柱を倍にすると長すぎる
等差数列の第項を出すとき、公差を足す回数は回ではなく回である。足す場所は項そのものではなく、項と項の間にあるからだ。
この数え違いは、古代ローマの建築書にも記録が残る。ウィトルウィウスは『建築十書』第3書で、周囲に柱を巡らせた神殿の奥行きを間口の2倍にするには、側面に置く柱間の数を正面の2倍にせよと説く。モーガンの英訳(1914年)で読むと、続けて「柱の数を2倍にする人は誤っているように思われる。奥行きが、あるべき長さより柱間1つ分長く見えるからだ」とある。
この一節に具体的な本数は出てこないので、正面が柱6本の神殿で数えてみる。正面の柱間は5つで、側面に要る柱間は10、柱は11本で足りる。倍の12本を立てると、柱間は11になってしまう。
一般の規則としては、インドのブラーマグプタが628年の『ブラーマスプタシッダーンタ』第12章に書いた一節がある。コールブルックの英訳(1817年)によれば、項数から1を引いて公差を掛け、初項を足すと末項になる。英訳の注にある例題では、最初のほら貝が6パナ、次から1パナずつ高くなるとき、7番目は12パナと答える。6に足す1パナは6回だ。
間を数え、真ん中を移項する
等差数列は、隣どうしの差がどこでも同じ数列である。初項を、その差をとする。このが公差で、負でも0でもよい。
-
隣どうしの差がという定義を書く
-
を隣どうしの差に分ける
-
かっこをすべてに置き換える
-
かっこの数を数えて掛け算にする
-
初項を右辺へ移す
手順2の右辺は、途中の項が打ち消し合って左辺に戻る。かっこの数は個の項の間の数で、木が本なら間はか所という植木算と同じ数え方である。もっとも、では間が無く、手順2は書けない。それでもが消えてに戻るから、公式は初項にもそのまま当てはまる。
手順2の分け方は、文部科学省の解説で階差数列を扱う箇所にも出てくる。差がどれもである場合が、等差数列にあたる。
この式をについて整理すると、数列の形が見えてくる。
-
かっこを開いてについて整理する
傾きが公差の直線の式で、ならの1次式である。点はこの直線の上に等間隔で並ぶ。逆に、一般項がの形なら隣の差からが消えて、公差の等差数列になる。
-
隣どうしの差をとる
初項が分からなくても、2つの項があれば公差は出る。
-
第項の式から第項の式を引く
では、3つの数, , がこの順に等差数列をなす条件は何か。ここからの, , は、3つの数を表す。
-
隣どうしの差が等しいと書く
-
両辺にを足す
このを、との等差中項という。と書けばとの平均で、ブラーマグプタの同じ一節も、初項と末項の和の半分を「中間の量」と呼んでいる。
ここまでは、等差数列ならばこの式が成り立つという向きだ。逆も言えるのだろうか。
-
仮定の式から始める
-
両辺からを引く
-
共通の差をとおいてで表す
3つの数が公差で並んだので、, , はこの順に等差数列である。だからは必要十分条件で、問題文に等差数列とあれば式へ進み、式が出れば等差数列と結論してよい。
ただし、順番を見落としやすい。2, 1, 3はだが、並べ替えた1, 2, 3は等差数列である。「この順に」が無ければ、どれがかを場合分けする。
3項の条件は、数列全体にも効く。
-
すべてので成り立つ式を移項する
隣どうしの差がによらず同じなので、は等差数列になる。
0から数える番号と3項のとり方
間を数え違えると、時刻表は1便分ずれる。バスが9時ちょうどから12分おきに出るとき、20便目の発車は分後の12時48分である。ところがと掛けると、13時になってしまう。便の数と間の数を取り違えた形で、ウィトルウィウスが注意した誤りと変わらない。
プログラムでは、番号の付け方でを消せる。エドガー・ダイクストラは1982年の覚え書き「なぜ番号は0から始めるべきか」で、番号の範囲の書き方を比べたうえで0始まりを選び、番号はその要素より前にある要素の個数に等しくなると書いた。前にある要素の数は、初項からの間の数そのものだ。番号を0から振れば、値はで済む。たとえば同じ大きさのデータを並べる配列で、先頭が1000番地、1要素が4バイトなら、5番の要素は番地にある。
が役に立つのは、3項の和が出てくるときである。和が18ならをに置き換えてとなり、真ん中は6と決まる。だから等差数列の3項は、初めから, , とおくと計算が軽い。
