ハットのタイル

The hat (an aperiodic monotile)

退職した印刷技術者の切り抜きは、模様をくり返さなかった。

凧形 8 枚をつないだ 13 角形。平面をすき間なく埋めるが、どう並べても周期的にならない。1 種類の形でそれができることを、2023 年に 4 人が証明した。

年代
2023年
習う
大3以上・幾何・平面のタイリング
レベル
大学(例題 5 問)
人物
デイヴィッド・スミス、クレイグ・カプラン、ジョゼフ・マイヤーズ、ハイム・グッドマン=ストラウス、ロバート・バーガー、ロジャー・ペンローズ、ダン・シェヒトマン
逸話

凧形 8 枚の帽子

六角形の方眼紙で正六角形を 1 つ選び、中心から 6 本の辺の中点へ線を引くと、六角形は 6 枚の凧形に分かれる。凧形の角は 60°・90°・120°・90° で、辺の長さは 2 種類しかない。中心から辺の中点までが 、中点から六角形の頂点までが 1 である。隣り合う六角形も同じように分け、凧形を 8 枚つないで切り抜くと、13 本の辺をもつ多角形ができる。見つけた人たちはこれを「ハット(帽子)」と呼んだ。シャツに見立てる人もいる。

この紙片をたくさん作って並べると、すき間も重なりもなく平面を埋めていける。それでいて、どう並べても、同じ模様が一定の間隔でくり返す並べ方(周期的な敷き詰め)にはならない。1 種類の形でそれが起こりうるかは、60 年近く答えの出なかった問いだった。

デイヴィッド・スミス21 世紀に活躍凧形 8 枚の「ハット」を見つけた、敷き詰めの愛好家

見つけたのは、イングランド北部のヨークシャーに住むデイヴィッド・スミスである。ウォータールー大学の記事は、スミスを、退職した印刷技術者で、長年敷き詰めに親しんできた人と紹介している。2022 年の秋、凧形をつないだ形を試すうちに、この 13 角形に行き当たった。論文によれば、スミスは主に手作業で、パズルを解く無料のソフト PolyForm Puzzle Solver の助けも借りて並べた。大きな塊をいくら作っても行き止まりにならないのに、平面を周期的に埋める塊はどうしても見つからない。

窓辺の木の机で、年配の男性が後ろ姿で小さな白い紙片をいくつも並べている。机のわきに小型のカッティングマシンがあり、窓の外は秋の庭(画像生成 AI で描いたイメージ)
2022 年の秋、切り抜いた形を手で並べて試す(スミスのブログなどによる)画像生成 AI で描いたイメージ

紙の切り抜きで分かるのは、そこまでだった。スミスはクレイグ・カプランに電子メールで頼んだ。「これをあなたのソフトにかけて、どうなるか見てくれないか」。2 人は、敷き詰めの愛好家・プログラマー・数学者が集まる昔ながらのメーリングリストの仲間だった。

クレイグ・カプラン21 世紀に活躍数学と美術をつなぐ計算機科学者。ハットをソフトで調べた

論文によると、著者たちは最初に 2 つの計算をした。カプランのソフトを改造して調べると、ハットが平面を埋められないなら、まわりを囲める層の数(ヒーシュ数)は 16 以上になる。ソフトウェア開発者ジョゼフ・マイヤーズのプログラムを改造して調べると、周期的な並べ方があるなら、対称移動で移り合わない置き方が 64 種類以上要る。それまでの記録は、ヒーシュ数が 6、置き方が 10 種類で、どちらに転んでも記録を大きく塗り替える。

大学の研究室で、男性が後ろ姿で 2 台のモニターに向かう。画面はぼやけた光だけで中身は見えない。窓の外は曇り空の構内(画像生成 AI で描いたイメージ)
スミスから届いた形を、自作のソフトにかけて調べる(ウォータールー大学の記事による)画像生成 AI で描いたイメージ

スミスはその後、凧形 10 枚でできた「亀」も見つけた。のちに、ハットと同じ並び方をする形の族の一員だと分かる。数学者ハイム・グッドマン=ストラウスも加わった 4 人は、2023 年 3 月 20 日、論文「An aperiodic monotile」を arXiv で公開した。同じ年の 12 月 29 日に Combinatorial Theory 誌に受理され、2024 年 6 月 30 日に載った。

