数式の読み方

累乗と指数の読み方

How to read powers and exponents

右肩の−2は「2回掛けた数で割る」と読む。

x²を「xの2乗」「x squared」と読むことと、底・指数・累乗の名前。0乗が1、負の指数が逆数、分数の指数が累乗根になる理由を、指数法則と動く図でたどる。

公式
7 本
人物
ミハエル・シュティーフェル、ルネ・デカルト、ジョン・ウォリス、アイザック・ニュートン、ヘンリー・オルデンバーグ
場面

−2回は掛けられない

は「エックスの2乗」と読み、を2回掛けたを表す。では、万有引力の法則をと書いたときの、右肩のは何を数えているのか。回掛けることはできないので、は「を2回掛けた数で割る」、つまりを表す。

分数も右肩に乗る。は「エーの2分の1乗」と読み、と同じ数だ。0でない数は、どれも0乗すると1になる。

3つとも、思いつきで決めた約束ではない。掛け算が指数の足し算になるという決まりを、0や負の数や分数でも崩さないように選ぶと、ほかの答えが残らないのである。

三平方の定理の、質量とエネルギーの等価性の、ケプラーの第三法則の、放射性崩壊の。右肩に乗っているのは、2と3、そして時間を含むである。どれも、右肩を読み落とすと別の式になってしまう。

の2乗はだけに掛かり、には掛からない。

考え方

平方と立方、そしてn乗

日本語では、右肩の数に「乗」を付けて読む。は「エックスの3乗」、は「エックスのn乗」である。話し言葉では「の」を省き、「エックス2乗」とも言う。

英語には、2乗と3乗にだけ決まった言い方がある。4乗から先は、x to the fourth powerのようにpowerを使う。

式日本語英語
エックスの2乗x squared
エックスの3乗x cubed
エックスの4乗x to the fourth power
エックスのn乗x to the nth power、x to the power of n
アールのマイナス2乗r to the minus two、r to the negative two
エーの2分の1乗a to the one-half
イーのマイナスラムダティー乗e to the minus lambda t

表の上の2行には、図形の名前が入っている。squareは正方形、cubeは立方体である。日本語でも2乗を平方、3乗を立方と呼び、1辺3 cmの正方形の面積は cm²で「9平方センチメートル」、1辺3 cmの立方体の体積は cm³だ。を平方根、を立方根と呼ぶのも同じ流れだ。

4乗には、これにあたる身近な図形が無い。

式の各部分にも名前がある。下の大きなを底(てい)、右肩のを指数という。の全体、つまりを何個か掛けた数が、の累乗である。累乗は「べき」とも言い、漢字では冪と書く。

aⁿの各部分。下の大きなaが底で、掛ける数。右肩のnが指数で、aを何個掛けるかを表す。全体のaⁿを累乗と呼び、「aのn乗」と読む。

英語では、底がbase、指数がexponentで、指数はindexとも呼ぶ。紛らわしいのはpowerで、8 is a power of 2なら累乗を、2 to the power of 3なら指数を指している。

読み違えやすいのは、右肩の数が掛かる範囲だ。右肩の数は、すぐ左の1文字か、かっこでくくった全体にしか掛からない。はで、ではない。もとなり、とは別の数である。

とも別の式だ。ならだが、は6でしかない。

長い指数は、最後の「乗」で終わりを伝える。を「イーのマイナスラムダティー乗」と読めば、の全体が右肩にあるとわかる。なら「イーのマイナスラムダ乗、ティー」である。

考え方

1段下りるごとに2で割る

0乗と負の指数は、表を下へ延ばすと見えてくる。2の累乗を並べると、、で、指数が1減るたびに値は半分になる。同じ決まりで続ければ、次は、その次は、である。

2の累乗のはしご。上から2³ = 8、2² = 4、2¹ = 2、2⁰ = 1、2⁻¹ = 1/2、2⁻² = 1/4と並び、1段下りるごとに2で割る。2⁰と2¹の間の段が2^(1/2) = √2で、約1.41になる。

「2を0回掛ける」と考えると戸惑う。

しかし、何も足していない和を0とするように、何も掛けていない積は1と考えるのが自然だ。は、掛け算を始める前の出発点にあたる。

分数の指数は、段と段の間に入る。からまでの1段を、同じ倍率の2歩に分けると、1歩は約1.414倍。だからだ。この真ん中の段がである。3歩に分ければ1歩は約1.26倍で、最初の段がにあたる。

