分配法則

Distributive law

正弦も対数も分配的ではない。1814年の論文の一文である。

かっこの外の数を、中の項それぞれに掛けてから足しても答えは同じになる。長方形を2つに切った面積を見れば理由が分かり、文字式の計算と因数分解の土台になる。

年代
紀元前300年ごろ(名前は1814年)
習う
中1・数学・文字を用いた式
レベル
基本(例題 4 問)
人物
エウクレイデス、フランソワ=ジョゼフ・セルヴォワ
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

正弦は分配的ではない

25 × 104を暗算するなら、104を100と4に分けるとよい。とを足せば、答えは2600だ。この分け方を支えているのが、分配法則である。

決まりそのものは古い。紀元前300年ごろのエウクレイデス『原論』第2巻命題1は、2本の線分のうち1本をいくつに切っても、2本でつくる長方形は、切らない線分と各部分でつくる長方形をすべて足したものに等しい、と述べる。

名前のほうは、ずっと新しい。フランスの数学者セルヴォワは、1814年の『純粋・応用数学年報』(Annales de mathématiques pures et appliquées)第5巻に、微分法の論文を載せた。いくつかの量の和に施した結果が、それぞれに施した結果の和に等しくなる働きを、セルヴォワはこの論文で「分配的(distributives)」と呼んだ。となる数のかけ算は分配的だが、高校で習う正弦(sin)や対数はそうではない、とセルヴォワは書いている。

同じページでセルヴォワは、順番を入れ替えても結果が変わらない2つの働きを「交換可能(commutatives)」と名づけた。英語のdistributive law(分配法則)とcommutative law(交換法則)は、この2つの形容詞を受け継いだ名前である。

途中の計算

長方形を2つに切る

この計算の道すじ。 縦、横の長方形を、横のとの境目で2つに切る(手順1〜5)。全体の面積と2つの面積の和を等しいとおけば、公式になる。負の数を掛けるときは図が使えないので、同じ形でかっこを外し、数を入れて確かめる(手順6〜8)。

はの×を省いた書き方で、かっこの中の和にを掛ける、という意味だ。は、はである。

左辺は、かっこの外の数aと、かっこの中の和b + cの積で、右辺はabとacの和である。a = 4、b = 5、c = 3なら、左辺は4 × 8 = 32、右辺は20 + 12 = 32になる。

文字には、正の数も負の数も0も入れてよい。長方形の図で考えるときだけは、、を長さ(cm)とみるので、両辺はどちらも面積になり、単位はcm²である。は面積を表す文字で、右下に小さく書いた1と2は、1つ目と2つ目の部分を見分ける印だ。

  1. 縦、横の長方形の面積を、縦×横で書く

  2. 横の部分の面積を書く

  3. 横の部分の面積を書く

  4. 全体の面積は、2つの部分の面積の和に等しい

  5. 手順4の式に、手順1〜3の式を代入する

縦4、横5 + 3の長方形を、横5と横3の境目で切る。左の部分は4 × 5 = 20、斜線の右の部分は4 × 3 = 12で、合わせて全体の4 × 8 = 32になる。

手順5の「代入する」とは、式の中の文字を、等しいと分かっている別の式に置きかえることだ。、、なら、左辺は、右辺はで、両辺がそろう。

つまみで、縦の長さと、切る位置を変えられる。横の長さはに決めてあるので、を増やすとが同じだけ減る。2つの面積はそれぞれ変わっても、和はいつものままだ。

かっこの中が引き算でも、同じ決まりが使える。は、横の長方形から、横の部分を切り取ると考えればよい。

では、かっこの外が負の数のときは、どうなるのか。長さが負の長方形は無いので、面積の図は使えない。だから、同じ決まりを負の数にも使ってのかっこを外し、に数を入れて確かめる。

  1. 引き算を、負の数を足す形に直す

  2. 分配法則で、をかっこの中の2つの項に掛ける

  3. 負の数どうしの積は正になる

xが5、3、1、0のとき、もとの式の値は−4、0、4、6で、かっこを外した−2x + 6の値と行ごとにそろう。−2x − 6と書いてしまうと、x = 5で−16になり、もとの式の−4と合わない。

中かっこは、かっこの中にかっこを書くときの外側の印で、働きはふつうのかっこと同じだ。手順8のが、いちばんつまずきやすい。2つ目の項にも符号ごとを掛けるので、ではなくになる。

負の数でも分配法則が成り立つようにすると、負の数どうしの積は正にしか決められない。その道すじは負の数どうしのかけ算で読める。

学習指導要領の解説によると、小学3年での形を調べ、4年で□や△を使った式にまとめる。中学1年では、正の数と負の数でも分配法則が成り立つことを学び、のような一次式の計算に使う。中学3年ののような計算と式の展開も、この決まりの上に立つ。

