反応速度式

Rate law

係数が2でも、速さは濃度の1乗に比例することがある。

反応の速さが濃度の累乗に比例することを表す式。指数は反応式の係数からは決まらず、濃度を変えた実験から求める。

年代
1866年(ハーコートとエッソンの論文)
習う
高2・化学・物質の変化と平衡
レベル
基本(例題 4 問)
人物
オーガスタス・ヴァーノン・ハーコート、ウィリアム・エッソン
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

条件を1つずつ変えて測る

過酸化水素の分解の反応式はで、係数は2だ。ところが、ヨウ化物イオンを触媒にして濃度を2倍にしても、速さは4倍にならず2倍で止まる。反応速度式の指数は、反応式を眺めても決まらない。

濃度と速さの関係を実験で追った早い例に、オックスフォードのハーコートと数学者エッソンの1866年の論文がある。2人は冒頭で、化学者は反応の結果にばかり注意を向け、進み方を見てこなかったと書く。本論で追った過マンガン酸とシュウ酸の反応は複雑で、ねらいには向かなかった。そこで、より簡単な過酸化水素とヨウ化水素の反応に移り、条件を1つずつ順に変えて実験を重ねたと報告して、結果は次の論文に回している。

付録でエッソンは「化学変化の速さは、変化している物質の量に比例する」と述べ、比例定数を「単位時間に変化する割合」と説明している。

途中の計算

表から指数を読み取る

この計算の道すじ。 式の文字を読み、濃度を変えた実験の表から指数と速度定数を求める(手順1〜8)。次に速度定数の単位を決める(手順9〜11)。1次反応で半分になる時間が濃度によらないことを確かめ(手順12〜14)、温度の影響を見る。

反応速度は、単位時間あたりの濃度の変化だ。その速さが濃度でどう変わるかを書いた式を、反応速度式という。は物質Aのモル濃度を表し、を速度定数、指数のとを次数と呼ぶ。はで、はそのもの、は1である。

反応速度式のvは反応速度で単位はmol/(L·s)、kは速度定数、[A]と[B]はモル濃度で単位はmol/L、aとbは指数である。濃度を2倍にすると、速さはaが0で1倍、1で2倍、2で4倍になる。

指数が1なら、濃度と速さは比例する。指数が2なら、濃度が2倍で速さは倍だ。は反応全体の次数で、、なら3次反応と呼ぶ。

指数は係数から決まらない

なぜ係数と指数がずれるのか。多くの反応は、反応式のとおりに1回でぶつかって進むわけではなく、いくつかの段階に分かれるからだ。全体の速さは、いちばん遅い段階でほぼ決まる。過酸化水素の分解では、1段目が遅い次の2段階が提案されている。

2H₂O₂ → 2H₂O + O₂は、遅い1段目H₂O₂ + I⁻ → H₂O + IO⁻と、速い2段目H₂O₂ + IO⁻ → H₂O + O₂ + I⁻に分かれると考えられている。全体の速さは1段目でほぼ決まり、v = k[H₂O₂][I⁻]になる。

1回のぶつかりで進む段階では、ぶつかる個数がそのまま指数になる。1段目でぶつかるのはとが1個ずつなので、指数はどちらも1だ。この道すじが支持されるのは、実験で決めた式と合うからだ。途中の段階は反応式を見ただけでは分からない。だから指数は実験で決める。

表からaとbとkを出す

ある反応で、濃度を変えて速さを測ったとする。比べる2つの実験では、変える濃度を1つだけにするのがこつだ。数値はどれも、説明のために作った例である。は1000分の1を表し、実験1と2の速さを、と書く。

実験1は[A] = 0.10、[B] = 0.10でv = 2.0 × 10⁻³、実験2は[A]だけ0.20でv = 8.0 × 10⁻³、実験3は[B]だけ0.20でv = 4.0 × 10⁻³である。[A]を2倍にすると速さは4倍、[B]を2倍にすると速さは2倍になる。
  1. 実験2の式を実験1の式で割る

  2. とを約分で消す

  3. 表の速さを入れる

  4. なので、指数が決まる

  5. 実験3の式を実験1の式で割る(とが消える)

  6. なので、指数が決まる

  7. 式の両辺をで割り、について解く

  8. 実験1の値を入れる(分母は)

こうしてと決まり、全体は3次になる。実験2で確かめると、で、表と合う。

kの単位は次数で変わる

手順8の2.0には、まだ単位を付けていない。単位も同じ割り算から出る。

  1. 速さの単位を、濃度の単位の3乗で割る

  2. 分母の分数をひっくり返して掛ける

  3. molとLを約分する

全体の次数が1次のときkの単位は1/s、2次のときL/(mol·s)、3次のときL²/(mol²·s)になる。次数が1つ上がるたびに、L/molが1つ掛かる。

の単位を見れば、問題文に次数が書かれていなくても反応全体の次数が分かる。

濃度が半分になる時間

いちばん簡単なの1次反応で、濃度が半分になるまでの時間を考えよう。この時間を半減期という。

  1. の両辺をで割る

左辺は、今ある濃度のうち単位時間に減る割合だ。エッソンの言う「割合」にあたり、濃度によらず一定になる。減る割合がいつも同じなら、半分になるまでの時間も、濃度がいくつから数えても同じになる。

  1. 半減期との関係を使う(導くには積分を使う)

