種数面積関係

Species-area relationship

面積を10倍にしても、種の数は2倍ほどにしか増えない。

生息地の面積Aと、そこにすむ種の数Sの関係。SはAのz乗に比例し、zは多くの場合0.15〜0.35ほど。両辺の対数をとると、傾きzの直線になる。

年代
1921年(アレニウス「種と面積」)
習う
大3以上・生物学・群集生態学
レベル
大学(例題 3 問)
人物
オロフ・アレニウス、ヘンリー・グリーソン、フランク・プレストン、ロバート・マッカーサー、エドワード・O・ウィルソン
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

10倍の広さに2倍の種

島の面積が10倍になっても、すむ種の数はおよそ2倍にしか増えない。生態学でよく使う式で、指数を0.3とした場合の計算である。広い島ほど種が多いという見当は当たっているが、増え方はずっと控えめだ。

この形の式を1921年に示したのが、オロフ・アレニウスの論文「種と面積」である。翌1922年にはヘンリー・グリーソンが論文「種と面積の関係について」でこの関係を論じ、アレニウスは1923年にそれへの返答を書いた。種の数は面積の対数に比例するという別の式も出され、どちらがよく合うかという議論は、そのあとも長く続く。

1962年、フランク・プレストンは、種ごとの個体数のばらつきから、べき乗の形を導いた。翌1963年には、ロバート・マッカーサーとエドワード・O・ウィルソンが島の種数の理論を発表した。新しい種が渡ってくる速さと、すんでいる種が消える速さがつり合う所で、種数が決まるという考えだ。2人は1967年の本『The Theory of Island Biogeography』で、これを広げている。

途中の計算

対数をとると直線になる

図で納得する

は種の数(種)、は面積(km²)である。は面積が1 km²のときの種の数で、は面積が増えたときの種の増え方を決める数だ。は「の乗」と読む。

島の広さが面積A(km²)、島にいる印の種類の数が種の数S(種)。cは面積1 km²のときの種の数、zは面積が増えたときの種の増え方を決める指数で、0.15から0.35ほどのことが多い。

が2ならはを2個掛け合わせた数だが、ここでのは0.3のように1より小さい。「0.3個掛け合わせる」は思い描きにくいので、面積を10倍にしたら種の数が何倍になるかで考える。が1なら10倍、0.5なら倍、0.3なら約2倍だ。

累乗どうしを掛けると、指数は足し算になる。は、10を2個と3個、合わせて5個掛けただ。だからを2個掛けるとになり、は2乗して10になる数、つまりである。

同じように、を10個掛けると、指数は0.3の10倍の3になり、になる。一方、2を10個掛けたは1024だ。10個掛けた結果が1000と1024でほとんど同じなので、元の数もほとんど同じで、はほぼ2になる。

面積1 km²の島に10種、面積10 km²の島に20種がすむ。点1つが1種で、zが0.3なら、面積を10倍にするたびに種の数は約2倍になる。

との関係をグラフにするときは、対数の目盛りを使う。常用対数は、10を何個掛けるとその数になるかを表す数で、、、、である。対数のくわしい計算は、対数で確かめられる。

両対数のグラフは、縦軸と横軸の両方に、この対数の目盛りをとったグラフだ。目盛りは1、10、100、1000と、1つ進むごとに10倍になる。

ふつうの目盛りでは、1、10、100が左の端に詰まり、1000だけが離れる。対数の目盛りでは同じ間隔に並び、1目盛り進むごとに10倍になる。

面積1 km²に10種がすむ()として、つまみでを動かし、目盛りを切り替える。ふつうの目盛りでは、面積が広がるほど曲線が寝ていく。両対数の目盛りにすると、どのでも直線になり、が大きいほど傾きが急になる。

式で確かめる

道すじは2段ある。両辺の対数をとって直線の式に直し(手順1〜4)、面積を10倍にしたときの種の数の比を出す(手順5〜8)。

  1. 種の数の式から始める

  2. 両辺の常用対数をとる

  3. 掛け算の対数を、対数の足し算に分ける

  4. 累乗の対数を、指数との掛け算に直す

掛け算の対数は足し算になり、log(10 × 100) = log 10 + log 100 = 1 + 2 = 3である。累乗の対数は指数との掛け算になり、100の0.5乗の対数は0.5 × log 100 = 1である。

横軸に、縦軸にをとると、手順4は中学で習う一次関数と同じ形になる。傾きにあたるのが、切片にあたるのがだ。

が1増えるのは面積が10倍になることで、そのときはだけ増える。面積が1 km²ならなので、直線の高さはちょうどになる。

両対数のグラフで、面積を10倍にすると横に1目盛り進み、種の数は縦にzだけ上がる。直線の傾きがzで、面積1 km²の所の高さがlog cである。
  1. 面積を10倍にしたときの種の数の比をとる

  2. 分子のをに分ける

  3. 分子と分母にあるを約分する

  4. を入れる

手順6では、掛け算の累乗が累乗の掛け算に分かれることを使った。とが等しいのと同じである。

比をとるととが消えるので、何倍になるかはだけで決まる。1 km²の島と10 km²の島でも、100 km²と1000 km²の島でも、種の数の比は同じだ。

応用

島か本土か、どれだけ減るか

の値は、何を比べるかで変わる。生物多様性の政府間組織IPBESの用語集によると、別々の島や地域どうしを比べるとは0.25前後、同じ地域の中で区画を入れ子に広げると0.15前後になることが多い。生態系のモデルを調べたバストラらの2000年の論文も、多くの野外調査がこの式を支えるとして、本土の入れ子の区画で0.13〜0.18、近くの島どうしで0.25〜0.33という範囲を挙げる。

