息で揺らす重い振り子
揺する速さを変えるだけで、揺れの大きさは15倍も違ってくる。0.10 Nの同じ力でおもりを揺すっても、振れ幅は1.7 mmにも25 mmにもなる(質量0.20 kg、ばね定数20 N/mの例)。1638年の『新科学対話』の第1日で、ガリレイはサルヴィアーティに、重い振り子でも息を吹きかけるだけで動かせると語らせた。振り子が戻ってきて次の振れを始めるときに吹けば揺れは育ち、こちらへ向かってくるときに吹けば、かえって妨げになるという。聞き手のサグレドは、子どものころ、1人が間合いよく綱を引いて鳴らした大きな鐘を4人、6人がかりで止めようとして、みな綱ごと持ち上げられたのを見たと応じている。
3つの力を直角三角形で読む
図で納得する
揺すり続けた振動子は、やがて揺する力と同じ周期で揺れるようになる。そのときの振れ幅は、ばねの力、抵抗の力、揺する力の3つが1往復の中でどうつり合うかで決まり、答えは直角三角形1つに収まる。微分を使ったきちんとした導出は「式で確かめる」で追える。高校の物理基礎では、共振をおんさの音のような現象として習うが、振れ幅の式は大学の力学の内容だ。
ばね定数のばねに質量のおもりをつけ、速さに比例する抵抗(比例定数)を受けながら、の力で揺する。はつり合いの位置からのずれで、は揺れが落ち着いたあとの振れ幅である。
角振動数は、揺れを円の上を回る点の影とみたときに、その点が1秒間に回る角度である。角はラジアンで測り、1回りが()なので、周期とはの関係にある。おもりの位置は、半径の円を回る点の、横への影にあたる。
は、揺すらずに放したときの揺れの角振動数で、ばねとおもりだけで決まる(フックの法則、振り子の周期)。は抵抗で揺れが縮む速さを表し、減衰振動と同じ記号を使う。読みもの「ブランコはなぜタイミングよくこぐと高く上がるのか」は、この2倍のをと書いているので、この記事のがそちらのにあたる。
つまみで揺する速さを変えると、おもりは初めのうち不ぞろいに揺れるが、しばらくすると揺する力と同じ周期に落ち着く。落ち着いた振れ幅は、グラフの輪が点まで上がった高さ。がに近いほど振れ幅は大きく、減衰のを小さくすると、山は高く細くなる。
揺する速さで、おもりの動き方は3通りに分かれる。ゆっくり揺すると、おもりは力と同じ向きに動き、振れ幅は力をばねで受け止めたときの伸びに近い。では、おもりは力より4分の1周期遅れて大きく揺れる。速く揺すると、おもりは力と逆向きに、小さくしか揺れない。
では、なぜの近くで大きくなるのか。落ち着いた揺れでは、おもりは円を回る点の影と同じ動きをする。影の加速度はいつも中心を向き、大きさはずれの倍だ。一方、ばねは1 kgあたりの力で中心へ引く。
ばねが引く力と、この揺れに要る力の差は、揺する力が受け持つしかない。この「ばねと慣性の分」は位置と同じ形で変わり、山の大きさはになる。抵抗の力も揺する力が打ち消していて、1 kgあたり速さの倍。円を回る点の速さはなので、山の大きさはで、位置より4分の1周期ずれて変わる。
4分の1周期ずれて変わる2つの量を、円を回る2本の矢印として描いてみる。2本はいつも直角に交わり、合わせた矢印が揺する力になる。だから、三平方の定理が使えるのだ。
直角三角形の角は、おもりの揺れが力より遅れる量を、1周期をとみた角で表したものだ。なら、4分の1周期の遅れになる。
三平方の式をについて解けば、共振曲線の式が出る。では横の辺が0になり、縦の辺だけが揺する力に等しくなる。つまり抵抗が小さいほど、同じ力に見合う振れ幅は大きい。
式で確かめる
記号を2つ足す。はを時間で1回微分したもので、その時刻の速度を表す。速度は速さに向きの符号を付けた量だ。は2回微分したもので、加速度である。のように揺れるなら、速度は位置のグラフの傾きで、位置より4分の1周期だけ早く山が来る。
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おもりの運動方程式を書く
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右辺のとを左辺へ移す
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両辺をで割る
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、と書く
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落ち着いた揺れを、遅れのある余弦とおく
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1回微分して速度を出す
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もう1回微分して加速度を出す
手順6と7では、を微分するとに、を微分するとになり、中身のからが1つずつ前に出る。
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手順4の左辺に、手順5〜7を入れる
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の項をまとめる
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右辺のをとみて、加法定理で開く
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どの時刻でも等しくなるよう、の係数をそろえる
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の係数をそろえる
手順11と12は、「図で納得する」の直角三角形の横の辺と縦の辺を、斜辺と角で書いたものにあたる。
