数式の読み方

logとlnの読み方と、底を書かないlogの意味

How to read log and ln, and what a log with no written base means

同じlog 100が、2にも4.605にも6.644にもなる。

logは「ログ」、lnは「エルエヌ」と読む。底を書かないlogは分野と道具で10、e、2に分かれ、答えは一定の倍率でずれる。S = k log Wや素数定理の読み分けと、底を1回で見分ける打ち方まで。

公式
6 本
人物
エドワード・ライト、ヨハネス・ケプラー、ボナヴェントゥーラ・カヴァリエリ、ウィリアム・オートレッド、ヘンリー・ブリッグス、ピエトロ・メンゴリ、レオンハルト・オイラー、アーヴィング・ストリンガム、ルートヴィッヒ・ボルツマン、クロード・シャノン
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
場面

答えが3つあるlog

Excelのセルに=LOG(100)と打つと、答えは2だ。Pythonでmath.log(100)を実行すると、4.605170185988092が返る。情報理論の本の流儀で読めば、同じは6.643856…になる。

どれも間違っていない。

違うのは、書かれていない底である。Excelは10を、Pythonはネイピア数を、情報理論の本は2を、黙って補っている。は「ログ」、は「エルエヌ」と読み、の底はに決まっている。ところがの底は、道具と分野で入れ替わる。

しかも3つの答えは、ばらばらの数ではない。4.60517を2で割ると2.3026、6.64386を2で割ると3.3219。100を1000に変えると答えは3、6.90776、9.96578になるが、3で割った結果はやはり2.3026と3.3219である。

では、底を書かないに出会ったら、どう読めばよいのだろうか。

考え方

ログ、エルエヌ、ナチュラルログ

は英語のlogarithmの頭3文字で、日本語では「ログ」と読む。底を添えたは「ログ2の8」、ていねいに言えば「2を底とする8の対数」である。金沢工業大学の教材にも、は「ログaのN」と読むとある1。

式日本語英語
ログエックスlog x
ログ2の8log base 2 of 8
ログ10のエックス、エックスの常用対数log base 10 of x、the common log of x
エルエヌエックス、エックスの自然対数the natural log of x

は対数と「自然」を合わせた記号だ。日本大百科全書によれば、ラテン語のlogarithmus naturalisを略した形である。1文字目は小文字のエルで、新潟大学の講義資料には、大文字のアイではないから「いん」とは読まない、とわざわざ注がある。たしかに書体によっては、は「In」に見える。

の読み方は1つに定まっていない。岐阜工業高等専門学校の計測工学の資料には、ナチュラルログ、エルエヌ、ローンの3つが並ぶ。英語で迷わないのはthe natural log of xである。

図

何を何回掛けるか

2を底とする8の対数が3である式の各部分。小さく添えた2が底で掛ける数、8が真数でできあがる数、3が対数の値で掛ける回数を表す。下の行はln、lg、lbの3つの記号が指す底。

は、「2を3回掛けると8になる」という1行である。掛ける数の2が底(てい)で、英語ではbase。できあがる8が真数(しんすう)で、3がその対数だ。累乗と指数の読み方で読んだを、右肩の3について解いた形にあたる。

読むときは、日本語でも英語でも底が先で、真数があとになる。

底を書かないは、この図の2の場所が空いている式だ。は、その場所にが入ったを短く書いたものである。

考え方

底は物差しの目盛り

は、1からまでの道のりを「倍の積み木」で測った個数と読める。100までの道のりは、2倍の積み木なら6個と少し、倍なら4個と少し、10倍ならちょうど2個で埋まる。

1から100までの同じ道のりを、2倍、e倍、10倍の積み木で測った図。2倍なら6.644個、e倍なら4.605個、10倍ならちょうど2個で埋まる。斜線は端数にあたる。

端数にも意味がある。2倍の積み木を6個並べると64で、100までは残り1.5625倍。なので、この端数が0.644個ぶんになる。

道のりそのものは、どの底でも変わらない。同じ距離をメートルとフィートで測ると数字は変わるのに、2つの比はいつも同じである。の答えも同じで、10倍の積み木1個が2倍の積み木3.3219個ぶん、倍の積み木2.3026個ぶんの長さだから、比はによらず一定になる。

