フェルマーの小定理

Fermat's little theorem

長くなりすぎるので、証明は送らないと手紙にあった。

素数pで割り切れない整数aをp − 1回掛けると、pで割った余りは必ず1になる。大きな累乗の余りを暗算する技から、素数の判定やRSA暗号の鍵の計算までを支える。

年代
1640年
習う
高1・数学A・数学と人間の活動
レベル
入試(例題 4 問)
人物
ピエール・ド・フェルマー、ベルナール・フレニクル・ド・ベッシー、レオンハルト・オイラー、ゴットフリート・ライプニッツ、クルト・ヘンゼル、ロナルド・リベスト、アディ・シャミア、レナード・アドルマン
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

6回掛けると、7で割って1余る

2を6回掛けた数を7で割ると、余りはいくつになるだろうか。64を7で割ると9が立ち、1余る。

3を6回掛けた729も、7で割ると1余る。4なら4096、5なら15625、6なら46656で、どれも7で割った余りは1だ。7を11に替えると、今度は10回掛けた数が1余る。は、である。

素数と、で割り切れない整数を選ぶ。を回掛けた数は、で割るといつも1余る。この規則が、フェルマーの小定理だ。

では、この規則を最初に書き残したのは誰か。トゥールーズの高等法院に勤めていたピエール・ド・フェルマーだ。1640年10月18日の木曜日、フェルマーはパリのベルナール・フレニクル・ド・ベッシーにあてて、長い手紙を書いた。

ピエール・ド・フェルマーの肖像(French: Portrait de Pierre de Fermat Portrait of Pierre de Fermattitle QS:P1476,fr:"Portr…)
ピエール・ド・フェルマー1601頃–1665法律家の仕事の合間に、数論と確率論の土台を築いた出典: Wikimedia Commons・Rolland Lefebvre・Public domain

フレニクルはパリの貨幣法院で評定官を務めるかたわら、整数の計算の速さで知られていた。書き出しは、トゥールーズを離れていて返事が遅れたことの詫びだった。等比数列の約数を論じたあと、フェルマーは自分の証明のよりどころを打ち明けた。

ベルナール・フレニクル・ド・ベッシーの肖像(画像生成 AI で描いたイメージ)
ベルナール・フレニクル・ド・ベッシー1605頃–1675パリの貨幣法院に勤め、整数の計算の速さでフェルマーと渡り合った画像生成AIで描いたイメージ(顔は伝わっていないため想像で描いた)

「どんな素数も、どの等比数列でも、その累乗の1つから1を引いた数を必ず割り切る。その累乗の指数は、素数から1を引いた数の約数である」。例に挙げたのは、3, 9, 27, 81, 243, 729と続く3の累乗と、素数の13だった。13はを割り切り、指数の3はの約数になっている。729の指数6は3の倍数なので、も13で割り切れる。

フェルマーは続けて、「長くなりすぎるのを恐れなければ、その証明をお送りするのだが」と書いた。

秋の光が入る窓辺の机に、何枚も重ねた手紙と羽根ペン、インク壺、封蝋が置かれている。字は読めない。(画像生成 AI で描いたイメージ)
1640年10月18日、フェルマーはフレニクルにあてて長い手紙を書いた(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

同じ手紙で、フェルマーは知らないことも打ち明けた。「知らないことも、同じ率直さで言う」と断ってから、3, 5, 17, 257, 65537と続く数がどれも素数だという予想は、まだ証明できていないと書いた。それでも疑ってはいない、と添えている。

証明を送らなかった規則は正しく、証明できないと認めた予想は誤っていた。フレニクルの返事は残っていない。

起源

証明は96年後、ペテルブルクで

92年後の1732年9月、ペテルブルクの科学アカデミーにいた25歳のレオンハルト・オイラーが、この手紙の続きを書いた。論文の前半で崩したのは、フェルマーの予想だった。65537の次のは、641で割り切れる。

レオンハルト・オイラーの肖像(Leonhard Euler (1707-1783))
レオンハルト・オイラー1707–1783解析学を軸に数学のほぼ全分野に業績を残し、eやiの記号を広めた出典: Wikimedia Commons・Jakob Emanuel Handmann・Public domain

後半には、素数で割り切れない、について、がで割り切れるという定理を置いた。とすれば、フェルマーの小定理になる。ただしオイラーは、「証明は持っていないが、正しいことは完全に確信している」と書き添えた。

