スモールワールド

Small-world network

見知らぬ株式仲買人に届いた冊子は、平均5.2人の手を経ていた。

でたらめに結んだ網なら、N個の点のどれにも約ln N/ln k歩で届く。輪の線を1%つなぎ替えるだけで距離は5分の1を切り、まとまりはほとんど崩れない。

年代
1998年
習う
大2・情報科学・ネットワーク科学
レベル
大学(例題 5 問)
人物
ダンカン・ワッツ、スティーヴン・ストロガッツ、スタンレー・ミルグラム、ジェフリー・トラヴァース、アルバート=ラズロ・バラバシ、レカ・アルバート
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

冊子はボストンの株式仲買人へ

1,000人が輪になって並び、左右5人ずつ、合わせて10人とだけ知り合いだとする。知り合いを順にたどって伝言を回すと、ある人から別の人まで、受け渡しは平均50.4回にもなる。ところが、5,000本ある知り合いの線のうち1%、50本ほどをでたらめな相手へつなぎ替えると、平均は9.0回まで減る。知り合いどうしもまた知り合いである割合は、0.667から0.647へ下がるだけだ。ダンカン・ワッツとスティーヴン・ストロガッツの手順で網を20通り作り、平均した値である。

近道は全体の1%なのに、距離は5分の1を切る。

人と人のあいだの近さを、本物の郵便で測った社会心理学者がいる。

スタンレー・ミルグラムである。ミルグラムはジェフリー・トラヴァースと連名で、2人がハーバード大学にいたころの調査を1969年の専門誌Sociometryに報告した。イェール大学図書館が保管する文書では、ネブラスカの調査のデータ解析に1967年3月の日付がある。

出発点になったのは296人のボランティアだった。196人はネブラスカ州の住人で、うち100人は優良株の株主から選ばれた。残る100人は、ボストンの新聞広告に応じた人たちである。届け先は、ボストン郊外のシャロンに住み、ボストンで働く株式仲買人の男性1人。参加者には、その名前と住所、勤め先、出身大学と卒業年、兵役の時期、妻の旧姓と出身地が知らされた。

1960年代の農家の台所で、男性が横向きに座り、薄い冊子を大きな茶封筒に入れている。窓の外に畑が広がる(画像生成 AI で描いたイメージ)
ネブラスカ州の参加者は、届け先を知っていそうな知り合いへ冊子を郵送した画像生成AIで描いたイメージ

決まりは単純だった。届け先と知り合いなら、冊子を直接送る。知らなければ、ファーストネームで呼び合う知り合いのうち、届け先を知っていそうな人へ送る。冊子には受け取った人が名前を書き足す名簿と、ハーバード大学へ返す15枚の返信はがきが付いていて、研究者は1冊ごとの進み具合を追えた。

スタンレー・ミルグラムの肖像(画像生成 AI で描いたイメージ)
スタンレー・ミルグラム1933–1984手紙をリレーさせて、見知らぬ2人を結ぶ知り合いの鎖を数えた画像生成AIで描いたイメージ

296人のうち、実際に冊子を送り出したのは217人。そして64冊が届け先にたどり着いた。届いた冊子が途中で経た人数は平均5.2人で、ボストンの仕事仲間をたどった鎖では4.6人、届け先の住む町を経た鎖では6.1人だった。最後の1人に注目すると、64冊を届け先へ手渡したのは26人しかいない。シャロンの洋品店の主人が1人で16冊を受け持ち、届け先の仕事仲間2人と合わせた3人で、届いた冊子の48%になる。

もっとも、5.2人は届いた64冊だけの平均で、途中で止まった153本の鎖は数に入っていない。

ワッツとストロガッツは1998年の論文で、この現象は世間では「六次の隔たり」として知られると書き、ジョン・グエアの1990年の戯曲『Six Degrees of Separation』を文献に挙げた。2011年にフェイスブックの網全体の距離を測ったラース・バックストロームらによれば、この言い方は戯曲から定着した。バックストロームらは、さらにさかのぼる例として、ハンガリーの作家カリンティ・フリジェシュが1929年に書いた短編「鎖」も挙げている。