3項が隣り合っていなくても同じことが言える。第項から同じ番号だけ離れた2項なら、手順5からとなる。項をこうした組に分けて足すのが等差数列の和で、初項も公差も1の場合が1からnまでの和にあたる。足し算の話はそちらで読める。
次に読むなら等比級数がよい。同じ3項の関係を掛け算に置き換えると、になる。
第何項かを数え、真ん中を読む
例題 1基本一般項を2つの項から出す
第5項が17、第12項が45である等差数列について、(1)一般項を求めよ。(2)201は第何項か。(3)2026はこの数列の項か。
解説を見る
(1)第5項と第12項の間は7か所なので、差は公差の7倍である。
第5項までに公差を4回足しているから、初項は次のようになる。
(2)を解くとなので、第51項である。
(3)を解くとで、自然数にならない。したがって2026はこの数列の項ではない。
例題 2基本間に数を入れる
(1)5, , 17がこの順に等差数列をなすとき、を求めよ。(2)2と50の間に7個の数を入れて、全体を等差数列にする。公差と、9個の真ん中の数を求めよ。
解説を見る
(1)は等差中項なので、からを得る。
(2)入れる数は7個でも、項は9個あり、間は8か所だ。
真ん中の数は第5項で、となる。両端の平均とも一致する。
例題 3入試内角が等差数列をなす三角形
△ABCの内角A, B, Cがこの順に等差数列をなし、、である。辺ACの長さを求めよ。
解説を見る
等差中項の式と内角の和を組み合わせる。
1本目を2本目に入れるととなり、と決まる。余弦定理から
よりとなる。
例題 4入試両方の向きを使う証明
正の数, , について、, , がこの順に等差数列をなすならば、, , もこの順に等差数列をなすことを示せ。
解説を見る
仮定から、等差数列ならば成り立つ向きを使ってを得る。
逆の向きを使うので、あとはを示せばよい。左辺から右辺を引き、通分する。分母は正で、分子は次のとおり。
差が0なので式が成り立ち、3つの分数はこの順に等差数列をなす。、、で確かめると、1, 25, 49は公差24で、, , は公差になる。
式に見える差、図形に隠れた差
- 2024年 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B第4問(1):隣どうしの差が14と決まった数列について、初項が10のときの第2項と第3項を出し、一般項を初項との式で表す。出典は大学入試センター「令和6年度 本試験の問題」。
- 2024年 大学入学共通テスト 追試験 数学II・数学B第4問(1):平行な2直線との間で、軸と軸に平行な線を交互に引いて点をとり、点の座標の一般項を求める。図形の問題に見えるが、座標が4ずつ増えると気づけば等差数列に帰着する。出典は大学入試センター「令和6年度 追・再試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第5節「数学B」3(1)数列、102-103ページ
- Vitruvius, The Ten Books on Architecture, trans. M. H. Morgan (Harvard University Press, 1914), Book III, Chapter IV, section 3, https://www.gutenberg.org/ebooks/20239
- H. T. Colebrooke (trans.), Algebra, with Arithmetic and Mensuration, from the Sanscrit of Brahmegupta and Bháscara (John Murray, 1817), Brahmegupta, Chapter XII, Section III, art. 17 and note, p. 290, https://zenodo.org/records/7882650
- E. W. Dijkstra, "Why numbering should start at zero" (EWD 831, 1982)
- 大学入試センター「令和6年度 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B」「令和6年度 大学入学共通テスト 追・再試験 数学II・数学B」