4年後の1736年に書いた証明では、まず掛ける数が2の場合、続いて3の場合を示し、掛ける数を1つずつ上げてすべてのに広げた。論文はアカデミーの紀要の第8巻に載り、出版は1741年だった。手紙から96年後に書かれたこの証明が、印刷された最初の証明となった。

大きな川の向こうに、18世紀の石造りの建物が並ぶ町。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
1736年、オイラーは科学アカデミーのあるペテルブルクで、最初の証明を書いた(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

もっとも、オイラー自身はこの証明に満足していなかった。1755年にベルリンのアカデミーで読んだ論文では、以前の証明はニュートンの二項展開に頼っていて「命題から遠い」と振り返っている。新しい証明は累乗の性質だけを使い、「ずっと自然に見える」という。1758年にベルリンで読み、1763年に出た論文では、素数でない数で割る場合へ定理を広げた。

もっと早く証明にたどり着いていた人もいた。ハノーファーに残るゴットフリート・ライプニッツの手稿を調べたディートリヒ・マーンケは、1912年にこう報告した。ライプニッツはこの定理をフェルマーとは別に、組合せの研究の中で見つけたらしい。知られている最初の証明もライプニッツのものだが、この研究は生前に発表しなかった。

ゴットフリート・ライプニッツの肖像(German: Bildnis des Philosophen Gottfried Wilhelm Freiherr von LeibnizPortrait of Gottfri…)
ゴットフリート・ライプニッツ1646–1716微積分を独自に作り、いまも使う ∫ とdの記号を考えた出典: Wikimedia Commons・Christoph Bernhard Francke・Public domain

ライプニッツは逆向きも成り立つと考え、を割り切るは素数だ、という形の証明を目指していた。しかし、この逆は正しくない。341という反例は、合成数をふるい落とす計算の中に出てくる。

「小定理」の呼び名は、ずっとあとに広まった。1894年に出たフェルマー全集の注は、手紙のこの一節を「フェルマーの定理と呼ばれる命題」のもとだと書いた。1913年にはドイツのクルト・ヘンゼルが教科書『整数論』で、有限な群の基本定理を「小さなフェルマーの定理と呼ぶのが習わし」と記した。余白の書き込みで知られるフェルマーの最終定理を大きいほうとみて、こちらを小さいほうと呼ぶ。素数の記録を集めるPrime Pagesの解説は、小さいが「たぶんいちばんよく使われる定理」と書く。

証明

7の時計で余りを並べ替える

この証明の道すじ。 余りを7時間の時計で読み、素数と合成数で余りを表にする。からまでの余りが1〜6の並べ替えになることから公式を導き(図で納得する)、オイラーの二項展開の道でも導く(式で確かめる)。最後に、初めて1に戻る回数がの約数になることを示す。

式の文字を読む

は何回も掛ける整数、は割る数で、素数である。は「はで割り切れない」と読む。はを回掛けた数で、どの文字にも単位は無い。

公式の各部分を、p = 7、a = 3で指した図。aは掛ける数、p − 1は掛ける回数、≡は余りが等しいこと、mod pはpで割った余りで比べることで、3を6回掛けた729 = 7 × 104 + 1の余り1が右辺の1にあたる。

(合同)は、割った余りが等しいことを表す。7時間で一回りする時計で、0時から10時間進めると、針は1周して3を指す。10を7で割った余りは3なので、次のように書く。

「7を法として、10と3は合同」と読む。法は、割る数の7のことだ。17時間進めても針は2周して3を指すので、で、とも書ける。

余りが等しい数どうしを掛けると、積の余りも等しい。となら、もも、7で割って3余る。とを掛けて広げると、7の倍数でない項はしか残らないからだ。

素数と合成数で試す

5と7で割る場合を、とで試す。を1回、2回と掛けるたびに割った余りを書くと、回目はどれも1になる。

割る数掛ける数1回目から順に、割った余り
522, 4, 3, 1
533, 4, 2, 1
722, 4, 1, 2, 4, 1
733, 2, 6, 4, 5, 1