起源

輪とでたらめのあいだ

知り合いの知り合いを木の枝のように数え広げる見積もりは、1998年より前からあった。トラヴァースとミルグラムは論文の冒頭で、イシエル・プールとマンフレッド・コッヘンの未発表の原稿を紹介している。1人が平均人と知り合いだとして、届く人数を等比数列のように増やしていく模型だ。2人は知り合いの数の見積もりを入れ、2億人の中の典型的な2人なら、仲介者2人でつながると導いた。

ただ、この数え方には弱みがある。

現実の知り合いは、互いにも知り合いであることが多い。トラヴァースとミルグラムも、この模型は社会の構造を考えに入れていないと書いた。

数学の側では、両極端の網がよく調べられていた。1959〜60年にポール・エルデシュとアルフレッド・レーニが始めたランダムグラフ(カーン=カライ予想)は、点どうしをでたらめに結ぶので距離は短いが、知り合いの知り合いが知り合いという「まとまり」はほとんど無い。隣どうしだけを結ぶ規則正しい格子は、その逆である。

大平原をまっすぐ横切る道路の脇に、いろいろな年代の人々が手をつないで地平線まで並んでいる(画像生成 AI で描いたイメージ)
1986年のハンズ・アクロス・アメリカ。コーネル大学の発表では、隣としかつながらない網の例とされた画像生成AIで描いたイメージ

コーネル大学が1998年6月4日に出した発表には、この両端を身近な絵にたとえた説明がある。1986年、ホームレスの人々を支えるために約700万人が手をつないで米国を横断した「ハンズ・アクロス・アメリカ」は、規則正しい網の典型だ。東海岸から西海岸へ伝言を回すには、長い時間がかかる。でたらめな網なら、同じ人たちがヤンキー・スタジアムの客席に座り、球場のあちこちにいる12人ほどと電話でつながっている姿になる。

生物や技術、社会の網の多くはその間のどこかにある、とワッツとストロガッツは論文の冒頭に書いた。

コーネル大学の理論・応用力学科で、大学院生のワッツと教授のストロガッツは、両端のあいだを1本のつまみでつなぐ模型を作った。

ダンカン・ワッツ輪の網を少しつなぎ替えると世界が小さくなることを示した

個の点を輪に並べ、それぞれを近い順に個の点と結ぶ。時計回りに1点ずつ、隣と結ぶ線を確率で、輪の中からでたらめに選んだ点へつなぎ替える。1周したら2つ先と結ぶ線へ移り、周で全部の線を1度ずつ調べる。なら元の輪のまま、ならすべての線がでたらめになる。

網の性質は2つの量で測った。1つは、どの2点のあいだも最短の道に含まれる線の数を数え、全部の組で平均した距離。もう1つは、ある点の知り合いどうしが知り合いである割合を、すべての点で平均したまとまりの度合いで、クラスター係数とも呼ぶ。

論文は1997年11月27日に受け付けられ、1998年6月4日のNatureに載った。、の網を20通りずつ作ると、を上げはじめてすぐには急に下がり、は輪の値からほとんど動かなかった。はでたらめな網とほとんど変わらないほど小さいのに、は輪のように大きい。2人はこうした網を、スモールワールド現象になぞらえて「スモールワールド」ネットワークと名づけた。

論文には両端の目安も書かれている。では、で、では、である。点の数が増えると、輪のはに比例して伸びるのに、でたらめな網のは対数でしか伸びない。

同じ論文で2人は、この網の上で病気が広がる速さも計算した。感染した人は決まった時間で回復か死亡により除かれるという、SIRモデルと同じ考え方の模型である。必ずうつる病気が1人の感染者から全員に広がるまでの時間は、とほぼ同じ形の曲線を描いた。