起源

2 万枚から 1 枚へ

周期的にならない敷き詰めの研究は、論理学から始まった。1961 年、ハオ・ワンは、辺に色のついた正方形を、隣り合う辺の色がそろうように平行移動だけで並べる問題を考えた(ワンのタイル)。ワンは、平面を埋められるタイルの組なら周期的にも並べられると予想し、そうなら「埋められるかどうか」を判定する手順が作れることを示した。1966 年、ロバート・バーガーは、この判定が一般にはできないことを証明した。その途中で、周期的には並ばないタイルの組を初めて作っている。タイルは 20426 枚だった。

それから枚数は減っていく。ウォータールー大学の記事によれば、1970 年には 100 枚ほどになり、1971 年にラファエル・ロビンソンが 6 枚にした。1970 年代には、ロジャー・ペンローズらが 2 枚の組を見つけた。残る問いは、1 枚でできるかである。1 種類の形だけで非周期的に敷き詰めるタイルは「アインシュタイン」とも呼ばれる。ドイツ語の ein Stein(1 つの石)にかけたしゃれで、論文によればダンツァーが広めた。

1 枚に近い答えはあった。1996 年にグンメルトが示した正十角形は、決まった重なり方を許せば非周期的に平面を覆うが、重なるので敷き詰めではない。2011 年のソコラーとテイラーの正六角形は、タイルの中に描いた印の決まりが要る。2017 年には、ラオが平面を埋める凸五角形を数え尽くし、凸多角形がアインシュタインになる可能性も消えた。

周期的でない秩序は、物質の中にも見つかっていた。1982 年 4 月 8 日の朝、ダン・シェヒトマンの電子顕微鏡に、くり返しでは説明できない原子の並びを示す像が現れた。原子が規則正しく、しかしくり返さずに並ぶ準結晶の発見で、2011 年のノーベル化学賞になった。スウェーデン王立科学アカデミーの発表は、準結晶の原子間の距離の比が黄金比と関わると説明している。ハットの敷き詰めにも、あとで見るように黄金比が現れる。

1980 年代の研究室で、白衣の男性が後ろ姿で大きな電子顕微鏡の観察窓をのぞき込んでいる(画像生成 AI で描いたイメージ)
1982 年 4 月 8 日の朝、シェヒトマンの電子顕微鏡に現れた像(ノーベル化学賞の発表による)画像生成 AI で描いたイメージ
証明

縮めた 2 つの敷き詰めは同じ格子に乗らない

示すことは 2 つある。ハットで平面を埋められることと、どう埋めても周期的にならないことである。前者は置き換え(次の章)で、いくらでも大きな塊を作って示す。後者について、論文は証明を 2 つ載せている。コンピュータで並び方を場合分けし尽くす証明と、第 3 節の短い証明で、ここでは後者を追う。ハットは凧形の格子(ラーヴェス敷き詰め [3.4.6.4])の凧形 8 枚をつないだ形である。

ハットを作る凧形 8 枚。点線は凧形に分ける正六角形で、網をかけた 2 つの向きの凧形だけが 2 枚ずつ使われる。
  1. 長さ 2 の辺を、長さ 1 の辺 2 本と数える。ハットの 14 本の辺は、長さ 1 が 8 本、長さ が 6 本で、それぞれの組でベクトルを足すと 0 になる。

  2. したがって、向きを変えずに長さ 1 の辺を に、 の辺を に替えても、多角形は閉じる。これを Tile(, ) と書く。

長さ 1 の辺だけを順につなぐとコメット Tile(1, 0)、 の辺だけをつなぐとシェブロン Tile(0, ) になる。この 2 つが、次の手順で主役になる。

  1. 周期的なハットの敷き詰め があると仮定する。 のハットはすべて凧形の格子にそろう(論文の補題 A.6)ので、どの線分も長さ 1 の辺だけか、 の辺だけでできている。長さ 1 の辺を 0 に縮めると、シェブロンの周期的な敷き詰め ができ、 の辺を縮めるとコメットの周期的な敷き詰め ができる。

  2. シェブロンは 1 辺 の正三角形 4 枚、コメットは 1 辺 1 の正三角形 8 枚でできている。

  3. 3 つの敷き詰めはタイルが 1 対 1 に対応し、 の平行移動の対称は、 と の平行移動の対称に移る。 の周期を の周期へ移す対応は線形写像 で表せる。周期の平行四辺形に入るタイルの枚数 は同じなので、面積は 倍になる。

