平行線を1本だけ引く
長さ6 cmと4 cmの2辺にはさまれた角を、ちょうど半分に割る線を引く。向かいの辺は、どこで切れるのだろうか。答えは、2辺と同じ6対4の比に切れる点だ。
エウクレイデスは『原論』第6巻の命題3で、これを証明した。クラーク大学のデイヴィッド・ジョイスの英訳によると、証明はCを通りDAに平行な直線を引き、BAの延長と交わる点をとるところから始まる。その点とA、Cを結ぶ三角形は、平行線の角から二等辺三角形になる。あとは直前の命題2、三角形の1辺に平行な線がほかの2辺を同じ比に分ける性質で終わる。命題3の後半では逆向き、つまり辺が2辺の比に分かれていれば線は角を二等分することも証明している。ジョイスは、この命題が『原論』のこのあとの命題に一度も使われないと書き添えている。
二等辺三角形を作って比を移す
この証明の道すじ。 点Cを通りADに平行な線を引き、△ACGを二等辺三角形にする(手順1〜6)。平行線と比の性質でBD : DCをBA : AGに移し、AGをACに置き換える(手順7〜8)。外角の二等分線のほうは、三角形の面積を2通りに表して示す(手順9〜13)。
△ABCの角Aの二等分線が、辺BCと交わる点をDとする。角の二等分線は、角を2つの等しい角に分ける線だ。BD : DCのような比は、前の長さを後ろの長さで割った値で比べ、BD : DC = AB : ACはBD ÷ DC = AB ÷ ACと同じ意味になる。
公式の4つの文字の組は、どれも線分の長さを表す。左辺は辺BCがDで分かれた2つの部分、右辺は角Aをはさむ2つの辺だ。AB = 6、AC = 4、BC = 5なら、Dは辺BCを3と2に分け、3 ÷ 2も6 ÷ 4も1.5になる。
頂点Aを動かして三角形の形を変えても、BD ÷ DCはいつもAB ÷ ACと同じ値になる。破線は角Aの外側の角(外角)を二等分する線で、直線BCとの交点Eでも、BE ÷ ECは同じ値だ。Eが画面から外れるときは、向きだけを矢印で示す。Aの横の位置をBとCの真ん中の3 cmにするとAB = ACになり、破線はBCと平行になって交わらない。
平行線で角を移す
証明には、中学校で習う平行線の角の性質を使う。平行な2本の直線に別の直線が交わると、同じ位置にできる角(同位角)と、互い違いの位置にできる角(錯角)が、それぞれ等しい。
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Cを通りADに平行な直線を引き、辺BAをAの先へ延ばした線との交点をGとする
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ADは角Aを二等分する
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平行線AD、GCに直線ACが交わるので、錯角が等しい
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平行線AD、GCに直線BGが交わるので、同位角が等しい
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手順2〜4をつなぐ
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2つの角が等しい三角形は二等辺三角形なので、2辺が等しい
記号∥は「平行」と読む。手順6で等しくなるのは、等しい2つの角∠ACGと∠AGCにそれぞれ向かい合う辺、AGとACである。
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△BCGでAD ∥ GCなので、2つの辺が同じ比に分かれる
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手順6のAG = ACを入れる
手順7は、中学3年で習う「三角形と比」の性質だ。三角形の1辺に平行な直線は、ほかの2辺を同じ比に分ける。つまり△BCGでは、辺GCに平行なADが、辺BCをDで、辺BGをAで切っている。手順8のABは、手順7のBAと同じ線分である。
では、数で確かめる。AB = 6、AC = 4なら、AG = AC = 4で、BG = 6 + 4 = 10になる。手順7はBD : DC = 6 : 4 = 3 : 2で、BC = 5を3 : 2に分けると、BDは5の5分の3にあたる。
外角の二等分線は延長と交わる
辺BAをAの先へ延ばした線の上に点Fをとると、∠CAFが△ABCの外角だ。外角の二等分線が直線BCと交わる点をEとすると(手順1のGとは別の点)、AB > ACなら、Eは辺BCの外、Cの先の延長の上に来る。
ただ、外角のほうは平行線を引くより、面積を2通りに表すほうが早い。使うのは、角の二等分線の上の点から角の2辺までの距離は等しい、という中学校で習う性質だ。式の中の△ABEは、三角形ABEの面積を表す。
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△ABEと△ACEは、底辺BEとECが同じ直線の上にあり、Aからの高さが共通なので、面積の比は底辺の比になる
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Eは外角の二等分線の上にあるので、直線ABと直線ACまでの距離が等しい。その距離をとおき、ABを底辺とみる
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△ACEも、ACを底辺とみて高さで表す
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手順10と11の面積を比べ、共通のを消す
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手順9と12をつなぐ
