ソファ問題

Moving sofa problem

未解決とは知らずに、ガーヴァーは 20 年この問題を考えた。

幅 1 の廊下の直角の角を、平らなまま曲がれる図形の面積の最大値。答えはガーヴァーの形の約 2.2195 で、2024 年にペクが証明を公表した。

年代
1966〜2024年
習う
大2・解析・変分法
レベル
大学(例題 5 問)
逸話

廊下を抜けて家具を運ぶ

1.413 倍。幅 1 m の廊下の直角の角を、床に平らに置いたまま曲がれる板は、形をどう工夫しても、面積が半径 1 m の半円の板のこの倍を超えない。2024 年に公表された証明の結論で、証明はまだ学術誌に載っていない。半円の板は、まっすぐな辺を壁に沿わせて角まで進め、円の中心を内側の角に合わせて 90° 回せば、もう一方の廊下へ移れる。面積は円の面積の半分の m² である。1 辺 1 m の正方形の板なら滑らせるだけで抜けられるが、面積は 1 m² にとどまる。半円より 41% 広い形を見つけ、それより広い形が無いと示すまでに、58 年かかった。

1966 年、カナダのアルバータ大学の数学者レオ・モーザーは、アメリカの産業応用数学会(SIAM)の学術誌『SIAM Review』の問題の欄に、問題 66-11「廊下を抜けて家具を運ぶ」を出した。幅 1 の廊下の直角の角を曲がれる平面の図形のうち、面積が最大のものを求めよ。のちに「ソファ問題」と呼ばれる問いである。

レオ・モーザーの肖像(画像生成 AI で描いたイメージ)
レオ・モーザー1921–1970廊下の角を曲がるソファの問題を 1966 年に出した画像生成 AI で描いたイメージ

数学史の資料集 MacTutor(セント・アンドルーズ大学)によると、モーザーは整数論や組合せ論の問題を好み、だれでも問題を書き込める問題帳を学科に置いていた。生涯、心臓の病気に苦しみ、1970 年に 48 歳で亡くなった。ペクの証明が出る 54 年前である。

問いはやさしいのに答えにくく、多くの数学者を引きつけた。1991 年に出たクロフト、ファルコナー、ガイの『Unsolved Problems in Geometry』(幾何学の未解決問題)は、裏表紙に挙げた 3 つの未解決問題の最初にこの問題を置いた。のちに数学者ダン・ロミックは、2016 年の論文の冒頭に、階段に挟まったソファが出てくるダグラス・アダムズの小説の一節を引いている。

起源

電話機の形から 18 本の曲線へ

最初の大きな前進は、2 年後の 1968 年である。オックスフォード大学の統計学者ジョン・ハマースリーは、半径 1 の四分円 2 つの間に縦 1・横 の長方形をはさみ、長方形の下の辺から半径 の半円を切り抜いた形を示した。面積は で、半円の 1.4 倍になる。科学誌 Quanta は、古い電話機に似た形と紹介している。同じ論文でハマースリーは、どんな形も面積が を超えないことも示した。

ジョン・ハマースリーの肖像(Hammersley-at-home (cropped))
ジョン・ハマースリー1920–2004電話機の形のソファと、面積の上限 2√2 を示した出典: Wikimedia Commons・Geoffrey Grimmett・CC BY-SA 4.0

論文の題は「学校と大学での『現代数学』とそれに似たやわな知的がらくたによる、数学の技能の衰えについて」である。ハマースリーは自分の形が最大だと予想したが、のちにわずかに広い形が見つかり、予想は外れた(1977 年のガイの記事)。1973 年には、キヨシ・マルヤマが計算機で多角形の近似の形を求める方法を発表した。

ジョセフ・ガーヴァーがこの問題を知ったのは、カリフォルニア大学バークレー校の大学院生のころである。Quanta の取材(2025 年)によると、ほかの大学院生から、未解決だとは告げられないまま「解いてみろ」と出された。数日考えて降参し、答えを尋ねると、相手は「考え続ければ分かる」と言って教えなかった。ガーヴァーはそれから 20 年、ときどきこの問題に戻った。1990 年、数学者ジョン・コンウェイに話して、初めて未解決だと知った。

