電離度

Degree of ionization

食塩1 molから、粒は1.75 molぶんできるとアレニウスは読んだ。

電離度は、溶かした電解質のうち電離した物質量の割合。1価の酸なら水素イオン濃度は濃度と電離度の積で、弱酸は薄めるほど電離度が大きくなる。

年代
1887年(アレニウスの電離説の論文)
習う
高1・化学基礎・物質の変化とその利用
レベル
基本(例題 4 問)
人物
スヴァンテ・アレニウス、ヴィルヘルム・オストヴァルト
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

食塩が示した0.75

1 molのエタノールを1 Lの水に溶かすと、液は−1.85 °Cで凍る。同じ1 molでも、食塩を溶かした液が凍るのは−3.26 °Cで、下がり方は2倍近い。

どちらも、スヴァンテ・アレニウスが1903年にノーベル化学賞を受けたときの講演で挙げた数で、食塩のほうはファントホッフの計算による。アレニウスはこの講演で、2つの差に自分が1887年に出した答えを語っている。食塩のうち75%がナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれているとすれば、液の中の粒は、分かれずに残る0.25 molと、2種類のイオン0.75 molずつで、合わせて1.75 molになる。講演は−3.26 °Cを、1.85 °Cの1.75倍と読んでいる。一方、コールラウシュが測った電気伝導度からも、電流を運ぶ「活性な」分子の割合は見積もれる。そこから出た数も、同じ0.75だった。アレニウスは当時測られていた約80の電解質で2つの方法を比べ、よく合ったと述べている。

つまり、凍り方と電気という別々の測り方が、同じ割合を指したのである。溶かした物質のうち電離したものの割合を、今は電離度と呼び、で表す。

途中の計算

分かれた分だけ粒が増える

濃度 mol/Lの1価の弱酸HAを考える。水に溶けると、一部が水素イオンと陰イオンに分かれ、残りは分子のままとどまる。

  1. 電離度を物質量の比で決める

  2. 電離の式を書く

  3. 1 Lあたり molが電離したあとの濃度を並べる

  4. 1価の酸では、水素イオン濃度が濃度と電離度の積になる

HAが20個あり、そのうち1個だけがH⁺とA⁻に分かれている。電離度は1/20で0.05、溶けている粒は21個になる。

手順4を逆に使えば、pHから電離度が出る。pHで水素イオン濃度を読み、酸の濃度で割ればよい。文部科学省の解説も、化学基礎で酸や塩基の強弱を電離度の大小と関係付けて扱うとしている。塩酸のような強酸でははほぼ1だが、酢酸のような弱酸では1よりずっと小さい。

手順3からは、溶けている粒の数も読める。

  1. 分子とイオンを合わせた溶質の粒の濃度を数える

食塩のように1個が2個のイオンに分かれる物質でも、数え方は同じだ。アレニウスの0.75を入れると倍で、冒頭の凍り方と合う。凝固点や沸点の変わり方は粒の数で決まるので、沸点上昇と凝固点降下の式にこの倍率を掛ければよい。

ただ、電離度を濃度と結びつける手順6から先は、高校の「化学」の電離平衡で習う。

  1. 電離定数を書く

  2. 手順3の濃度を入れる

  3. が1よりずっと小さいときとみなす

  4. について解く

  5. 手順4に入れる

電離定数2.7×10⁻⁵ mol/Lの弱酸で、濃度を0.1 mol/Lから0.0001 mol/Lまで薄めると、電離度は0.016から0.40まで大きくなる。近似の式(破線)は、薄い側で正しい値(実線)より大きく出る。

温度が同じなら、は濃度によらない。だから手順9の近似が使えるあいだは、濃度を100分の1に薄めると電離度は10倍になる。

応用

薄めるほど分かれる弱酸

弱い酸も、薄めていけば強い酸に近づく。アレニウスの講演によると、これは「活性な分子」の考えから出てきた予想で、ほどなくヴィルヘルム・オストヴァルトの実験と合うことが分かった。オストヴァルトは1888年の短い報告で、気体の分子が2つに分かれるときの式を溶液に移した。そして電気伝導度から分かれた部分と残った部分の量を出し、2つに分かれる電解質すべてに成り立つ式を示している。今の記号で書けば、手順7のが濃度によらず一定、という関係にあたる。

数で追うと、変わり方は思ったより大きい。電離定数を mol/Lとした1価の弱酸では、電離度は0.10 mol/Lで0.016、0.010 mol/Lで0.051、0.0010 mol/Lで0.15になる。手順9の近似は、濃い側ではよく合う。ところが0.0010 mol/Lでは0.164と1割近く大きく出て、 mol/Lまで薄めると近似は0.52、正しい値は0.40と大きくずれる。もうとはみなせない。電離度が0.05を超えたら、手順7の二次方程式を解き直すほうが安全だ。