「警戒すべきで、しかも見落としやすいのは、世界を小さくするのに近道がほんのわずかで足りることだ」と2人は書いている。

証明

1歩ごとにk倍に広がる

なぜ、でたらめな網はこれほど近いのか。点の数を、1点から出る線の数の平均をとする。でたらめな網ではとごく小さいので、届いた点が網の大きさに近づくまで、知り合いの知り合いが重なることはほとんど無い。重なりを無視して、1点から届く点を1歩ずつ数える。

  1. 1歩で届くのは、自分と結ばれた点

  2. その1つ1つから、まだ届いていない点へ本ほど線が出ている

    1点から3本の線が出ていれば、1歩目に3点、その3点からそれぞれ3本ずつ出て、2歩目には9点に届く。重なりが無ければ、ℓ歩目に届く点はkのℓ乗になる。
  3. 同じ数え方を繰り返すと、歩目に新しく届く点は

  4. 歩までに届いた点を合わせる。が大きければ最後の項がほとんどを占める

  5. ほとんどの点に届く歩数をとすると、届いた数が点の数に並ぶ

  6. 両辺の自然対数をとる

  7. 両辺をで割る

右辺は、つまりを何乗すればになるかという数だ。対数の法則からなので、点の数を10倍にしても、は歩しか増えない。なら、ちょうど1歩だ。

ただし、前提は2つある。1つは重なりが無いことで、知り合いどうしが知り合いだと、2歩目に届く新しい点はより少なくなり、は式より長くなる。もう1つは、網が1つにつながっていることだ。ワッツとストロガッツはを条件に置いた。でたらめな網が全体でつながるのは、1点あたりの線の数がを超えるあたりからである。

式の精度を上げた形もある。2001年にマーク・ニューマン、ストロガッツ、ワッツは、1歩目に届く点の平均と2歩目に届く点の平均を使って、次の式を導いた。

線をでたらめに引いた網ではなので、とおくとに戻る。つまり、1歩ごとに何倍に広がるかを決めるのはだ。線の数が点ごとに違う網ではになり、線の多いハブがあるほどは大きく、はさらに短くなる。俳優の共演やウェブページのリンクの網にこうしたハブがあることは、1999年にアルバート=ラズロ・バラバシとレカ・アルバートが示した。

では、規則正しい輪に近道を足すと、何が起きるのか。ワッツとストロガッツの説明はこうだ。が小さいとき、近道1本は、結んだ2点の距離だけでなく、両側の近所、近所の近所と、まとめて距離を縮めるのでに大きく効く。一方、まとまった近所から線を1本抜いても、は抜いた本数に比例する程度しか下がらない。

60個の点をで結んだ輪では、近道1本でが7.88から6.42へ約2割縮むのに、は0.500から0.483へ3%ほどしか下がらない。2本目では5.33と、元の7割を切る。

途中の計算

輪の距離とまとまりを手で数える

比べる相手として、の輪のとを求める。個の点を輪に並べ、左右個ずつ、合わせて個の点と結ぶ。

  1. 輪に沿って個離れた点へは、1歩で個ずつ進める

  2. の平均をとる

  3. 歩数の平均にする

  4. 個の知り合いのあいだに引ける線を数える

  5. 同じ側の2点は、いつも結ばれている

    左右2つずつと結ぶ点vの知り合い4点のうち、隣り合う3組は線で結ばれ、間が3つ以上離れた3組は結ばれていない。6組のうち3組なので、まとまりの度合いは1/2になる。
  6. 反対側の2点は、間が以下のときだけ結ばれる

  7. 実際にある線を合わせる

  8. 引ける線の数で割る

  9. を戻す

手順2では、ある点から見たほかの点までの輪に沿った距離が、1からまでほぼ同じ数ずつ現れることを使った。手順6は、左に個、右に個離れた2点の間が個なので、となる組を数えてになる。