7と2の行は、3回目ですでに1に戻り、そこから同じ並びのくり返し。早く戻っても、6回目には必ず1にいる。

では、合成数で割るとどうなるか。6で割る場合、5回掛けた数の余りは次のとおりで、1になるのはだけだ。

12345
を6で割った余り12345

図で納得する

なぜ素数なら1に戻るのか。、で、3に1から6までを掛けた6つの数を、7で割ってみる。

余りの3, 6, 2, 5, 1, 4は、1から6までを、ちょうど1回ずつ並べ替えたものだ。7で割る限り、を2や6に替えても余りは1〜6の並べ替えになる。6で割ってとすると、余りは2, 4, 0, 2, 4と重なり、1と3と5が抜ける。

からまでを全部掛けた積と、余りの3, 6, 2, 5, 1, 4を全部掛けた積は、余りが等しい数どうしを掛けたものなので、7で割った余りも等しい。前の積は3を6個くくり出すとで、あとの積は1〜6を並べ替えて掛けただけなので、どちらにもが入る。

上の段に3を6つ、下の段に1から6を並べ、縦の2つを掛けると3 × kになる。上の2段を全部掛けると3⁶ × 720、7で割った余り3、6、2、5、1、4を全部掛けても720になる。

両辺の差は、7の倍数だ。7は素数なので、2つの数の積を割り切るなら、どちらかを割り切る。は7で割り切れないから、7はを割り切る。

一般の素数でも、同じ2つの手順を踏めばよい。からまでの余りは、どれも0でなく、互いに違うので、1〜の並べ替えになる。全部掛けると、次の式が出る。

は「の階乗」と読み、から1まで全部掛けた数で、である。1〜のどれも素数で割り切れないので、積のもで割り切れない。

7のときと同じく、両辺の差はの倍数だ。だからはを割り切り、両辺からを外したが出る。

余りがどれも違うのは、2つが等しいと差のがの倍数になるのに、ももで割り切れないからだ。とは1〜の違う数なので、は0でなく、大きさもより小さい。余りが0にならないのも、ももで割り切れないからである。

が素数で、を割り切らないことが効くのは、この2か所だ。がの倍数、たとえばなら、の余りはどれも0で、並べ替えにならない。

合成数の10でとすると、余りは3, 6, 9, 2, 5, 8, 1, 4, 7と並べ替えにはなる。ところがが10で割り切れるので両辺から外せず、を10で割った余りは3のままだ。

式で確かめる

オイラーが1736年にたどったのは、二項展開の道だった。がどんな整数でも成り立つを先に示し、そのあとで両辺をで割る。

  1. 二項定理でを展開する

  2. 両端のと1を左辺へ移す

は、個から個を選ぶ選び方の数である。が素数なら、が1からのとき、はどれもで割り切れる。分子のにはがあり、分母のにはより小さい数しかないので、が約分で消えずに残るからだ。

たとえばで、7が残る。パスカルの三角形の7段目に並ぶ7, 21, 35, 35, 21, 7がどれも7で割り切れることは、二項定理の例題5でも計算できる。

(a + 1)⁵ = a⁵ + 5a⁴ + 10a³ + 10a² + 5a + 1で、まん中の係数5、10、10、5はどれも5の倍数。a⁵と1を移すと、残りは5 × (a⁴ + 2a³ + 2a² + a)になり、a = 2なら243 − 32 − 1 = 210 = 5 × 42。
  1. 右辺の係数はすべての倍数なので、右辺もの倍数

  2. 両辺にを足し、の式に組みかえる

p = 5で、aの5乗からaを引いた数を、a = 1から4まで階段に並べた図。0、30、240、1020と上がり、1段の差の30、210、780はどれも5の倍数なので、どの段も5の倍数になる。

手順4は、がの倍数なら、1つ上のもの倍数だと言っている。1段目のはの倍数なので、そこから1段ずつ上がれば、どの段もの倍数のままだ。こうして1段ずつ示していく証明を、数学的帰納法という。

  1. から始め、手順4でを1つずつ上げる

  2. で割り切れないなら、両辺をで割れる

手順5は、がの倍数でも成り立つ形だ。負のも、の倍数を足して正にすれば余りは変わらない。手順6では、がの倍数で、はを割り切らないので、を割り切る。

初めて1に戻る回数

フェルマーが手紙に書いたのは、もう少し強い形だった。3の累乗を13で割ると3, 9, 1と進み、3回目に1に戻って、そこから同じ3つをくり返す。

3、9、27、81、243、729を13で割った余りは3、9、1、3、9、1で、3回ごとに1に戻る。1に戻る回数の3は、13 − 1 = 12の約数で、12回目にも1にいる。

