ベッドに入りながら
太陽3.1個分の質量が、重力波になって出ていった。
2025年1月14日に届いた重力波GW250114では、太陽の33.6倍と32.2倍のブラックホールが合体して1つになり、その分だけ全体が軽くなった。それでも論文の値で計算すると、事象の地平面の面積は、合体前の2つを合わせた値の約1.6倍に広がっていた。事象の地平面は、その内側からは光も外へ出られなくなる境目である。重さが減っても、面積は減らない。1971年にスティーヴン・ホーキングが証明した面積定理によれば、どんな合体でもそうなる。
ホーキングがこのことに気づいたのは、その前年の1970年、娘のルーシーが生まれて数日後だった。2013年の回想録『My Brief History』によると、ベッドに入ろうとしていたとき、特異点定理のために作った因果構造の理論をブラックホールに使えると気づいたという。続けてホーキングは、こう書いている。「2つのブラックホールがぶつかって合体すると、最後のブラックホールの面積は、元の2つの面積の和より大きい」。

それから半世紀近く、この定理は紙の上の結論だった。合体するブラックホールを観測する手段が無かったからである。2015年9月14日、アメリカのLIGOが、ブラックホールの合体から届いた重力波を初めてとらえた(重力波のチャープ質量)。LIGOを立ち上げた1人、キップ・ソーンの回想では、ホーキングはこの検出を知るとすぐにソーンに電話をかけ、LIGOで自分の定理を確かめられるかと尋ねた。

答えが出たのは、ホーキングが2018年3月14日に76歳で亡くなったあとである。2021年と2025年に、重力波のデータを合体の前と後に分けて調べた研究者たちが、面積は増えていたと結論した。ソーンは2025年9月、「ホーキングが生きていたら、合体したブラックホールの面積が増えるのを見て大喜びしただろう」と語った。
取り出せないエネルギー
では、減らないのはなぜ質量ではなく面積なのか。
1970年から翌年にかけて、回るブラックホールからエネルギーを取り出す研究が、別の道からこの問いに近づいていた。ロジャー・ペンローズとR・M・フロイドは、1971年2月の論文「ブラックホールから回転のエネルギーを取り出す」で、回転のエネルギーは外へ取り出せること、そのとき地平面の面積は増えることを述べた。その少し前の1970年11月には、デメトリオス・クリストドゥールーが、ブラックホールの質量を、回転として取り出せる部分と、どうやっても取り出せない部分に分けていた。後者を既約質量という。既約質量と地平面の面積はで結びつくので(例題4)、既約質量が減らないことは、面積が減らないことと同じになる。
ホーキングは同じ性質を、特定の操作に限らない定理として証明した。1971年5月の論文「衝突するブラックホールからの重力波」である。一般相対性理論が成り立ち、物質が条件を満たしていれば、どんな過程を経ても地平面の面積の合計は減らない。ホーキングはこの論文で、面積定理を使い、2つのブラックホールがぶつかるときに重力波として出せるエネルギーの上限を導いた(証明の章の終わり)。
条件は今の言い方で3つにまとめられる。1つ目はヌルエネルギー条件で、光の進む向きに沿って測ったエネルギーの密度が負にならないことをいう。2つ目は宇宙検閲仮説で、地平面に覆われていない特異点、つまり裸の特異点が現れないことを求める。ペンローズが1969年の総説で出した仮説である。3つ目は一般相対性理論そのもので、ほかの重力理論では面積が減ることもある。ホーキングは回想録で、宇宙検閲仮説はブラックホールの研究すべての土台なのに証明できていないと書き、この仮説をめぐってソーンとジョン・プレスキルを相手に賭けをしていると明かした。
1972年、ヤコブ・ベッケンシュタインは、減らないという点で面積がエントロピーに似ていることに注目し、地平面の面積に比例する量をブラックホールのエントロピーとみなすよう提案した(ボルツマンのエントロピー)。翌1973年には、ジェームズ・バーディーン、ブランドン・カーター、ホーキングが「ブラックホール力学の4つの法則」をまとめた。面積定理はその第二法則にあたる。ホーキングは、1972年にフランスのレズーシュで開かれた夏の学校で頂点を迎えた「わくわくする時期」に、ブラックホール理論の主な問題の大部分が解けたと振り返っている。

ところが1974年、ホーキング自身が、量子論を入れるとブラックホールはかすかに放射を出し、少しずつ縮むことを示した。縮めば面積は減る。量子の効果で、ヌルエネルギー条件が破れるためである。放射まで含めると、面積定理は一般化された第二法則に置きかわる。ブラックホールのエントロピーと外の物質のエントロピーの和が減らない、とする法則で、ベッケンシュタインが提案した。面積定理は量子の効果を無視できる世界の定理である。
寄り集まれない光線
完全な証明は、地平面がどこまで滑らかかや、無限の遠方の扱いまで含めると長くなる。ここではウォルドの総説にならって、筋道を式で追う。
