正弦定理

Law of sines

辺の長さは、外接円の弦として角から読める。

三角形の各辺とその向かいの角の正弦の比は、どの辺でも同じで、外接円の直径 2R に等しい。2 つの角と 1 辺から残りの辺が出る。

年代
2世紀なかば(弦の形)
習う
高1・数学I・図形と計量
レベル
基本(例題 3 問)
人物
プトレマイオス、ナスィールッディーン・トゥースィー、レギオモンタヌス
起源

弦の表に隠れていた比

正弦定理の右端には、なぜ外接円の直径 が出てくるのか。三角形に円を外接させると各辺はその円の弦になり、角 の向かいの辺 は中心角 の弦なので、長さは になるからである。2 世紀なかば、アレクサンドリアのプトレマイオスは『アルマゲスト』で角度から弦の長さを引く表を作っており、セント・アンドルーズ大学の数学史の資料集 MacTutor は、彼がこの比を弦の言葉で知っていたとする。正弦の言葉で平面の三角形の正弦定理を載せた本には 13 世紀のナスィールッディーン・トゥースィーの『四辺形論』(英題 Treatise on the Quadrilateral)があり、ヨーロッパではレギオモンタヌスが 1464 年ごろに書いた『三角形総論』(De triangulis omnimodis、1533 年刊)の第 2 巻で、三角形を解く道具として使われた。

途中の計算

直径を 1 本引いて導く

△ABC の外接円の中心を O、半径を とし、、、 とおく。まず角 が鋭角のときを考える。

  1. 点 B を通る直径 BD を引く

  2. 弧 BC に対する円周角が等しいことを使う

  3. 直径に対する円周角が直角であることを使う

  4. 直角三角形 BCD で正弦を書く

  5. 手順 1・2 と を代入する

  6. を で割った形に直す

  7. 角 B・角 C でも同じ手順をとる

  8. 3 つの式をつなぐ

角 が鈍角のときは、D が弦 BC をはさんで A と反対側に来る。四角形 ABDC は円に内接するので となり、 から同じ式が出る。角 が直角なら BC そのものが直径で、、 である。

外接円が同じなら、辺の長さは向かいの角の正弦だけで決まる。半径 5 の円に内接する三角形なら、 の向かいの辺はどれも で、 の向かいの辺は直径の 10 になる。三角形の中では大きい角の向かいほど辺が長く、3 辺の比は になる。

応用

川を渡らずに距離を測る

正弦定理が効くのは、1 つの辺と 2 つの角が分かっているときである。川の手前に 2 点 A, B を 100 m 離してとり、対岸の木 C を見て 、 を測る。残りの角は なので

となり、川を渡らずに木までの距離が出る。地図をつくる三角測量は、この計算を三角形の網の上でくり返す。1 つの辺と向かいの角から外接円の半径 を出すときにも使う。2 辺とその間の角が分かっているときは、正弦定理ではなく余弦定理の出番になる。

次に読むなら 三角関数の加法定理。正弦定理の計算に出てくる のような値を、表に頼らず出せるようになる。

例題と解説

外接円と辺の比で解く

例題 1基本外接円の半径を求める

△ABC で 、 である。外接円の半径 を求めよ。また のとき、 を求めよ。

解説を見る

正弦定理 に代入する。

よって である。次に から

例題 2基本対岸までの距離

川の手前に 2 点 A, B を 80 m 離してとる。対岸の点 C について 、 であった。AC の長さを、 として小数第 1 位まで求めよ。

解説を見る

残りの角は である。正弦定理 から

を代入すると

よって AC はおよそ 157.6 m である。

例題 3入試正弦の比から 3 辺と面積を出す

△ABC で であり、外接円の半径は である。(1) 角 B を求めよ。(2) 3 辺の長さと △ABC の面積を求めよ。

解説を見る

(1) 正弦定理から 、、 なので、辺の比は正弦の比に等しい。

正の数 を使って 、、 とおき、余弦定理を使う。

より である。

(2) 正弦定理 に代入する。

より で、、、 である。面積は 2 辺とその間の角から求める。

入試・大会での出題

共通テストの第 1 問に

  • 2025 年 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A 第 1 問〔2〕: 1 本の直線に点 A, B で接する半径 2 と 4 の 2 つの円の交点 P, Q について、PA と PB を角の正弦で表し、正弦定理で △PAB の外接円の半径を求めて △QAB と比べる。(出典: 大学入試センター 令和7年度 本試験の問題)
  • 2026 年 大学入学共通テスト 本試験 数学I・数学A 第 1 問〔2〕(2): 半径 6 の円に接する 3 本の直線でできる △PQR について、四角形の面積から と を出し、2 辺の比 PR : QR を求める。問題文に定理の名前は出ないが、辺の比を向かいの角の正弦の比に置きかえる正弦定理の使い方である。(出典: 大学入試センター 令和8年度 本試験の問題)

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第 1 部 第 2 章 第 1 節「数学I」(2) 図形と計量
  2. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Trigonometric functions", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
  3. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Nasir al-Din al-Tusi", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
  4. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Regiomontanus", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
  5. A. Papadopoulos, "Spherical trigonometry before the modern era: The treatise of Nasir al-Din al-Tusi", arXiv:2605.03516(2026)
  6. 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 数学I,数学A」「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 数学I,数学A」

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