運動量と力積

Impulse and momentum

床なら割れる卵が、クッションなら割れない。

物の運動量(質量×速度)の変化は、受けた力と時間の積、つまり力積に等しい。力が変わるときは、力と時間のグラフの面積が力積になる。

年代
1687年(ニュートン『プリンキピア』)
習う
高2・物理・様々な運動
レベル
基本(例題 4 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

一度に押しても、少しずつ押しても

卵を床に落とすと割れるのに、厚いクッションの上なら、なぜ割れずに済むのだろうか。どちらに落ちても卵は同じ速さから止まるが、止まるまでにかかる時間が違う。

物の勢いを、アイザック・ニュートンは1687年の『プリンキピア』で「運動の量」と呼び、速さと物質の量を合わせて測ると定めた。第2法則の説明には、力が生む運動の変化は、力を一度に加えても、少しずつ続けて加えても同じだと書いている。少しずつ加えても同じになるのは、力と時間を掛けて積み上げた量で変化が決まるからで、今の言葉では運動量と力積の関係にあたる。

途中の計算

力を時間で積み上げる

この計算の道すじ。 記号と単位を読み、運動方程式の両辺にを掛けて公式を導く(手順1〜5)。壁で跳ね返るボールで向きの符号を確かめ(手順6〜8)、力が変わるときはグラフの面積で数える(手順9、10)。最後に、ぶつかる2台の台車で運動量の和が変わらないことを導く(手順11〜14)。

記号を読む

速度vで進む質量mのボールが、力Fを時間Δtのあいだ受けて、速度v′になる。mvが運動量でkg·m/s、FΔtが力積でN·s、1 N·s = 1 kg·m/sである。

は物の質量(kg)、は力を受ける前の速度、は受けたあとの速度(m/s)である。文字の上の矢印は、速さだけでなく向きももつ量の印だ。は物にはたらく力(N)、(デルタ・ティー)は力がはたらいた時間(s)を表す。

質量と速度の積を運動量という。止めにくさの目安で、単位はkg·m/sになる。質量0.15 kgの野球のボールが40 m/sで飛ぶと運動量は kg·m/sで、体重60 kgの人なら、ゆっくり歩くより遅い0.10 m/sで同じ運動量になる。

右辺のは力と時間の積で、力積と呼ぶ。単位はN·sである。1 Nは質量1 kgの物に1 m/s²の加速度を生む力で、1 kg·m/s²と同じなので、1 N·sは1 kg·m/sに等しく、両辺の単位がそろう。

運動方程式から導く

質量2.0 kgの台車が1.0 m/sで進んでいるところを、進む向きに3.0 Nで4.0秒引き続ける。出発点は、力が一定のときの運動方程式だ。速度は、引く向きを+とする。

  1. 運動方程式を書く

  2. 力が一定なら加速度も一定で、速度の変化を時間で割った値になる

  3. 手順1のに手順2を入れる

  4. 両辺にを掛ける

  5. かっこを外す

質量2.0 kgの台車を3.0 Nで4.0秒引くと、速さは1.0 m/sから7.0 m/sになる。運動量は2.0から14 kg·m/sへ12増え、力積3.0 × 4.0 = 12 N·sと等しい。

台車の加速度は m/s²で、4.0秒後の速さは m/sになる。運動量はから kg·m/sへ、12増えた。力積も N·sで、ちょうど同じになる。

左辺は「あとの運動量 − 前の運動量」で、運動量の変化を表す。つまり、運動量の変化は受けた力積に等しい。

跳ね返りは向きで引く

運動量は向きをもつので、向きをそろえてから引く。質量0.20 kgのボールが、右向きに5.0 m/sで壁に当たり、左向きに4.0 m/sで跳ね返る。右向きを+にとると、跳ね返ったあとの速度は−4.0 m/sである。

  1. 前の運動量を出す(単位はkg·m/s)

  2. あとの速度は負の数で入れる

  3. あとから前を引く

右向きを+として、右へ5.0 m/sで壁に当たったボールが左へ4.0 m/sで跳ね返る。運動量は+1.0から−0.80 kg·m/sへ変わり、変化は−1.8 kg·m/sで、ボールは壁から左向きの力積を受けた。

ボールが壁から受けた力積は−1.8 N·s、つまり左向きに1.8 N·sである。速さの差だけを見てとしてしまうと、9分の1の値になる。止めるだけなら1.0で済むのに、跳ね返すには、さらに逆向きの0.80を与えなければならないからだ。

変わる力はグラフの面積

ただ、ボールが壁に当たっている間の力は一定ではなく、0から大きくなって、また0に戻る。一定の力を時間だけかけたときの力積は、横に時間、縦に力をとったグラフの長方形の面積にあたる。力が変わるときは、時間を細かく区切り、細い帯の面積を足せばよい。