では、食塩の0.75はどうなったのか。1909年、ニールス・ビェルムは、強い電解質はいつも完全にイオンに分かれている、と考え直すことを提案した。濃くするほど1 molあたりの電気伝導度や凝固点の下がりが小さくなるのは、イオンの数が減るからではなく、イオンの電荷どうしが及ぼし合う力のためだという。同じ報告でビェルムは、弱い電解質では、電気伝導度で本当の電離を測っているとも書いた。電離度で強弱を比べる考え方がいちばんよく効くのは、弱酸や弱塩基のほうなのである。

pHと水素イオン濃度の換算はpH(水素イオン指数)で、溶かした量をそろえる計算はモル濃度で練習できる。

例題と解説

pHから電離度を逆算する

例題 1基本電離度から水素イオン濃度へ

(1)0.40 mol/Lの1価の弱酸の水溶液で、電離度が0.025のとき、水素イオン濃度とpHを求めよ。(2)0.10 mol/Lのアンモニア水で、アンモニアの電離度が0.010のとき、水酸化物イオン濃度とpHを求めよ。25 °Cの水のイオン積はとする。

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(1)手順4から mol/Lで、pHは2である。

(2)アンモニアはと電離するので、 mol/L。水のイオン積で割って水素イオン濃度を出す。

pHは11になる。

例題 2基本溶けている粒を数える

フッ化水素0.10 molを水に溶かして1.0 Lにした。電離度を0.080とするとき、液の中のHF分子、、の物質量と、溶質の粒の合計を求めよ。水の電離は考えない。

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電離したのは molなので、HF分子は mol、とは0.0080 molずつ。合計は次のとおり。

手順5のと一致し、溶かした量の1.08倍の粒が液の中にある。

例題 3入試測ったpHから電離定数を出す

0.20 mol/Lの1価の弱酸HAの水溶液は、25 °CでpHが2.70だった。とする。(1)電離度を求めよ。(2)電離定数を求めよ。(3)この水溶液を水で100倍に薄めたときの電離度とpHを求めよ。(2)(3)ではとみなしてよい。

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(1)なので、水素イオン濃度は次の値になる。

手順4から。

(2)手順8から mol/L。

(3)濃度は mol/Lになる。手順9で電離度を出す。

mol/Lで、。100倍に薄めても、pHは1.00しか上がらない。強酸なら2上がるところだ。二次方程式で解き直すと電離度は0.095、pHは3.72で、近似の答えとの差は小さい。

例題 4入試近似が崩れる薄さ

電離定数が mol/Lの1価の弱酸を、 mol/Lの水溶液にした。(1)手順9の近似で電離度を求めよ。(2)近似を使わずに電離度を求めよ。とし、水の電離は考えない。

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(1)

(2)手順7の式の分母を払って整理する。

正の解をとる。

近似の0.45は25%ほど大きすぎる。電離度が大きくなる薄い液ほど、手順8の「」が使えなくなる。

入試・大会での出題

濃度と電離度のグラフを選ぶ

  • 2026年 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎 第1問 問9:濃度が分かっている1価の弱酸の水溶液について、25 °CのpHから水素イオン濃度を読み、酸の濃度で割って電離度を選ぶ。手順4をそのまま逆に使う問題だ。全文は大学入試センター「令和8年度 本試験の問題」で読める。
  • 2024年 大学入学共通テスト 本試験 化学 第2問 問4 a:1価の弱酸HAで、電離度が1よりずっと小さいとき、モル濃度と電離度の関係を表すグラフを5つの中から選ぶ。手順9のを、曲線の形で読めるかが問われる。出典は大学入試センター「令和6年度 本試験の問題」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「化学基礎」3(3)ア(イ)㋐ 酸・塩基と中和、92-93ページ。第5節「化学」3(2)ア(イ)㋒ 電離平衡、104-105ページ
  2. S. Arrhenius, "Über die Dissociation der in Wasser gelösten Stoffe", Zeitschrift für physikalische Chemie 1 (1887), 631-648
  3. S. Arrhenius, "Development of the theory of electrolytic dissociation", Nobel Lecture(1903年12月11日)
  4. W. Ostwald, Zeitschrift für physikalische Chemie 2 (1888), 36-37。英訳はChemTeam「Ostwald's dilution law」
  5. N. Bjerrum, "A New Form for the Electrolytic Dissociation Theory", Proceedings of the Seventh International Congress of Applied Chemistry, Section X (London, 1909), 55-60。全文はChemTeam「Bjerrum and Strong Electrolytes」
  6. 大学入試センター「令和6年度 大学入学共通テスト 本試験 化学」「令和8年度 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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