1970 年ごろの大学のキャンパスで、若い 2 人の男性が後ろ姿で話し、一人が両手で長い家具の形をなぞる。遠くに時計塔が見える(画像生成 AI で描いたイメージ)
大学院生のころ、ほかの院生からソファ問題を出されたガーヴァー(本人の回想による)画像生成 AI で描いたイメージ

1992 年、ラトガース大学カムデン校のガーヴァーは、学術誌 Geometriae Dedicata に論文「角を曲がるソファの動かし方について」を発表した。面積が最大の形があることを示し、その形が満たすべき「つり合い」の条件を導いた。形を有限個の角度の廊下の共通部分(多角形)で近似すると、最大の形では、間隔 1 の平行な 2 本の壁について、それぞれの上にある辺の長さの合計が等しい。この条件から組み立てた形の境界は、3 本の線分と 15 本の曲線の 18 本からなり、面積は 2.2195… で、ハマースリーの形より 0.0121 広い。ガーヴァーは、これが面積が最大のただ 1 つの形だと予想した。ベル研究所の技術者ベン・ローガンも 1976 年に同じ形を見つけていたが、発表はしなかった。

ジョセフ・ガーヴァー20 世紀後半から活躍18 本の部分からなるソファの形を 1992 年に示した

2016 年、カリフォルニア大学デービス校のダン・ロミックは、つり合いの条件を、内側の角が描く通り道の 6 つの微分方程式に書き直した。ガーヴァーの形は、未知数 22 個の連立方程式のただ 1 つの解として求まる。同じ方法で右にも左にも曲がれる形の候補も作り、その面積を 3 次方程式の解と逆正接で書いた。値は 1.64495… である。論文は 2018 年に Experimental Mathematics に載った。

2017 年には、ロミックとサンタフェ研究所のヨアヴ・カルスが、計算機を使う証明で、上限を 2.37 まで下げた。論文は 2018 年に Advances in Mathematics に載った。有理数の厳密な計算で、CPU のコア 1 つを 480 時間動かした。最大の形が角を曲がる間に回る角度は 以上だ、という結果も同じ論文にある。下限 2.2195 と上限 2.37 の差は、ここで止まった。

ペク・ジンオンは、2016 年にアメリカのミシガン大学の大学院に入った直後、韓国の兵役のために 4 年間休学した。Quanta によると、その間にブログの記事でソファ問題を知った。はじめは軍務の合間の息抜きだったが、2021 年に大学院へ戻ると、この問題に専念すると決めた。指導を引き受けたのは、代数が専門のマイケル・ジーヴである。

雪の積もったキャンパスが見える窓辺の机で、若い男性がノートパソコンに向かう後ろ姿(画像生成 AI で描いたイメージ)
2021 年、兵役を終えてミシガン大学に戻り、ソファ問題に専念すると決めたペク(Quanta の記事による)画像生成 AI で描いたイメージ

博士課程では、上限を計算機でさらに下げるプログラムを作った。2024 年に博士課程を終えると、数か月のうちに計算機に頼らない道筋に気づいた。2024 年 11 月 29 日、延世大学(ソウル)の博士研究員だったペクは、119 ページの論文「ガーヴァーのソファの最適性」を arXiv に公開した。論文によれば、計算機を使うのは関数電卓でできる数値の計算だけである。

ペク・ジンオン21 世紀に活躍ガーヴァーの形が最大であることを示す 119 ページの証明を公表した

2026 年 10 月の時点で、arXiv の原稿は第 1 版のままで、学術誌に掲載されたという記載は無い。2025 年 2 月の Quanta は査読中と伝え、2026 年 1 月には韓国の英字紙 Korea Herald が、Annals of Mathematics で査読中と報じた。