考え方の芯は1つである。事象の地平面は、遠くへ逃げられる領域との境目で、その上を、外へ逃げることも内へ落ちることもない光線(ヌル測地線)が進んでいる。この光線どうしが寄り集まれないなら、光線が張る膜の面積は減りようがない。
地平面の小さな面積の変わり方は、隣り合う光線が開いていくか寄っていくかを表す膨張率で決まる。は光線に沿って測るアフィンパラメーター、は光線の接ベクトルである。
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小さな面積の変わり方を、膨張率で書く。
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光線の束の膨張率は、レイチャウドゥリ方程式に従う。地平面の光線の束にはねじれが無く、は束のゆがみ(シア)を表す。
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アインシュタイン方程式を使うと、最後の項は物質のエネルギーで決まり、ヌルエネルギー条件のもとでは負にならない。
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なので、2と3から次の不等式が出る。
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両辺をで割ると、の増え方に下限がつく。
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での値をとし、0からまで積分する。
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光線が寄り始めていてなら、右辺はで0になる。負のはそれまでに0へ追いつめられ、はに落ちる。
寄り始めた光線は、λ = 2/|θ₀|までに隣の光線と交わる。交わった光線は、地平面の上にとどまれない。 -
は、隣の光線と交わる点ができることを表す。ところが地平面をつくる光線は、未来へ延びるあいだ、隣の光線と交わらない。光線がそこまで延びずに特異点で途切れるなら、この矛盾は起きない。宇宙検閲仮説を数学の条件として置くと、地平面のどこでも次が成り立つことが示せる。
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1を地平面全体で足し合わせると、面積は時間とともに減らない。
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合体の前、遠く離れた2つの地平面の面積の和はである。合体後に落ち着いたブラックホールの面積をとすると、次の不等式になる。
手順1から9は、地平面の上で膨張率が定まること、つまり地平面が十分に滑らかなことを前提にしている。ホーキングの証明も、地平面が区分的に滑らかだと仮定していたとみられる。2001年、ピョトル・フルシチェルらは、この仮定を外して定理を証明し直した。
この不等式から、ホーキングは重力波で出せるエネルギーの上限を出した。同じ質量なら、回っていないブラックホールの面積がいちばん大きい(次の章)。合体後の質量をとすると、である。はじめの2つが回っていなければなので、次の不等式が成り立つ。
右辺は直角をはさむ2辺がとの直角三角形の斜辺である(三平方の定理)。重力波が持ち出すエネルギーはなので、2つの質量が等しいとき、上限は全体のになる。はじめの2つが限界の速さで回っていると面積は半分になり、上限は50%に上がる。GW250114の論文は、この2つの数を、ホーキングの1971年の論文から直接出てくる数として挙げている。
回転で縮む面積
記事の顔の式の前半、回るブラックホールの地平面の面積を、1963年にロイ・カーが見つけた解(カー解)から出す。ここではとし、質量と、角運動量を質量で割ったを、どちらも長さで測る。ボイヤー=リンドクイスト座標で書くと、地平面はが0になる半径にある。時刻を固定し、地平面の上の近い2点を考えると、その距離の2乗は次のようになる。
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をについて解き、外側の根をとる
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面積の要素を、2つの向きの長さの積で書く
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球面全体で積分する
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を書きかえる
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手順4を手順3に代入する
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手順1のを代入する
