重心の位置

Center of mass

地球と月が回る中心は、地下1,700 kmにある。

物体系の重心は、各物体の位置を質量で重みづけした平均の位置にある。そこに支点を置けば釣り合い、外から力を受けなければ重心の動き方は変わらない。

年代
1687年(ニュートン『プリンキピア』の系4)
習う
高2・物理・様々な運動
レベル
基本(例題 3 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
起源

プリンキピアの系4

体重20 kgの子どもと80 kgの父親がシーソーで遊ぶには、父親が支点のずっと近くに座らなければならない。二人をひとまとまりの物体系と見ると、支点を置くべき点は、二人の位置を体重で重みづけした平均の位置になる。この点が物体系の重心である。

重心が、動きの上でも特別な点だと書いたのはアイザック・ニュートンだ。1687年の『プリンキピア』では、運動の法則のすぐあとの系4に、2つ以上の物体がもつ共通の重心は、物体どうしが及ぼし合う力では動き方を変えない、とある。ニュートンは2つの物体の重心を求め、その点と3つ目の物体の重心を求め、と1つずつ足していく筋で、この主張を確かめた。

途中の計算

重みをつけて平均する

この計算の道すじ。 公式の文字を読み、シーソーに数を入れて支点の位置を出す(手順1〜3)。てこのつり合いから公式を導き(手順4〜9)、3つ以上の物体と平面に広げる(手順10〜13)。最後に、外から押されない重心が動き方を変えないことを確かめる(手順14〜17)。

記号を読む

とは2つの物体の質量(kg)、とは、まっすぐな軸の上で測ったそれぞれの位置(m)である。は重心の位置で、Gは重心を表す英語center of gravityの頭文字だ。物体の大きさは考えず、それぞれの質量が1点に集まっているとみなす。

軸の上で、質量m₁の物体が位置x₁に、それより重い質量m₂の物体が位置x₂にある。重心の位置は2つのあいだの、重いほうに近い所にある。

ふつうの平均は、2つの位置を半分ずつ混ぜた値だ。ところが公式の右辺を分けて書くと、に、にの重みを掛けて足した形になる。

2つの重みを足すと1になる。つまり、重い物体ほど重みが大きく、重心はそちらへ引き寄せられる。このような平均を、重みをつけた平均(加重平均)という。

シーソーの支点を探す

子ども20 kgを m、父親80 kgを mの位置に座らせる。板は軽く、その質量は考えなくてよいとする。

  1. 質量と位置を公式に入れる

  2. 分子と分母を計算する

  3. 割り算をする

支点は子どもから3.2 m、父親から0.8 mの所に置けばよい。距離の比3.2 : 0.8 = 4 : 1は、体重の比1 : 4をひっくり返した比になっている。

右の人の体重と座る位置は、つまみで変えられる。右の人を横にずらしてもよい。値を変えると板はいったん重いほうへ傾き、支点が新しい重心の真下へすべると水平に戻る。破線の三角は二人の位置をふつうに平均した点で、右の人も20 kgにしたときだけ支点と重なる。

てこのつり合いから導く

では、なぜ重心に支点を置くと釣り合うのか。てこの原理のとおり、支点のまわりで左に回そうとする力のモーメントと、右に回そうとするモーメントが等しければ、板は回らない。力のモーメントは、力にうでの長さを掛けた量だった(力のモーメントと剛体のつり合い)。2人にかかる重力はとで、は重力加速度(9.8 m/s²)である。

支点を重心の位置に置いた軽い板の左端に重力m₁g、右端に重力m₂gがかかる。左のうでは重心の位置からx₁を引いた長さ、右のうではx₂から重心の位置を引いた長さで、2つのモーメントが等しい。
  1. 支点のまわりのモーメントのつり合いを書く

  2. 両辺をで割る

  3. かっこを外す

  4. の項を左辺へ、残りを右辺へ移す

  5. 左辺をでくくる

  6. 両辺をで割る

シーソーの数で手順5を確かめると、左辺は、右辺はで等しい。手順5でが消えたので、重心の位置は重力の強さによらない。月の上でも、同じ場所に支点を置けば釣り合う。

3つ以上と、平面の上

物体が3つ以上でも、質量×位置を全部足して、質量の合計で割ればよい。1 kg、2 kg、3 kgの物体が、それぞれ0 m、3 m、6 mの位置にあるとする。

  1. 3つの物体の質量と位置を入れる

  2. 分子と分母を計算して割る

ニュートンの系4の筋と同じく、2つずつまとめても答えは変わらない。まず1 kgと2 kgの重心は2 mで、そこに合わせて3 kgの物体があるとみなせる。その3 kgと、6 mにある3 kgの重心を求めると、やはり4 mになる。

0 m、3 m、6 mにある1 kg、2 kg、3 kgのうち、まず1 kgと2 kgを2 mの3 kgにまとめる。その3 kgと6 mの3 kgから出した重心4 mは、一度に計算した24 ÷ 6 = 4と同じになる。

