数式の読み方

√と±の読み方

How to read the square root and plus-minus signs

√4は2だけを指す。−2も書くには±が要る。

√(ルート)と±(プラスマイナス)の読み方と、根号の各部分の名前。√が0以上の1つを選ぶわけ、横棒の届く範囲、∛の3の意味を、解の公式とカルダノの公式、黄金比で読む。

公式
5 本
人物
クリストフ・ルドルフ、ウィリアム・オートレッド、アルベール・ジラール、ルネ・デカルト、ミシェル・ロル
場面

デカルトが2行に分けた答え

1637年、デカルトは『幾何学』の第1巻で、方程式を円と直線の作図で解き、答えを2行に分けて書いた。

2つの式で違うのは、√の前の符号だけだ。今なら±を使ってと1行に収め、「プラスマイナス」と読む。±は、+側と−側にある2つの答えを、1つの式に詰めた印である。

そもそも、なぜ√の前の符号を2通りに書き分けるのか。√は、2乗してその数になる数のうち、0以上の1つしか指さないからだ。2乗して4になる数は2と−2の2つあるが、√4は2だけを指す。−2も書きたいときは、前に±を付けてとし、「プラスマイナスルート4」と読む。二次方程式の解の公式の±も、同じ役目をしている。

日本では、√に中学3年で出会う。学習指導要領は3年の「数と式」で扱う用語と記号に「根号」と「√」を挙げ、解の公式も同じ学年に置いている。±も、この解の公式と一緒に目にすることになる。

考え方

ルート、平方根、プラスマイナス

では、英語ではどう読むのか。は日本語で「ルートa」、または「平方根a」と読む。英語ではthe square root of a、短くroot aである。ルートは、英語のrootをそのまま取り入れた読み方だ。

平方は2乗のことで、面積がaの正方形の1辺がになる。立方は3乗のことで、体積がaの立方体の1辺が立方根にあたり、英語ではthe cube root of aと読む。

式日本語英語
ルートa、平方根athe square root of a、root a
aの立方根、aの3乗根the cube root of a
aのn乗根the nth root of a
プラスマイナスルートaplus or minus the square root of a
aマイナスプラスba minus or plus b

表の下の2行にある±と∓を、まとめて複号と呼ぶ。日本大百科全書の「複号」の項によると、±2は「+2と−2」の省略で、は、とという2つの式を略したものである。

上下を逆にした∓は、±と組にして使う。三角関数の加法定理では、左の±で上の+を選んだら、右の∓でも上の−を選ぶ。この約束を複号同順と呼び、デジタル大辞泉の「複号同順」の項も、この加法定理を例に挙げている。

図

横棒の下だけが中身

∛(10 + √108)の各部分。折れた線が根号、左上の小さな3が何乗根かを示す数、外側の横棒の下にある10 + √108の全体が根号の中の数。内側の√108の横棒は108だけに掛かる。

√の記号は、左の折れた線と、上に伸びる横棒でできている。全体を根号と呼び、横棒の下にある数や式が、根号の中の数である。英語では根号をradical sign、中の数をradicandと言う。左上の小さな数は何乗根かを示し、こちらは英語でindexと言う。根を求めることを「開方」と言い、正の数aの平方根を求めることを「aを平方に開く」とも言う。

横棒がどこまで伸びるかで、式の値が変わる。三平方の定理で斜辺を出すは、横棒がの全体に掛かる。直角をはさむ2辺が3と4なら。横棒がだけに掛かると読み違えれば、になってしまう。

正規分布のでは、横棒はだけに掛かり、は根号の外にある。なら山の高さは。まで横棒の下に入れてと読むと、のとき分母は10.03から5.01に縮み、山の高さが2倍に狂う。

紙の上の横棒は、かっこの役をしている。

ところが、1行で打つ文字や計算機の式では横棒を引けない。そこでは√(b² − 4ac)、プログラムならsqrt(b**2 - 4*a*c)と、かっこで範囲を閉じる。Unicodeの√(U+221A SQUARE ROOT)も1文字ぶんの記号で、後ろの式の上まで横棒を伸ばすことはできない。

