振り子を止める空気
1往復ごとに振れ幅が2割ずつ減る振り子は、10往復すると最初の約1割しか揺れなくなり、やがて止まる。数学史の資料集MacTutor(セント・アンドルーズ大学)によると、ジョージ・ガブリエル・ストークスは、振り子が流体の中で受ける抵抗を調べた。その仕事から、1851年には、粘りのある流体の中を動く小さな球についての法則を発表している。ゆっくり動く小さな球が受ける抵抗は速さに比例し、減衰振動の式も、ばねの力にこの「速さに比例する抵抗」を足して立てる。
抵抗のあるばねを解く
図で納得する
振れ幅は、1往復ごとに同じ割合で縮む。割合が一定なら、縮み方はネイピア数の累乗で書ける。式で解くときも、縮む部分を外に出せば、残りは振れ幅が一定の単振動になる。
おもりの質量を、ばね定数を、抵抗の強さをとし、つり合いの位置からのずれ(変位)をとする。文字の上の点は時間についての変化の速さの印で、は1秒あたりにが変わる量、つまり速度、は速度が1秒あたりに変わる量、つまり加速度である。ばねはおもりを引き戻す力を、抵抗は動く向きと逆向きの力を出す。
では、抵抗があると、振れ幅はどう縮むのか。山の高さを順に並べると、1往復ごとに、前の山に同じ数を掛けた高さになっていく。0.8を掛け続けると、山は1、0.8、0.64、0.512と、前の山との比を保ったまま下がっていく。
毎回同じ割合で縮む量は、ネイピア数の累乗で書ける。右肩の数(指数)が負の累乗は逆数のことで、、になる。
(ガンマ)は縮む速さを表す数で、単位はs⁻¹。は、時間がたつごとに指数が1ずつ減るので、そのたびに0.37倍になる。は抵抗の強さと質量からと決まり、が大きいほど速く縮む。
抵抗を大きくすると、縮み方が速くなり、揺れの周期も少し長くなる。がに届くと、おもりは一度も反対側へ行かずに、つり合いの位置へ戻る。この境目を臨界減衰といい、それより抵抗が強い場合を過減衰という。
式で確かめる
ばねの力と抵抗の力を、運動方程式に入れる。
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おもりにはたらく力の和を書く
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運動方程式に入れる
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右辺の2つの項を左辺へ移す
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両辺をで割る
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、とおく
(オメガ・ゼロ)は抵抗がないときの角振動数である。角振動数は、1往復を円の1周(2πラジアン)に見立てたとき、1秒あたりに進む角度を表し、単位はrad/s。フックの法則のばねにつけたおもりは、周期で振動する。
手順5の真ん中の項さえなければ、単振動の式そのものだ。そこで、縮む部分を外に出し、残りをとおく。
微分は、ある量が時間とともに変わる速さを求める計算で、を1回微分したものが、2回微分したものがである。2つの関数の積を微分すると、「前を微分して後ろはそのまま」と「前はそのままで後ろを微分」の和になり、これを積の微分の規則という。を微分すると、形を変えずに倍のになる。
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を2つの積に分けて書く
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積の微分の規則でを出す
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でくくる
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手順8を、積の微分の規則でもう一度微分する
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でくくり、括弧の中をまとめる
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手順5の式に、手順6・8・10を入れる
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0にならないで両辺を割る
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括弧を外す
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同じ種類の項をまとめる
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とおき、右辺へ移す
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単振動の解を使う
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手順6に戻す
手順13から14で、の項がちょうど打ち消し合う。縮む部分を外に出したのは、この打ち消し合いを起こすためだった。手順15は、加速度が変位に比例して逆向きという単振動の式で、振り子の周期の式もこの形から出る。
手順16のは、円の上を一定の速さで回る点の横の位置を表す関数で、−1と1のあいだを行き来する。は振れ幅、(ファイ)は動き始めの位置で決まる定数で、は2回微分すると倍の自分に戻るので、手順15を満たす。
ただし、この形の解が使えるのはのときに限られる。がを超えるとが負になり、おもりは振動しない。ちょうど、つまりのときが臨界減衰である。
数を入れてみる。質量0.50 kg、ばね定数50 N/m、抵抗の強さ0.36 kg/sのとき、値は次の表になる。
| 量 | 計算 | 値 |
|---|---|---|
| 0.36 s⁻¹ | ||
| 10 rad/s | ||
| 約9.99 rad/s | ||
| 約0.629 s | ||
| 1往復の比 | 約0.80 |
がの4%にも満たないので、周期は抵抗がないときとほとんど変わらない。それでも振れ幅は1往復で2割縮み、図で見た0.8倍の縮み方になる。
2つの山から抵抗を読む
振動の記録からを求めるには、隣り合う2つの山の高さを比べればよい。山と山の間は1往復の時間で、その間に振れ幅は倍になる。
高さの比の自然対数を、対数減衰率という。自然対数は、を何乗するとになるかを表す数である。の左右をひっくり返すとなので、を乗するとになる。
山が5.0 cmと4.0 cmで、周期が0.63 sなら、比は1.25で、電卓を使うと。そこから s⁻¹になる。おもりが0.50 kgなら、 kg/sと、抵抗の強さまで分かる。
揺れを早く止めたい装置では、抵抗の強さを臨界減衰のに近づける。これより弱いと揺れが残り、強すぎると、つり合いの位置へ戻るまでにかえって時間がかかる。力学的エネルギーは振れ幅の2乗に比例するので、で、振れ幅の2倍の速さで減っていく。
抵抗のあるばねを外から周期的に揺すり続けると、揺れは縮みきらずに一定の振れ幅に落ち着く。その振れ幅は、同じとを使う強制振動と共振の式で求まる。
半分になる時間と臨界の強さ
例題 1大学縮み方を数で読む
質量0.20 kgのおもりを、ばね定数20 N/mのばねにつけ、抵抗の強さ kg/sで振動させる。(1)、、を求めよ。(2)振れ幅が半分になるまでの時間を求めよ。(3)1往復ごとに、振れ幅は何倍になるか。
解説を見る
(1)定義どおりに計算する。
(2)を解く。両辺の自然対数をとると、なので。
(3)1往復の時間は sなので、比は次のとおり。
例題 2大学臨界減衰の抵抗
例題1のおもりとばねで、臨界減衰になる抵抗の強さを求めよ。また、そのとき(、は定数)が、手順5の式を満たすことを示せ。
解説を見る
臨界減衰はのときなので、から。
次に、積の微分の規則でとを出す。
として手順5の左辺に入れ、でくくる。
波括弧の中はの項もの項も打ち消し合って0になるので、式を満たす。
例題 3大学エネルギーが半分になる時間
減衰が弱く、力学的エネルギーが振れ幅の2乗に比例するとみなせるとする。振れ幅が半分になる時間を、エネルギーが半分になる時間をとして、を求めよ。
解説を見る
振れ幅はに比例するので、から。エネルギーはその2乗のに比例するので、から。
エネルギーは、振れ幅の半分の時間で半分になる。
参考文献
- J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "George Gabriel Stokes", MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews
- G. G. Stokes, "On the Effect of the Internal Friction of Fluids on the Motion of Pendulums", Mathematical and Physical Papers(Cambridge University Press、2009年の再刊)所収
- 京都大学 全学共通科目「振動・波動論」シラバス(2026年度 前期、配当学年は主として2回生。授業計画に「抵抗と減衰振動、強制振動と共鳴」)