角の二等分線と比

Angle bisector theorem

『原論』はこの命題を、あとのどこにも使っていない。

三角形の角の二等分線は、向かいの辺を、その角をはさむ2辺の比に分ける。外角の二等分線も、向かいの辺の延長を同じ比に分ける。

年代
紀元前300年ごろ(『原論』第6巻 命題3)
習う
高1・数学A・図形の性質
レベル
基本(例題 4 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

平行線を1本だけ引く

長さ6 cmと4 cmの2辺にはさまれた角を、ちょうど半分に割る線を引く。向かいの辺は、どこで切れるのだろうか。答えは、2辺と同じ6対4の比に切れる点だ。

エウクレイデスは『原論』第6巻の命題3で、これを証明した。クラーク大学のデイヴィッド・ジョイスの英訳によると、証明はCを通りDAに平行な直線を引き、BAの延長と交わる点をとるところから始まる。その点とA、Cを結ぶ三角形は、平行線の角から二等辺三角形になる。あとは直前の命題2、三角形の1辺に平行な線がほかの2辺を同じ比に分ける性質で終わる。命題3の後半では逆向き、つまり辺が2辺の比に分かれていれば線は角を二等分することも証明している。ジョイスは、この命題が『原論』のこのあとの命題に一度も使われないと書き添えている。

途中の計算

二等辺三角形を作って比を移す

この証明の道すじ。 点Cを通りADに平行な線を引き、△ACGを二等辺三角形にする(手順1〜6)。平行線と比の性質でBD : DCをBA : AGに移し、AGをACに置き換える(手順7〜8)。外角の二等分線のほうは、三角形の面積を2通りに表して示す(手順9〜13)。

△ABCの角Aの二等分線が、辺BCと交わる点をDとする。角の二等分線は、角を2つの等しい角に分ける線だ。BD : DCのような比は、前の長さを後ろの長さで割った値で比べ、BD : DC = AB : ACはBD ÷ DC = AB ÷ ACと同じ意味になる。

△ABCで、角Aを印のついた2つの等しい角に分ける線ADが、辺BCとDで交わる。AB = 6、AC = 4なら、BCはBD = 3とDC = 2に分かれ、BD ÷ DCもAB ÷ ACも1.5になる。

公式の4つの文字の組は、どれも線分の長さを表す。左辺は辺BCがDで分かれた2つの部分、右辺は角Aをはさむ2つの辺だ。AB = 6、AC = 4、BC = 5なら、Dは辺BCを3と2に分け、3 ÷ 2も6 ÷ 4も1.5になる。

頂点Aを動かして三角形の形を変えても、BD ÷ DCはいつもAB ÷ ACと同じ値になる。破線は角Aの外側の角(外角)を二等分する線で、直線BCとの交点Eでも、BE ÷ ECは同じ値だ。Eが画面から外れるときは、向きだけを矢印で示す。Aの横の位置をBとCの真ん中の3 cmにするとAB = ACになり、破線はBCと平行になって交わらない。

平行線で角を移す

証明には、中学校で習う平行線の角の性質を使う。平行な2本の直線に別の直線が交わると、同じ位置にできる角(同位角)と、互い違いの位置にできる角(錯角)が、それぞれ等しい。

平行な2本の直線に斜めの直線が交わると、同じ位置にできる同位角と、互い違いの位置にできる錯角が、もとの斜線の角と等しくなる。
  1. Cを通りADに平行な直線を引き、辺BAをAの先へ延ばした線との交点をGとする

  2. ADは角Aを二等分する

  3. 平行線AD、GCに直線ACが交わるので、錯角が等しい

  4. 平行線AD、GCに直線BGが交わるので、同位角が等しい

  5. 手順2〜4をつなぐ

  6. 2つの角が等しい三角形は二等辺三角形なので、2辺が等しい

記号∥は「平行」と読む。手順6で等しくなるのは、等しい2つの角∠ACGと∠AGCにそれぞれ向かい合う辺、AGとACである。

Cを通りADに平行な線を引き、BAの延長とGで交わらせると、印の4つの角が等しくなり、斜線の△ACGはAG = ACの二等辺三角形になる。△BCGでAD ∥ GCなので、BD : DC = BA : AG = 6 : 4になる。
  1. △BCGでAD ∥ GCなので、2つの辺が同じ比に分かれる

