う。

例題 4大学ねじった2本の紐を閉じる

2本の紐を同じ向きに回ねじり、上下の端をつないで閉じた図をとする。交差はすべて正である。

(1)の交差を1つ選んで関係式を使い、をとで表せ。

(2)、から、とを求めよ。の交差数も答えよ。

解説を見る

(1)交差の上下を入れ替えると、隣のねじれと打ち消し合ってになる。向きに沿って分解すると、ねじれが1つ減ってになる。

(2)順に代入する。は例題2のホップの絡み目、は右手の三つ葉で、ここまでは本文と合う。続けて2回代入する。

の幅はである。は交差5つの既約な交代図式なので、カウフマン、村杉、シスルスウェイトの定理から、交差数は5になる。シミュレーションの「交差5つ」で、符号がすべて正の図の値がこれにあたる。

図示

輪を線の種類で描き分ける

右手の三つ葉の3つの交差(左上、右上、下の順)をA分解かB分解にした8つの状態。線の種類が輪を表し、下の式がその状態の重みになる。

上の段は、A分解が多い4つの状態である。A分解3つの状態だけが輪2つで、残る3つは1本の輪になる。一方、下の段では、B分解2つの3状態がどれも輪2つ、B分解3つで輪は3つに増える。8つの重みを足したものが、途中の計算のだ。

シミュレーション

交差をたたいて式を変える

図の交差をたたくと上下が入れ替わり、棒グラフがの係数をの指数ごとに示す。三つ葉の交差を1つ入れ替えると式は1になり、ほどけた輪と同じ値になる。「鏡に映す」を押すと棒は0を軸に左右へ裏返るが、8の字では形が変わらない。「状態を数える」にすると、A分解とB分解の組み合わせを1つずつ描き、輪の数と重みを下に示す。

広がる学問

絡まりを式で読む学問

  • 数学 結び目どうしが同じかどうかを調べるとき、図から手で計算できる不変量として使う。2000年にミハイル・ホバノフは、オイラー標数がジョーンズ多項式になるホモロジーを作り、より細かく結び目を見分ける不変量に育てた。
  • 物理学 格子の上の統計力学の模型で分配関数を求めるとき、同じ代数と同じ状態の和が現れる。カウフマンのかっこは、変数を特殊化しなければ、平面グラフのポッツ模型の分配関数と直接つながる。
  • 生物学 タンパク質の鎖やDNAの環にできた結び目の種類を判定するときに使う。ワルシャワ大学のチームが2021年に発表したPythonのパッケージTopolyには、タンパク質の立体構造のファイル(PDB形式)を読み込み、ジョーンズ多項式を計算する関数がある。鎖の両端は開いているので、両端を閉じる方法を確率的に何通りも試し、結び目の型ごとの割合で答える。
  • 情報科学 計算の難しさを測る題材として調べられている。厳密な計算は#P困難で、交差の数について指数関数的な時間がかかる。一方、1の5乗根での値の近似は量子コンピューターに向いていて、フリードマンらの結果から、この問題はBQP完全だと分かっている。2005年にはアハロノフ、ジョーンズ、ランダウが、1の原始乗根での値を近似する多項式時間の量子アルゴリズムを具体的に示した。
いまの研究と事業

計算機で結び目を見分ける

  • 2021年 タズンとシコラ(ニューヨーク州立大学バッファロー校):ジョーンズ多項式が1になる結び目は、自明な結び目だけか。ジョーンズ自身が21世紀の数学の課題に挙げたこの問いは、今も解けていない。2人は、交差が24個までの図で表せる結び目に反例が無いことを確かめた。なら、かっこは単項式になる。反例になりうる部品(タングル)だけを組み合わせて図を作り、かっこが単項式になる図がほどけるかを調べた。24交差の段階だけで、調べた図は約59.5兆個、計算は延べ41.8コア年に及ぶ。出典はarXiv:2003.06724。
  • 2023年 スレイマン、ミキエレットら(エディンバラ大学):曲線の各点の局所的なねじれ(local writhe)を入力にして、ニューラルネットワークに結び目の型を当てさせた。変異体(ミュータント)や合成結び目のように、いくつもの多項式不変量が同じ値になる結び目まで見分け、交差10までの素な結び目を95%以上の正解率で分類した。交差の上下から計算するのような多項式と違い、入力は曲線の形そのものである。出典はSoft Matter 20 (2024) 71-78。
  • 2025年 ラークコネンら:Quantinuumの量子コンピューターH2-2で、閉じた組みひもで与えた絡み目のジョーンズ多項式を、で近似した。組みひもの閉じ方によってDQC1完全とBQP完全に分かれる2つの問題を、どちらも扱っている。多項式が絡み目の不変量であることを使い、答えを効率よく検証できるベンチマークを作って、量子プロセッサの雑音の影響を測った。出典はarXiv:2503.05625(PRX Quantum 7, 020355, 2026年)。
  • 2026年 バルカタキとパナギオトゥ(アリゾナ州立大学):開いた曲線と閉じた曲線の両方で、ジョーンズ多項式を厳密に求める並列のアルゴリズムを発表した。2人は、交差の数について指数関数的に延びる計算時間を、プロセッサの数に応じて指数関数的に減らせることを証明し、分子動力学で作った高分子の融液にも使った。出典はPNAS 123 (2026) e2520332123。

