半分より多くを取り去り続ける
1.0001を掛け続けても、いつかは100万を超える。増え続ける数列にはのように1の手前で止まるものもあるのに、のに天井はない。とおくとが成り立ち、どんなに小さなでも、何倍かすればどんな数も超えるからだ。
同じ見方は、紀元前300年ごろのエウクレイデス『原論』にある。第10巻の命題1は、大きい量から半分より多くを取り去り、残りからまた半分より多くを取り去ることをくり返すと、どんなに小さい量より小さくなると述べる。その証明の最初の一手は、小さい量を何倍かすれば大きい量を超える、という一言だった。今の記号で書けばにあたる話を、倍数の話に置き換えたことになる。
足し算で下から支える
公比の数列の行き先は、の場所で分かれる。は1から数えるので、のような項は出てこない。まずの場合を調べる。
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なのでとおく
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二項定理で乗を展開する
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第3項から先は0以上なので捨てる
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を大きくすると右辺に上限がない
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左辺はそれ以上なので発散する
手順3の形はベルヌーイの不等式と呼ばれる。見積もりとしてはかなり甘い。が100万を超えるのは実際にはからなのに、が100万を超えるにはが約100億まで要る。それでも、上限がないことさえ言えれば極限は決まる。
なら、どの項も1で、極限も1である。
でははどうか。絶対値の逆数をとれば、手順3へ戻せる。ただしでは逆数がとれないので、先に外しておく。なら第1項からずっと0で、極限は0だ。
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なので逆数は1より大きい
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手順3のをに替える
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両辺の逆数をとると大小が逆になる
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なのでを両側からはさむ
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両端が0に近づくのでも0に近づく
手順9に負の側があるので、が負でも同じ議論で済む。なら項の符号は交互に変わるが、はさむ幅が縮むから、0のまわりで揺れながら収まっていく。
残るのはである。もも、数列は振動すると言い、どちらも極限をもたない。ただ、揺れ方は同じではない。
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の項を偶数番と奇数番に分ける
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の絶対値に手順5を使う
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の項を偶数番と奇数番に分ける
の数列は1との2つの値だけをとる。絶対値は1のままで、有界なのに1つの値へ近づかない。一方、では偶数番の項が限りなく大きく、奇数番の項が負で限りなく小さくなる。全体をともとも書けず、揺れの幅だけが限りなく広がっていく。
収束しない数列はすべて発散といい、そのうちにもにも発散しないものが振動である。だからの数列は、発散の中の振動である。
毎日1%の差がつくる1,400倍
毎日1.01倍なら1年で倍になり、毎日0.99倍なら倍に縮む。公比の差は0.02しかないのに、365回掛けると1,400倍以上の開きが出る。
| の場所 | 例 | 最初の4項 | 行き先 |
|---|---|---|---|
| 2 | 2, 4, 8, 16 | に発散 | |
| 1 | 1, 1, 1, 1 | 1に収束 | |
| 0.5 | 0.5, 0.25, 0.125, 0.0625 | 0に収束 | |
| 0 | 0, 0, 0, 0 | 0に収束 | |
| −0.5 | −0.5, 0.25, −0.125, 0.0625 | 0に収束 | |
| −1 | −1, 1, −1, 1 | 振動(有界で極限なし) | |
| −2 | −2, 4, −8, 16 | 振動(幅が広がり極限なし) |
収束の条件をとだけ覚えると、表の2行目を落とす。文部科学省の解説にも、数列が収束する条件はまたはとある。1つの式にすればで、右端の1は入り、左端のは入らない。
等比級数になると、条件はもう一度ずれる。の数列は1に収束しても、和は発散するので、級数が収束するのはだけだ。あの記事の部分和でを0に置き換えた一歩の中身が、手順6から10にあたる。
ただ、が1に近いほど、0へ近づくのは遅い。たとえばとなるを調べる。両辺の常用対数をとり、負の数で割ると、不等号の向きが変わってとなる。なら66回で足りるが、では688回。
漸化式の中では、は初めの値を忘れる速さとして現れる。は、とおくとと解ける。なら、どこから始めても行き先はだ。センサーの値をならす指数移動平均も同じ形で、なら44回の更新で初めの値の重みは1%を切る。
手順1のはによらない定数だった。では、のようにとともに1へ近づけたらどうなるか。は2で止まって発散を示せなくなり、はネイピア数に収束する。
分数の中の公比を読む
例題 1基本公比の場所を読む
次の数列の極限を調べよ。極限がないときは、どう振る舞うかも答えよ。(1)(2)(3)(4)
解説を見る
(1)なので、極限は0である。
(2)よりなので、正の無限大に発散する。
(3)公比はである。項は正と負を交互にとりながら絶対値が限りなく大きくなるので、振動し、極限はない。
(4)なので、数列はとなる。値は2つだけで有界だが、1つの値に近づかないので、振動し、極限はない。
例題 2基本いちばん速く増える項で割る
を求めよ。
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分母と分子はどちらも発散するので、このままでは極限をとれない。いちばん速く増えるで割る。
よりなので、極限は次の値になる。
例題 3入試極限で定める関数
実数についてと定める。を求め、が不連続になるをすべて答えよ。
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は公比の数列なので、と1の大小で分ける。
のとき、、なので、である。
のとき、よりとなる。分母と分子をで割る。
のときである。のときは、なので、となる。
が1に左から近づくとは2、右から近づくと1に近づき、はどちらとも違う。がに左から近づくと、右からなら2で、はやはりどちらとも違う。ほかの点では連続なので、不連続になるのはとである。
例題 4入試指数は多項式より速い
(1)のとき、を二項定理で示せ。(2)を求めよ。
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(1)手順2でとする。すべての項が正なので、第3項だけを残す。
(2)で(1)を使うと、次のようにはさめる。
右端は0に近づくので、はさみうちの原理から極限は0である。手順3は第2項で止めたのでに比例する下限しか出なかったが、第3項を残すとの速さの下限が出て、分子のに勝てる。等比級数の例題4が「用いてよい」とした式は、こうして示せる。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第3節「数学III」3(1)極限、73-74ページ
- D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book X, Proposition 1", Clark University
- D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book V, Definition 4", Clark University