考え方

0以上の1つを選ぶ約束

なぜ√は、2つある平方根のうち0以上の1つだけを指すのか。

1つに決めておかないと、のような式の値さえ定まらないからだ。どちらの符号も取れるなら、この和は4通りの値になってしまう。日本大百科全書の「平方根」の項は、正の数の平方根を考えるとき根号は常に正の数を表すとし、これを「根号の規約」と呼んでいる。

ただ、この約束から、少し意外な式が出てくる。はではなくだ。ならで、元の−3には戻らない。

小さな3が付くと、事情が変わる。は3乗してaになる数で、実数の中にはどんなaにもちょうど1つある。、。負の数の立方根も、ふつうの実数として出てくる。左上の数nが偶数なら、正の数のn乗根は正と負の2つあり、記号はその正のほうを指す。負の数の平方根や4乗根は、実数の中には無い。nが2のときだけは、2を書かずに√と書く。

カルダノの公式の記事にある例題が、負の数の立方根をうまく使っている。の後ろの項は、という負の数の立方根で、値は。前の項はで、黄金比そのものだ。足すと、ちょうど1になる。黄金比の式の+側と−側が、2つの立方根の中に隠れていた。

式

±が生まれる1行

±は、2乗を外す1行で生まれる。()を平方完成して、解の公式までたどってみる。

  1. 両辺をで割り、定数の項を右辺へ移す。

  2. 両辺にを足し、左辺を2乗の形にまとめる。

  3. 右辺が正なら、2乗して右辺になる数は、0以上の√と、その符号を変えた数の2つある。ここで±が生まれる。

  4. 分母のはだが、±が両方の符号を含むので、絶対値を外してと書いてよい。

  5. を右辺へ移すと、解の公式になる。

  6. +側を、−側をと書くと、和と積は係数だけで決まる。

  7. 黄金比の方程式は、、で、√の中は5になる。

  8. カルダノの公式は、の解を、+と−の両方を使って1つの式に書く。

  9. カルダーノが『アルス・マグナ』で解いたは、で、√の中は108になる。

解の公式を、2つの解の真ん中にあたる−b/2aと、真ん中からのずれにあたる√(b² − 4ac)/2aに分けた図。+側はずれを足し、−側は引くので、aが正なら+側が右の点になり、負なら左右が入れ替わる。

手順4は見落としやすい。が負ならも負なので、+側は、真ん中から左へずれた点になる。つまり、±の+が、いつも右の点を指すとは限らない。

解の公式とカルダノの公式では、+と−の役目が違う。解の公式の±は「+か−か」を表し、答えが2つに分かれる。カルダノの公式の+と−は両方とも使い、2つの立方根を足して1つの答えを作る。手順9では、−側の立方根が負の数になり、足し算の中で引き算の役をしている。

シミュレーション

+側はどちらの点か

a、b、cのつまみで放物線を動かすと、x軸との交点に+と−の札が付き、真ん中のから矢印が伸びる。公式の±では、上の+と下の−が交互に四角で囲まれ、矢印もそのたびに反対の点へ向きを変える。最初の形は黄金比ので、a、b、cの符号をすべて逆にすると、交点は同じ2点のまま+の札だけが左へ移る。根号の横棒を「b²だけ」に切り替えると、ずれた値に×が付き、代入してもが0にならないことが縦の破線で分かる。

作ってみて意外だったのは、横棒をb²だけにしたときの2つのずれた値が、代入するといつも同じになることだ。2つとも真ん中のから同じ距離だけ離れているので、左右対称な放物線の上では同じ高さに来る。

考え方

√の中が負になったら

√の中のが負になると、放物線はx軸と交わらない。

実数は2乗しても負にはならないので、負の数の√は実数では表せない。たとえばでは、√の中がになる。

数を複素数まで広げると、話が続く。2乗して−1になる数をと書き、と決めれば、解は。ここでも±は、+側と−側の2つの解を並べている。シミュレーションで√の中を負にすると、読み出しにこの形の解が出る。

