三角形で測った距離
止まっていた車が一定の割合で速くなり、8秒後に秒速20 mに達した。進んだ距離は80 mである。最初の0と最後の20の平均、秒速10 mで8秒走ったのと同じだからだ。
この置き換えを言い切った定理は、1330年代のオックスフォードで見つかった。一定の割合で速くなる物が進む距離は、真ん中の時刻の速さで等速に動いた距離に等しい。平均速度の定理と呼ばれる。
パリ大学で学んだニコル・オレームは、この定理に図で最初の証明を与えた。横に時間、縦に速さをとり、加速度が一定の運動を直角三角形で表したのである。
1638年の『新科学対話』でも、ガリレオ・ガリレイは同じ三角形を描いている。第3日の定理1では、線分ABを時間、直角に立てたEBを最高の速さとし、三角形AEBを高さが半分の長方形と比べる。三角形の上の角がはみ出す分で、隅の足りない分が埋まるので、面積は等しい。距離を図形の面積として読む見方が、という式の形より先にあった。
台形の面積から3本へ
直線上に軸をとる。の位置を原点、そのときの速度を(初速度)、時刻の速度を、原点からの変位を、一定の加速度をとする。4つの文字はどれも向きをもち、正の向きと逆なら負の数になる。
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加速度の定義を書く
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両辺にを掛けてを移す
-グラフは、切片、傾きの直線になる。
距離はグラフのどこに現れるのか。ごく短い時間なら速度はほぼ変わらず、その間の変位は細い帯の面積に等しい。帯を時刻0からまで足すと、直線の下の面積が変位になる。
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直線の下の台形の面積を書く
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手順2のを代入する
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かっこを外す
手順3のは、最初と最後の速度の平均である。オレームとガリレオの図は、この1行にあたる。
では、時間が分からないときはどうするのか。手順2と手順3からを消す。
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手順2をについて解く
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手順3のに代入する
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分子の積を展開する
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両辺にを掛ける
手順6ではで割ったが、でも手順9はとなって成り立つ。
3本目に新しい物理は入っていない。2本の式からを消しただけで、独立な式は2本のままだ。その代わり、量を1つずつ欠いた式がそろう。
| 式 | 入っていない量 |
|---|---|
| 変位 | |
| 速度 | |
| 時間 | |
| 加速度 |
使い分けは表の右の列で決まる。問題に出てこない量、問われてもいない量が、右の列にある式を選べばよい。、、、、の5つのうち3つが分かれば、残りの量も決まる。問われた量が1本の式で出ないのは、が問われも与えられもしないときだけだ。を含まない式は表に無いので、先にを求める。
ただし、は道のりではない。が正でが負だと直線は時間軸を横切り、その先の面積は負に数える。
それでも3本の式は、折り返したあともそのまま使える。 m/s、 m/s²で sなら、手順5から mで、グラフの面積の差と一致する。
速さ2倍で4倍になる距離
3本目の出番は、時間が話に出てこない場面である。止まるまでの距離がその代表だ。とおくと、減速の大きさと制動距離の関係が出る。
距離は速さの2乗で増える。茨城県警察本部の2024年6月の資料では、乾いた舗装路の制動距離は時速30 kmで6 m、時速60 kmで27 mとされる。速さが2倍で4.5倍である。
式どおりなら4倍のところ、資料の値はやや大きい。資料の値からを逆算すると、時速30 kmで約5.8 m/s²、時速60 kmで約5.1 m/s²となり、速いほうが小さい。どちらの距離もメートル単位の丸めを含むが、丸めの幅を見込んでも2つの値はそろわない。を一定とする式は、実際の車では近似である。
一方、ブレーキが効くまでに進む空走距離は、同じ資料で8 mと17 mで、ほぼ2倍にとどまる。こちらは速さに比例する等速の距離で、時速60 kmなら約1秒ぶんにあたる。止まるまでの距離は2つの和なので、時速60 kmでは17 mと27 mを足して44 mになる。
手順9をと書くと、もう1つ使い道が見える。横軸に、縦軸にをとれば、傾きの直線になる。時計を読まなくても、距離と速さの組から加速度を求められる。
がどこから来るかは運動方程式の話で、を重力加速度に置いた運動は自由落下と鉛直投げ上げで計算できる。
問われない量で式を選ぶ
例題 1基本発車する電車
静止していた電車が、一定の加速度0.80 m/s²で動き出した。25 s後の速さと、それまでに進んだ距離を求めよ。
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なので、1本目と2本目の式に入れる。
例題 2基本時間を使わずに止まる距離
速さ25 m/sで走る車が、大きさ5.0 m/s²の一定の加速度で減速して止まった。止まるまでに進む距離と時間を求めよ。距離は有効数字2桁で答えよ。
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進む向きを正にとると m/s²である。距離には時間の入らない3本目の式を使う。
時間は1本目の式から出す。
例題 3入試斜面を上って戻る台車
なめらかな斜面の下の点から、台車を斜面に沿って上向きに速さ3.0 m/sで押し出した。台車の加速度は斜面に沿って下向きに大きさ1.5 m/s²で一定である。(1)いちばん高い点に達する時刻と、その点までの距離を求めよ。(2)出発点から斜面に沿って2.0 m上の点を通る時刻を、すべて求めよ。(3)その点での速さを求めよ。答えは有効数字2桁とする。
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上向きを正にとると、 m/s、 m/s²である。
(1)いちばん高い点ではになる。
(2)2本目の式にを入れる。
解の公式から s、 sである。答えが2つあるのは、上りと下りで2回通るからだ。
(3)3本目の式に入れる。
なので、速さはどちらの時刻でも約1.7 m/sである。
例題 4入試追いつく車
一定の速さ10 m/sで走る車Aが、止まっている車Bの横を通過した。その瞬間、車Bは同じ向きに一定の加速度2.0 m/s²で動き出した。(1)車Bが車Aに追いつく時刻と、そのときの車Bの速さを求めよ。(2)追いつくまでに2台が最も離れる時刻と、そのときの距離を求めよ。
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(1)通過した点を原点にとる。追いつくのは2台の位置が等しいときである。
から sである。速さは m/sで、車Aのちょうど2倍になる。
(2)車Bが車Aより遅いあいだは差が広がるので、速さが等しくなるときに最も離れる。
このときの差を計算する。
グラフと表から加速度を読む
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 物理基礎 第2問 問2、問4:おもりが初速度0で距離落ちたときの速さから加速度を表す式を選び、とのグラフの形を答える。時間を消した式そのものを使う。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
- 2025年 大学入学共通テスト 追試験 物理基礎 第2問 問3、問5:超音波センサーで測った時刻と距離の表からブロックの速さを求め、ブロックと台車それぞれの、動き始めた点からの距離の時間変化をグラフから選ぶ。出典は大学入試センター「令和7年度 追・再試験の問題」。
- 2026年 大学入学共通テスト 本試験 物理基礎 第2問 問4:レール上の台車について、磁場の計測から描いた-グラフの傾きで加速度を読む。磁石の間の平均の速度を、中央の時刻の速度として扱う。出典は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第2節「物理基礎」3(1)ア(ア)㋒、48-49ページ
- Galileo Galilei, Dialogues Concerning Two New Sciences, trans. H. Crew, A. de Salvio, The Third Day, Dover (1954), pp. 153-243(定理1はpp. 173-174)
- S. Kirschner, "Nicole Oresme", Stanford Encyclopedia of Philosophy
- 茨城県警察本部交通総務課「交通安全かわら版No.20」(2024年6月)
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 物理基礎」「令和7年度 大学入学共通テスト 追・再試験 物理基礎」「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 物理基礎」