分母の有理化

Rationalizing a binomial denominator

和の線分で面積を割ると、差の線分が出てくる。

分母が√a + √bの分数は、分母と分子に√a − √bを掛けると分母がa − bになり、根号が消える。近似値が出しやすくなり、形をそろえて大小を比べられる。

年代
紀元前300年ごろ(『原論』第10巻 命題112)
習う
高1・数学I・数と式
レベル
基本(例題 4 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

和の線分で正方形を割る

1をで割った数は、いくつくらいだろうか。約3.146で割る筆算は面倒だ。ところが答えはで、1.732から1.414を引くだけで出てしまう。

この割り算の根は、エウクレイデスの『原論』第10巻にある。クラーク大学のデイヴィッド・ジョイスの解説によると、命題36の「binomial」は、今の数で書けば、とが有理数でが無理数のときのだ。命題112によると、有理な線分の上の正方形をbinomialを1辺とする長方形に作り直したとき、もう1辺は「apotome」、つまり2つの項の差の線分になり、その2つの項はbinomialの2つの項と同じ比になる。面積を和で割ると、差が出てくるわけだ。

『原論』が語るのは線分と面積で、数の式ではない。「有理」の意味も今より広い。基準の線分と比べて、長さか、その上の正方形の面積が整数の比になれば有理と呼ぶので、基準を1とすれば長さの線分も入る。それでも基準の正方形の1辺を1として今の式に読み替えると、この公式と同じ形になる。

途中の計算

和と差を掛けて根号を消す

この計算の道すじ。 分母と分子に同じ数を掛ける(手順1〜2)。分母に中学校の乗法公式を使うと、根号のついた数が2乗されて中の数に戻る(手順3〜5)。最後に、がより小さいときの分母の符号を整える(手順6〜8)。

根号は、2乗するとになる正の数を表す。で、は2乗して2になる約1.414だ。分数の分母を根号のない形に直すことを、分母の有理化という。

公式の左辺は、1を根号の和√a + √bで割った数である。分母と分子に√a − √bを掛けると、右辺の分母はa − bになって根号がなくなり、a = 3、b = 2なら両辺とも約0.318になる。

公式のとは、根号の中に入る正の数である。は「とは等しくない」という条件で、等しいと右辺の分母が0になってしまう。

同じ数を分母と分子に

分数の分母と分子に同じ数を掛けても、分数の大きさは変わらない。の分母と分子に2を掛けたは、同じ長さを4つに切って2つ取った量。長さはとまったく同じだ。

長さの等しい2本の帯のうち、上は2つに切った1つ、下は4つに切った2つに斜線がある。斜線の長さはどちらも同じで、分母と分子に同じ数を掛けても大きさは変わらない。
  1. 分母と分子にを掛ける

  2. 分子の掛け算をする

手順1で掛けたのは、つまり1だ。1を掛けても値は変わらない。ただしが0だと、この1が作れなくなる。

和と差の積で根号が消える

分母のは、和と差の積だ。中学校の乗法公式のをに、をにすれば、そのまま使える。

1辺の正方形から、1辺の正方形を角から切り取る。残った形の上の部分を回して右に付けると、横、縦の長方形ができる。面積は、切り貼りの前と同じのままだ。つまみでとを変えると、辺の長さが小数のどこまでも続く数でも、面積はいつも整数になる。のほうを大きくすると、図も読み出しも大きいほうの根号を先に書く。

  1. 分母に乗法公式を使う

  2. 根号のついた数を2乗すると、中の数に戻る

  3. 手順2の分子と手順4の分母を並べる

かっこを分配法則で1つずつ掛けても、同じ結果になる。4つの積のうちとが打ち消し合い、根号のないとだけが残るからだ。

√a + √bと√a − √bの掛け算を、縦と横に並べた表で4つの積に分ける。斜線の−√a√bと+√a√bが打ち消し合い、根号のないaと−bだけが残る。

分母と同じを掛けたのでは、こうはいかない。となり、真ん中の項の根号が残ってしまう。和には差を、差には和を。この組み合わせで、真ん中の根号がはじめて消える。

では、数を入れて確かめる。、なら、左辺は1をで割って約0.318になる。右辺はで、割り算が引き算1回で済む。

分母の符号に気をつける

公式はがより小さくても成り立つが、そのときは分母が負の数になる。では、にそのまま当てはめると、どうなるか。

  1. 公式に、を入れる

  2. 分母を計算する

  3. 分母と分子に−1を掛けて、分母を正の数にする

数直線の上で、√2 − √5は約−0.822、√5 − √2は約0.822である。どちらを分子にしても答えは約0.274で、大きいほうから小さいほうを引く√5 − √2を掛けると、分母が正の3になる。