つまり、底を取り替えるのは、単位を取り替えるのと同じことなのである。

シミュレーション

3列の積み木を一緒に伸ばす

底を2、、10から選ぶと、その列の積み木に掛け算の途中の値が付く。列を横になぞるかのつまみを動かすと、3列の個数が一緒に伸び縮みし、読み出しの比は3.3219、2.3026、1.4427のまま動かない。を1より小さくすると積み木は左へ伸び、値は負になる。「横軸を対数目盛りに」を押すと、下のグラフの3本の曲線は点を通る直線に変わる。

式

底の取り替えを1行ずつ

比が一定になる理由は、指数の形に戻すと見えてくる。ここではを1以外の正の数、を正の数とする。

  1. をとおき、指数の形に直す。

  2. 両辺の自然対数をとる。

  3. 指数を前に出す。

  4. について解く。底の違いは、に掛かる定数に収まった。

  5. を入れる。である。

  6. を入れる。である。

  7. 2つの比をとると、が消える。ではどの底でも0なので、比はで考える。

  8. 手順4を微分する。を使う。

手順8のに、数学のがを指す理由がある。ならで、導関数はただのになる。底10なら微分するたびに0.4343が付いて回り、を底10で書けば2.3026が混ざる。

考え方

定数と組になる底

では、実際の式のはどれを指しているのか。読むときは、まず底で答えが変わる式かどうかを見る。

ボルツマンの墓に刻まれたのは、自然対数である。ボルツマンのエントロピーの証明をたどると、底を決めているのは熱のほうだと分かる。1 molの理想気体を等温で2倍の体積に広げるとき、から出るによって、エントロピーは J/K増える。このとき並び方の数は倍になり、なので、が熱の計算と合うのは底がのときだけだ。

測定もこれを裏付ける。氷に残るエントロピーをポーリングは1935年にと見積もり、その3.37 J/(mol·K)は測定値の約3.4とそろった。底10で読むと1.46で、半分にも届かない。

もっとも、底10で書けないわけではない。なので、定数をの2.3026倍にすれば同じが出る。 J/Kという値は、底と組で決まっている。

シャノンの情報エントロピーのでは、この組の関係がもっとはっきりする。シャノンは1948年の論文で、定数は測る単位を選ぶことにすぎないとし、「対数の底の選択は、情報を測る単位の選択にあたる」と書いた。底2ならビット、底10ならdecimal digit、底ならnatural unitで、同じ箇所のは手順7の比そのものだ。表と裏が半々の硬貨を1回投げた情報は、1ビット、0.693 natural unit、0.301 decimal digitで、どれも同じ量を指す。

だから、情報理論の本でも流儀は割れる。スタンフォード大学のJohn Duchiは講義ノートで「情報理論の研究者に謝らなければならない」と断り、をすべて底で書く。分析に都合がよく、微分もずっと楽になるからだという。

考え方

取り替えられない底、消える底

では、どの式でも底を選べるのだろうか。素数定理のでは、取り替えられない。は比が1に近づくことを表し、定数倍のずれを許さないからだ。

168145333100
78,49872,382166,66750,172
50,847,53448,254,942111,111,11133,447,777

で比べると、の列は素数の個数の0.949倍まで迫る。底10の列は2.19倍、底2の列は0.66倍で、を限りなく大きくしても、2.3026倍と0.6931倍にしか近づかない。

と明記された式も同じ側にある。ツィオルコフスキーの公式のも、放射性崩壊のも、やの積分からが出てくる。たとえば噴射の速さ3.0 km/sのロケットが質量の半分を燃やすとは約2.1 km/sだが、電卓のLOGボタンで打つと約0.90 km/sと出てしまう。

一方で、底が消える式もある。炭素14の年代はどうしの比なので、分子と分母の底をそろえれば、どの底でも答えは同じだ。半減期5730年で残りが60%なら約4200年。ところが分子を底10、分母を底で計算すると、約1830年になる。