  4. 次がいちばん難しい一歩で、 が相似変換(どの向きにも同じ倍率)であることを示す。凧形の向きは 6 通りあり、ハットは 4 つの向きを 1 枚ずつ、残る 2 つの向きを 2 枚ずつ使う。2 枚使う向きの組で、ハットの置き方 12 通りは 3 つの組に分かれる。無限の敷き詰めでは 6 つの向きの凧形が同じ割合で現れるので、3 つの組も同じ割合で現れる。これを使って を帯に分け、3 方向の周期を比べると、 に移した周期どうしも 120° ずつ開くことが分かる。

  5. の頂点は 1 辺 の三角格子に、 の頂点は 1 辺 1 の三角格子に乗る。三角格子の 2 点を結ぶベクトルは、60° 開いた 2 本の基本ベクトルの整数倍の和で、長さの 2 乗は次の形になる。

  6. 手順 6 から、長さの 2 乗は 倍になる。

  7. , の少なくとも一方が奇数なら、 は奇数である(例題 2)。

  8. 両方が偶数なら は 4 で割れ、同じ形の式が残る。これをくり返すと、含まれる因数 2 の個数はいつも偶数になる。

  9. 手順 8 の左辺は 2 の偶数乗と奇数の積、右辺は 2 の奇数乗と奇数の積で、 なら等しくなれない。仮定が誤りで、ハットの敷き詰めは周期的にならない。

手順 6 は帯の中のシェブロンを 3 通りに分けて数える長い議論で、ここでは筋だけを書いた(完全な証明は論文の第 3 節)。効いているのは、面積の比 と、因数 2 の個数の偶奇である。1 辺の長さをそろえると、三角格子のベクトルを格子のベクトルへ移す倍率 の相似は無い、と言い直せる。論文は、この と黄金比が深く関係していそうだと述べている。 なので、長さ 1 と の 2 辺が 120° をはさむ三角形の残りの辺は になる。

論文の第 6 節では、 と が正で等しくない Tile(, ) の敷き詰めが、辺の長さを変えるだけでハットの敷き詰めと 1 対 1 に対応することを示す。だから、これらもすべて非周期的になる。 の Tile(1, 1) は表と裏を同じ数だけ使えば周期的に並び、シェブロンとコメットも周期的に並ぶ。

途中の計算

置き換えの行列から φ² を出す

平面を埋められることは、ハットの塊を大きくしていく置き換えで示す。論文はこの塊を 4 種類に分け、メタタイルと呼んだ。H は 4 枚(うち 1 枚が裏返し)、T は 1 枚、P と F は 2 枚ずつのハットを含む。

4 種類のメタタイル。太線がメタタイルの輪郭、細線が含まれるハットで、斜線は H の中の裏返したハット。

論文には置き換えの行列の表が無いので、カプランが公開しているプログラム hatviz の組み方(論文の図 2.6 と同じ)で、1 回の置き換えでできる超タイルの中身を数えた。H は H 3 枚・T 1 枚・P 3 枚・F 3 枚になる。T は H 1 枚に、P は H 2 枚・P 1 枚・F 2 枚に、F は H 2 枚・P 1 枚・F 3 枚になる。

  1. 各メタタイルの枚数を とし、置き換え後を行列で書く

  2. この行列を とし、 を 2 行目で展開する

  3. 展開した式を整理する

  4. 因数分解する

  5. 4 つの固有値を求める

  6. を 2 乗して比べる

  7. 最大の固有値で、1 回ごとの枚数の増え方が決まる

  8. 枚数は面積に比例するので、長さの倍率は平方根になる

論文も、形を収束させたメタタイルの置き換えは拡大率が で、置き換えの行列の固有値からも同じ値が出ると述べている。行列の 1 行目 は、H・T・P・F に含まれる表のハットの枚数とちょうど同じである。表のハットの数は次の段の H の数に等しく、裏返しのハットは H 1 枚に 1 枚なので、その比も に近づく。

H 1 枚から置き換えをくり返すと、ハットは 4, 25, 169, 1156, 7921 枚と増える。 で、フィボナッチ数を 1 つおきに選んで 2 乗した数が並ぶ(例題 5 で証明する)。

