原子量

Atomic weight

基準の炭素12は12ちょうど。それでも炭素の原子量は12.011である。

原子量は同位体の相対質量を存在比で平均した値で、存在比の和が1なので2種類なら文字1つで計算でき、逆算もできる。基準は¹²Cで、区間で示す元素もある。

年代
1960年(¹²Cを基準に統一)
習う
高1・化学基礎・物質の変化とその利用
レベル
基本(例題 4 問)
人物
アルフレッド・ニーア
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

2本あった物差し

炭素の原子量は12.011で、12ちょうどではない。基準の¹²Cを12と決めてあるのに、なぜずれるのか。天然の炭素には約1.1%の¹³Cが混ざり、原子量はその平均だからだ。

では、なぜ基準は酸素や水素でなく¹²Cなのか。物差しが2本に割れた時代を収めるためだった。

1928年の時点では、酸素は1種類の原子とみなされ、酸素を16とする物差しを化学者も物理学者も使っていた。ところが1929年、大気の吸収帯の分析から、酸素に3種類の同位体があると分かる。物理学者は¹⁶Oを16とし、化学者は天然の酸素の平均を16のままにした。2つの値の換算には1.000275という係数が要り、酸素の混ざり方が場所で違うので、その係数さえ1.000268から1.000278のあいだで揺れた。

1957年、A. O. ニーアとA. エーランダーは別々に、¹²Cを12とする案を出した。理由は2つある。炭素が原子の質量を測る基準物質として使われていたこと。もう1つは公平さで、どちらか一方だけでなく、物理学者も化学者も少しずつ物差しを変えることになる。国際純正・応用化学連合と国際純粋・応用物理学連合は1959年と1960年に合意し、質量の単位は物理の側で100万分の318、化学の側で100万分の42だけ大きくなった。1本の物差しに戻るまでに31年かかった。

2019年にモルの定義が改められても、¹²Cを12とするこの基準は変わっていない。

途中の計算

個数で重みをつけて平均する

相対質量は、¹²C原子1個を12としたときの原子1個の質量である。質量数との違いは質量数の表で確認できる。存在比は同位体の個数の割合で、質量の割合ではない。

天然のガリウムは⁶⁹Gaが60.1%、⁷¹Gaが39.9%で、相対質量は68.926と70.925である。原子を1,000個取り出したと考える。

  1. 存在比から同位体ごとの個数を出す

  2. 1,000個の相対質量を全部足す

  3. 1個あたりにするため1,000で割る

  4. 手順3の割り算を項ごとに分ける

  5. 相対質量を、存在比をとおいて一般の形にする

100個の原子なら約60個が⁶⁹Ga、約40個が⁷¹Gaにあたる。個数で重みをつけるので、平均は多いほうの⁶⁹Gaに寄る。

個数の割合という点を見落とすと、答えがずれる。⁶Liと⁷Liを質量で半分ずつ混ぜると、軽い⁶Liの個数のほうが多くなり、平均は6.48になる。相対質量6.015と7.016を単純に平均した6.52にはならない。

すべての同位体を足せば全体になるので、存在比の和は1である。この性質で、未知数を1つ減らせる。

  1. 存在比の和を1とおく

  2. を手順5に代入する

  3. かっこを外してでまとめる

逆に原子量が分かっていれば、存在比を取り戻せる。手順5と手順6は、とについての2元連立方程式である。

  1. 手順8をについて解く

  2. ガリウムの原子量69.723を代入する

数直線の上で、原子量から2つの相対質量までの距離を比べる。近いほうの⁶⁹Gaが多く、距離の比と存在比は逆になる。

手順9の分子は、原子量から反対側の同位体までの距離を表す。だから、原子量に近い同位体ほど多い。

応用

区間で書かれる原子量

平均である以上、混ざり方が変われば原子量も変わる。逆に、平均の項が1つしかない元素では、値が動かない。同位体存在度・原子量委員会(CIAAW)の一覧には、1種類の安定な同位体で標準原子量が決まる元素が19あり、ふっ素の18.998 403 162(5)のように長い桁で書かれる。

ところが水素の標準原子量は、1つの数ではなく[1.00784, 1.00811]という区間で示される。CIAAWが2009年の評価で10元素をこの形に改め、2024年の表では14元素になった。区間の読み方は決まっている。炭素の[12.0096, 12.0116]なら、ふつうの試料の原子量はどれもこの範囲に入るが、真ん中の値に誤差を付けた数ではない。