証明

2.2074 と 2√2 ではさむ

完全な証明は 119 ページある。ここでは、形を「回る廊下の共通部分」として表し、ハマースリーの形が角を曲がれること(下限)と、面積が を超えないこと(上限)を示す。最後にペクの証明の骨組みを追う。

廊下を とする。内側の角が原点、外側の角が である。原点のまわりに角度 だけ左回りに回す変換を 、2 つの単位ベクトルを 、 と書く。 は横の帯である。

  1. ソファの側から見ると、廊下が回りながら動く。回った角度が のときの廊下は、内側の角の位置 を使って と書ける。回る角度の合計を とすると、ソファはどの瞬間の廊下にも入るので、共通部分に含まれる(ガーヴァーの考え)。

  2. ハマースリーの形では、内側の角を、中心 ・半径 の半円の上で動かす。

  3. 内側の 2 枚の壁は、 から と の向きにのびる。倍角の公式で計算すると、2 枚はいつも半円の両端 と を通る。内側の角が削るのは、半円の中の直角三角形だけである(直径の上に立つ円周角は直角)。

  4. 外側の 2 枚の壁の条件は と である。、 を入れると、中心が と で半径 1 の四分円の接線の条件になる。

  5. 残る形は、四分円 2 つと の長方形を合わせ、半径 の半円を除いたものになる。面積を で最大にすると(途中の計算の章)、ハマースリーの形が出る。

  6. 次は上限である。ソファは最初 に入り、最後は縦の帯を だけ回した幅 1 の帯 に入る。2 本の帯の重なりは平行四辺形で、横に切ると、どの高さでも長さ の線分になる。

横の帯と、β だけ傾いた帯の重なり。β = 60° のとき、底辺 2・高さ 1 の平行四辺形になる。
  1. なら である。 なら、45° 回った瞬間の廊下 を考える。廊下の 2 本の腕をそれぞれ幅 1 の帯までのばすと、 との重なりは 2 つの平行四辺形で、面積は と である。ソファはこの 2 つを合わせた中に入る。

  1. 角度を 1 つでなく と増やし、それぞれの瞬間の廊下の位置 を動かして、重なりの面積の最大を調べる。回る角度の合計が 以上のソファはこの重なりに入る。カルスとロミックは、この有限次元の問題の最大値を計算機で厳密に上から押さえ、上限 2.37 を得た。

ペクの証明は、ここから先を計算機なしで進める。

  1. 面積が最大の形は、その形に接して支える廊下の共通部分に置き換えてよい(面積は減らない)。置き換えた形は、凸な図形 から、内側の角が削るくぼみ を除いたものになる。

  2. 最大の形について、ガーヴァーのつり合いの条件を、形がつながっていることまで含めて証明し直す。これと初等幾何から、最大の形はちょうど 90° 回る。さらに新しい微分不等式から、ソファの側から見た内側の角の通り道は自分自身と交わらない。

  3. を、ガーヴァーの形に似た少し大きい領域で包み、その面積を とする。 は凸な図形の組 の関数で、ガーヴァーの形 では面積に一致する。

  4. 2 つの凸な図形を割合 でミンコフスキー和として混ぜると、面積は の 2 次式になる( は混合面積)。この性質とマミコンの定理から、 は上に凸な 2 次の関数になる。

  5. ロミックの微分方程式を使うと、 から少し動かしたときの の方向微分は、どの向きでも 0 以下になる。一方、 は上に凸なので、次の不等式が成り立つ。 なら、 から へ向かう方向微分は 以上になり、矛盾する。

  6. よって で、どの形の面積もガーヴァーの形の面積を超えない。

途中の計算

穴の半径を微分で決める

ハマースリーの形の面積を、穴の半径 ()の関数として書き、いちばん大きくなる を求める。

  1. 半径 1 の四分円 2 つの面積を足す

  2. 間にはさむ長方形の面積を足す

  3. 半径 の半円の穴を引く

ハマースリーの形の組み立て。両側は半径 1 の四分円、間は幅 2r の長方形で、下から半円を抜く。穴のふちの点から両端へ引いた 2 本は直角に交わり、内側の角の 2 枚の壁にあたる。
  1. で微分する