応用

暗算と、くくり出し

冒頭の暗算は、104をと見て、分配法則を使ったものだ。

縦25、横104の帯を、横100と横4の境目で切る。帯の面積は、25 × 100 = 2500と25 × 4 = 100を足した2600になる。

たとえば99を掛けるときは、と見ると楽になる。である。

しかも、この決まりは逆向きにも使える。右辺から左辺へ読むと、どの項にも同じ数が掛かっているとき、その数をかっこの外へ出せる。これを、くくり出すという。

縦がどちらも12で、横が37と63の長方形2つを横に並べると、縦12、横100の長方形1つになる。12 × 37 + 12 × 63は、12 × 100 = 1200とまとめて計算できる。

なら、12をくくり出してとなる。文字の式でも、はどちらの項も3で割り切れるので、と書ける。中3で習う因数分解は展開を逆にたどる計算で、その最初の一歩が、このくくり出しである。

つまり、くくり出すと掛け算の回数が減る。は掛け算2回と足し算1回、は足し算1回と掛け算1回で済む。手で計算するときも、コンピューターにたくさんの式を計算させるときも、この差がそのまま手間の差になる。

分配法則を2回使えば、2つのかっこの積も展開できる。を1つのまとまりとみてとし、をに戻してから、もう一度かっこを外す。中3の式の展開を、学習指導要領の解説もこの置き換えで説明している。

縦a + b、横c + dの長方形を縦と横に切ると、ac、ad、bc、bdの4つの長方形に分かれる。4つの面積を足すと、全体の面積になる。
例題と解説

かっこを外す・くくる・暗算する

例題 1基本かっこを外す

次の計算をせよ。(1)(2)(3)

解説を見る

(1)3を、との両方に掛ける。

(2)を、3との両方に掛ける。で、符号は正になる。

(3)2つのかっこを、それぞれ外す。後ろのかっこにはを掛けるので、の項はになる。

最後の行では、の項どうしと数の項どうしをまとめた。も、分配法則を逆向きに使っている。

例題 2基本分けてから暗算する

分配法則を使って、くふうして計算せよ。(1)(2)

解説を見る

(1)98をとみる。掛け算は順番を入れ替えても答えが同じなので、かっこが前にあっても、35をかっこの中の100と2のそれぞれに掛けてよい。

(2)どちらの項にも17が掛かっているので、17をくくり出す。

例題 3入試かっこを外してから代入する

のとき、の値を求めよ。

解説を見る

先にかっこを外し、式を簡単にする。後ろのかっこにはを掛けるので、の項はになる。

を代入する。負の数は、かっこを付けて入れる。

かっこを外さずにそのまま入れても、で、同じ答えになる。

例題 4入試入れ替えた2けたの数の和

2けたの自然数と、その十の位の数と一の位の数を入れ替えた数の和は、11の倍数になる。このことを、文字を使って説明せよ。

解説を見る

十の位の数を、一の位の数をとすると、もとの数は、入れ替えた数はと表せる。2つを足し、同じ文字の項をまとめる。

どちらの項にも11が掛かっているので、11をくくり出す。

は整数なので、和は11の倍数である。たとえばで、と合う。

入試・大会での出題

公立高校入試の大問1に

参考文献

  1. 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』(2017)、第3章 第1節2第1学年の内容A(1)正の数と負の数・A(2)文字を用いた式、66〜70ページ、第3節2第3学年の内容A(2)簡単な多項式、137〜138ページ
  2. 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編』(2017)、第3章 第3節2第3学年の内容A(3)乗法、143〜144ページ、第4節2第4学年の内容A(6)・A(7)、198〜200ページ
  3. Euclid, Elements, Book II, Proposition 1, D. E. Joyce (ed.), Clark University, https://mathcs.clarku.edu/~djoyce/elements/bookII/propII1.html
  4. F.-J. Servois, "Analise transcendante. Essai sur un nouveau mode d'exposition des principes du calcul differentiel", Annales de mathématiques pures et appliquées 5 (1814-1815), 93-140(定義は98ページ)。Numdam
  5. J. Miller, "Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics"、COMMUTATIVE and DISTRIBUTIVEの項、MacTutor
  6. 宮城県教育委員会「学力検査問題及び正答表(令和8年度入試)」、長野県教育委員会「令和8年度後期選抜学力検査問題正答・正答例」、三重県教育委員会「令和7年度三重県立高等学校入学者選抜学力検査問題等」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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