三角関数の加法定理

Angle addition formulas

半度きざみの弦の表づくりに、和と差の式が使われた。

2 つの角の和や差の正弦・余弦を、それぞれの角の正弦と余弦で表す式。2 倍角の公式・三角関数の合成・点の回転の式のもとになる。

年代
2世紀なかば(弦の形)
習う
高2・数学II・三角関数
レベル
基本(例題 4 問)
起源

半度きざみの弦の表

加法定理の出発点は、2 世紀なかばにプトレマイオスが『アルマゲスト』の最初の 2 巻にまとめた数学の準備の中で作った、円の弦の長さを半度きざみで並べた表にある。数学史の資料集 MacTutor(セント・アンドルーズ大学)によれば、そのとき使ったのが 2 つの弧の弦から弧の和と差の弦を出す式で、今の と の公式にあたる。この式は、円に内接する四角形の辺と対角線の関係(プトレマイオスの定理)から導かれた。弦の半分を表にした正弦は、500 年ごろのインドのアールヤバタの表に現れる(同じく MacTutor)。

途中の計算

単位円の 2 点の距離から

単位円(中心が原点 O で半径 1 の円)の上に、2 点 と をとる。線分 PQ の長さを 2 通りに書き、まず差の余弦を出す。座標で計算するので、角の大きさで場合分けをしなくてよい。

  1. 2 点間の距離の公式で書く

  2. 2 つの 2 乗を展開する

  3. を 2 回使う

  4. 原点のまわりに 回して Q を へ移す

  5. 回しても長さは同じなので P'Q' で書く

  6. 展開する

  7. を使う

  8. 手順 3 と 7 の右辺を等しいとおく

  9. 両辺から 2 を引く

  10. 両辺を で割る

  11. を に置きかえる

  12. と を使う

  13. で余弦に直す

  14. 手順 10 の差の式を使う

  15. 余角の公式で正弦と余弦に戻す

  16. 正接を正弦と余弦の比で書く

  17. 分子と分母を で割る

差の正弦と差の正接は、手順 15 と 17 で を に置きかえれば出る。、 である。

応用

15° の値から画面の回転まで

角を、値を知っている角の和や差に分ければ、表を引かずに値が出る。 から である。2 倍角の公式 は に を入れれば出て、三角関数の合成 は右辺を加法定理で開くと確かめられる。

点 を原点のまわりに角 だけ回すと、 に移る。、 と書いて、 と を加法定理で開いた形である。ゲームや CG で図形を回す計算はこの式で、たとえば を 回すと に移り、原点からの距離 は変わらない。高さの近い 2 つの音を重ねたときのうなりも、加法定理の 2 本を足して出る和を積に直す式で説明できる。

次に読むなら オイラーの公式。指数法則 の実部と虚部を比べると、加法定理の 2 本が 1 行で出る。

例題と解説

値・傾き・最大値を求める

例題 1基本15° の正弦と余弦

と の値を求めよ。

解説を見る

と分けて、差の公式を使う。

小数にすると 、 で、関数電卓の値と合う。

例題 2基本象限に気をつけて和の値を出す

、 で、、 である。 と を求めよ。

解説を見る

の範囲から 、 の範囲から なので

加法定理に代入する。

確かめに で、2 乗の和はちょうど 1 になる。

例題 3入試決まった角で交わる直線の傾き

直線 と の角で交わる直線の傾きを、すべて求めよ。

解説を見る

が 軸の正の向きとなす角を とすると である。求める直線の傾きは か で、 を正接の加法定理に入れる。

よって傾きは と である。

例題 4入試2 つの正弦の和の最大値

で とする。 の最大値と最小値、そのときの を求めよ。

解説を見る

加法定理で第 1 項を開く。

よって

係数の 2 乗の和は なので、 をくくり出して加法定理を右から左へ使う。

なので、 すなわち のとき最大値 、 すなわち のとき最小値 をとる。

入試・大会での出題

2026 年の 3 つの試験で

  • 2026 年 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B・数学C 第 2 問: 加法定理の と を足して 2 つの正弦の和を積に直す式を導き、それを使って 2 つの正弦の和で書かれた関数の最大値を求める。(出典: 大学入試センター 令和8年度 本試験の問題)
  • 2026 年 東京大学 文科 第 4 問: (1) で を で表させ、3 次関数のグラフの原点と 2 点での接線が互いに の角をなす条件と、3 本の接線で囲まれる三角形の面積を調べる。数学(理科)第 4 問は同じ題材で、(1) の誘導がない。(出典: 東京大学 令和8年度 第2次学力試験問題)
  • 2026 年 京都大学 理系 第 5 問: と のグラフの の部分が囲む領域を、 軸のまわりに回した立体の体積を求める。加法定理で 2 つの式の差を と書きかえれば、どちらのグラフが上にあるかが分かる。(出典: 京都大学 令和8年度 試験問題)

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第 1 部 第 2 章 第 2 節「数学II」(4) 三角関数
  2. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Ptolemy", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
  3. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Trigonometric functions", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
  4. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 数学II,数学B,数学C」
  5. 東京大学「令和8(2026)年度 第2次学力試験問題 前期日程 数学(文科)・数学(理科)」
  6. 京都大学「令和8年度 一般選抜 試験問題 数学(理系)」「同 解答又は解答例等及び出題意図」

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