2つの丘で撃ち合った大砲
1823年6月27日の夜、オランダ中部、ユトレヒトから北東に広がる荒れ地で、2つの丘から大砲がほぼ同時に撃たれた。丘のあいだは17,669 m。ユトレヒト大学で自然哲学(今の物理学にあたる)を教えるモル教授と、ファン・ベーク博士は、それぞれの丘で、向こうの砲火が光ってから砲声が届くまでを、円すい振り子の小さな時計で測った。
両側から同じ時刻に撃ち合ったのは、風の影響を消すためだ。前の年にパリの近くで行われた測定では、両側の砲撃のずれが5分にもなった。モルらの砲手は、そのずれを1〜2秒に抑えた。22回撃ち合い、両側で測った時間の平均は51.96秒。翌1824年に英国王立協会の紀要に載った報告は、ここから音の速さを毎秒340.06 mと出している。
数えた秒数を距離に直す
雷が光ってから音が聞こえるまでの秒数に340を掛けると、雷までの距離がメートルで出る。光はほとんど一瞬で届くので、数えた秒数は、音が進むのにかかった時間とみてよい。式は「速さ」の決め方を1回並べ替えるだけで出る。
速さは、1秒あたりに進む距離である。単位のm/sは「メートル毎秒」と読み、340 m/sは1秒に340 m進む速さを表す。中学1年の理科では、この値を雷鳴や打ち上げ花火の体験と結びつけて、室温くらいでのおよその値として習う。
では、光が届くまでの時間は数えなくてよいのか。気象庁によると、光は1秒におよそ30万キロメートル(3億メートル)進み、音のおよそ100万倍の速さがある。1,700 m先の雷なら、光が届くまでの時間は秒で、音は5秒かかる。
つまり数えた5秒は、ほとんどまるごと音が進んだ時間である。あとは、速さの決め方から距離の式を出せばよい。
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速さの決め方を式にする
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両辺に(時間)を掛ける
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左辺と右辺を入れかえる
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音の速さに340 m/sを入れる
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5秒数えたときの距離を出す
手順2で両辺に時間を掛けたのは、右辺の「÷(時間)」を消すためである。数で書くと、の両辺に5を掛けて、にしたことにあたる。
秒数が2倍になれば、距離も2倍になる。この関係を比例という。3秒で1,020 mなので、「3秒で約1 km」と覚えておくと、数えた秒数を3で割るだけで、雷までのおよその距離がkmで分かる。たとえば12秒なら、雷はおよそ4 km先だ。
つまみで数える秒数を変えると、雷が近づいたり遠ざかったりする。音の輪は1秒ごとに340 mずつ広がり、輪の数が数えた秒数にそろったとき、音が耳に届く。
逆に、距離と時間が分かっていれば、手順1の形で音の速さが出る。1823年のモルらの測定が、まさにこの計算だった。
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2つの向きの時間を平均する
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手順1の形に距離と時間を入れる
片方の向きだけで測ると、風下へ進む音は速く、風上へ進む音は遅く届く。2つの向きを平均すれば、風で縮んだ時間と延びた時間が、ほぼ打ち消し合う。
30秒でも、雷はもう近い
福岡管区気象台が出した「はれるん通信」(2013年7月16日)は、数えた秒数と雷までの距離の目安を、3秒で約1 km、10秒で約3 km、30秒で約10 kmとしている。30秒の欄には、「次の落雷は、すぐ近くかもしれない、もう危険な距離です」と書き添えてある。式に入れると、30秒は10 kmをわずかに超える。
10 kmと聞くと遠く感じるが、同じ資料は「雷の音」そのものを危険のサインに挙げている。秒数は、雷がどこまで近づいたかを知るために数えるもので、安全かどうかを決めるものではない。
もっとも、340 m/sは室温くらいの空気でのおよその値である。1823年の夜の気温は約11 °Cで、測った速さは340.06 m/sだった。モルらは、0 °Cの乾いた空気に直すと332.05 m/sになると計算している。冷たい空気ほど、音は少し遅く進むのだ。
音を出すものや聞く人が動くと、聞こえる音の高さまで変わる。同じ340 m/sを使うその計算は、ドップラー効果で練習できる。
花火とピストルの音で練習する
例題 1基本打ち上げ花火までの距離
打ち上げ花火が開く光が見えてから、2.5秒後に音が聞こえた。花火が開いた場所までの距離は何mか。音の速さを340 m/sとする。
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光はほとんど一瞬で届くので、2.5秒は音が進んだ時間とみてよい。(距離)=(音の速さ)×(時間)に数を入れる。
例題 2基本雷の音が届くまでの時間
5.1 km先に雷が落ちた。光ってから何秒後に音が聞こえるか。音の速さを340 m/sとする。
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5.1 kmは5,100 mである。手順3の式の両辺を(音の速さ)で割ると、(時間)=(距離)÷(音の速さ)になる。
例題 3入試ゴールで聞くピストルの音
100 m走で、ゴールにいる計時係が、スタートのピストルの音を聞いてから時計を動かした。ピストルの煙を見てから動かす場合と比べて、時計を動かすのは何秒遅れるか。また、この方法で計った記録が12.21秒だったとき、煙を見て計れば何秒だったか。音の速さを340 m/sとし、小数第2位まで求めよ。
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ピストルの音は、スタートからゴールまでの100 mを進んでから届く。煙の光はほとんど一瞬で届くので、遅れは音が100 m進む時間に等しい。
時計を動かすのが0.29秒遅れた分だけ、記録は短く出ている。煙を見て計った記録は、その分を足して求める。
山びこの往復を問う出題
- 2021年 和歌山県 高等学校入学者選抜 学力検査 理科 第1問〔問1〕(3):向かいの山に向かって叫んでから3秒後に、はね返った声が聞こえたときの、山までのおよその距離を4つから選ぶ。音が自分と山のあいだを往復することは問題文に書かれていて、往復にかかった3秒から片道の距離を出せるかが問われる。出典は和歌山県「令和3年度 和歌山県高等学校入学者選抜学力検査問題 理科」。
参考文献
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』(2017)、第2章 第2節 第1分野2(1)身近な物理現象 ア(ア)㋒ 音の性質、30・32ページ
- G. Moll, A. Van Beek, "An Account of Experiments on the Velocity of Sound, Made in Holland", Philosophical Transactions of the Royal Society of London 114 (1824), 424-456。本文の文字起こしはPhilosophical Transactions Archive
- 気象庁「雷(かみなり)が光ってから、音が聞こえるまでに差があるのはどうしてなの?」はれるんランド
- 福岡管区気象台「はれるん通信」2013年7月16日
- 和歌山県「令和3年度 和歌山県高等学校入学者選抜学力検査問題 理科」