壁に当たるボールが受ける左向きの力の大きさを、時間を横にとって描く。0.010秒の間に0から360 Nまで上がって0に戻る山を、幅0.002秒の帯5本に分けると、面積の和は1.8 N·sで、平均の力180 Nの長方形と同じ面積になる。
  1. 帯の面積を全部足すと力積になる

  2. 力積をかかった時間で割ると、平均の力が出る

とは1本目の帯の高さと幅で、の上の横線は「平均」の印である。図の山は作った形で、帯の高さは34、236、360、236、34 Nだ。面積の和は N·sで、壁が与えた力積の大きさと合う。

平均の力は Nで、ボールにはたらく重力 Nの約90倍になる。

短く強く、長く弱く

同じ運動量の変化でも、かかる時間が長ければ、平均の力は小さくて済む。作った数の例で、質量60 gの卵が5.0 m/sで落ちてきて止まる場面を比べる。床なら0.0020秒、厚いクッションなら0.050秒で止まるとする。

床で止まるときの平均の力は、手順10に数を入れて求める。

クッションなら、分母の時間が0.050秒になる。

運動量の変化はどちらも0.30 kg·m/sで、力積も同じ0.30 N·sだ。だから、止まるまでの時間が25倍になると、平均の力は25分の1になる。卵にはたらく重力は Nなので、床では重力の250倍ほどの力がかかる。

止まっていた5.0 kgの台車を、力で時間だけ押す。上は力と時間のグラフで斜線の面積が力積、下は台車の速さで、破線は20 Nで0.5秒押したときを示す。50 Nで0.2秒押しても、10 Nで1.0秒押しても、面積は同じ10 N·sで、速さは同じ2.0 m/sになる。

ぶつかる2台の台車

では、2つの物体がぶつかり合うと、運動量はどうなるのだろうか。作用・反作用の法則により、互いに及ぼし合う力は同じ大きさで逆向きになる。押し合っている時間も同じなので、2つが受ける力積も、同じ大きさで逆向きだ。

台車Bが前を行く台車Aに後ろから追いつき、ぶつかって1つにつながる場面で確かめる。

  1. Aが受ける力積をとする

  2. Bは同じ大きさで逆向きの力積を受ける

  3. 2つの式を足すと、右辺が打ち消し合って0になる

  4. 前の運動量を右辺へ移す

3.0 kgの台車Aが2.0 m/s、後ろの1.0 kgの台車Bが10 m/sで同じ向きに進み、ぶつかってつながると、どちらも4.0 m/sになる。運動量の和は6.0 + 10 = 16から4.0 × 4.0 = 16で変わらず、Aは+6.0 N·s、Bは−6.0 N·sの力積を受けた。

Aは質量3.0 kgで速さ2.0 m/s、Bは1.0 kgで10 m/sとし、ぶつかったあとの共通の速さをとおく。手順14はになり、両辺を4.0で割って m/sと出る。Aの運動量は6.0から12へ+6.0、Bは10から4.0へ−6.0変わり、力積は確かに同じ大きさで逆向きだ。

ニュートンも『プリンキピア』の系3で、同じ数の組を例にしている。物質の量がBの3倍の球Aが速さ2で進み、後ろから球Bが速さ10で追うとき、運動の量は6と10で、ぶつかったあとも和は16のままだとした。外から力積を受けなければ、ぶつかり合う物の運動量の和は変わらない。

これが運動量保存の法則である。燃料を噴き出して進むロケットの速さを決めるツィオルコフスキーの公式も、この保存から出てくる。

応用

エアバッグがのばす0.09秒

車がぶつかると、乗っている人の頭も、それまでの速さから止まる。作った数の例で、質量5.0 kgの頭が10 m/s(時速36 km)から止まるとする。運動量の変化は kg·m/sで、どう止まっても同じである。

質量5.0 kgの頭が10 m/sから止まる。かたい面で0.010秒で止まると平均の力は5,000 N、エアバッグに沈みながら0.10秒で止まると500 Nで、力積はどちらも50 N·sである。

かたい面で0.010秒で止まるとき、平均の力は次のとおり。

エアバッグで0.10秒かけて止まるときは、分母が10倍になる。

止まるまでの時間を0.010秒から0.10秒へ、0.09秒のばすだけで、平均の力は10分の1になる。つまり、エアバッグは運動量の変化を減らすのではなく、変化にかける時間をのばしている。野球のミットや柔道の受け身も、同じ力積を長い時間に分けて受けるやり方である。