参考文献

  1. V. F. R. Jones, "Index for subfactors", Invent. Math. 72 (1983), 1-25; V. F. R. Jones, "A polynomial invariant for knots via von Neumann algebras", Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 12 (1985), 103-111; V. F. R. Jones, "Hecke algebra representations of braid groups and link polynomials", Ann. of Math. 126 (1987), 335-388.
  2. J. S. Birman, "The work of Vaughan F. R. Jones"; L. D. Faddeev, "On the work of E. Witten"; M. Atiyah, "On the work of Edward Witten", Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Kyoto, 1990, Vol. I(1991)(国際数学連合が公開するPDF。バーマンの講演は9-18ページ).
  3. J. S. Birman, "Algebra, Topology and the discoveries of Vaughan Jones", arXiv:2210.01920 (v2, 2023).
  4. L. H. Kauffman, "State models and the Jones polynomial", Topology 26 (1987), 395-407; L. H. Kauffman, "Combinatorial knot theory and the Jones polynomial", arXiv:2204.12104 (2022); V. F. R. Jones, "The Jones polynomial", lecture notes (2005).
  5. J. W. Alexander, "Topological invariants of knots and links", Trans. Amer. Math. Soc. 30 (1928), 275-306; H. N. V. Temperley, E. H. Lieb, Proc. R. Soc. Lond. A 322 (1971), 251-280; V. F. R. Jones, "On knot invariants related to some statistical mechanical models", Pacific J. Math. 137 (1989), 311-334; E. Witten, "Quantum field theory and the Jones polynomial", Commun. Math. Phys. 121 (1989), 351-399.
  6. K. Murasugi, "Jones polynomials and classical conjectures in knot theory", Topology 26 (1987), 187-194; M. B. Thistlethwaite, "A spanning tree expansion of the Jones polynomial", Topology 26 (1987), 297-309; Y. Diao, G. Hetyei, P. Liu, "The braid index of reduced alternating links", arXiv:1701.07366; D. M. Raymer, D. E. Smith, "Spontaneous knotting of an agitated string", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104 (2007), 16432-16437; MacTutor History of Mathematics, "Peter Guthrie Tait", "Vaughan Jones", "ICM 1990 Kyoto".
  7. R. E. Tuzun, A. S. Sikora, "Verification of the Jones unknot conjecture up to 24 crossings", arXiv:2003.06724 (2021); T. Laakkonen et al., "End-to-end quantum algorithms for the Jones polynomial", PRX Quantum 7 (2026), 020355; K. Barkataki, E. Panagiotou, "A parallel algorithm for the computation of the Jones polynomial", Proc. Natl. Acad. Sci. USA 123 (2026), e2520332123; J. L. Sleiman et al., "Geometric learning of knot topology", Soft Matter 20 (2024), 71-78; P. Dabrowski-Tumanski et al., "Topoly: Python package to analyze topology of polymers", Brief. Bioinform. 22 (2021), bbaa196(Topolyの説明書); D. Aharonov, V. Jones, Z. Landau, "A polynomial quantum algorithm for approximating the Jones polynomial", arXiv:quant-ph/0511096 (STOC 2006); M. Khovanov, "A categorification of the Jones polynomial", Duke Math. J. 101 (2000), 359-426.

注

  1. この記事のシミュレーションと同じ状態和の計算で、三つ葉・8の字・交差5つの図とホップの絡み目について、上下の組み合わせ60通りのすべての交差(256組)で関係式が成り立つことを確かめた。値はジョーンズの2005年の講義録と、結び目の表Knot Atlasに一致する。Knot Atlasは三つ葉の値をと載せていて、をと読むと、この記事の約束では左手の三つ葉の式にあたる。 ↩

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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