応用

俳優、送電網、線虫の神経

ワッツとストロガッツは、性質のまったく違う3つの網でとを測った。俳優の網では、1997年4月時点のインターネット・ムービー・データベースで、同じ映画に出た俳優どうしを結んだ。送電網は、米国西部の発電所や変圧器、変電所を点とし、高圧送電線を線とした。線虫C. elegansの網では、シナプスかギャップ結合でつながる神経細胞どうしを結んでいる。表のとは、論文のとから計算した値である。

網点の数 平均の線
映画俳優の共演225,226613.653.000.790.00027
米国西部の送電網4,9412.6718.78.660.0800.00054
線虫の神経282142.652.140.280.050

まず目を引くのはの列だ。

俳優の網はの約2,900倍、線虫でも約6倍まとまっているが、はの1.2倍ほどにとどまる。俳優の網について論文が載せた、同じとのでたらめな網のは2.99で、式の3.00とほぼ重なる。

一方、送電網だけは、式の8.66と、論文が示したでたらめな網の12.4がそろわない。1点あたりの線が2.67本と少なく、ワッツとストロガッツが置いた条件()から外れている。この式は、線が十分に多い網の目安である。

夕暮れの乾いた谷を、鉄塔に張られた高圧送電線が横切り、手前に変圧器の並ぶ変電所がある(画像生成 AI で描いたイメージ)
米国西部の高圧送電線と変電所。ワッツとストロガッツは4,941個の点の網として調べた画像生成AIで描いたイメージ

俳優の網の近さは、映画好きの遊びにもなった。共演をたどれば、どの俳優も数歩でケヴィン・ベーコンにつながる、という「ケヴィン・ベーコンの6次」だ。コーネル大学の発表で、ストロガッツは、映画の歴史に出てくる俳優のおよそ90%が、ベーコンから4歩以内にいると話している。

人の網にも式を当ててみる。ヨハン・ウガンダーらによると、2011年5月にフェイスブックで活動していた利用者は約7億2,100万人、友達の線は687億本で、1人あたりの友達は平均でおよそ190人だった。式に入れると歩になる。

ところが、バックストロームらが網全体で測った平均の距離は4.74で、式より0.8歩ほど長い。友達が100人の利用者では、友達どうしも友達である割合が0.14で、でたらめな網の目安とは桁が違う。差の一因は、この重なりにあるのだろう。

2016年2月にフェイスブックの研究者が公表した値では、利用者が約15億9,000万人に増え、平均の距離は4.57に縮んでいた。

例題と解説

近道と距離の例題

例題 1基本人口が1,000倍になると

1人が平均100人と知り合いで、知り合い方がでたらめな網を考え、を使う。(1)人のとき、はおよそいくつか。(2)を1,000倍の人にすると、はいくつ増えるか。

解説を見る

(1)を入れる。

(2)同じように計算する。

増えるのは1.5歩である。を1,000倍したときに増える歩数はで、元の人口によらない。

例題 2基本輪とでたらめな網の距離

個の点を輪に並べ、左右5個ずつ、個と結ぶ。(1)輪のままの網で、平均の距離をで見積もれ。(2)すべての線をでたらめにつなぎ替えた網で、平均の距離をで見積もれ。(3)(1)は(2)の何倍か。

解説を見る

(1)とを入れる。

(2)を使う。

(3)で、約17倍である。実際に網を作って最短の道を数えると、輪では50.45、すべてつなぎ替えた網では3.27で、比は約15倍だった。

例題 3入試80億人を6歩で結ぶ

世界の人口を人とし、知り合い方がでたらめな網とみなす。どの2人もおよそ6歩でつながるには、1人あたり平均で少なくとも何人の知り合いが要るか。として、整数で答えよ。

解説を見る

とおくとなので、両辺の常用対数をとる。

で、は4と5の間にある。整数で挟むために、6乗して比べる。

したがって、少なくとも45人の知り合いが要る。実際の知り合いは近所に固まって重なるので、6歩でつながるにはもっと多く要る。

例題 4難関輪のまとまりの度合い

輪に並べた点を、左右個ずつ、合わせて個の点と結ぶ。(1)のとき、ある点の知り合い4個のあいだに引ける6本のうち、実際にある線を数えてを求めよ。(2)でも数えて、と合うことを示せ。(3)を大きくすると、はどこへ近づくか。