はじめから、大きいほうの根号から小さいほうを引いたを掛ければ、分母はで正の数になる。符号を2回ひっくり返す手間がいらない。分母がの差なら、逆に和のを掛ければよい。

のときは、分母がで、根号は1つしかない。分母と分子にを掛ければ、と有理化できる。

応用

割り算を引き算に変える

有理化のありがたみは、まず近似値の計算で分かる。を小数にするには、1を1.41421356で割らなければならない。分母と分子にを掛けたなら、1.41421356を2で割るだけで0.70710678が出る。割る数が2なら、ほとんど暗算だ。

形をそろえると、大小も比べやすい。とは、引き算のままではどちらが大きいか見えにくい。そこで、この公式を右辺から左辺へ逆に使う。とみればにも当てはまり、どちらも分子が1の分数になる。分子が同じなら、分母の小さいほうが大きい数だ。

√3 − √2と√2 − 1を、分子が1の分数に直して数直線に並べる。分母は√3 + √2が約3.146、√2 + 1が約2.414で、分母の小さい√2 − 1のほうが大きい。

黄金比の逆数も、有理化すると正体が見える。分母と分子にを掛けると、出てくるのはから1を引いた数だ。

を通分するとになるので、1.618から1を引いた0.618と一致する。

計算機でも、この形の書き換えが役に立つ。8桁で計算する電卓ならで、を引くと0.00500となり、確かな桁が3つしか残らない。近い2つの数を引くと上の桁がそろって消えるこの現象を、桁落ちという。分子の側を有理化したなら、引き算がなくなり、8桁で0.0049998750と正しく出る。

分母が3つの項でも、2つをまとめて1つとみれば和と差の積が使える。なら、を1つの数とみて、分母と分子にを掛ける。分母は次のようになる。

分母1 + √2 + √3に(1 + √2)− √3を掛けると分母は2√2になり、根号が2つから1つに減る。さらに√2を掛けると分母は4になり、答えは(2 + √2 − √6)÷ 4で約0.241になる。

1回目の掛け算で根号は2つから1つに減り、分数はになる。もう1回、分母と分子にを掛けると、分母はで根号が消え、分子はになる。2段に分けるのがこつである。学習指導要領の解説は、数学Iで扱う有理化を「分母が二項程度までの分数」としている。3つの項は、その一歩先にある。

例題と解説

根号を分母から追い出す

例題 1基本和と差の分母

次の分数の分母を有理化せよ。(1) (2)

解説を見る

(1)分母が和なので、分母と分子に差のを掛ける。分母はになる。

(2)分母が差なので、和のを掛ける。分母はで、分子の6と約分するとが前に出る。

例題 2基本分子にも根号がある

の分母を有理化せよ。

解説を見る

分母と分子にを掛ける。分子は、分母はになる。

近似値はで、元の分数と合う。

例題 3入試和と積から2乗の和

、のとき、、、の値を求めよ。

解説を見る

まず有理化する。の分母と分子にを、の分母と分子にを掛けると、どちらも分母はになる。

和はが打ち消し合って、積は和と差の積でになる。2乗の和は、からを引いて求める。

例題 4入試項が3つの分母

の分母を有理化せよ。

解説を見る

を1つの数とみると、分母はの差である。分母と分子に和のを掛けると、分母は次のようになる。

ここまでで分数はである。分母と分子にを掛けると、分母は、分子はになる。

近似値はで、元の分数と合う。

入試・大会での出題

整数部分を問う有理化

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第1節「数学I」3(1)数と式、36ページ(「分母が二項程度までの分数の形に表された数の分母の有理化などの簡単な無理数の四則計算」)
  2. D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book X, Proposition 36", Clark University(Guide)
  3. D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book X, Proposition 112", Clark University
  4. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 追・再試験 数学I・数学A」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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