図形で言えば、は面積がの正方形の1辺、は体積がの立方体の1辺だ。平方根と立方根という名前も、この図形のとおりである。

式

指数法則が崩れないように

0乗、負の指数、分数の指数の意味は、2つの決まりから順に出てくる。ここでは底を正の数とする。

  1. 正の整数について、はを個掛けた数である。

  2. 掛けた個数を数えれば、掛け算は指数の足し算になる。たとえばである。

  3. 累乗をさらに累乗すると、指数の掛け算になる。である。

  4. 0乗。2でとおくと、でなければならない。両辺をで割ると、選べる値は1つしか残らない。

  5. 負の指数。2でとおくとになり、はに掛けて1になる数、つまり逆数とわかる。

  6. 分数の指数。3でとおくとになる。は、乗するとになる正の数、つまり正の乗根である。

  7. 一般の分数は、6の数を個掛けたものになる。

  8. 数で確かめる。なのでで、この2つを掛けると、2の決まりどおりに戻る。

手順4から7で決めた意味は、どれも手順2と3が成り立つことだけから出てきた。0乗を1以外にすると、手順2のが崩れる。

手順6で正の数を選んだのも、手順2から決まる。が偶数ならも乗するとになるが、は同じ数の2乗なので、負の数にはなれない。

底を正の数に限ったのには、わけがある。を、3乗するとになると決めたとしよう。ところがなので、手順3を使うとにもなり、答えが2つに割れてしまう。

指数がのような無理数のときは、有理数で近づけたときの極限として決める。、、と進み、に近づいていく。こうして指数はすべての実数に広がり、時間のように切れ目なく変わる量も、右肩に乗せられるようになった。

シミュレーション

指数のつまみを回す

指数のつまみを動かすと、上に出る値と日本語・英語の読み方、グラフが変わり、グラフを横になぞると底が変わる。どのでもグラフは点を通り、が負なら右下がり、0と1の間なら上にふくらむ。はしごは指数を等間隔に並べたもので、1段下りるごとに底で割り、やでは印が段の間に止まる。正方形と立方体の図では、やなら1辺がの図形の面積や体積が、やなら面積や体積がの図形の太い1辺が、にあたる。

考え方

5つの式を声に出す

三平方の定理のは、「エーの2乗たすビーの2乗は、シーの2乗」と読む。英語ならa squared plus b squared equals c squared。2乗は文字どおり正方形の面積で、3辺が3、4、5の直角三角形ならになる。斜辺だけを取り出すとと書け、ここで分数の指数が顔を出す。

質量とエネルギーの等価性のは「イーイコールエムシー2乗」、英語ではE equals m c squaredと読む。光の速さ m/sを2乗すると約 m²/s²で、質量1 g、つまり kgがすべてエネルギーに変わると、約 Jになる。右肩の8や16やは、10の累乗で桁の大きさを表している。

ケプラーの第三法則はと書き、「ティーの2乗は、エーの3乗に比例する」、英語ではT squared is proportional to a cubedと読む。両辺を2分の1乗すれば。周期を年で、軌道の長半径を地球が1になる単位で測ると、になる。火星はなので、年である。

逆2乗の法則は、力や光の強さが距離の乗に比例する形をいう。代表が万有引力の法則ので、は「アールのマイナス2乗」と読む。距離が2倍になればに、10倍になればに弱まる。火星は太陽から地球の1.52倍離れているので、届く日光の強さは地球の倍しかない。

放射性崩壊のは「エヌイコールエヌゼロ、イーのマイナスラムダティー乗」、英語ではN equals N sub zero e to the minus lambda tと読む。

ここでは、時間そのものが右肩に乗っている。

半減期で書き直すとで、指数は分数にも小数にもなる。炭素14の半減期は5730年で、その半分の2865年がたつと、残りは、つまり70.7%。こうした途中の値を出せるのは、分数の指数に意味を決めておいたからだ。

歴史

aaのデカルト、a⁻¹のニュートン

いまの右肩の書き方は、17世紀に2段階で固まった。先に正の整数の指数が、あとから負と分数の指数が加わる。それより前は、書き方が人によって違っていた。

ミラーの資料によれば、exponentという用語を持ち込んだのは、1544年のミハエル・シュティーフェル『算術全書』だ。8のexponensを3、32のexponensを5とし、2を何個掛けたかの数をこう呼んでいる。同じ資料は、1634年にピエール・エリゴンが数字を横に並べてa2、a3と書いたこと、1636年にジェームズ・ヒュームがローマ数字を右肩に上げて書いたことも挙げている。

1637年、デカルトは『幾何学』の第1巻にこう書いた。「aaまたはa²で、aをそれ自身に掛けることを表し、a³で、それにもう一度aを掛けることを表す。以下、限りなく続く」。

いまと同じ形である。

ただし、デカルト自身は2乗をほとんどaaと書いた。1886年にパリで出た新しい版の注によれば、同じ因数が2つだけのとき、デカルトはほぼいつも因数をくり返して書いている。その版の本文の2乗は、どれも編者がa²の形に直したものだ。

すぐあとでデカルトは、a²やb³を代数の習わしに従って平方や立方と呼ぶが、自分はふつう単なる線と考えている、と断る。2乗の量を面積に、3乗の量を体積に縛らない、という宣言だ。