応用

床に敷くなら型は 2 つ

裏返しは 8 枚に 1 枚ほど。 置き換えを重ねた敷き詰めでは、表と裏のハットの比が に近づく。裏返しの割合は である。短い辺を 5 cm にしたハットの面積は cm² で、10 m² の床には約 289 枚が要る。そのうち約 37 枚が裏返し、約 252 枚が表になる(床の端の近くでは割合が少しずれる)。紙や樹脂の板なら裏返して使えばよいが、片面だけに釉薬をかけた陶器のタイルなら、表の型と裏の型の 2 つが要る。

型を 1 つで済ませるならスペクター。 4 人が 2023 年 5 月 28 日に論文を公開した形で、Tile(1, 1) の辺を、真ん中で 180° 回すと重なる S 字の曲線に替えてある。裏返したものとは隣り合えない。スペクターで平面を埋めると、全部のタイルが同じ面を上にした並べ方だけになり、しかもそれは周期的にならない(参考文献 2)。

手で並べてみる。 六角形の方眼紙に凧形 8 枚を写して切り抜けばよい。4 枚(うち 1 枚は裏返し)で H の塊ができ、25 枚あれば置き換え 1 回分の超タイルになる。論文の資料のページには、レーザーカッターや 3D プリンター用の輪郭のファイル集への案内もある。

例題と解説

面積・偶奇・固有値を手で確かめる

例題 1基本凧形の枚数を面積から数える

Tile(, ) の面積は である(論文の第 6 節)。辺が 1 と の凧形 1 枚の面積が であることを確かめてから、次の形が凧形何枚分の面積かを求めよ。

(1) ハット Tile(1, ) (2) 亀 Tile(, 1) (3) Tile(1, )

解説を見る

凧形は、直角をはさむ 2 辺が 1 と の直角三角形 2 枚でできている。

(1) , を代入する。

凧形 8 枚分で、ハットが凧形 8 枚でできていることと合う。

(2) , を代入する。

凧形 10 枚分である。

(3) , を代入する。

凧形 38 枚分になる。論文によれば、奇数 の Tile(1, ) と Tile(, 1) はどれも凧形をつないだ形になる。

例題 2基本三角格子の距離の 2 乗

整数 , の少なくとも一方が奇数なら、 は奇数であることを示せ。

解説を見る

2 で割った余りで場合を分ける。, がともに奇数なら、, , はどれも奇数で、和は奇数になる。一方だけが奇数なら、3 つの項のうち奇数は 1 つだけで、和は奇数になる。

両方が偶数なら は 4 の倍数になる。だから は、4 で割って 2 余る数(2, 6, 10, 14 など)にはならない。

例題 3大学長さを √(2/3) 倍にする相似は無い

整数 , , , が次の式を満たすなら、4 つとも 0 であることを示せ。

解説を見る

0 でない解があるとして、 が最小のものを選ぶ。右辺は偶数なので左辺も偶数で、例題 2 から , はともに偶数である。すると左辺は 4 の倍数になる。

両辺を 2 で割ると で、これは偶数なので、, もともに偶数である。4 つを 2 で割った も元の式を満たし、0 でなく、絶対値の和は半分になる。最小の解を選んだことに反するので、0 でない解は無い。

証明の手順 9〜11 と同じ結論を、無限降下法で示したことになる。

例題 4大学メタタイルの割合

置き換えの行列 (途中の計算の手順 1)の固有値 の固有ベクトルを とおく。

(1) , , を で表せ。

(2) 置き換えを何度もくり返すと、メタタイルの枚数の比はこの固有ベクトルに近づく。 を使って、H がメタタイル全体の になることを示せ。

解説を見る

(1) を行ごとに書く。2 行目から で、 である。3 行目と 4 行目は次のとおり。

1 つ目から で、2 つ目に代入して整理する。

から なので、次のようになる。

数値は , , である。

(2) 4 つの成分を足す。

H の成分は 1 なので、割合は である。 の成分はすべて正なので、ペロン=フロベニウスの定理から、枚数の比は最大の固有値の固有ベクトルに近づく。

例題 5大学ハットの枚数はフィボナッチ数の 2 乗

H 1 枚から 回置き換えたときのハットの枚数を とする。 は 4, 25, 169, 1156 である。

(1) ケーリー=ハミルトンの定理を使って、次の漸化式を示せ。

(2) フィボナッチ数 ()について、 を示せ。

解説を見る

(1) 各メタタイルに含まれるハットの枚数を並べた行ベクトルを 、H だけが 1 の列ベクトルを とすると、 である。ケーリー=ハミルトンの定理から なので、左から 、右から を掛ける。