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とおき、でくくる
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質量を長さに戻す
は0から1までの数である。回っていないならで、シュヴァルツシルト半径の球の表面積になる。限界のでは、その半分のまで縮む。手順5のは、回っていないときの面積の倍と読める。
半径の半円の上で点を動かし、高さをにすると、横の長さが縮み、も縮む。GW250114の合体後は太陽の62.7倍でなので、面積は回っていないときの0.87倍になる。面積から決まる半径は約172 kmで、回っていない同じ質量の185 kmより小さい。
合体の前と後を切り分ける
では、約13億光年先の合体の面積を、どうやって測るのか。
重力波の信号を、いちばん強くなる時刻の前と後で切り分ける。前の部分は2つのブラックホールが回り合いながら近づく間の波で、波形から2つの質量とスピン、つまりが決まる。後の部分では、できたブラックホールが、たたいた鐘のように揺れて静まっていく。この揺れ(準固有振動)の振動数と減り方は、カー・ブラックホールの質量とスピンだけで決まるので、そこからが出る。2つを別々に測ってから比べれば、面積定理を前提にしない確認になる。

最初にこれを実行したのが、2021年7月に論文を出したマサチューセッツ工科大学のマキシミリアーノ・イジらである。GW150914の信号をピークで切り分け、合体後の揺れに倍音を1つ含めて解析すると、面積が増えた確からしさは97%になった。倍音を含めずに、ピークの3ミリ秒あとから解析すると95%である。論文の謝辞には、この研究を勧めたソーンへの礼がある。
GW250114の論文によれば、この信号の信号雑音比は80で、GW150914の26の3倍を超える。LIGO、Virgo、KAGRAの共同研究チームは、合体の直前のいちばん強い揺れ2回分を解析から外し、合体後も倍音が見えなくなるまで待ってから解析した。それでも、合体後の面積が合体前の和より大きいことを4.4σで示した。1合体前と合体後の面積の分布を比べると、平均の差が、2つの分布の広がりを合わせたものの4.4倍ある、という意味である。LIGOの発表は、2021年の結果を95%、今回を99.999%の確からしさとして比べた。
論文の値で計算してみる。合体前の2つは太陽の33.6倍と32.2倍で、スピンは小さいので0とみなす。 kmとすると、万km²、万km²で、合わせて23.74万km²になる。合体後は太陽の62.7倍でなので、万km²となり、合体前の1.57倍である。太陽と同じ質量の回っていないブラックホールの地平面は約110 km²だから、その3,400倍にあたる。LIGOの発表は、24万km²から約40万km²へ広がったと書き、オレゴン州ほどの面積がカリフォルニア州ほどになったとたとえた。発表の数は丸めた値で、どの解析にもとづくかは書かれていない。
検出器で測る質量は宇宙の膨張のために倍に重く見える。それでも、面積はどれも質量の2乗に比例するので、面積の比は変わらない。
質量は合わせて太陽の65.8倍から62.7倍へ、3.1個分(4.7%)減った。面積定理が許す範囲は、これよりずっと広い。合体後のスピンが0.68なら、を満たすにはが太陽の50.0倍以上あればよく、太陽15.8個分(24%)まで出せた計算になる(例題3)。実際の合体は上限の5分の1ほどしか出していない。面積定理が決めるのは上限だけで、実際にどれだけ出るかを知るには、アインシュタイン方程式を計算機で解く数値相対論が要る。
面積で合体を見積もる
例題 1基本回っていないブラックホールの面積
kmとする。(1)太陽の10倍の質量をもつ、回っていないブラックホールの地平面の面積を求めよ。(2)このブラックホール2つが、エネルギーを失わずに合体して、太陽の20倍の回っていないブラックホールになったとする。合体後の面積は、合体前の2つの和の何倍か。
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(1) kmで、の面積は次のとおり。
シュヴァルツシルト半径29.5 kmの球の表面積と同じである。
(2)面積は質量の2乗に比例するので、太陽の20倍では km²になる。合体前の和は km²なので、2倍である。回っていない2つが質量を失わずに回っていない1つになるなら、なので、面積は必ず増える。
例題 2基本重力波で出せるエネルギーの上限
太陽の30倍の回っていないブラックホール2つが合体した。合体後のスピンによらず、重力波として出せるエネルギーの上限を、太陽の質量の何倍か、また何Jかで求めよ。 kg、 m/sとする。
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合体後の質量をとする。同じ質量なら回っていないときの面積がいちばん大きいので、である。面積定理と合わせる。