では、平面の上ならどうか。座標と座標を別々に計算すればよい。点に1 kg、に1 kg、に2 kgの物体があるとする(座標の単位はm)。

  1. 座標の重みつき平均を求める

  2. 座標も同じように求める

座標平面の(0, 0)と(4, 0)に1 kg、(0, 3)に2 kgの物体がある。重心は(1, 1.5)で、x座標とy座標を別々の重みつき平均で求める。

重心は点で、重い2 kgのほうへ寄っている。3つの質量が等しければ、重心の座標は3点の座標のふつうの平均になり、3点を頂点とする三角形の重心と同じ点になる。

外から押されない重心

氷の上で、40 kgの人と60 kgの人が向かい合って立ち、押し合って離れる。60 kgの人が右へ1.0 m/sで動き出すと、40 kgの人は左へ1.5 m/sで動く。質量×速度を運動量といい、2人の運動量の合計は、押し合う前と同じ0のままだからだ()。押し合った場所を0 mとして、重心を追ってみる。

  1. 1秒後の位置を入れる

  2. 2秒後の位置を入れる

氷の上で40 kgと60 kgの二人が押し合って離れる。1秒後に−1.5 mと1.0 m、2秒後に−3.0 mと2.0 mにいるが、重心はどの時刻も0 mのままである。

二人は離れていくのに、重心は押し合った場所から動かない。なぜだろうか。時間のあいだに、それぞれの物体が、だけ動いたとする。(デルタ)は変化の量を表す記号である。動いたあとの位置はとなので、前と後の重心の式で分子どうしを引くと、とが消えてのついた項だけが残る。分母は同じのままだ。

  1. 前と後の重心の式を引き算する

  2. 両辺をで割り、速度で書く

分子は運動量の合計だ。物体どうしは押し合うが、外から力を受けなければ運動量の合計は変わらない。だから重心の速度も変わらない。止まっていた物体系なら重心は止まったまま、動いていた物体系なら重心はまっすぐ同じ速さで進み続ける。ニュートンの系4が言っていたのは、このことだ。重心の動きと、重心から見た2つの物体の動きを分けて解く方法は、換算質量で読める。運動量の合計が変わらない理由は、運動量と力積のぶつかる2台の台車の節で確かめられる。

応用

地球と月が回る点

月は地球のまわりを回る、とよく言うが、正しくは地球と月が共通の重心のまわりを回っている。NASAの資料によると、地球の質量は kg、月は kgだ。地球と月の中心のおよその距離にあたる月の軌道長半径は、384,400 kmである。地球の中心を0 km、月の中心を384,400 kmとして公式に入れる。質量のは分子と分母で約分できる。

地球と月の共通の重心は、地球の中心から月のほうへ約4,670 kmで、半径6,371 kmの地球の中にある。月までの距離は縮めて描いた。

地球の半径は6,371 kmなので、共通の重心は地表から約1,700 km下、地球の内側にある。月の質量は地球の約81分の1しかないので、重心は地球の中心のすぐ近くに来る。それでも地球の中心は、この点のまわりを月と同じ周期で小さく回っている。

例題と解説

シーソーと氷の上で練習する

例題 1基本棒の両端のおもり

長さ1.2 mの軽い棒の左端に3.0 kg、右端に1.0 kgのおもりを付けた。棒を水平に支えるには、左端から何mの所を支えればよいか。

解説を見る

左端を、右端を mとして公式に入れる。

左端から0.30 mの所を支える。左のうでは0.30 m、右のうでは0.90 mで、とモーメントのつり合いも確かめられる。

例題 2基本平面に置いた3つのおもり

点に2 kg、に1 kg、に3 kgのおもりがある(座標の単位はm)。重心の座標を求めよ。

解説を見る

座標と座標を別々に計算する。質量の合計は6 kgである。

重心は点で、いちばん重い3 kgのおもりのほうへ寄っている。

例題 3入試ボートの上を歩く人

静かな水に、長さ3.0 m、質量120 kgのボートが止まっている。質量60 kgの人が、ボートの後ろの端から前の端まで歩いた。水の抵抗は無視できるとして、ボートは岸から見て何m動くか。

解説を見る

人とボートには、外から水平な力がかからない。はじめは止まっていたので、重心は動かない。岸から見て人が動いた量を、ボートが動いた量をとし、前向きを正とする。手順16の重心の動いた量が0なので、分子が0になる。

人はボートの上で3.0 m前へ進んだので、岸から見た人の移動は、ボートの移動より3.0 m多い。

2つ目の式を1つ目に入れる。

かっこを外すとで、 mである。ボートは後ろへ1.0 m動き、人は岸から見て前へ m進む。で、重いボートのほうが少ししか動かない。

入試・大会での出題

共通テストで問われた重心

参考文献

  1. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018、2021年一部改訂)、第1部 第2章 第3節「物理」3(1)様々な運動、64〜66ページ(ア(ア)㋒剛体のつり合いの内容の取扱い「物体の重心にも触れること」、(イ)㋑運動量の保存)
  2. I. Newton, Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica(1687)、Axioms, or Laws of Motion, Corollary IV。A. Motteの英訳の1846年版を「Wikisource」で読める(共通の重心は物体どうしの作用では動き方を変えないこと、2つずつ重心をまとめていく筋)
  3. J. J. O'Connor, E. F. Robertson, "Isaac Newton", MacTutor History of Mathematics(『プリンキピア』の刊行が1687年であること)
  4. NASA Space Science Data Coordinated Archive, "Moon Fact Sheet"(地球と月の質量、地球の平均半径6,371.0 km、月の軌道の長半径384,400 km)
  5. 大学入試センター「令和6年度 大学入学共通テスト 追・再試験 物理」の問題と正解

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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