(2) ビネの公式 ()を 2 乗する。 なので、 が奇数のとき次のようになる。

, , 1 はどれも の解なので、 も (1) と同じ漸化式を満たす。最初の 4 項は , , , で から と一致するので、すべての で である。 は に近づく。

図示

シェブロンからコメットまで

Tile(a, b) の族。左から a : b = 0 : 1 のシェブロン、1 : √3 のハット、1 : 1、√3 : 1 の亀、1 : 0 のコメット。太線のハットと亀は凧形をつないだ形になる。
同じ 25 枚の並びを 3 通りに描いたもの。中央がハット、左は長さ 1 の辺を 0 にしたシェブロン、右は長さ √3 の辺を 0 にしたコメットで、斜線は裏返したハットとそれに当たるタイル。
置き換えを 2 回した H に入るハット 169 枚。太線はメタタイル H・T・P・F の境目で、斜線は裏返したハット 22 枚。

2 枚目は、証明の手順 3 の ・・ にあたる(論文の図 3.1 と同じ作り方)。枚数も隣り合い方も 3 つで同じで、形と大きさだけが違う。3 枚目では、裏返したハットがまばらに散り、どれも表のハット 3 枚に囲まれている。スミスたちが最初に気づいた特徴の 1 つで、論文の図 2.1 にも描かれている。

シミュレーション

θ を回して、段を重ねる

「形の角 θ」で が変わり、30° でハット、60° で亀、45° で Tile(1, 1)、0° でシェブロン、90° でコメットになる。盤の敷き詰めは置き換えで作ったハットの並びの辺の長さだけを変えたもので、θ を動かしても隣り合い方は変わらない。「1 段ふやす」を押すと置き換えが 1 回進み、169 枚から 1156 枚へ広がって、下の欄の「表 ÷ 裏」が に近づく(1156 枚の次は 4 枚に戻る)。「くり返し」に切り替えて θ を 0° か 90° にすると、シェブロンとコメットだけは 2 本の矢印の平行移動でくり返し並ぶ。

広がる学問

結晶・計算・模様へ

  • 数学 論文の結びは、ヒーシュ数や置き方の種類の数に上限が無いか、多角形 1 枚で平面を埋められるかを判定する手順があるかを、未解決の問いに挙げる。辺の数が最少の非周期的なモノタイルは 5 角形から 13 角形のどれかで、この幅を狭めることも課題とした。
  • 化学 スウェーデン王立科学アカデミーの発表は、アルハンブラ宮殿などの中世イスラームの非周期的なモザイクが、準結晶の原子の並びを理解する手がかりになったと説明している。ハットの並びも 6 回対称の準周期構造をもつ(次の章)。
  • 物理学 原子の並びが周期的かどうかは、X 線や電子線の回折像で調べる。周期的な結晶の回転対称は 2・3・4・6 回に限られる。ハットの敷き詰めは 6 回対称なのに周期的でないので、回折像を計算して確かめる研究が進んだ。
  • 情報科学 バーガーの証明から、タイルの組で平面を埋められるかは、一般にはコンピュータでも判定できないと分かった。ハットの論文の場合分けは、2 人の著者がそれぞれ独立に作ったプログラムで確かめ、Python で作り直した検証用のプログラムも公開された。
  • 美術 カプランは数学の考えで装飾の模様を生み出すツールを研究し、数学と美術の国際会議 Bridges を運営する団体の会長を務める。論文の資料のページは、ハットの模様の画像と、形が Tile(, ) の族の中を連続に変わる動画を CC BY 4.0 で公開している。
いまの研究と事業

