正方形の1辺を2つの項で
は、ではない。はおよそ3.61で、根号の中の足し算は、根号を分けて外へ出せないのだ。
ところがは、ちょうどに等しい。根号の中に根号がある数が、根号1つずつの和にほどけることがある。
この手順の原型は、紀元前300年ごろのエウクレイデス『原論』第10巻にある。命題54は、基準にとった線分と「第1の二項線分」で囲んだ長方形を同じ面積の正方形にすると、その1辺は二項線分になる、と述べる。二項線分は共立出版の邦訳(中村幸四郎ほか訳)の語で、ジョイスの英語版ではbinomial。2つの項の和になった線分を指す。
証明では、長いほうの項を2つに切り、2つの部分でつくる長方形が、短いほうの項の半分を1辺とする正方形と等しくなるようにする。いまの式に読み替えると、をほどくために、和が、積がの2数を探すことにあたる。もっとも、エウクレイデスが書いたのは線分と長方形の話で、根号の式はどこにも出てこない。
2乗して、根号を戻す
この計算の道すじ。 を2乗すると、二重根号の中身と同じになる(手順1〜3)。両辺の正の平方根をとれば、公式の+の側が出る。−の側は、どちらの数を前に置くかで符号が変わる(手順4〜6)。根号の前に2が無い形は、先に2を作る(手順7〜9)。
は、2乗するとになる数のうち0以上のほうで、の正の平方根を表す。根号の中にもう1つ根号がある形を、二重根号という。公式のとは正の数で、が2数の和、が2数の積である。
は、がより大きく、が0より大きいという条件だ。長さや面積のような単位は付かず、どれもただの数である。
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を、乗法公式で2乗する
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、を使う
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は正なので、両辺の正の平方根をとる
手順2のは、正の数どうしなら根号の中で掛けてよい、という決まりだ。たとえばである。手順3で「正の平方根をとる」のは、根号がいつも0以上の数を表すからだ。
マイナスの側も、同じように2乗から始める。
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乗法公式で2乗し、手順2と同じくまとめる
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なのでで、は正になる
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両辺の正の平方根をとる
も2乗すれば同じになる。ただ、は負の数なので、根号の値にはなれない。だからマイナスのときは、大きいほうの数を前に置く。
では、目の前の二重根号をほどくには、どうすればよいのか。根号の中をの形に見て、和が、積がの2数を探せばよい。なら、で、足して5、掛けて6になるのは3と2なので、になる。
つまみで和と積を選ぶと、和がその数になる整数の組が、長方形として順に並ぶ。長方形の縦と横が2数で、面積が2数の積だ。面積がちょうど積に合う長方形が見つかれば、その縦と横の数で二重根号がほどける。
根号の前に2が無いときは、先に2を作る。なら、12の中から2乗の4を見つけて、根号の外へ出す。
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12をに分け、を根号の外へ出す
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二重根号を、2が前にある形に書き直す
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和が4、積が3の2数は3と1なので、公式を使う
ただし、いつでもほどけるわけではない。の和5を正の整数2つに分ける組は4と1、3と2しかないが、積は4と6で、3にならない。だから、整数の2数ではほどけない。
では、分数まで広げれば見つかるのか。和が、積がの2数を、とすると、である。左辺はでもでも0になるので、2数は二次方程式の2つの解だ。
解の公式の根号の中はで、これが2乗の数でなければ、解から根号が消えない。ではで2乗の数ではないので、分数まで広げても2数は見つからない。
同じ条件は、エウクレイデスの「第1の」二項線分にも入っている。長いほうの項を、短いほうの項をと読み替えると、2乗の差はになる。命題54の証明が使うのは、この差がある線分の2乗に等しく、その線分と長いほうの項の長さの比が整数の比になるという条件で、いまの言葉ならが2乗の数になることにあたる。
学習指導要領の解説 数学編の「数学I」は、数と式で、根号を含む数の足し算・引き算・掛け算と、分母が2項ほどの分数の分母の有理化などを挙げるが、二重根号の語は使っていない。この語が出てくるのは理数科の科目「理数数学I」の解説で、「二重根号をはずす計算まで扱い」とある。
15°の直角三角形の斜辺
三角定規の形から、15°の角をもつ直角三角形が作れる。、、の直角三角形では、、である。辺CAをAの先へ延ばし、となる点Dをとる。
三角形ABDはの二等辺三角形で、だ。残りの2つの角は等しいので、になる。直角三角形BCDの2辺は、なので、三平方の定理で斜辺を出す。
なので、根号の中はになる。手順7を逆にたどってと書き直すと、和が8、積が12の2数は6と2だ。
はおよそで、ほどいた形なら長さの見当がすぐつく。この斜辺から、15°の正弦(sin 15°、向かい合う辺÷斜辺)も出せる。の分母と分子にを掛けると、分母はになり、、およそ0.259である。
計算機にも同じ仕事がある。数式処理のライブラリSymPyには二重根号をほどく関数sqrtdenestがあり、説明書の例ではからを返す。ほどけない式は、そのまま返す決まりである。
和と積で2数を探す
例題 1基本2が付いた二重根号
次の二重根号をはずせ。(1)(2)
解説を見る
(1)和が7、積が10の2数を探す。5と2で、、になる。
(2)和が8、積が15の2数は5と3である。マイナスなので、大きいほうの5を前に置く。
例題 2基本2を作ってからはずす
の二重根号をはずせ。
解説を見る
56をに分けて、2を根号の外へ出す。
和が9、積が14の2数は7と2である。マイナスなので、大きいほうの7を前に置く。
例題 3入試根号の中を2倍して分母で割る
の二重根号をはずせ。
解説を見る
根号の中のの前に2が無く、3の中から2乗の数も取り出せない。そこで、根号の中にを掛けて、分子に2を作る。
分子は、和が4、積が3の2数3と1でほどける。分数の根号は分子と分母に分けられるので、分母はになる。
分母と分子にを掛けて、分母を整数にする。
およそで、と合う。
例題 4入試整数部分と小数部分
とする。の整数部分を、小数部分をとするとき、とを求め、の値を求めよ。
解説を見る
和が6、積が5の2数は5と1なので、である。だから、で、整数部分はになる。小数部分は、から整数部分を引いた数である。
なので、である。ここにを代入する。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第1節「数学I」3(1)数と式、36ページ、第2部 第2章 第1節「理数数学I」3(1)数と式、160ページ
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』(2017)、第3章 第3節2第3学年の内容A(1)正の数の平方根、133〜134ページ
- Euclid, Elements, Book X, Proposition 54, D. E. Joyce (ed.), Clark University, https://mathcs.clarku.edu/~djoyce/elements/bookX/propX54.html
- 「ユークリッド原論をどう読むか(14)命題10-36」(共立出版の中村幸四郎ほか訳を引く解説)、https://euc-elements.matrix.jp/10/E-Elements1036.html
- SymPy Documentation, "sqrtdenest"