結晶の密度

Density of a crystal from its unit cell

箱の大きさはX線で測り、中の原子の数は密度から数えた。

結晶の密度は、単位格子に入る粒子n個の質量を単位格子の体積で割った値。nは、金属なら原子の数、イオン結晶なら組成式の組の数になる。

年代
1922年(W・L・ブラッグのノーベル賞講演)
習う
高2・化学・物質の状態と平衡
レベル
基本(例題 4 問)
人物
ウィリアム・ローレンス・ブラッグ、ウィリアム・ヘンリー・ブラッグ
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

中身は密度で数えた

X線の写真は、単位格子の形と大きさを教えてくれる。では、その箱に原子がいくつ入っているかは、どうやって決めたのか。

W・L・ブラッグは1922年9月6日、1915年のノーベル物理学賞の受賞講演で、結晶を解析する最初の段階をこう説明した。X線が反射する角を測って単位格子の大きさを決めれば、「結晶の密度と分子1個の質量を使って、その中にいくつの原子や分子が含まれるかを計算できる」。原子がどう並ぶかを決めるのは、その次の段階だという。同じ講演でブラッグは、塩化ナトリウムの結晶ではナトリウムと塩素が分子をつくらず、交互に並んでいるとも述べた。この結晶で数えるのは、分子ではなくNaClの組になる。

途中の計算

箱1個の重さを体積で割る

は結晶の密度(g/cm³)、は単位格子に入る粒子の数、はモル質量(g/mol)、はアボガドロ定数、は立方体の単位格子の1辺、つまり格子定数(cm)である。

  1. 粒子1個の質量をモル質量から出す

  2. 単位格子に入る個ぶんの質量にする

  3. 立方体の単位格子の体積を出す

  4. 質量を体積で割る

同じ箱をすき間なく積むと結晶全体が埋まるので、箱1個の密度がそのまま結晶の密度になる。分母がで済むのは箱が立方体だからで、六方最密構造のように立方体でない箱なら、体積を別に求めて分母に置く。

式の中で迷いやすいのはだ。金属なら単位格子に入る原子の数で、体心立方格子は2、面心立方格子は4になる。イオン結晶では、陽イオンと陰イオンを組成式の組にまとめて数え、も組成式の式量にそろえる。塩化カリウムKClで確かめよう。

  1. 塩化物イオンを角と面の中心で数える

  2. カリウムイオンを辺の中点と中心で数える

塩化カリウムの単位格子。塩化物イオンは8つの角と6つの面の中心に、カリウムイオンは12本の辺の中点と立方体の中心にある。どちらも4個ずつで、KClが4組入る。

辺の中点にあるイオンは、その辺を囲む4つの単位格子で分けあうので、ずつしか入らない。どちらのイオンも4個で、KClが4組。うっかりイオンの総数8をに入れ、にKClの式量を使うと、密度は2倍に出てしまう。

続いて単位をそろえる。米国標準局が25 °Cで測った塩化カリウムの格子定数は0.62931 nmだ。密度をg/cm³で出すなら、をcmに直す。1 nmは cm、1 pmは cmである。

  1. nmをcmに直す

  2. 3乗し、10の指数を3倍にする

  3. 手順4にとを入れる

米国標準局が同じ格子定数から出した値は1.9865 g/cm³で、差は0.02%に満たない。が cm³の桁になると知っていれば、指数の書き間違いにすぐ気づけるだろう。分母のは約150 cm³で、単位格子を1 molぶん、つまり個積んだ体積にあたる。その中にKClが4 mol、約298 g入っていると読めば、式の意味もつかみやすい。

最後に、式を逆向きに解く。

  1. について解く

  2. について解く

手順10が、ブラッグの言う「中にいくつ含まれるか」の計算にあたる。手順11は、結晶からアボガドロ定数を測る式だ。もっとも、2019年からアボガドロ定数は /molとちょうどに決められていて、測る量ではなくなった。それでも、シリコンの単結晶の球で原子を数える測定は、新しいキログラムの定義の値を決めるときに使われた。