公開から 3 年の研究

  • 2023 年 ジョシュア・ソコラー(デューク大学): ハットの敷き詰めの頂点に同じ質量を置き、そのときの回折像を解析的に計算して、並びが 6 回対称の準周期構造だと示した。メタタイルを手直しした「キー・タイル」は、6 次元の格子点を平面へ射影して作れる。Tile(, ) の比を変えても、準周期を決める無理数の比は黄金比 のまま動かない。Physical Review B 108 (2023) 224109(参考文献 7)。
  • 2023〜2025 年 ミヒャエル・バーケ、フランツ・ゲーラー(ビーレフェルト大学)、ロレンツォ・サドゥン(テキサス大学オースティン校): ハットの敷き詰めの形には 4 次元の自由度がある。その族のどの一員も、力学系として同じ(位相共役)になることを示した。Tile(, ) の比は、その変え方の 1 つにあたる。辺の変位は、置き換えのたびに漸近的に 倍に伸びる。自己相似な一員「CAP 敷き詰め」は、2 次元の内部空間をもつカット・アンド・プロジェクト法で作れ、スペクトルは純点的になる。Israel Journal of Mathematics 270 (2025) 449-485(参考文献 7)。
  • 2023〜2025 年 秋山茂樹(筑波大学)・荒木義明(日本テセレーションデザイン協会): 亀 Tile(, 1) について、メタタイルを使わない別証明を与えた。正三角形と平行四辺形の「Golden Hex」の置き換えに、傾き のスターム語の帯を組み合わせて敷き詰めを作り、「Golden Ammann bar」という線で非周期性を示す。Discrete & Computational Geometry 74 (2025) 771-792 に載った(参考文献 7)。
  • 2023〜2024 年 グレース・X・グー(カリフォルニア大学バークレー校)ら: ハット Tile(1, ) の並びで、2 種類の樹脂の複合材料を 3D プリンターで作った。き裂の進み方は、実験とフェーズフィールド法の計算で調べた。2023 年 9 月に arXiv で公開した版では、硬い樹脂を体積の 80% にした試験片で、ハニカム構造より剛性が 103%、強度が 34.5%、靱性が 15.9% 高かったと報告している。論文は 2024 年に Materials Today 誌に載った(参考文献 7)。

参考文献

  1. D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss, "An aperiodic monotile", Combinatorial Theory 4(1) (2024), #6(arXiv:2303.10798、2023 年 3 月 20 日公開、2023 年 12 月 29 日受理)
  2. D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss, "A chiral aperiodic monotile", Combinatorial Theory 4(2) (2024), #13(arXiv:2305.17743、2023 年 5 月 28 日公開)
  3. J. Petrik, "A trick of the hat", Waterloo News, University of Waterloo(2023 年 4 月 13 日); D. Smith, "It's a shape Jim, but not as we know it", hedraweb(2023 年 3 月 23 日)
  4. C. S. Kaplan, "An aperiodic monotile"(論文の資料のページ cs.uwaterloo.ca/~csk/hat/); C. S. Kaplan, hatviz(github.com/isohedral/hatviz、BSD 3-Clause License、Copyright (c) 2023, Craig S. Kaplan)。シミュレーションの置き換えの組み方は Craig S. Kaplan の hatviz(BSD 3-Clause License)による ライセンスの全文はFormula β についてに載せている。
  5. H. Wang, "Proving theorems by pattern recognition II", Bell System Tech. J. 40 (1961), 1-41; R. Berger, The undecidability of the domino problem, Mem. AMS 66 (1966); R. M. Robinson, Invent. Math. 12 (1971), 177-209; R. Penrose, "Pentaplexity", Eureka 39 (1978), 16-22
  6. The Royal Swedish Academy of Sciences, "The Nobel Prize in Chemistry 2011" プレスリリース(2011 年 10 月 5 日)
  7. J. E. S. Socolar, "Quasicrystalline structure of the hat monotile tilings", Phys. Rev. B 108 (2023), 224109(arXiv:2305.01174); M. Baake, F. Gähler, L. Sadun, "Dynamics and topology of the Hat family of tilings", Israel J. Math. 270 (2025), 449-485(arXiv:2305.05639); S. Akiyama, Y. Araki, "An alternative proof for an aperiodic monotile", Discrete Comput. Geom. 74 (2025), 771-792(arXiv:2307.12322); J. Jung, A. Chen, G. X. Gu, "Aperiodicity is all you need: Aperiodic monotiles for high-performance composites", Materials Today 73 (2024), 1-8(arXiv:2309.05819)

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