AB = 6、AC = 4、BC = 5なら、BE : EC = 3 : 2だ。ECを2つ分とみるとBEは3つ分で、その差の1つ分がBC = 5にあたる。だからEC = 10、BE = 15と決まる。
実は、同じ面積の考え方は内角の二等分線にも使える。DもAの角の二等分線の上にあるので、直線AB、ACまでの距離が等しく、△ABD : △ACDはAB : ACにもBD : DCにもなる。
AB = ACのときは、話が変わる。外角は隣り合わない2つの内角の和に等しく、二等辺三角形では∠Bと∠Cが等しいので、外角の半分は∠Cと同じ大きさになる。
錯角が等しいので、外角の二等分線はBCと平行になる。だからEはどこにもできない。比の式でも、BE : EC = 1 : 1になる点は直線BCの延長の上にはない。
比が一定の点は円に並ぶ
2点B、Cからの距離の比が2 : 1になる点Pは、どこに並ぶだろうか。答えは1つの円で、その円を決めるのが、この公式である。BC = 3として、辺BCを2 : 1に内側で分ける点をD(BD = 2)、外側で分ける点をE(BE = 6)とする。
ここで効くのが、『原論』の命題3の逆だ。PB : PC = 2 : 1なら、PDは∠BPCを二等分し、外角でも同じ逆が成り立つのでPEは∠BPCの外角を二等分する。内角と外角を合わせると180°なので、2本の二等分線は直角に交わる。
∠DPEがいつも90°なので、Pは線分DEを直径とする円の上にある。中学校で習う「直径に対する円周角は90°」の逆だ。中心はBから4、半径は2の円で、アポロニウスの円と呼ばれる。Bを原点、Cをに置くと、円の上の点までの距離は、三平方の定理でPB = 、PC = となり、比はちょうど2 : 1だ。
物理では、この円が電位0の線として現れる。電位は電気の力についての「高さ」にあたる量で、電荷から距離の点ではになる(は定数)。Bに、Cにの電荷を置くと、2つの電位の和が0になる点Pは次の条件を満たす。
2つ目の項を右辺へ移して両辺をで割ると、、つまりPB = 2 PCになる。電位を習うのは物理の授業だが、行き着くのはPB : PC = 2 : 1の比だ。電荷を通る平面の上では、電位0の点は、DEを直径とするこの円に並ぶ。
内心と、2本の二等分線
例題 1基本内角と外角の交点
△ABCで、AB = 8、AC = 6、BC = 7とする。角Aの二等分線と辺BCの交点をD、外角Aの二等分線と直線BCの交点をEとするとき、BD、DC、ECの長さを求めよ。
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BD : DC = AB : AC = 8 : 6 = 4 : 3なので、BC = 7を4 : 3に分ける。
外角の側もBE : EC = 4 : 3で、AB > ACなのでEはCの先にある。ECを3つ分とするとBEは4つ分で、差の1つ分がBC = 7なので、EC = 21(BE = 28)になる。
例題 2基本比から辺の長さを出す
△ABCで、角Aの二等分線が辺BCとDで交わり、BD = 3、DC = 2、AB = 9である。ACの長さを求めよ。
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公式BD : DC = AB : ACに数を入れると、である。比の内側どうしの積と外側どうしの積は等しいので、となる。
3辺は9、6、5で、9 < 6 + 5なので三角形ができる。
例題 3入試内心で分かれる比
△ABCで、AB = 6、BC = 5、CA = 9とする。内心をIとし、直線AIと辺BCの交点をDとする。BDの長さと、AI : IDを求めよ。
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内心は、3つの角の二等分線が交わる点である。まず△ABCで、ADは角Aの二等分線なので、BD : DC = AB : AC = 6 : 9 = 2 : 3となる。
次に△ABDを見る。BIは角Bの二等分線で、辺ADとIで交わるので、同じ公式からAI : ID = BA : BDとなる。
例題 4入試交点どうしを結ぶ線分
△ABCで、AB = 10、AC = 6、BC = 8とする。角Aの二等分線と辺BCの交点をD、外角Aの二等分線と直線BCの交点をEとする。∠DAEの大きさと、DEの長さを求めよ。
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角Aと、その外角を合わせると180°である。ADとAEはそれぞれの半分の位置にあるので、∠DAE = 180° ÷ 2 = 90°になる。
BD : DC = 10 : 6 = 5 : 3なので、BD = 5、DC = 3である。外角の側もBE : EC = 5 : 3で、ECを3つ分とすると差の2つ分がBC = 8にあたり、1つ分は4になる。よってEC = 12で、DEはDCとCEの和になる。
内心までの長さを問う出題
- 2026年 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A第3問(1):二等辺三角形の内心Iについて、直線BIが∠ABCを二等分することに注目し、△ABDの中で線分AIとIDの長さの比を求める。そこからAIとIDの長さを出し、空間の三角錐の問題へつなげる。出典は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「数学A」3(1)図形の性質、90ページ(「外角の場合も含めた角の二等分線と辺の比の関係」)
- D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book VI, Proposition 3", Clark University(Guide)
- 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A」