実際の島の例もある。ブラウンとペックは1996年、フロリダキーズの島々とフロリダ本土のカミキリムシで、種の数と面積の関係を調べた。そのデータを両対数に描いた米国の研究所NIMBioSの教材では、引いた直線がで、傾きからと読める。

生息地が狭くなったときにも、同じ式が使える。を置いた例で、森の面積が10分の1、つまり9割が失われたとする。手順5〜7と同じように比をとると、残る種の割合は次のとおりだ。

0.25乗は4個掛けると元の数になる数で、平方根を2回とれば求まる。、である。

森の面積の9割を斜線で示し、1割だけが残る。zを0.25とすると、100種がいた森に残るのは約56種である。

種は約56%が残り、約44%が失われる計算になる。同じ9割の減少でも、なら失われるのは約29%、なら約55%で、の置き方で答えは大きく変わる。

IPBESの用語集によると、研究者は種数面積関係を、生息地が減ったあとに時間をおいて起きる絶滅、つまり絶滅の負債の大きさを見積もるのに使ってきた。ただし、面積が減ってすぐに種が消えるとは限らない。だから、この計算は、時間がたって落ち着いたときの種数の見込みとして読む。

同じ地域の中で、区画を入れ子に広げながら種の数を数えると、本土のにあたる値が出る。枠を置いて中を数える調べ方は、区画法と同じだ。

例題と解説

面積と種の数を計算する

例題 1基本面積が16倍と81倍の島

のとき、面積を16倍にすると種の数は何倍になるか。81倍ではどうか。

解説を見る

手順7と同じく、種の数の比は、面積の倍率の乗になる。0.25乗を4個掛けると指数が1になるので、0.25乗は「4個掛けるとその数になる数」で、平方根を2回とったものに等しい。

16倍で2倍、81倍で3倍になる。

例題 2基本島2つからzとcを出す

面積10 km²の島に20種、1000 km²の島に80種がすんでいる。2つの島がどちらもに乗るとして、とを求めよ。とする。

解説を見る

手順4の直線の式に、2つの島の数を入れる。、である。

下の式から上の式を引くと、が消える。

左辺はなので、からになる。上の式に戻す。

なのでである。

例題 3大学種の9割を残す面積

とする。(1)森の面積が半分になると、種の数は何%に減るか。(2)種の数の9割を残すには、面積の何%を残せばよいか。

解説を見る

(1)種の数の比はである。例題1と同じく、平方根を2回とる。

約84%に減る。

(2)残す面積の割合をとすると、である。両辺を4乗すると、左辺はになる。

面積の約66%を残せばよい。種の1割を失うだけで済ませるにも、削ってよい面積は3分の1ほどまでだ。

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018、2021年一部改訂)、第1部 第2章 第6節「生物基礎」3(3)ア(イ)、124〜125ページ(生態系と生物の多様性、生息場所の分断。種数面積関係の語は解説に出てこない)
  2. 名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻「生態学セミナー2B」シラバス(2020年度 秋、対象学年1年。授業計画に「景観生態学のトピック2:島の生物地理学」)。露崎史朗「生態学」講義ページ(北海道教育大学函館校の学部生向け、2011〜2014年。扱う範囲に「島の生物地理学」と種数-面積曲線。学年の記載はない)
  3. O. Arrhenius, "Species and Area", Journal of Ecology 9(1), 95-99 (1921), doi:10.2307/2255763。反論はO. Arrhenius, "On the Relation Between Species and Area. A Reply", Ecology 4(1), 90-91 (1923)
  4. H. A. Gleason, "On the Relation Between Species and Area", Ecology 3(2), 158-162 (1922), doi:10.2307/1929150
  5. F. W. Preston, "The Canonical Distribution of Commonness and Rarity: Part I", Ecology 43(2), 185-215(1962)、"Part II", Ecology 43(3), 410-432 (1962)
  6. R. H. MacArthur, E. O. Wilson, "An Equilibrium Theory of Insular Zoogeography", Evolution 17(4), 373-387(1963)、同The Theory of Island Biogeography, Princeton University Press (1967)
  7. IPBES「species-area relationship」Glossary(Global assessment)
  8. NIMBioS「Species-Area Relationships」M. Beals, L. Gross, S. Harrell(1999)の教材(フロリダキーズとフロリダ本土のカミキリムシ、Browne and Peck 1996のデータの直線)。元の調査はJ. B. Browne, S. B. Peck, "The long-horned beetles of south Florida (Cerambycidae: Coleoptera): biogeography and relationships with the Bahama Islands and Cuba", Canadian Journal of Zoology 74(12), 2154-2169 (1996)
  9. U. Bastollaほか "Diversity patterns from ecological models at dynamical equilibrium", arXiv:nlin/0009025(2000)(zの範囲。Rosenzweig 1995とBegonほか1998による)、S. Pigolotti, M. Cencini, "Speciation-rate dependence in species-area relationships", arXiv:0902.3906(2009)(べき乗の式と対数の式の比べ合い)、H. Irie, K. Tokita, "Species-area relationship for power-law species abundance distribution", arXiv:q-bio/0609012(2006)(プレストンが1962年に対数正規分布からべき乗の式を導いたこと)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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