  2. を解く

  3. 2 回微分して上に凸を確かめる

  4. を代入する

  5. 第 3 項を約分する

  6. まとめる

は半円(面積 )、 は面積 2 である。穴を大きくすると間の長方形が伸びて面積が増えるが、穴の面積は に比例して増え、 を境に損が上回る。ガーヴァーの形は、穴を半円にせず、内側の角の通り道に合わせて曲げて、さらに 0.0121 広げた。

応用

幅 90 cm の廊下で測る

縮尺を戻す。 廊下の幅を にすると、形の長さはすべて 倍、面積は 倍になる。幅 90 cm の廊下なら、ガーヴァーの形は m²、ハマースリーの形は 1.79 m²、半円は 1.27 m² である。ハマースリーの形の長さは m になる。2 つの形の差は m²、およそ 98 cm² で、10 cm 四方の紙 1 枚ほどしかない。58 年かけて確かめたのは、ガーヴァーの形より広い形が 1 つも無いことだった。

長い棒を水平に運ぶ。 太さの無い棒なら、45° に傾けた瞬間がいちばん苦しい。棒が内側の角に触れ、両端が外側の 2 枚の壁に届くとき、長さは で、 で最小の になる。幅 90 cm の廊下なら、2.55 m までの棒を床と平行のまま運べる。幅 90 cm と 1.2 m の廊下の角なら m である(例題 3)。

平らなままという条件。 引っ越しの業者ならソファを立てて済ませるだろう、と Quanta の記事も断っている。数学のソファ問題は、床に平らに置いた形だけを扱う。立体の廊下で回したりねじったりする変種は、いまも計算が続いている(いまの研究の章の 2025 年の項目)。

例題と解説

棒と板を角に通す

例題 1基本ハマースリーの形の面積

(1) 半径 1 の四分円 2 つの面積の和を求めよ。

(2) 縦 1・横 の長方形から、横の辺の中点を中心とする半径 の半円を除いた面積を求めよ。

(3) (1) と (2) を合わせた形の面積を小数第 4 位まで求め、半径 1 の半円の面積の何倍かを小数第 2 位まで答えよ。

解説を見る

(1) 四分円 1 つの面積は円の 4 分の 1 である。

(2) 長方形の面積から半円の面積を引く。

(3) 2 つを足す。

半円の面積 で割ると で、約 1.41 倍である。

例題 2入試角を曲がる棒

幅 1 の 2 本の廊下が直角に交わっている。床と平行に保ったまま角を曲がれる棒(太さは考えない)の長さの最大値を求めよ。

解説を見る

棒が横の廊下の向きと角 ()をなすとき、内側の角を通って外側の 2 枚の壁の間に収まる線分の長さは次のとおりである。

棒が角を曲がりきるには、途中のどの でも、棒の長さが 以下でなければならない。逆に、長さが の最小値以下なら、内側の角に沿わせて回しながら通せる。 を微分する。

は で負、 で正なので、 で最小になる。

長さの最大値は である。証明の手順 7 の上限 と同じ関数が出てくる。

例題 3難関幅の違う 2 本の廊下

幅 1 の横の廊下と、幅 8 の縦の廊下が直角に交わっている。床と平行に保ったまま角を曲がれる棒の長さの最大値を求めよ。

解説を見る

棒が横の廊下の向きと角 をなすとき、内側の角を通る線分の長さは次のとおりである。

微分して 0 とおく。

分母をはらって整理する。

の分子 は、 で負、 で正なので、ここで最小になる。このとき 、 である。

一般に、幅 と の廊下では になる。、 を入れると で一致する。

例題 4大学回り足りない形の面積

ソファが角を曲がる間に回る角度の合計を ()とする。

(1) ソファの面積は 以下であることを示せ。

(2) (1) を使って、面積がハマースリーの形の 以上のソファが少なくとも何度回るかを、小数第 1 位まで求めよ。

解説を見る

(1) 最初の位置で、ソファは横の帯 に入る。最後の位置では、縦の帯を 回した帯に入る。ソファの向きを最初の位置にそろえて見ると、この帯は、平行移動して と書ける。高さ を決めると、 の範囲は次の区間になる。