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手順11と12を2乗して足す
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を使う
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として平方根をとる
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手順12を手順11で割り、遅れの角を出す
なら分母が正ではより小さく、なら分母が負でを超える。図で見た3通りの揺れ方は、この式の符号の違いだったのだ。
手順5は、揺すり始めてしばらくたったあとの揺れである。揺すり始めた直後は、減衰振動と同じ角振動数の揺れが重なっている。この揺れは、時間がたつごとに約0.37倍()に縮み、その数倍の時間で消えていく。ミニシミュレーションで、輪が点に追いつくまでの時間がこれにあたる。
では、がいちばん大きくなるはどこか。分母の根号の中をの2次式とみて、平方完成すればよい。
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根号の中を展開する
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について平方完成する
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最初の2乗が0になる所で根号の中は最小、は最大になる
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残る項を手順15に入れて、最大の振れ幅を出す
手順20の根号は減衰振動のと同じ値で、とも書ける。山の位置はよりわずかに小さく、がに比べて小さければ、ほとんどと変わらない。なら手順19の根号の中が負になり、山はできない。
ばねとおもり、ラジオの同調回路
数を入れてみる。質量0.20 kgのおもりを、ばね定数20 N/mのばねにつけ、抵抗の比例定数を0.40 kg/s、揺する力の振幅を0.10 Nとする。 rad/s、 s⁻¹、 m/s²である。
| 揺する角振動数(rad/s) | 振れ幅 |
|---|---|
| 0に近い(ゆっくり) | 5.0 mm() |
| 5 | 6.6 mm |
| 9.9(山) | 25.1 mm |
| 10() | 25.0 mm |
| 12 | 10.0 mm |
| 20 | 1.7 mm |
で揺すると、ゆっくり揺すったときの5倍になる。この倍率がQ値で、いまの数ならだ。振れ幅が山の倍(2乗で半分)になる2つのは8.84 rad/sと10.86 rad/sで、幅は約2.0 rad/s、つまりとほとんど同じ。を小さくするほど、山は高く、幅は狭くなる。
電気回路にも、同じ形の式が現れる。コイル(自己インダクタンス)、抵抗、コンデンサー(電気容量)をつないで交流電圧をかけると、コンデンサーの電荷は次の式に従う。
は電荷が1秒あたりに増える量で、回路を流れる電流にあたる。はコイルが電流の変化を妨げる強さで、おもりの質量が速さの変化を妨げるのと同じ役になる。
をに、をに、をに置きかえれば運動方程式と同じ形で、、になる。可変コンデンサーを使うラジオでは、局を選ぶつまみを回すとが変わる。シドニー大学物理学科の教材は、回路の共振の周波数を放送の電波の周波数に合わせたとき、その信号への応答が最も大きくなると説明している。Q値が高いほど山が細く、となりの周波数の局を締め出せる。
山の位置と幅を数で追う
例題 1大学振れ幅とQ値
質量0.50 kgのおもりを、ばね定数50 N/mのばねにつけ、抵抗の比例定数を0.50 kg/s、揺する力の振幅を0.20 Nとする。、、で揺すったときの振れ幅、ゆっくり揺すったときの振れ幅、Q値を求めよ。
解説を見る
m/s²で、では分母の根号の中がだけになる。
ゆっくり揺すったときは mで、。はその10倍の40 mmで、Q値と合う。
例題 2大学山ができない減衰
rad/s、 s⁻¹のとき、振れ幅はとともにどう変わるか。また、山ができるの範囲を求めよ。
解説を見る
手順18の形に数を入れる。、、である。
では、この値はが大きいほど大きい。だから振れ幅はでいちばん大きく、揺する速さを上げるほど小さくなり、山はできない。山ができるのは、手順19の根号の中が正のときで、 s⁻¹である。
例題 3大学コイルとコンデンサーの共振
mH、 µF、 Ωの回路で、、共振の周波数、、Q値、山の幅()を求めよ。
解説を見る
s²である。
山の幅は rad/sで、周波数にすると Hzである。
参考文献
- Galileo Galilei, Dialogues Concerning Two New Sciences, translated by H. Crew and A. de Salvio (New York: Macmillan, 1914), First Day。Online Library of Liberty
- Y.-J. Lee, "8.03 Lecture 3: Driven Oscillators, Transient Phenomena, Resonance", 8.03SC Physics III: Vibrations and Waves, MIT OpenCourseWare(Fall 2016)。ノートのは、この記事のにあたる
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第2節「物理基礎」3(2)ア(ア)㋑ 音と振動、55ページ
- The University of Sydney, School of Physics, "Variable Capacitor II: Tuning Capacitor", Physics Tutorial Activities