ただ、負の数の√には落とし穴がある。は、aとbが0以上のときの規則だ。なのに、規則どおりに1つの√にするとになってしまう。

カルダノの公式では、実数の解が3つあるときに限って√の中が負になる。ボンベリが1572年の『代数学』で、負の数の平方根を、計算に使える道具として扱ってみせた経緯は、カルダノの公式の記事にある。

歴史

点を打った根号、横棒をつないだ根号

√が印刷されてから、横棒が付き、何乗根かを示す数が開いた所に収まるまで、160年あまりかかった。

根という言葉そのものは古い。ミラーの資料とMacTutorの伝記によると、9世紀のフワーリズミーは平方の元になる未知の数を「根」と呼び、1140年ごろにロバート・オブ・チェスターがラテン語に訳したとき、その語はradixになった。記号では、ピサのレオナルド(フィボナッチ)が1220年の『実用幾何学』で、Rに斜線を引いた形を平方根の意味で使っている。

√が印刷されて現れるのは、1525年にストラスブールで出たクリストフ・ルドルフの『コス』である。ドイツ語で書かれた最初の代数学の本で、ルドルフは平方根に√を使った。ただし横棒は無い。MacTutorの伝記によると、ルドルフはを「√.12+√140」と書いた。√のすぐ後ろの点が、根が後ろの和の全体に掛かる印である。点が無ければと読まれ、値はおよそ4.88から15.30に変わる。

今の横棒の仕事を、最初は1つの点がしていた。

ルドルフは、立方根と4乗根には数を添えず、√の形を変えた別の印を使った。MacTutorの伝記には、折れ線を2つ連ねた印と、3つ連ねた印が小さな図で載っている。

この√は根を表す語の頭文字rが崩れた形だ、という説明は今もよく見る。デジタル大辞泉は「root(根)のrの変形」とし、ミラーの資料によれば、オイラーもラテン語radixのrが変わった形と考えていた。しかし『数学記号の歴史』を書いたカジョリは、この説に反対した。MacTutorの伝記が引くフォーゲルの解説によれば、ルドルフは、それまでの代数の書き手たちが使っていた点に斜めの線を足して、2乗根、3乗根、4乗根の印を作った。

何乗根かを示す数を根号の開いた所に書く形は、アルベール・ジラールが1629年の『代数学における新しい発見』で、立方根について提案した。それを最初に採り入れたのは、1690年のミシェル・ロル『代数学論』だという。±のほうは、ウィリアム・オートレッドが1631年の『数学の鍵(Clavis Mathematicae)』で使った。3つとも、ミラーの資料がカジョリの本を引いて挙げている。

横棒を根号につないだのは、デカルトである。1637年の『幾何学』第1巻は、での平方根を取ること、での立方根を取ることを表すと断っている。立方根は小さな3でなく、立方を表すCの字で示した。

冒頭の2行の答えには、「この場合は2通りに表される」という一言が添えてある。オートレッドの±より6年あとの本だが、デカルトはここで±を使っていない。続けて、円が直線と交わりも接しもしないときは、方程式に根は無いと書く。√の中が負になる場合を、作図の言葉で言い表していたことになる。一方、では+側のだけを書いた。もう1つの解は負の数で、デカルトは第3巻で負の根を「偽の根、つまり無より小さい根」と呼んでいる。

√aが1つの値か2つの値かは、その後も本によって違った。ミラーの資料は、1895年2月の『マセマティカル・ガゼット』でヘッペルが書いた一文を引く。クリスタルやトドハンターら大半の著者に従い√aは1つの値と考えるべきだが、スミスの代数学の本や、ブリタニカ百科事典でケランドが書いた項は、2つの値としている、という。√4が2だけを指す約束は、19世紀の終わりにも、まだ念を押す必要があったのかもしれない。

日本語の「平方根」と「複号」は、明治の辞書から用例をたどれる。日本国語大辞典は、「平方根」の用例に1886年のヘボンの『改正増補和英語林集成』を、「複号」の用例に1889年の『数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書』を挙げている。

