3乗の和と差の因数分解

Sum and difference of cubes

タクシーの番号1729は、3乗の和に2通りに分かれる。

3乗の和は2数の和で、3乗の差は2数の差で割り切れる。残る2次式は実数の範囲では分かれず、1の3乗根ωを使えば1次式の積になる。

年代
1921年(ハーディーが書き残したタクシー1729)
習う
高2・数学II・いろいろな式
レベル
基本(例題 4 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

タクシー1729の素因数

。この数は、2つの正の整数の3乗の和に2通りに分かれる。

G. H. ハーディーは1921年、王立協会の会報に載せたラマヌジャンの追悼文に、ある見舞いの日のことを書いている。1917年から重い病で療養所を移りながら過ごしていたラマヌジャンを、パトニーに訪ねた日だ。乗ってきたタクシーの番号は1729。ハーディーが、つまらない数に思えるので縁起が悪くなければよいが、と言うと、ラマヌジャンは「いや、とても面白い数だ」と応じ、2つの立方数の和として2通りに表せる最小の数だと答えたという。追悼文には、この番号にという素因数が添えてある。

ハーディーが添えた13と19は、実は2通りの分け方の中に隠れている。、。つまり3乗の和は、もとの2数の和で割り切れるのだ。

途中の計算

4つの項が2組で消える

右辺を展開すると、6つの積のうち4つが2組になって消え、両端のとだけが残る。

  1. 2次の因数にとを分けて掛ける

  2. それぞれのかっこを外す

  3. 符号が逆のどうし、どうしを消す

横にa²、−ab、+b²、縦にaと+bを並べた掛け算の表。−a²bと+a²b、+ab²と−ab²が斜めに隣り合って打ち消し合い、a³とb³だけが残る。

2次の因数で真ん中がなのは、この打ち消しのためだ。を掛けて出るを、を掛けて出るが消す。の組も同じ。

では、展開する前からで割り切れると見抜けるのか。手がかりは因数定理にある。をの式とみてを入れると、値は0。だからを因数にもつ。あとは割り算の筆算を1段ずつ式に直せば、残りの因数も決まる。

  1. を代入する

  2. をと書き換える

  3. をと書き換える

  4. 残りのをとまとめる

余りは0で、商は。からを引いて同じ式にたどり着く道もあり、3乗の展開の途中の計算で追える。

  1. をに置き換える

2本を並べると、符号の並びに決まりが見えてくる。1次式の符号は左辺と同じ。2次式の真ん中はその逆で、最後のはどちらもになる。覚え違えやすいのは、やはり真ん中だろう。ただ、差の式で真ん中がになるのは、手順8でをに替えたとき、がに変わったからにすぎない。理由が分かれば迷わない。

2次の因数は、まだ分けられるのだろうか。の2次式とみて、判別式を調べる。

  1. をの2次式とみて判別式を出す

  2. 平方完成で値の符号を確かめる

b = 1のときのy = a² − a + 1のグラフ。頂点はa = 1/2で高さ3/4にあり、放物線はa軸に一度も届かない。

ならで、係数が実数の1次式には分かれない。手順10の右辺を見ても、のとき以外は正だ。したがって実数の範囲でとなるのは、のときしかない。も、をに替えれば同じことが言える。

ところが、複素数まで広げると話が変わる。を解いてみよう。

  1. 差の公式で左辺を因数分解する

  2. 2次の因数を0とおき、解の公式で解く

虚数の解の一方をとおくと、もう一方はに等しい。しかもとが成り立つので、2次式も1次式の積に分けられる。

  1. とを使って分ける

右辺を展開すれば、の係数は、の係数はで、左辺と一致する。3乗の差は、という3つの1次式の積になった。を掛けることは、複素数平面で原点のまわりに120°回すことにあたる。の3つの解が、1つの解にとを掛けてそろうのもこのためで、カルダノの公式もを使って残り2つの解を書いている。

応用

1001と999で割り算を軽くする

3乗の和と差は、桁の多い数の割り算を軽くしてくれる。たとえばを和の公式で分けると、91をさらに分けて。

910637なら、上の3桁と下の3桁に分けてと書ける。を使うと、次の形に変わる。

の部分は、7でも11でも13でも割り切れる。だから910637を3つの数で割った余りは、を割った余りと等しい。なので、910637は7と13で割り切れ、11では割り切れない。6桁の割り算が3桁の引き算1回で片づくのだから、思いのほか手軽だ。

差の公式からはが出る。こちらは3桁ずつ区切って足すだけでよい。123321ならなので37で割り切れ、実際にとなる。

1の3乗根は、電気の世界にも顔を出す。を図にすれば、長さの等しい3本の矢印を120°ずつ回して並べた形で、足すと0に戻る。三相交流は、大きさが等しく位相が120°ずつずれた3つの交流の組。3本の線に同じ負荷をつなげば、3つの電流も大きさがそろって位相が120°ずつずれ、和はどの瞬間も0になる。

例題と解説

6乗も、3乗根の分母も

例題 1基本和と差を見分ける

(1)(2)を因数分解せよ。

解説を見る

(1)なので、差の公式に当てはめる。

(2)なので、和の公式に当てはめる。

2次式の真ん中は、(1)が、(2)がで、どちらも左辺と逆の符号になっている。

例題 2基本6乗の差を2通りに分ける

を、(1)2乗の差とみて(2)3乗の差とみて、それぞれ因数分解せよ。

解説を見る

(1)とみる。

それぞれに差と和の公式を使う。

(2)とみる。

はすぐ分かれるが、はこのままでは分かれて見えない。と読みかえると、2乗の差になる。

どちらも同じ4つの因数に行き着くが、2乗の差を先に使うほうが早い。

例題 3入試3乗根を含む分母を有理化する

の分母を有理化せよ。

解説を見る

、とおくと、分母はの形をしている。を掛ければ、分母はになる。

分子と分母にを掛ける。

電卓で確かめると、どちらも約0.6106になる。

例題 4入試2次式で割った余りを3乗根で求める

をで割った余りを求めよ。

解説を見る

手順11からなので、の解とではとなり、指数は3で割った余りだけが効く。

余りをとおく。を入れると、。でも同じように、となる。2式を引くとで、から、と決まる。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第2節「数学Ⅱ」3(1)いろいろな式 ア(ア)(イ)(ウ)(オ)、54-57ページ
  2. G. H. Hardy, "Srinivasa Ramanujan, 1887-1920", Proceedings of the Royal Society of London. Series A 99 (1921), xiii-xxix(タクシー1729の話はxxviiiページ)。MacTutor History of Mathematics Archiveの写し
  3. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Srinivasa Aiyangar Ramanujan", MacTutor History of Mathematics Archive(1917年からの病と療養)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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