出せる質量は最大で倍、全体の29.3%である。エネルギーにすると次のとおり。
例題 3大学許される合体後の質量(GW250114)
GW250114の合体前の2つは太陽の33.6倍と32.2倍で、回っていないとみなす。合体後は太陽の62.7倍、だった。 kmとする。(1)合体前の面積の和と、合体後の面積を求めよ。(2)合体後のスピンが0.68だったとして、面積定理を満たす合体後の質量の下限を求めよ。
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(1)の面積はである。
和は km²である。合体後は次のとおり。
合体前の1.57倍である。
(2)が以上になればよい。
合計の65.8倍から、太陽15.8個分(24%)まで重力波で出せた計算になる。実際は3.1個分だった。にすると下限はで、合計の65.8を超える。この2つからは、限界の速さで回るブラックホールはできない。
例題 4大学既約質量
とし、既約質量をで定める。(1)質量、スピンのカー・ブラックホールで、を示せ。(2)として、を示せ。(3)面積を減らさずに回転を止めるとき、取り出せるエネルギーは最大で質量の何割か。とで求めよ。
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(1)途中の計算の手順7のをで割り、平方根をとる。
(2)とおくと、、である。
(3)面積が減らないので、回転を止めたあとの質量はより小さくならない。取り出せるのはまでである。ではでとなり、で約3割になる。では、で、約7%である。証明の章で2つの質量が等しいときに出たが、ここにも現れる。
例題 5大学合体で増えたエントロピー
ブラックホールのエントロピーはである。例題3のGW250114で、合体によってはどれだけ増えたか。 m²とする。
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面積で描いた合体
減らない組み合わせを探す
円の図は、2つのブラックホールと合体後のブラックホールの地平面を、円の面積が地平面の面積に比例するように描いたもので、合体の前と後を繰り返す。点の図をたたいて、重力波で出た質量の割合と合体後のスピンを選ぶ。斜線の中に置くと面積が減るので、その合体は起こらない。「GW250114の値にする」を押すと論文の値になり、点は斜線の外にある。はじめの2つのスピンを上げると合体前の面積が縮み、許される範囲が右へ広がる。
面積が効く学問
- 物理学 ブラックホールを熱力学で扱うときは、地平面の面積をエントロピーに読みかえ、面積定理を第二法則として使う。量子の効果で縮むときは、外へ出た放射のエントロピーも足して考える。面積の増え方をボルツマンのエントロピーのに当てはめると、並び方の数が何倍に増えたかも見積もれる(例題5)。
- 天文学 重力波で見つかったブラックホールの合体を調べるとき、合体前の質量とスピンからを、合体後の揺れからを出して比べ、一般相対性理論とカー解を確かめる。同じ不等式から、合体で重力波として出せるエネルギーの上限も見積もれる。合体前の波の解析には、チャープ質量で振動数の上がり方を表す式が使われる。
- 数学 曲がった時空で光の束が集まるかを調べるとき、レイチャウドゥリ方程式から出る集束の不等式(証明の手順4〜7)を使う。ホーキングが面積定理に使ったのは、特異点定理のために作った因果構造の理論だった。ペンローズは1965年の論文「重力崩壊と時空の特異点」で、重力崩壊が進むと特異点が避けられないことを示し、2020年に「ブラックホールができることは一般相対性理論の確かな予言だという発見」でノーベル物理学賞を受けた。
合体の数を増やして確かめる
- 2022年 ミラノ・ビコッカ大学とケンブリッジ大学などの研究者: ダヴィデ・ジェローザらは、LIGOとVirgoが見つけたブラックホールについて、既約質量を1件ずつ求めた。そのうえで、合体で面積がどれだけ増えたかによって、合体を不可逆さの順に並べた。全質量から素朴に見積もる増え方はで、これをいちばん大きく上回ったのはGW191109_010717の1.49倍だった。研究者たちは、この順位が、面積定理を試す合体を選ぶ手がかりになるとしている。(出典: Gerosaほか「The irreducible mass and the horizon area of LIGO's black holes」arXiv:2202.08848)
- 2024年 マサチューセッツ大学ダートマス校とシラキュース大学の研究者: これまでは、合体の前と後を別々に解析するとき、空の位置と合体の時刻を固定していた。アレックス・コレイアとコリン・カパノは、この2つを前後で共通の未知数として推定する方法を作った。GW150914に当てはめると、が成り立つ確からしさは、合体後を準固有振動で表したとき95.4%、全体の波形の後半で表したとき99.5%だった。(出典: Correia, Capano「Sky marginalization in black hole spectroscopy and tests of the area theorem」arXiv:2312.15146)