区間の長さは で、 によらない。 で積分すると、2 本の帯の重なりの面積は である。ソファはこの重なりに入るので、面積は 以下である。

(2) 次の不等式を解く。

少なくとも約 63.1° 回る。ガーヴァーの形の 2.2195 で同じ計算をすると 63.2° になり、カルスとロミックの論文の角度 にあたる。

例題 5大学左右どちらにも曲がれる形

ロミックが示した、右にも左にも曲がれる形の候補の面積は である。 は の実数解、 は の実数解である。

(1) とおいて、 を双曲線関数で表せ。

(2) とおいて、 を表せ。

(3) 面積を小数第 4 位まで求めよ。

解説を見る

(1) を代入して展開する。

とおくと、 から、左辺は になる。

(2) なので、 は になる。

(3) を足す。

面積は約 1.6450 である。、 なので、 も も の 3 乗根で書ける。3 次方程式の解き方はカルダノの公式の記事にある。

図示

半円・電話機・ガーヴァーの形

同じ縮尺で並べた半円・ハマースリーの形・ガーヴァーの形。いちばん下の破線は、ガーヴァーの形に重ねたハマースリーの形である。

ガーヴァーの形は、ハマースリーの形より全体が 0.046 短い。そのかわり、上の平らな辺が 1.27 から 1.61 に伸びて肩が張り出し、穴も広く、少し高い。差し引きで 0.0121 広くなる。

ソファの側から見たガーヴァーの形と、0°・22.5°・45°・67.5°・90° の廊下の壁。丸い点は内側の角の位置で、破線がその通り道。太い線の 45° の廊下は、上限 2√2 の計算に使う瞬間である。

内側の角の通り道は、穴のふちとほぼ重なる。カルスとロミックの上限は、この図のように角度を有限個に絞った廊下の重なりから求めた。

シミュレーション

角度を進めて削る

「板から」では、ソファの側から見る。回転 を進めると廊下が回り、壁(斜線)にかかった部分が削れて、破線の長方形の板が細い破線の形に近づく。「形」を切り替えると内側の角(丸い点)の通り道が変わり、下の欄にガーヴァーの形との差 0.0121 や 0.6487 が出る。「廊下から」にすると、削り終えた形が実際に角を曲がる。

広がる学問

凸図形・変分法・計算機の証明

  • 数学 最大の形を探す等周不等式と並べると、違いが分かる。等周問題の答えは円で、1838 年のシュタイナーの議論は「最大の形がある」と仮定していた点が穴だった。ソファ問題では、最大の形があることはガーヴァーの論文で証明されたが、答えの面積には や平方根を使った閉じた式が知られていない。ペクの証明は、凸図形の面積を 2 次式で扱うブルン・ミンコフスキーの理論と、最速降下曲線に始まる変分法の考え方(局所的な最適性の条件を微分方程式にする)を組み合わせている。
  • 情報科学 カルスとロミックの上限 2.37 は、分枝限定法で廊下の位置の範囲を絞り込む計算機の証明である。家具やロボットを障害物の間で動かす経路を求める問題は「ピアノ運搬問題」と呼ばれる。1983 年のシュワルツとシャリールの論文は、平面の多角形を多角形の障害物の間で動かす場合を、位置と向き の配置空間で調べた。ソファ問題は、この空間で角を抜ける道がある形のうち、面積が最大のものを問う。
  • 工学 ホブやラック形の刃物で歯車を削る創成歯切りでは、刃物と歯車をかみ合うように動かし、刃物の刃形がつくる曲線の族の包絡線が歯形になる。ソファの外形も、回る廊下の壁がつくる直線の族の包絡線で、ロミックは接点の位置を通り道 とその微分で表した。
いまの研究と事業