プログラムの計算量でも底は消える。定数倍の違いをの中では問わないからだ。スタンフォード大学のアルゴリズムの授業CS161の資料には、底のないを見たら「底は関係ないと考えてよい」とある。資料を書いたIan Tullisは、高校では底10だったが大学の化学や生物では底に変わり、計算機科学では底2も加わると振り返る。

ノート

辞典でも割れる省略

底の省き方は、辞典どうしでも食い違う。コトバンクで引くと、デジタル大辞泉の「自然対数」には「ふつう底を略してlog xと書く」とあり、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の「常用対数」には「普通底の10を省略して、単にlog xで表わす」とある。

どちらかが誤りというより、書き手の分野が違うのだろう。Wolfram MathWorldによると、電卓と初等的な教科書ではが底10を指し、数学者と程度の高い数学書では自然対数を指す。新潟大学の資料はもっとはっきりしていて、を自然対数として扱うのは「数学の世界だけのこと」で、化学を含む多くの分野では常用対数だという。

日本の高校は、この2つをまたぐ。文部科学省の学習指導要領解説では、数学IIの用語にと常用対数が、数学IIIの用語に自然対数とが入る。解説の例も、数学IIではと底を書き、数学IIIの微分法ではと底を書かない2。

このずれは教室で事故を起こす。東京工科大学の江頭靖幸教授は2015年のブログで、化学工学の授業で自然対数をと書いたところ、小テストで常用対数と取り違える学生が続出したと明かしている。話を聞くと「関数電卓でLOGのボタンを使って計算した」のだった。

規格では、底ごとに記号が分かれている。米国NISTのSI使用ガイドSP 811には、国際規格ISO 31-11(後継はISO 80000-2)の記号として、、が載っている。

ただ、も安心できない。MathWorldによるとには「矛盾する意味がいくつかある」。ドイツやロシアの文献では底10、数論の文献の一部では底2だという。添字すら底とは限らず、イヴィッチの2003年の論文ではがを表す。

歴史

Log.からlnまで

記号のは、ピリオドを落としながら17世紀に今の形になった。ジェフ・ミラーの資料によると、Log.という略記は、ネイピアの本をエドワード・ライトが英訳した1616年の版に現れる。1624年のケプラーは大文字のLog.を使った。1632年のカヴァリエリは小文字のlog.、1647年版のオートレッド『Clavis mathematicae』はピリオドのないlogである。

底が10に決まったのは、記号より先である。対数の法則の記事にあるとおり、ネイピアとブリッグスは1615年の夏に、底を10にした表への作り直しで合意した。「自然対数」の名は少し遅れ、1659年のピエトロ・メンゴリの本にラテン語で現れる。

オイラーは1748年の『無限解析序説』のラテン語版で、自然対数を1文字ので書いた。

の記号が確認できるのは、ずっと下って1893年である。アーヴィング・ストリンガムが『Uniplanar Algebra』で使った3。ライトの英訳のLog.から277年後だ。

使いどころ

1回打って底を見分ける

道具の底は、説明書を読むよりを1回打つほうが早い。答えが2なら底10、4.605なら底、6.644なら底2である。

打つもの底答え
一般的な関数電卓のLOGボタン102
Excelのセル=LOG(100)102
Excel VBAのLog(100)4.605…
Pythonのmath.log(100)4.605…
JavaScriptのMath.log(100)4.605…
PostgreSQLのlog(100)102
SQLiteのlog(100)102
MySQLのLOG(100)4.605…

表で目を引くのは、同じExcelの中でセルとVBAの底が違うことだろう。SQLも1つにまとまらず、SQLiteの文書には、他の多くのデータベースは自然対数だと断り書きがある。Python、Node.js、SQLite、MySQLは筆者の手元で動かし、ExcelとPostgreSQLは公式の文書で確認した。

底を指定できる書き方にも、落とし穴が2つある。まず引数の順番だ。ExcelのLOG(8, 2)とPythonのmath.log(8, 2)は真数が先で、PostgreSQLとMySQLとSQLiteのlog(2, 8)は底が先。順番を間違えると、3のはずの答えが0.333に化ける。

次に丸め誤差である。Pythonのmath.log(1000, 10)は、手順4の割り算で計算するので2.9999999999999996を返す。math.log10(1000)なら3.0だ。誤差の仕組みは0.1 + 0.2が0.3にならないのはなぜかで読める。