初めて1に戻る回数をとすると、余りは回ごとに同じ並びをくり返す。回目に1にいるとき、をで割って商を、余りをとすると、なので、次のように書ける。

左辺は1と合同なので、だ。は0以上未満で、1回目から回目までは1に戻らないから、しかない。1になる回数はどれもの倍数で、公式のもの倍数、つまりはの約数である。7で割って2を掛けたときの3回も、6の約数だった。

途中の計算

2の100乗を7で割る

この計算の道すじ。 公式でを1に置きかえ(手順1)、指数の100を6ずつの組に分けて(手順2・3)、残ったを計算する(手順4・5)。

は31桁の数で、そのまま割るのは手に余る。ただ、証明の頭で見たとおり、余りが等しい数どうしを掛けても余りは等しい。なら、も1と合同になる。

  1. 公式で、とする

  2. 指数の100を6で割る

  3. 指数を6ずつの組と残りに分ける

塗りつぶした6個の組はどれも余り1で、答えを決めるのは残りの4個だけになる。

  1. どの組のも1に置きかえる

  2. を7で割る

たとえばなら12個ずつの組で、100は8組と残り4個に分かれ、答えはを13で割った3になる。

応用

ふるいと、33で回す小さな暗号

合成数をふるい落とす

素数を探すときは、まず候補のでをで割る。余りが1でなければ、は素数ではないと確定する。

nを3から22まで並べ、2のn − 1乗をnで割った余りを書いた表。素数の3、5、7、11、13、17、19では余りが1で、合成数ではどれも1にならず、たとえば15と21では4が残る。

しかも、約数を探す必要は無い。15ならで余りが4なので、3と5を見つけなくても合成数と分かる。

ただし、逆は言えない。合成数のでも、を341で割ると1余る。ライプニッツが目指した逆向きの定理は、ここで崩れる。

561のように、2の代わりに、561と1のほかに公約数をもたないどの数を使ってもだまされる合成数を、カーマイケル数という。それを見抜くミラー・ラビン法は、AKS素数判定法で追える。

オイラーの定理へ広げる

合成数で割るときは、割る数と1しか公約数をもたない数だけを使う。こうした2つの数を、互いに素という。10で割るなら1, 3, 7, 9の4つで、3を掛けた3, 9, 21, 27を10で割ると、余りは3, 9, 1, 7になる。

10と1のほかに公約数をもたない1、3、7、9に3を掛けて10で割ると、余りは3、9、1、7で同じ4つの並べ替えになる。4つを掛けた189は10と互いに素なので両辺から外せて、3⁴ = 81 ≡ 1(mod 10)。

同じ並べ替えの証明が通り、4つ分のは10で割って1余る。1からまでの整数のうち、と互いに素なものの個数を(ファイ)と書く。で、と互いに素なについて次の式が成り立つ。

オイラーが1763年の論文で示した、オイラーの定理。素数ならで、フェルマーの小定理に戻る。

2つの違う素数の積ではで、33ならだ。1から33のうち、3の倍数の11個と11の倍数の3個を除き、両方で除いた33を1つ戻すと、になる。

33で鍵を作る

1977年4月、マサチューセッツ工科大学のロナルド・リベスト、アディ・シャミア、レナード・アドルマンは、暗号にする鍵を公開しても解く鍵が漏れない暗号の論文を学会誌に送った。1978年2月に出た論文は、暗号が元に戻ることを「オイラーとフェルマーによる恒等式」で示している。3人の頭文字をとった名が、RSA暗号だ。

では、小さな数で1回まわすとどうなるか。素数を3と11に選ぶと、で、になる。

なので、暗号にする指数を3、解く指数を7とする。送りたい数の4を3乗して33で割ると、暗号は31になる。

受け取った31を7乗して33で割ると、4に戻る。である。

戻る理由は、21をと分けると見える。送る数が33と互いに素なら、オイラーの定理でなので、次の式になる。

33と3は公開してよいが、解く指数を出すにはが要る。RSAの論文は、を求めるのはを素因数に分けるのと同じくらい難しいと示した。だから今の鍵では、を2048ビット(10進法で617桁)以上にとる。