  2. 作った例の /minを入れる

濃度の曲線は0.80、0.40、0.20、0.10と5分ごとに半分になる。どこから数えても半分になるまでの時間は同じ5分である。数値は作った例。

0.693は2の自然対数と呼ばれる定数で、積分を習う数学IIIで出てくる。決まった数としてそのまま使えばよい。

1次のまま、はじめの濃度を0.8から0.4に下げても、半減期は約5.0分のまま変わらない。一方で、はじめの速さは半分になる。2次に切り替えると、はじめの濃度が半分で速さは4分の1になり、半減期は2倍にのびる。

2次のでは、減る割合がとなり、濃度が下がると割合も下がる。だから濃度が低いほど、半分になるまでに時間がかかる。2次の半減期はとはじめの濃度の積の逆数で、シミュレーションの、0.8 mol/Lなら分だ。

温度はkに入る

反応速度式の濃度の項に、温度は入っていない。温度の影響は、すべてに入る。濃度が同じなら、速さの比はの比に等しい。

同じ濃度で、kが25 °Cの2.0から35 °Cの4.0へ2倍になると、速さも2倍になる。2.0と4.0は作った例である。

温度によるの変わり方は、アレニウスの式で計算できる。そちらの例では、活性化エネルギーが約53 kJ/molの反応で、25 °Cから35 °Cに上げるとが約2倍になる。

応用

触媒の量で半減期が変わる

冒頭の過酸化水素に戻ろう。ヨウ化物イオンを触媒にすると、実験ではについてもについても1次で、全体は2次になる。濃度をどちらか一方だけ2倍にすると、速さも2倍になる。

v = k[H₂O₂][I⁻]で、[H₂O₂]か[I⁻]のどちらかを2倍にすると速さは2倍、両方を2倍にすると4倍になる。H₂O₂の係数2が指数に出るなら、[H₂O₂]だけで4倍になるはずである。

触媒のは、1段目で減っても2段目で元に戻る。一部はヨウ素に変わるので完全には保たれないが、はほぼ一定とみてよく、を1つの定数にまとめられる。

見かけの上では1次反応なので、過酸化水素の濃度は、触媒の量が同じなら一定の時間ごとに半分になっていく。触媒を2倍にすればが2倍になり、半減期は半分に縮む。

同じ形の式は、化学の外にもある。放射性崩壊は、濃度を原子の数に替えると1次反応と同じ形で、炭素14の半減期は5730年である。

例題と解説

表から次数と半減期を読む

例題 1基本表から速度式を作る

反応で、次の結果を得た。濃度の単位はmol/L、速さの単位はmol/(L·s)で、数は作った例である。反応速度式とを求めよ。

実験
10.100.10
20.300.10
30.100.20
解説を見る

実験1と2ではだけが3倍で、速さも倍なので、からである。

実験1と3ではだけが2倍で、速さは倍なので、からである。反応式の係数2と1とは、逆になっている。

実験1の値を入れてを求める。

例題 2基本濃度を変えたときの速さ

の反応で、を3倍にすると速さは何倍か。半分にすると何倍か。

解説を見る

を3倍にすると、2乗の部分が倍になる。

半分にすると、2乗の部分が倍になる。

速さは9倍と4分の1倍である。

例題 3入試半減期から濃度と時間

半減期が20分の1次反応で、はじめの濃度を0.80 mol/Lとする。60分後の濃度と、濃度が0.050 mol/Lになるまでの時間を求めよ。

解説を見る

60分は半減期の回分なので、濃度は3回半分になる。

0.80から半分を繰り返すと、0.40、0.20、0.10、0.050で、4回目に0.050になる。

例題 4入試混ぜて薄まる濃度

反応速度式が、の反応がある。0.40 mol/LのAの水溶液100 mLと、0.20 mol/LのBの水溶液100 mLを混ぜた直後の速さを求めよ。混ぜたあとの体積は200 mLとする。

解説を見る

体積が2倍になるので、どちらの濃度も半分になる。ここを見落とすと、答えが4倍ずれる。

反応速度式に入れる。

入試・大会での出題

「必ず比例する」を選ばせない出題

  • 2026年 大学入学共通テスト 追試験 化学 第2問 問1:反応速度について述べた4つの記述から正しいものを1つ選ぶ。誤りの選択肢に、反応速度が反応物の濃度に必ず比例するという記述があり、指数が1とは限らないことを知っていれば外せる。出典は大学入試センター「令和8年度 追・再試験の問題」。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018、2021年一部改訂)、第1部 第2章 第5節「化学」3(2)ア(イ)㋐ 反応速度、104〜105ページ(「過酸化水素の分解反応のような簡単な反応を取り上げ,速度定数を扱う」)。反応の次数と半減期の語は、この箇所に出てこない
  2. A. V. Harcourt, W. Esson, "On the Laws of Connexion between the Conditions of a Chemical Change and Its Amount", Philosophical Transactions of the Royal Society of London 156(1866), 193-221。本文はOCRの写し「Philosophical Transactions Archive」で読める。続編は同157(1867), 117-137
  3. Z. Bhakta, K. Lyle, "Sharing Chemistry with the Community: 'Elephant's toothpaste'", Chem 13 News, University of Waterloo(2015年3月)(提案されている2段階、1段目が遅いと考えられること、一部がヨウ素に変わること)
  4. Lumen Learning, "Rate-Determining Step"(実験で得た次数と、それを説明する2段階)
  5. 大学入試センター「令和8年度 大学入学共通テスト 追・再試験 化学」問題と正解

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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