  2. 手順6のAG = ACを入れる

手順7は、中学3年で習う「三角形と比」の性質だ。三角形の1辺に平行な直線は、ほかの2辺を同じ比に分ける。つまり△BCGでは、辺GCに平行なADが、辺BCをDで、辺BGをAで切っている。手順8のABは、手順7のBAと同じ線分である。

では、数で確かめる。AB = 6、AC = 4なら、AG = AC = 4で、BG = 6 + 4 = 10になる。手順7はBD : DC = 6 : 4 = 3 : 2で、BC = 5を3 : 2に分けると、BDは5の5分の3にあたる。

外角の二等分線は延長と交わる

辺BAをAの先へ延ばした線の上に点Fをとると、∠CAFが△ABCの外角だ。外角の二等分線が直線BCと交わる点をEとすると(手順1のGとは別の点)、AB > ACなら、Eは辺BCの外、Cの先の延長の上に来る。

ただ、外角のほうは平行線を引くより、面積を2通りに表すほうが早い。使うのは、角の二等分線の上の点から角の2辺までの距離は等しい、という中学校で習う性質だ。式の中の△ABEは、三角形ABEの面積を表す。

辺BAを延ばした先のFとACがつくる外角を二等分する線が、BCの延長とEで交わる。Eから直線ABと直線ACへ下ろした2本の垂線は同じ長さで、BE = 15、EC = 10の比は6 : 4になる。
  1. △ABEと△ACEは、底辺BEとECが同じ直線の上にあり、Aからの高さが共通なので、面積の比は底辺の比になる

  2. Eは外角の二等分線の上にあるので、直線ABと直線ACまでの距離が等しい。その距離をとおき、ABを底辺とみる

  3. △ACEも、ACを底辺とみて高さで表す

  4. 手順10と11の面積を比べ、共通のを消す

  5. 手順9と12をつなぐ

AB = 6、AC = 4、BC = 5なら、BE : EC = 3 : 2だ。ECを2つ分とみるとBEは3つ分で、その差の1つ分がBC = 5にあたる。だからEC = 10、BE = 15と決まる。

実は、同じ面積の考え方は内角の二等分線にも使える。DもAの角の二等分線の上にあるので、直線AB、ACまでの距離が等しく、△ABD : △ACDはAB : ACにもBD : DCにもなる。

AB = ACのときは、話が変わる。外角は隣り合わない2つの内角の和に等しく、二等辺三角形では∠Bと∠Cが等しいので、外角の半分は∠Cと同じ大きさになる。

AB = ACの二等辺三角形では、印をつけた4つの角がすべて等しい。外角の半分と底角∠Cが錯角の位置で等しいので、外角の二等分線は辺BCと平行になり、2本は交わらない。

錯角が等しいので、外角の二等分線はBCと平行になる。だからEはどこにもできない。比の式でも、BE : EC = 1 : 1になる点は直線BCの延長の上にはない。

応用

比が一定の点は円に並ぶ

2点B、Cからの距離の比が2 : 1になる点Pは、どこに並ぶだろうか。答えは1つの円で、その円を決めるのが、この公式である。BC = 3として、辺BCを2 : 1に内側で分ける点をD(BD = 2)、外側で分ける点をE(BE = 6)とする。

ここで効くのが、『原論』の命題3の逆だ。PB : PC = 2 : 1なら、PDは∠BPCを二等分し、外角でも同じ逆が成り立つのでPEは∠BPCの外角を二等分する。内角と外角を合わせると180°なので、2本の二等分線は直角に交わる。