素因数に分ける手順は、素因数分解で追える。

例題と解説

余りと素因数を手で求める

学習指導要領の解説は、この定理の名前を挙げていない。数学Aの「数学と人間の活動」で整数の約数や倍数とユークリッドの互除法を扱い、数学Bの数列では、いろいろな方法で証明する命題の例に「は5の倍数」が挙がる。これはのときのにあたる。

例題 1基本累乗の余りを求める

を7で割った余りを求めよ。

解説を見る

フェルマーの小定理で、とすると。なので、次のようになる。

で、余りは4である。

例題 2入試どの整数でも42の倍数

整数について、は42の倍数であることを示せ。

解説を見る

で、2と3と7はどの2つも1のほかに公約数をもたない。それぞれで割り切れることを示せば、積の42でも割り切れる。

7では、フェルマーの小定理をの形で使うと。3ではなので、次が成り立つ。

2ではなので、を何回掛けてもと合同で、。3つとも成り立つので、は42の倍数である。なら。

例題 3難関約数の形を絞る

を割り切る素数は、64で割ると1余ることを示せ。それを使って、が641で割り切れることを示せ。

解説を見る

はの倍数なので、と書ける。1を足すとの倍数になる、という意味だ。2乗するとになる。2の累乗が初めて1に戻る回数をとすると、証明の最後で見たとおり、は64の約数で、1, 2, 4, 8, 16, 32, 64のどれかである。

が32以下なら32の約数なのでとなり、と合わない。は奇数なのでだからだ。よって。フェルマーの小定理からなので、64はの約数になる。

の形の素数を小さい順に試すと、193、257、449、577では割り切れず、5番目ので割り切れる。

オイラーが1732年に示した分解だ。

例題 4大学暗号がいつも戻る理由

、暗号にする指数3、解く指数7のRSA暗号で、0から32までのどのも、を33で割るとに戻ることを示せ。3や11の倍数も含める。

解説を見る

33で割った余りが等しいことは、3で割った余りと11で割った余りがどちらも等しいことと同じである。3と11は互いに素なので、差が3の倍数でも11の倍数でもあれば、33の倍数になる。

3で割った余りでは、が3の倍数なら両辺とも0。そうでなければで、となる。

11で割った余りでは、が11の倍数なら両辺とも0。そうでなければで、となる。

どちらでもなので、33で割っても。ならで、たしかに3に戻る。RSAの論文も、同じ形の議論で暗号が元に戻ることを示している。

図示

7で割った九九の表

1から6の行と列の掛け算を7で割った余りで書いた表で、どの行にも1から6がちょうど1回ずつ並び、右の列のaの6乗の余りはどの行でも1になる。3の行を太い枠で囲んでいる。

太い枠の3の行が、証明でたどった3, 6, 2, 5, 1, 4だ。どの行も並べ替えなので、行の6つを掛けた積はどれも720と同じ余りの6になり、そこからが出る。1の行は元の順、6の行は逆の順に並ぶ。

シミュレーション

点を結んで、輪の長さを数える

時計の目盛りのように、円の上に0からまでの点を置き、から、をで割った余りの点へ矢印を引く。素数を選ぶと、矢印はどの点にも1本ずつ届き、いくつかの輪に分かれる。輪の長さはどれも同じで、輪の長さに輪の数を掛けるとになる。

太い線の輪は1を通り、の余りをたどるので、その長さが初めて1に戻る回数だ。一方、合成数を選ぶと、多くので、2本届く点と届かない点が現れるか、輪の長さがそろわなくなる。

広がる学問

余りの規則を使う学問

  • 数学 有限な群を調べるとき、要素の数がなら、どの要素も回掛けると単位元に戻る、という定理として使う。ヘンゼルは1913年の教科書で、これを掛け算の並べ替えと同じ議論で証明し、をその特別な場合として導いた。
  • 情報科学 大きな数が素数かどうかを調べるとき、割り算を試す前にをで割った余りを計算し、1にならない候補を捨てる。2乗をくり返せば、桁数に比例する回数の掛け算で余りが出る。
  • 物理学 量子計算機で因数分解の手順を実験で試すとき、をで割った余りが1に戻る回数を測る。2001年、IBMアルマデン研究所とスタンフォード大学のリーヴェン・ヴァンデルシペンらは、分子の中の7個の原子核を量子ビットにして15を分けた。ではで、と15の最大公約数から3と5が出る。戻る回数の4は、オイラーの定理からの約数になる。
いまの研究と事業