- 2026年 中国科学院紫金山天文台などの研究チーム: 研究チームは、2023年8月14日の合体GW230814を調べた。合体後の解析の始まりを妥当な範囲で選ぶと、合体後の面積が合体前の和より大きい確からしさは99.5%以上になるという(Science Bulletin、2026年)。2026年8月には、241件の合体の前半の波形だけから面積の分布を出し、ほかの合体から生まれたとみられる速く回るブラックホールの面積が、もとの組のより大きいほうにずれていると報告した。2つの集団に共通のずれを仮定すると、面積が減ることは5.0σ以上で否定されるという(査読前の論文)。(出典: Tangほか「Verification of the Black Hole Area Law with GW230814」arXiv:2509.03480・Tangほか「Population-Level Verification of the Black-Hole Area Law with First- and Second-Generation Black Holes」arXiv:2608.16563)
参考文献
- S. W. Hawking, "Gravitational Radiation from Colliding Black Holes", Physical Review Letters 26 (1971), 1344-1346.
- M. Isi, W. M. Farr, M. Giesler, M. A. Scheel, S. A. Teukolsky, "Testing the Black-Hole Area Law with GW150914", Physical Review Letters 127 (2021), 011103.
- LIGO Scientific Collaboration, Virgo Collaboration, KAGRA Collaboration, "GW250114: Testing Hawking's Area Law and the Kerr Nature of Black Holes", Physical Review Letters 135 (2025), 111403; LIGO Scientific Collaboration「Ten years later, LIGO is a black-hole hunting machine」(Caltech Newsの記事の転載、2025年9月)
- R. M. Wald, "The Thermodynamics of Black Holes", Living Reviews in Relativity 4 (2001), 6; P. T. Chruściel, E. Delay, G. J. Galloway, R. Howard, "Regularity of Horizons and the Area Theorem", Annales Henri Poincaré 2 (2001), 109-178.
- D. Christodoulou, Physical Review Letters 25 (1970), 1596; R. Penrose, R. M. Floyd, Nature Physical Science 229 (1971), 177; J. D. Bekenstein, Lettere al Nuovo Cimento 4 (1972), 737; J. M. Bardeen, B. Carter, S. W. Hawking, Communications in Mathematical Physics 31 (1973), 161; S. W. Hawking, Nature 248 (1974), 30.
- R. P. Kerr, "Gravitational Field of a Spinning Mass as an Example of Algebraically Special Metrics", Physical Review Letters 11 (1963), 237-238.
- S. Hawking, My Brief History (Bantam, 2013); Science Friday「How Stephen Hawking Got Sucked Into Black Holes」(同書の抜粋、2013年9月12日)
注
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論文の補足は、分布の平均を、標準偏差をとして、と定めている。正規分布で、平均から片側に4.4σ以上離れる確率は約0.0005%で、99.999%とほぼ合う。 ↩