真ん中の項に項数を掛ける規則
等差数列そのものは、紀元前 1550 年ごろのエジプトのリンド数学パピルスに、パンや大麦を等差で分ける問題として現れる(1 から n までの和の起源の章を参照)。初項と公差から和を出す規則を一般の形で書いたものに、インドのアールヤバタが 499 年にまとめた『アールヤバティーヤ』の数学の章(ガニタパーダ)の第 19 詩節がある。項数から 1 を引いて半分にし、公差を掛けて初項を足すと「真ん中の項」になり、それに項数を掛けると和になる、という規則である(数列の途中から足すときの数え方も含む)。初項と末項の和に項数の半分を掛ける形も添えてある(クラークの英訳、1930 年)。
逆の順に並べて足す
初項を 、公差を 、項数を 、末項を とし、和を とおく。
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和を前から書く
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同じ和を後ろから書く
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上下に並んだ項どうしを足す
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が 個あることを使う
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両辺を 2 で割る
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を代入する
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中かっこの中をまとめる
手順 3 で上下の組がどれも になるのは、上の列が ずつ増え、下の列が ずつ減るからである。学習指導要領の解説も、この公式では「和が等しくなるような項の組合せ」を考えていることを、導くときの要点に挙げている。手順 5 の は真ん中の項(項数が偶数なら真ん中の 2 項の平均)で、アールヤバタの「真ん中の項に項数を掛ける」と同じことを言っている。、 とおけば、1 から n までの和 になる。
利息と並べ替えの回数
120 万円を 12 回の元金均等返済で借り、毎月、残っている元金に 1% の利息がかかるとする。返す元金は毎月 10 万円で、利息は 12000 円、11000 円、…、1000 円と 1000 円ずつ減る等差数列になる。利息の合計は
である。情報科学では、 個のデータを隣どうし比べて並べかえるバブルソートの比較の回数が で、1000 個なら 499500 回になる。データが 10 倍になると、回数はおよそ 100 倍に増える。
次に読むなら 等比級数。等差数列の和は逆の順に並べて足し、等比数列の和は公比を掛けてずらした列を引く。足し方の工夫の違いを比べると、どちらの公式も忘れにくくなる。
項の和・倍数の和・格子点
例題 1基本第 20 項までの和
初項 5、公差 3 の等差数列の、初項から第 20 項までの和を求めよ。
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末項は である。
例題 2基本7 の倍数の和
100 以上 200 以下の 7 の倍数の和を求めよ。
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、 なので、105 から 196 までの 7 の倍数を足す。公差 7 の等差数列で、項数は である。
例題 3入試和が最大になる項数
等差数列 で 、 である。(1) 一般項 を求めよ。(2) 初項から第 項までの和 の最大値と、そのときの を求めよ。
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(1) 公差を とすると なので
より
(2) となるのは 、すなわち のときで、、 である。正の項をすべて足したところで和は最大になるので、最大値は
で、そのとき である。 を の 2 次関数とみると、頂点は で、最も近い整数 7 の が、 より大きいことからも確かめられる。
例題 4入試三角形の中の格子点
座標と 座標がともに整数である点を格子点という。直線 と 軸、 軸で囲まれた三角形の周上と内部にある格子点の個数を求めよ。
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直線 ()の上で条件を満たすのは、 の整数 なので、個数は である。 のとき 41、 のとき 1 で、公差 の等差数列の 21 項の和になる。
よって格子点は 441 個である。
格子点と階差数列
- 2025 年 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B・数学C 第 4 問(1): 原点を通る直線と 軸、直線 で囲まれた三角形の内部の格子点を縦の直線ごとに数えると等差数列になることを見つけ、その和から格子点の総数を求める。(出典: 大学入試センター 令和7年度 本試験の問題)
- 2026 年 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B・数学C 第 4 問(1): 階差数列が 1 次式、つまり等差数列で与えられた数列について、階差数列の和から一般項を の 2 次式で求める。(出典: 大学入試センター 令和8年度 本試験の問題)
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第 1 部 第 2 章 第 5 節「数学B」(1) 数列
- W. E. Clark (trans.), The Āryabhaṭīya of Āryabhaṭa: An Ancient Indian Work on Mathematics and Astronomy (University of Chicago Press, 1930), Gaṇitapāda 19, pp. 35-36
- J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Aryabhata", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 数学II,数学B,数学C」「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 数学II,数学B,数学C」