使いどころ

測定値の±と、計算機のルート

±には、もう1つの使い方がある。測定の結果に付ける±だ。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が測定の不確かさについてまとめた手引きは、100 gの分銅の質量を gと書く例を載せている。ここでの±は「2つの値」ではなく「この幅の中」を表す。手引きによれば、は、が以上以下にあると考えられることの書き方で、この例は幅を標準偏差の2倍にとり、およそ95%の信頼水準になる。日本大百科全書の「複号」の項も、測定のを不等式の略記と説明する。

幅の意味は、正規分布で読める。平均から標準偏差の±1倍までに、全体の約68.3%が入る。±2倍までなら約95.4%で、95%ちょうどにしたいときは±1.96倍をとる。つまり同じ記号でも、解の公式の±は「どちらか」、測定値の±は「その間」を表している。

計算機の中のルートは、√の約束をそのまま守っている。ExcelのSQRT関数は0以上の平方根を返し、負の数を渡すとエラー値#NUM!になる。JavaScriptのMath.sqrt(-1)はNaNで、筆者が手元のPython 3.14でmath.sqrt(-1)を試すと、ValueErrorで止まった。負の数を扱いたいときは、Pythonならcmath.sqrt(-4)で2jが返る。jは虚数単位である。立方根には専用の関数があり、JavaScriptのMath.cbrt(-8)もPythonのmath.cbrt(-8)も−2を返した。

文字として打つなら、Unicodeに√(U+221A)、∛(U+221B)、∜(U+221C)、±(U+00B1)、∓(U+2213)がある。5乗根から先の文字は無いので、を1行で書くときはとすることになる。

読んだあとは、次の順に手を動かすとよい。

  1. 電卓でとを計算し、横棒の範囲で答えが5と7に分かれるのを見る。
  2. 上のシミュレーションで、a、b、cの符号をすべて逆にする(、、)。交点は動かず、+の札だけが左へ移る。
  3. 二次方程式の解の公式で平方完成の図を、カルダノの公式で√の中が負になる場合を読む。
  4. 根を分数の指数で書く方法は累乗と指数の読み方、正規分布のとはギリシャ文字の読み方で読める。

参考文献

  1. R. Descartes, La Géométrie (Leiden, 1637), Livre premier, Livre troisième. 引用はA. Hermann版(Paris, 1886)の翻刻による。2乗の書き方と等号は編者が改めている。Project Gutenberg, eBook #26400.
  2. Jeff Miller, "Earliest Uses of Symbols of Operation"(Square root、Plus-or-minus symbolの項), MacTutor History of Mathematics, セント・アンドルーズ大学.
  3. Jeff Miller, "Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics (R)"(RADIX, ROOT, UNKNOWN, SQUARE ROOTの項), "… (A)"(ALGEBRAの項), MacTutor History of Mathematics.
  4. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Christoff Rudolff"(K. Vogel, Dictionary of Scientific Biographyの項を引く), "Abu Ja'far Muhammad ibn Musa Al-Khwarizmi", MacTutor History of Mathematics.
  5. F. Cajori, A History of Mathematical Notations, Vol. I (Open Court, 1928). 本体は未見。本文のカジョリにかかわる記述は文献2による孫引きで、文献2はこの本の90、245、371、372、375頁を引く.
  6. 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』第2章第3節 数学. 日本文教出版が公開する中学校数学の新旧学習指導要領の対照表で確認.
  7. 日本大百科全書(ニッポニカ)「平方根」「累乗根」(三輪辰郎)、「複号」(竹内芳男)、小学館. 改訂新版 世界大百科事典「平方根」(西村純一)、平凡社. デジタル大辞泉「平方根」「開法(開方)」「複号」「複号同順」、精選版 日本国語大辞典「根号」「平方根」「複号」. いずれもコトバンクで確認.
  8. NIST Physical Measurement Laboratory, "Expanded uncertainty and coverage factor", "Examples of uncertainty statements"(Essentials of expressing measurement uncertainty).
  9. Microsoftサポート「SQRT関数」. Python 3 Documentation, "math", "cmath". MDN Web Docs, "Math.sqrt()", "Math.cbrt()".
  10. The Unicode Consortium, Unicode Character Database, UnicodeData.txt.

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