鍵の長さと、合成数の研究

  • 2020年 ファブリス・ブド、ポール・ツィンマーマンら6人: 課題として公開されていた240桁のRSA-240を素因数分解した。計算機の1コアを1年使う量に直すと、約1000年分の計算だった。同じ論文の最後には、250桁のRSA-250を約2700年分で分けた結果も載せた。が分かればから解く指数が出るので、どこまで分けられるかが鍵の長さの目安になる。(出典: arXiv:2006.06197、CRYPTO 2020)
  • 2022年 デジタル庁、総務省、経済産業省: CRYPTRECの「暗号強度要件(アルゴリズム及び鍵長選択)に関する設定基準」で、2048ビットのを使うRSAを、112ビットのセキュリティ強度に当てはめた。新しく暗号で守るものは2040年まで128ビット以上、RSAなら3072ビットを選ぶのが原則で、112ビットは条件つきで2030年まで認めた。(出典: CRYPTREC LS-0003-2022R1)
  • 2023年 ダニエル・ラーセン: 十分大きななら、からまでのあいだに必ずカーマイケル数があることを証明した。カーマイケル数は合成数なのに、と互いに素などのでもとなる。とのあいだには素数がある、というベルトランの仮説と同じ形の主張を、カーマイケル数で示したことになる。(出典: arXiv:2111.06963、International Mathematics Research Notices 2023, no. 15)
  • 2026年 アメリカ国立標準技術研究所(NIST): 量子計算機に備えて暗号を移す計画、NIST IR 8547の最終版を出した。RSAは2048ビットより長い鍵も含めて、2030年より後は非推奨、2035年より後は認めない。ショアのアルゴリズムを使えば、をで割った余りが1に戻る回数からを分けられるからだ。(出典: NIST IR 8547、2026年10月)

フェルマーが「長くなりすぎる」と送らなかった証明は、今では7の時計の上で6行に収まる。手紙に添えた例も、手で計算できる。。

参考文献

  1. P. Tannery, C. Henry (éd.), Œuvres de Fermat, t. II, Correspondance (Paris: Gauthier-Villars, 1894), lettre XXXVIII bis(1640年4月1日), pp. 186-187; lettre XLIV「Fermat à Frenicle, jeudi 18 octobre 1640」, pp. 206-212(rcin.org.plの写し).
  2. L. Euler, "Observationes de theoremate quodam Fermatiano aliisque ad numeros primos spectantibus", Commentarii academiae scientiarum Petropolitanae 6 (1738), 103-107(E26・1732年9月26日の発表。J. Bellの英訳arXiv:math/0501118).
  3. L. Euler, "Theorematum quorundam ad numeros primos spectantium demonstratio", Commentarii 8 (1741), 141-146(E54・1736年に執筆); "Theoremata circa residua ex divisione potestatum relicta", Novi Commentarii 7 (1761), 49-82(E262・§53。J. Bellの英訳arXiv:math/0608467); "Theoremata arithmetica nova methodo demonstrata", Novi Commentarii 8 (1763), 74-104(E271). 書誌はEuler Archiveによる。
  4. D. Mahnke, "Leibniz auf der Suche nach einer allgemeinen Primzahlgleichung" (1912). 書評はJFM 43.0068.02(MaRDI portal). K. Hensel, Zahlentheorie (Berlin, Leipzig: G. J. Göschen, 1913), 5. Kapitel §6, S. 128(Project Gutenberg #38986). C. Caldwell, "Proof of Fermat's Little Theorem", The Prime Pages.
  5. R. L. Rivest, A. Shamir, L. Adleman, "A Method for Obtaining Digital Signatures and Public-Key Cryptosystems", Communications of the ACM 21 (1978), no. 2, 120-126(1977年4月4日受付).
  6. 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第4節「数学A」3(3)数学と人間の活動、96〜98ページ;第5節「数学B」3(1)数列、103ページ
  7. L. M. K. Vandersypen et al., "Experimental realization of Shor's quantum factoring algorithm using nuclear magnetic resonance", Nature 414 (2001), 883-887(arXiv:quant-ph/0112176). D. Larsen, International Mathematics Research Notices 2023, no. 15, 13072-13098. MacTutor, "Bernard Frénicle de Bessy".

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