解説を見る

(1)知り合いはの位置の4点で、間が2個以内の2点は結ばれている。、、の3本がある。とは3個、は4個離れていて、結ばれていない。

(2)知り合いはからまでの6点で、引ける線は本ある。同じ側の3点どうしは間が2個以内なので、左右で本。反対側の組は、間が3個以内の、、の3本が結ばれている。

式にを入れてもで一致する。

(3)分子と分母をで割って極限をとる。

知り合いを増やしても、輪のまとまりは3/4を超えない。

例題 5大学つなぎ替えた本数とCの残り方

、の輪を、確率でつなぎ替える。(1)のとき、つなぎ替えられる線の本数の期待値を求めよ。(2)近所の3点がつくる三角形は、3本の線がどれもつなぎ替えられなければ残る。このことからと見積もれる。とでを求めよ。(3)(2)の値を、20通りの網を作って求めた0.647と0.489と比べよ。

解説を見る

(1)各点から出る本を全部足すと、線1本を両端で2回数えるので、線の数は本になる(一筆書きの定理と同じ数え方)。期待値はその1%である。

(2)を使う。

(3)では一致し、でも差は0.003ほどである。この見積もりは、アラン・バラとマルティン・ヴァイクトが2000年に示した。

図示

3つの網を並べる

左は16個の点を左右2つずつ結んだ輪、中央はその線を2本だけ輪の反対側へつなぎ替えた網、右はすべての線をでたらめにつなぎ替えた網。下の値は、1,000個の点をk = 10で結び、同じ手順を20通りずつ試して求めた平均の距離Lとまとまりの度合いC。

中央の網は、左の輪から線を2本つなぎ替えただけで、輪の反対側どうしが近道1本でつながる。下の数字を中央から右へたどると、はあと6歩ほどしか縮まないのに、は70分の1になる。

シミュレーション

つなぎ替える割合を上げていく

つまみは、つなぎ替える割合を10の何乗かで動かす。300個の点をで結んだ輪で、グラフの実線は平均の距離、破線はまとまりの度合いを、どちらも輪のときを1として表す。ではが輪の4割ほどまで縮むのに、は輪の97%を保つ。輪の外側の目盛りは、いちばん上の点から1歩ずつ届いていく点で、近道がある網では離れた場所にも一度に広がる。「別の網を作る」を押すと、同じで近道の位置だけを変えられる。

広がる学問

近さを測る学問

  • 社会学 人の知り合いの網で、誰かに届くまでの段数を、1人あたりの知り合いの数と人数からで見積もり、手紙やSNSでの実測と比べる。
  • 数学 でたらめに線を引いたグラフの平均距離や直径を調べるとき、1歩ごとの広がりを数えての大きさを示す。全体がつながる境目の(カーン=カライ予想)と組み合わせて使う。
  • 物理学 磁石や振動子を網の上で相互作用させるとき、近道の割合で振る舞いがどう変わるかを調べる。バラとヴァイクトは2000年、1次元の鎖では有限の温度で強磁性にならないイジング模型も、近道が少しでもあれば有限の温度で強磁性へ相転移すると示した。
  • 生物学 神経の網や感染の広がりを調べるとき、とを、点と線の数が同じでたらめな網と比べる。ワッツとストロガッツは、脳がスモールワールドの形なら、視覚野の離れたニューロンがそろって活動することの説明につながるかもしれないと書いた。
  • 情報科学 ベクトル検索の索引を作るとき、近い点どうしを結んだグラフに長い近道を混ぜ、少ない歩数で目的の点にたどり着けるようにする。マルコフとヤシュニンが2016年に発表したHNSWは、線を長さの尺度ごとに層へ分け、上の層から探して、探索の手間を点の数の対数に比例する程度に抑えた。
いまの研究と事業