区間の端には、実在の試料がある。水素の下限は天然ガスの水素にあたる。リチウムの上限6.997は、水素爆弾用に⁶Liを抜き取ったあとの実験用試薬の値だ。手順9を当てはめると、⁶Liの存在比が見える。

CIAAWの示す⁶Liの区間[0.019, 0.078]と一致する。

幅がとくに大きいのは鉛で、[206.14, 207.94]もある。重い3つの同位体がウランとトリウムの崩壊の行き着く先なので、鉱物ごとに混ざり方が大きく違うからだ。

区間のままでは計算しにくいので、ふだんは丸めた値を使う。CIAAWの簡略表は水素を1.0080 ± 0.0002、炭素を12.011 ± 0.002、鉛を207.2 ± 1.1とする。共通テストの化学基礎の問題の頭には、さらに丸めたH 1.0、C 12、O 16が載る。試験では、問題が指定した値で計算すれば答えが合う。この原子量は、物質量の計算へそのままつながる。

例題と解説

平均を出し、存在比を取り戻す

例題 1基本銀の原子量

天然の銀は、相対質量106.905の¹⁰⁷Agが51.8%、相対質量108.905の¹⁰⁹Agが48.2%を占める。銀の原子量を小数第1位まで求めよ。

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相対質量に存在比を掛けて足す。

銀の原子量は約107.9である。

例題 2基本同位体が3種類のネオン

天然のネオンの相対質量と存在比は、²⁰Neが19.992で90.48%、²¹Neが20.994で0.27%、²²Neが21.991で9.25%である。(1)存在比の和が100%になることを確かめよ。(2)ネオンの原子量を小数第2位まで求めよ。

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(1)足すととなる。

(2)項が3つになっても手順5の形は変わらない。

ネオンの原子量は約20.18である。

例題 3入試原子量からルビジウムの存在比を求める

天然のルビジウムは⁸⁵Rbと⁸⁷Rbからなり、相対質量は84.912と86.909、原子量は85.468である。それぞれの存在比を連立方程式で求め、百分率で整数まで答えよ。

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存在比を、とする。

上の式からとして下の式に代入する。

⁸⁵Rbが72%、⁸⁷Rbが28%である。原子量が85に近いので、⁸⁵Rbが多いことは計算の前に見当がつく。

例題 4入試未知の存在比が2つあるマグネシウム

天然のマグネシウムの同位体は²⁴Mg、²⁵Mg、²⁶Mgで、相対質量は23.985、24.986、25.983である。²⁴Mgの存在比を79.0%、原子量を24.305として、²⁵Mgと²⁶Mgの存在比を百分率で小数第1位まで求めよ。

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²⁵Mgの存在比を、²⁶Mgの存在比をとする。存在比の和は1である。

原子量の式から、²⁴Mgの項を移項する。

を代入する。

なので、²⁵Mgは10.0%、²⁶Mgは11.0%である。未知数が2つなら、式も2本で足りる。

入試・大会での出題

存在比を逆算させる出題

  • 2022年 東京海洋大学 前期日程 化学 第1問 問2:塩素の原子量を35.5として、同位体の表にある³⁵Clと³⁷Clの存在比を整数の百分率で答える。計算式も求められる。出典は東京海洋大学「令和4年度 前期日程 化学」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「化学基礎」3(3)ア(ア)㋐、92ページ
  2. J. R. de Laeter et al., "Atomic weights of the elements: Review 2000", Pure and Applied Chemistry 75 (2003), 683-800
  3. M. E. Wieser, T. B. Coplen, "Atomic weights of the elements 2009", Pure and Applied Chemistry 83 (2011), 359-396
  4. Commission on Isotopic Abundances and Atomic Weights, "Standard Atomic Weights"(2024)、"Abridged Standard Atomic Weights"(2024)、"Isotopic Abundances"、"Monoisotopic Elements"、"Lead"
  5. M. Wang, W. J. Huang, F. G. Kondev, G. Audi, S. Naimi, "The AME 2020 atomic mass evaluation (II)", Chinese Physics C 45 (2021), 030003
  6. Bureau International des Poids et Mesures, The International System of Units (SI), 9th ed. (2019), Appendix 4, "Unit of amount of substance, mole", https://www.bipm.org/documents/20126/41483022/SI-Brochure-9-EN.pdf
  7. 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 化学基礎」、東京海洋大学「令和4年度 前期日程 化学」

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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