曲がり角を計算する研究

  • 2022 年 ミハウ・バッチュ(ポーランド、ジェシュフ工科大学 機械・航空工学部): 包絡線が存在するための条件 、 を離散化して解き、ソファの形と面積を求める数値計算の方法を発表した。面積の計算精度は と報告している(Symmetry 14 (2022) 1409)。
  • 2024 年 クアンダイ・レンら(イギリス、ラザフォード・アップルトン研究所): 回転の角度と内側の角の通り道をニューラルネットワークで表し、共通部分 の面積を微分できる形で計算して最大にした。初期値を変えた 6000 回を超える学習の 9 割以上が、ガーヴァーの形に収束した。カルスとロミックの上限は、角度を 2100 個に増やすとガーヴァーの面積との差が 0.01% 以内になり、5 つの角度では 2.37 から 2.3337 に下がる見込みである。どれも数値計算の結果で、厳密な証明ではない(arXiv:2407.11106、Symmetry 16 (2024) 1388)。
  • 2025 年 ゲオルギエフ、ゴメス=セラーノ、タオ、ワグナー(Google DeepMind ほか): AlphaEvolve を 67 の問題で試し、その 1 つにソファ問題を入れた。AlphaEvolve は大規模言語モデルでプログラムを書き換えながら探索する仕組みで、ここでは経路を提案し、廊下からはみ出す点を削って残る形 の面積で評価する。平面ではガーヴァーの形を 0.02%、ロミックの形を 1.5% の差まで再現し、2 回曲がる立体の廊下では体積が少なくとも 1.81(厳密な下限)の形を見つけた。それまでの 2 つの候補(推定 1.7391 と 1.7699)を上回る(arXiv:2511.02864)。

参考文献

  1. L. Moser, "Moving Furniture Through a Hallway" (Problem 66-11), SIAM Review 8 (1966), 381; J. M. Hammersley, "On the enfeeblement of mathematical skills by 'Modern Mathematics' and by similar soft intellectual trash in schools and universities", Bull. Inst. Math. Appl. 4 (1968), 66-85.
  2. J. L. Gerver, "On moving a sofa around a corner", Geometriae Dedicata 42 (1992), 267-283.
  3. D. Romik, "Differential equations and exact solutions in the moving sofa problem", Experimental Mathematics 27 (2018), 316-330(arXiv:1606.08111)
  4. Y. Kallus, D. Romik, "Improved upper bounds in the moving sofa problem", Advances in Mathematics 340 (2018), 960-982(arXiv:1706.06630)
  5. J. Baek, "Optimality of Gerver's Sofa", arXiv:2411.19826(2024 年 11 月 29 日公開・119 ページ。2026 年 10 月の時点で第 1 版のまま・学術誌は未掲載)
  6. R. Green, "The Largest Sofa You Can Move Around a Corner", Quanta Magazine(2025 年 2 月 14 日); H.-N. Park, "Six-decade math puzzle solved by Korean mathematician", The Korea Herald(2026 年 1 月 4 日); MacTutor History of Mathematics, "Leo Moser" と "John Hammersley"; H. T. Croft, K. J. Falconer, R. K. Guy, Unsolved Problems in Geometry, Springer (1991), 171-172.
  7. R. K. Guy, "Monthly research problems, 1969-77", Amer. Math. Monthly 84 (1977), 807-815; K. Maruyama, "An approximation method for solving the sofa problem", Int. J. Comput. Inf. Sci. 2 (1973), 29-48; J. T. Schwartz, M. Sharir, "On the 'piano movers' problem I", Comm. Pure Appl. Math. 36 (1983), 345-398.

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