近道を足す、近道を断つ

  • 2019年フェイスブックAI研究所(FAIR):シエらは、画像認識のニューラルネットワークの配線を、エルデシュ=レーニ、バラバシ=アルバート、ワッツ=ストロガッツの3つのランダムグラフの作り方で決めた。ImageNetの画像分類では、の輪を確率0.75でつなぎ替えた網が5通りの平均で73.8%と最も高く、つなぎ替えない輪は、どのでもつなぎ替えた網より劣った。出典はXieほか「Exploring Randomly Wired Neural Networks for Image Recognition」arXiv:1904.01569。
  • 2020年オックスフォード大学などの研究チーム:ペル・ブロック、メリンダ・ミルズらは、新型コロナウイルス感染症の流行の山を低くする会い方を、網の上のシミュレーションで比べた。人と会う量はどれも半分に減らし、誰との接触を残すかだけを変えている。ブロックらの見方では、感染した人からほかの人までの距離を伸ばすことが、流行の曲線を平らにすることにあたる。決まった少数の相手とだけ会う方法では、でたらめに減らす場合より山の時期が37%遅れ、山の高さは60%下がり、感染する人は30%減った。出典はBlockほか、arXiv:2004.07052(Nature Human Behaviour 4(2020), 588-596)。
  • 2022年LinkedInとMITなどの研究者:ラージクマールらは、LinkedInがつながりを推薦する仕組みで弱いつながりの多さを無作為に変えた実験を、2,000万人あまり、5年分にわたって分析した。共通の知り合いの数で測ると、ほどほどに弱いつながりがいちばん転職に結びついた。共通の知り合いが少ない線は、まとまりの外へ伸びる近道にあたる。出典はRajkumarほか「A causal test of the strength of weak ties」Science 377(2022), 1304-1310。
  • 2024年理化学研究所の村山正宜チーム:脳神経科学研究センターで独自に開発した広視野の二光子励起顕微鏡で、成獣のマウスで、大脳新皮質にあるニューロン約2万個の活動を測った。その結果、ニューロンの活動から見た大脳皮質の網が、スモールワールドネットワークの形をしていることを見いだした。2024年度からの計画研究では、発達や学習を経てこの網がどう生まれるかを調べている。出典はKAKEN「大脳皮質における効率的なネットワーク構造の創発機構」(24H02313)。

参考文献

  1. D. J. Watts, S. H. Strogatz, "Collective dynamics of 'small-world' networks", Nature 393 (1998), 440-442.
  2. J. Travers, S. Milgram, "An Experimental Study of the Small World Problem", Sociometry 32 (1969), 425-443.
  3. A.-L. Barabási, R. Albert, "Emergence of Scaling in Random Networks", Science 286 (1999), 509-512. arXiv:cond-mat/9910332
  4. M. E. J. Newman, S. H. Strogatz, D. J. Watts, "Random graphs with arbitrary degree distributions and their applications", Physical Review E 64 (2001), 026118. arXiv:cond-mat/0007235
  5. A. Barrat, M. Weigt, "On the properties of small-world network models", The European Physical Journal B 13 (2000), 547-560. arXiv:cond-mat/9903411
  6. I. de Sola Pool, M. Kochen, "Contacts and influence", Social Networks 1 (1978), 5-51.
  7. L. Backstrom, P. Boldi, M. Rosa, J. Ugander, S. Vigna, "Four Degrees of Separation", arXiv:1111.4570 (2011)
  8. J. Ugander, B. Karrer, L. Backstrom, C. Marlow, "The Anatomy of the Facebook Social Graph", arXiv:1111.4503 (2011)
  9. S. Edunovほか, "Three and a half degrees of separation", Meta Research(2016年2月4日)
  10. B. Steele, "Kevin Bacon shows the way to a much smaller world", Cornell Chronicle(1998年6月4日)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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