BC = 3で、BCを2 : 1に内側で分けるD(BD = 2)と外側で分けるE(BE = 6)を直径の両端とする円をかく。円の上の点Pでは、PB : PC = 2 : 1で、∠DPEは直角になる。

∠DPEがいつも90°なので、Pは線分DEを直径とする円の上にある。中学校で習う「直径に対する円周角は90°」の逆だ。中心はBから4、半径は2の円で、アポロニウスの円と呼ばれる。Bを原点、Cをに置くと、円の上の点までの距離は、三平方の定理でPB = 、PC = となり、比はちょうど2 : 1だ。

物理では、この円が電位0の線として現れる。電位は電気の力についての「高さ」にあたる量で、電荷から距離の点ではになる(は定数)。Bに、Cにの電荷を置くと、2つの電位の和が0になる点Pは次の条件を満たす。

2つ目の項を右辺へ移して両辺をで割ると、、つまりPB = 2 PCになる。電位を習うのは物理の授業だが、行き着くのはPB : PC = 2 : 1の比だ。電荷を通る平面の上では、電位0の点は、DEを直径とするこの円に並ぶ。

例題と解説

内心と、2本の二等分線

例題 1基本内角と外角の交点

△ABCで、AB = 8、AC = 6、BC = 7とする。角Aの二等分線と辺BCの交点をD、外角Aの二等分線と直線BCの交点をEとするとき、BD、DC、ECの長さを求めよ。

解説を見る

BD : DC = AB : AC = 8 : 6 = 4 : 3なので、BC = 7を4 : 3に分ける。

外角の側もBE : EC = 4 : 3で、AB > ACなのでEはCの先にある。ECを3つ分とするとBEは4つ分で、差の1つ分がBC = 7なので、EC = 21(BE = 28)になる。

例題 2基本比から辺の長さを出す

△ABCで、角Aの二等分線が辺BCとDで交わり、BD = 3、DC = 2、AB = 9である。ACの長さを求めよ。

解説を見る

公式BD : DC = AB : ACに数を入れると、である。比の内側どうしの積と外側どうしの積は等しいので、となる。

3辺は9、6、5で、9 < 6 + 5なので三角形ができる。

例題 3入試内心で分かれる比

△ABCで、AB = 6、BC = 5、CA = 9とする。内心をIとし、直線AIと辺BCの交点をDとする。BDの長さと、AI : IDを求めよ。

解説を見る

内心は、3つの角の二等分線が交わる点である。まず△ABCで、ADは角Aの二等分線なので、BD : DC = AB : AC = 6 : 9 = 2 : 3となる。

次に△ABDを見る。BIは角Bの二等分線で、辺ADとIで交わるので、同じ公式からAI : ID = BA : BDとなる。

例題 4入試交点どうしを結ぶ線分

△ABCで、AB = 10、AC = 6、BC = 8とする。角Aの二等分線と辺BCの交点をD、外角Aの二等分線と直線BCの交点をEとする。∠DAEの大きさと、DEの長さを求めよ。

解説を見る

角Aと、その外角を合わせると180°である。ADとAEはそれぞれの半分の位置にあるので、∠DAE = 180° ÷ 2 = 90°になる。

BD : DC = 10 : 6 = 5 : 3なので、BD = 5、DC = 3である。外角の側もBE : EC = 5 : 3で、ECを3つ分とすると差の2つ分がBC = 8にあたり、1つ分は4になる。よってEC = 12で、DEはDCとCEの和になる。

入試・大会での出題

内心までの長さを問う出題

  • 2026年 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A第3問(1):二等辺三角形の内心Iについて、直線BIが∠ABCを二等分することに注目し、△ABDの中で線分AIとIDの長さの比を求める。そこからAIとIDの長さを出し、空間の三角錐の問題へつなげる。出典は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「数学A」3(1)図形の性質、90ページ(「外角の場合も含めた角の二等分線と辺の比の関係」)
  2. D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book VI, Proposition 3", Clark University(Guide)
  3. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A」

タグ

この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

姉妹サイト

株式会社Game が運営するメディアです。