応用

塩も蛍石も同じ式で

同じ式が、性質のまったく違う結晶に使える。米国標準局が1953年にまとめた資料にある25 °Cの格子定数を、今の原子量とともに手順4へ入れると、次のようになる。

物質並び方格子定数計算した密度資料の密度
ニッケル面心立方格子原子4個0.35238 nm8.910 g/cm³8.907 g/cm³
フッ化カルシウム蛍石型CaF₂が4組0.54626 nm3.181 g/cm³3.181 g/cm³
ゲルマニウムダイヤモンド型原子8個0.56576 nm5.328 g/cm³5.325 g/cm³

目を引くのは、ニッケルとフッ化カルシウムのがどちらも4なのに、中身がまるで違うことだ。ニッケルの4は原子4個だが、フッ化カルシウムの4はCaF₂の組4つで、イオンにすればが4個とが8個、合わせて12個になる。米国標準局の資料は、蛍石の構造を決めたのを1914年のW・H・ブラッグとし、単位格子に組成式の組が4つ入ると書いている。ゲルマニウムはダイヤモンド型で、面心立方格子の位置の4個に加えて、単位格子の内側にも4個の原子が入る。

どの行も、計算した値と資料の値が3桁以上そろう。つまり、格子定数とさえ正しく押さえれば、密度は箱1個から決まる。

例題と解説

逆向きに解いて格子を当てる

アボガドロ定数は /molとする。

例題 1基本pmで与えられた格子定数

塩化セシウムCsClの結晶では、立方体の単位格子の8つの角に塩化物イオン、中心にセシウムイオンがある。格子定数は412 pm、式量は168.4である。密度を有効数字2桁で求めよ。

解説を見る

角の塩化物イオンは個、中心のセシウムイオンは1個なので、CsClは1組入っていて。1 pm = cmより cmで、 cm³である。

例題 2基本密度から格子の形を当てる

ある金属の結晶は立方体の単位格子をもち、格子定数は0.330 nm、密度は8.57 g/cm³、モル質量は92.9 g/molである。単位格子に入る原子の数を求め、体心立方格子と面心立方格子のどちらかを答えよ。

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cm³を、手順10に入れる。

なので、体心立方格子である。

例題 3入試酸化マグネシウムからアボガドロ定数

酸化マグネシウムMgOの結晶は塩化ナトリウム型で、格子定数は0.421 nm、密度は3.58 g/cm³である。式量を40.3として、アボガドロ定数を有効数字2桁で求めよ。

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塩化ナトリウム型なので、手順5と6と同じくとが4個ずつ入り、。 cm³を手順11に入れる。

例題 4入試ダイヤモンド型のケイ素

ケイ素の結晶はダイヤモンド型で、面心立方格子の位置に加え、単位格子を8つに分けた小さな立方体のうち、互い違いの4つの中心にも原子がある。格子定数を0.543 nm、モル質量を28.1 g/molとする。(1)単位格子に入る原子の数(2)密度(3)最も近い原子どうしが接する球とみたときの充塡率を求めよ。(2)は有効数字3桁、(3)は2桁とし、、とする。

解説を見る

(1)面心立方格子の位置に4個、内側に4個で、。 (2) cm³である。

(3)内側の原子は、小さな立方体(1辺)の中心にあり、その角の原子と体対角線の上で接する。原子の中心間の距離はで、これが半径の2倍なので。

原子が占めるのは34%ほどで、面心立方格子の74%の半分にも届かない。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第5節「化学」3(1)ア(ア)㋒ 固体の構造と内容の取扱い、99-101ページ
  2. W. L. Bragg, "The diffraction of X-rays by crystals", Nobel Lecture(1922年9月6日)
  3. H. E. Swanson, E. Tatge, Standard X-ray Diffraction Powder Patterns, National Bureau of Standards Circular 539, Vol. 1 (1953), pp. 13, 18, 65, 69(ニッケル、ゲルマニウム、塩化カリウム、フッ化カルシウムの格子定数と密度。フッ化カルシウムの構造を1914年にW・H・ブラッグが決めたこと)
  4. Bureau International des Poids et Mesures, The International System of Units (SI), 9th edition(2019)、2.3.1節(アボガドロ定数の値)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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