負と分数の指数は、先に言葉として現れた。ミラーの資料によれば、ジョン・ウォリスは1656年の『無限算術』で分数の「指数(indices)」を論じた。負の指数を使うことも、ニュートンより先にウォリスが提案している。ただ、どちらも記号として式に書いてはいない。

記号にしたのはニュートンである。

1676年6月13日付で、王立協会のヘンリー・オルデンバーグにあてた手紙の写しが、ケンブリッジ大学図書館に残る。ライプニッツが知りたがっていた、無限級数の作り方を伝える手紙だ。ニュートンは、一般の指数で書いた定理を示すと、すぐに記号の約束を説明した。

「解析家たちが、などの代わりに、と書くように、私は、、などの代わりに、、と書き、、、の代わりに、、と書く」。根号の書き方は、いまの形に直してある。

同じ手紙には、指数が整数でも「いわば分数」でもよく、正でも負でもよいという断りもある。示された定理は、二項定理を分数と負の指数へ広げたものだった。

同じ年の10月24日付で送った2通目の手紙で、ニュートンは定理にたどり着いた道を振り返っている。数学を学び始めたころにウォリスの本を読み、面積のわかる曲線、、の間に、円を表すを挟み込もうとしたという。手がかりは、面積の式の係数がからまで、つまり1、11、121、1331、14641の数字と同じ並びになることだった。

右肩には、0も分数も当たり前のように並んでいる。

使いどころ

表計算とプログラムの右肩

右肩の数は、表計算やプログラムでは記号1つで打つ。Excelなら=2^3、PythonとJavaScriptなら2 ** 3で、どれも8を返す。Microsoftのサポートページは、Excelの^を「累乗」の演算子として載せている。分数も打てる。=(3^2+4^2)^(1/2)の答えは5だ。

まず気をつけたいのが、負の符号である。数学ではだが、Excelでは優先順位の表で負の符号が累乗より先に来るので、=-3^2の答えは9である。Pythonの公式ドキュメントは、累乗は左にある単項演算子より強く結びつくとし、-1**2はになると書く。JavaScriptは、どちらにも読める-2 ** 2を構文エラーとして受け付けない。

3つの扱いがそろわないので、負の数を累乗するときは、かっこを付けて(-3)^2と書いておくと安心だ。

もう1つの落とし穴が、小数の誤差だ。Pythonで8 ** (1/3)は2.0になるのに、8 ** (2/3)は3.9999999999999996になる。1/3も2/3も2進数の小数ではちょうど表せず、そのわずかなずれが、2/3のときだけ答えの最後の桁に出る。桁を丸めて4と読めば問題ない。負の底では、(-8) ** (1/3)がではなく複素数を返し、ドキュメントにも負の数の分数乗は複素数になるとある。底を正の数に限った事情と、根は同じだ。

は、手順4の割り算ができないので、指数法則だけでは決まらない。それでもPythonは0 ** 0を1とし、ドキュメントは、そう定めるのはプログラミング言語でよくあることだと書いている。

単位の右肩にも数が乗る。m²は平方メートル、m³は立方メートル。加速度のm/s²は「メートル毎秒毎秒」と読み、m s⁻²と書いても同じ単位である。

読んだあとは、次の順に手を動かすとよい。

  1. 電卓か表計算でが1024になるのを見てから、、、を打ち、0.5、1.414…、4が出るかを見る。
  2. 動く図のつまみで底を1にし、を動かしても値が1のまま動かないことを見ておく。を1より小さくすると、はしごの値の並びが上下で逆になる。
  3. ケプラーの第三法則で、3/2乗が惑星の周期をどう決めるかを読む。指数を逆にたどる計算は、対数の法則へ進む。
  4. 和と積分の記号はΣと∫の読み方、λやμはギリシャ文字の読み方で読める。

参考文献

  1. R. Descartes, La Géométrie (Leiden, 1637), Livre premier. 引用はA. Hermann版(Paris, 1886)の翻刻による。Project Gutenberg, eBook #26400.
  2. I. Newton, 1676年6月13日付のH. Oldenburgあての手紙の写し, Cambridge University Library, MS Add. 3977.6. The Newton Projectの翻刻(NATP00182).
  3. I. Newton, 1676年10月24日付のH. Oldenburgあての手紙(1700年ごろの写し), Cambridge University Library, MS Add. 3977.1. The Newton Projectの翻刻(NATP00196).
  4. Jeff Miller, "Earliest Uses of Symbols of Operation"(EXPONENTSの項), "Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics (E)"(EXPONENTの項), MacTutor History of Mathematics, セント・アンドルーズ大学.
  5. Microsoftサポート「演算子とExcelでの優先順位」.
  6. Python 3 Documentation, "The Python Language Reference" 6.5 The power operator; "Built-in Types"(数値型の演算); "Built-in Functions" pow.
  7. MDN Web Docs, "Exponentiation (**)".

姉妹サイト

株式会社Game が運営するメディアです。