例題と解説

ボールと台車で力積を使う

例題 1基本バットで打ち返す

質量0.15 kgのボールが30 m/sで飛んできた。バットで打つと、ボールは来た向きと逆に40 m/sで飛んでいった。ボールがバットから受けた力積の大きさを求めよ。また、バットとボールが触れていた時間を sとして、平均の力の大きさを求めよ。数は作った例である。

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打ち返された向きを+にとる。飛んできたときの速度は−30 m/s、打たれたあとは+40 m/sである。

あとの運動量から前の運動量を引いたものが、受けた力積になる。

平均の力は、力積を時間で割って出す。

ボールにはたらく重力 Nの5,000倍近い力が、ごく短い時間にかかっている。

例題 2基本三角形のグラフから速さを出す

なめらかな床に止まっていた質量2.0 kgの台車を、水平に押した。押す力は、0秒から0.20秒までに0から30 Nまで一定の割合で大きくなり、0.40秒で0に戻った。押し終えたときの台車の速さと、0.40秒の間の平均の力を求めよ。

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力と時間のグラフは、底辺0.40 s、高さ30 Nの三角形になる。力積をとおくと、三角形の面積である。

はじめは止まっていて運動量は0なので、運動量の変化はあとの運動量そのものになる。

両辺を2.0で割ると m/sである。平均の力は Nで、いちばん大きい30 Nのちょうど半分になる。

例題 3入試台車の上からボールを投げる

なめらかな床の上に止まっている台車に、人が乗っている。人と台車を合わせた質量は50 kgである。人が質量0.50 kgのボールを、床から見て水平に10 m/sで投げた。

(1)投げたあとの台車の速度を求めよ。

(2)投げる動作に0.20秒かかったとして、ボールが人から受けた平均の力の大きさを求めよ。

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(1)ボールの向きを+とする。投げる前は全部止まっていて、運動量の和は0である。人とボールが押し合う力は作用・反作用で同じ大きさの逆向きなので、和は0のまま変わらない。台車の速度をとおく。

5.0を右辺へ移すとで、両辺を50で割ると m/sになる。台車はボールと逆向きに0.10 m/sで動き出す。

(2)ボールの運動量の変化は kg·m/sで、これが受けた力積である。

人と台車の運動量の変化は kg·m/sで、受けた力積は同じ大きさの逆向きになっている。

例題 4入試斜めに当たって跳ね返る

質量0.20 kgのボールが、なめらかな壁に斜めに当たった。当たる直前の速度は、壁に垂直な向きに8.0 m/s、壁に沿う向きに6.0 m/sの成分をもつ。ボールは、壁に垂直な成分だけが逆向きになり、大きさは変わらずに跳ね返った。ボールが壁から受けた力積の大きさと向きを求めよ。

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壁に向かう成分8.0 m/sと壁に沿う成分6.0 m/sをもつボールが、壁に垂直な成分だけを逆向きにして跳ね返る。壁から受ける力積は壁に垂直で、壁から離れる向きを向く。

壁に沿う成分は、前もあとも6.0 m/sで変わらないので、その向きの力積は0である。壁から離れる向きを+にとると、壁に垂直な成分の運動量は、前が、あとが kg·m/sになる。

力積は大きさ3.2 N·sで、壁に垂直に、壁から離れる向きである。なめらかな壁は壁に垂直な力しか出せないので、向きも合う。

速さは前もあとも m/sで同じだ。それでも運動量は変わっている。速さだけで引くと0になってしまうのは、向きを落としたためだ。

入試・大会での出題

共通テストで問われた運動量と力積

  • 2026年 大学入学共通テスト 本試験 物理 第2問 問2:止まっている小物体に別の小物体が弾性衝突したとき、運動量の保存と、反発係数(はね返り係数)が1であることを組み合わせ、衝突後の2つの速度を選ぶ。出典は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」。
  • 2026年 大学入学共通テスト 追試験 物理 第2問 問3:なめらかな水平面に置いた平板と、その上をすべる物体が摩擦力を及ぼし合い、やがて同じ速度になる。そろったときの速度を、2つの運動量の和が変わらないことから選ぶ。出典は大学入試センター「令和8年度 追・再試験の問題」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018、2021年一部改訂)、第1部 第2章 第3節「物理」3(1)ア(イ)㋐ 運動量と力積、65〜66ページ(「運動量と力積がベクトルで表されること,運動量の変化が力積に等しいことを扱うこと」)。運動量は「物理基礎」には無く、「物理」で扱う
  2. I. Newton, The Mathematical Principles of Natural Philosophy, A. Motte訳(1846年のアメリカ版)、Wikisource「Definitions」(定義2、運動の量)と「Axioms, or Laws of Motion」(第2法則の説明、系3の球AとBの例)
  3. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 物理」の問題と正解(第2問 問2の正解は③と②)
  4. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 追・再試験 物理」の問題と正解(第2問 問3の正解は⑤)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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