読み終えたら、次の順に手を動かすとよい。

  1. 答えに底が効く計算では、LOG10やLN、math.log2のように底が名前に入った関数へ書き換える。
  2. 本や問題文のは、添えられた数値で見分ける。とあれば底、0.301なら底10である。
  3. 対数の法則で底をのまま進む証明を読み、ネイピア数の記事での出どころをたどる。

の答えが3つに割れても、測っている道のりは1本である。どの物差しで測ったのかさえ分かれば、3つの数は同じことを言っている。

参考文献

  1. C. E. Shannon, "A Mathematical Theory of Communication", Bell System Technical Journal 27 (1948), 379-423, 623-656.
  2. Jeff Miller, "Earliest Uses of Function Symbols"(Logarithm functionの項), "Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics"(LOGARITHM、NATURAL LOGARITHMの項), MacTutor History of Mathematics, セント・アンドルーズ大学.
  3. F. Cajori, A History of Mathematical Notations, Vol. I-II (Open Court, 1928-1929). 本体は未見。本文のカジョリにかかわる記述は文献2による孫引き.
  4. NIST, Special Publication 811, Guide for the Use of the International System of Units (SI), 10.1.2 Standardized mathematical signs and symbols. ボルツマン定数の値はNIST, CODATA Value "Boltzmann constant". ISO 31-11からISO 80000-2への移行はWikipedia "ISO 31-11"による.
  5. E. W. Weisstein, "Logarithm", "Natural Logarithm", "Lg", Wolfram MathWorld.
  6. A. Ivić, "On a problem of Erdős involving the largest prime factor of n", arXiv:math/0311056 (2003).
  7. L. Pauling, "The Structure and Entropy of Ice and of Other Crystals with Some Randomness of Atomic Arrangement", Journal of the American Chemical Society 57 (1935), 2680-2684. 本体は未見で、書誌はCrossrefで確認。測定値はW. F. GiauqueとJ. W. Stoutの0.82 cal/(deg·mol)で、B. A. Bergほか, arXiv:cond-mat/0609211による孫引き.
  8. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』数学II「指数関数・対数関数」(60、69ページ)、数学III「微分法」(76、83ページ).
  9. J. Duchi, Lecture Notes on Statistics and Information Theory, Stanford University, 2023年12月6日版. I. Tullis, "Prereq Review #1: Logarithms", Stanford CS161, Summer 2022.
  10. 金沢工業大学 数理工教育研究センター「対数計算」. 新潟大学工学部 木村研究室の講義資料「対数と指数」(2018年11月10日改訂). 岐阜工業高等専門学校の計測工学の講義資料「最小二乗法3」. OneMathematicalCat.org, "Introduction to Logarithms".
  11. デジタル大辞泉「自然対数」、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「常用対数」、日本大百科全書「自然対数」(竹之内脩). いずれもコトバンクで確認.
  12. 江頭靖幸「logの底はいくつですか?」東京工科大学 工学部 応用化学科 ブログ, 2015年9月1日.
  13. Microsoftサポート, "LOG function". Microsoft Learn, "Log function"(VBA). Python 3 Documentation, "math". MDN Web Docs, "Math.log()". PostgreSQL Documentation, "Mathematical Functions and Operators". MySQL 8.4 Reference Manual, "Mathematical Functions". SQLite, "Built-In Mathematical SQL Functions".

注

  1. 資料で確認できたのは「ログaのN」「ろぐ」「える・えぬ」と、英語のlog base、common log、natural logの形までで、表のほかの読みはこの形に当てはめた。英語の形は学習サイトOneMathematicalCat.orgによる。 ↩

  2. 解説は例をこう書いているだけで、底を省く決まりは示していない。教科書ごとの書き方までは確認していない。 ↩

  3. この章の記号と呼び名の年は、ミラーの資料による。原典とカジョリ『数学記号の歴史』は開いていない。ケプラー、カヴァリエリ、オートレッド、ストリンガムの記述は、ミラーが同書を引いたものである。ミラーはストリンガムを最初の例とは書いていない。 ↩

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