グリーン・タオの定理

Green-Tao theorem

最長22項の時代に、どんな長さの列もあると示された。

どんな長さを言われても、素数だけの等差数列がその長さで存在する。終わらない列は作れず、定理は見つけ方も教えないが、公差の決まりは手計算で分かる。

年代
2004年
習う
大3以上・数論・素数の分布
レベル
大学(例題 5 問)
人物
ベン・グリーン、テレンス・タオ、エンドレ・セメレディ、ポール・エルデシュ、パール・トゥラーン、ダニエル・ゴールドストン、ジェム・ユルドゥルム
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

22項の記録と1本の原稿

5、11、17、23、29。6ずつ増えるこの5つの数は、どれも素数である。次の35は5 × 7なので、列はここで切れる。

では、素数だけの等差数列はどこまで長くできるのか。答えは「いくらでも長くできる。ただし、終わらない列は作れない」である。

2004年4月8日、論文の原稿を公開するサイトarXivに、題名がそのまま答えになった原稿が載った。「The primes contain arbitrarily long arithmetic progressions」。素数はいくらでも長い等差数列を含む、という意味である。著者はカナダのブリティッシュ・コロンビア大学で博士研究員をしていたベン・グリーンと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のテレンス・タオだった。

テレンス・タオ1975–解析学と数論の数学者。素数の等差数列の定理と圧縮センシングの証明に加わった

そのころ実際に見つかっていた最長の列は、22項しかなかった。1993年に計算機で見つかったで、を0から21まで動かすと全部が素数になる。定理は「何項でもある」と言うのに、手元の実物は22項。この差の大きさに、この定理の面白さがある。

蛍光灯の下の計算機室に、箱型の端末と大きな機械が並ぶ。机には連続用紙の束が積まれ、紙の字は読めない。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
1990年代の計算機室。素数の等差数列の記録は、こうした機械の長い計算で伸びていった(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

23項が見つかったのは、原稿が載って3か月あまりあとの2004年7月24日である。そのあと記録は27項まで伸びたが、2026年10月に更新された記録の表にも28項は載っていない。証明は列の存在を保証しても、次の1本の見つけ方までは教えなかった。

証明を支えた部品には、隣り合う素数の間隔を調べていた人たちの原稿もあった。論文の謝辞でグリーンとタオは、ダニエル・ゴールドストンとジェム・ユルドゥルムの仕事を教えてくれたアンドリュー・グランヴィルと、原稿を見せてくれたゴールドストンに、特に謝意を述べている。

研究室の机に、印刷した原稿の束と折りたたみ式のノートパソコン、飲みかけのカップが置かれている。紙と画面の字は読めない。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
2004年ごろの研究室の机。原稿は印刷され、同僚のあいだで読み合われた(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

原稿は2007年9月の第6版まで直され、2008年に専門誌『Annals of Mathematics』167巻に載った。その間の2006年、タオはフィールズ賞を受ける。国際数学連合の発表に書かれた理由は「偏微分方程式、組合せ論、調和解析、加法的整数論への貢献」で、この定理の名前は挙げていない。

起源

公差を調べた18世紀から

問いの始まりは、はっきりしない。グリーンとタオ自身が、この予想を「古典的、あるいは言い伝えに近い」と呼んでいる。2人の論文によれば、ディクソンの『数論の歴史』には、1770年ごろラグランジュとウェアリングが「個の素数が等差数列をなすとき、公差はどれくらい大きくなければならないか」を調べたとある。その結果がどの長さでも最良なのかと考えなかったとは想像しにくい、とグリーンとタオは続ける。

窓辺の木の机に、羽根ペンとインク壺、手書きの紙の束と古い本が置かれている。紙の字は読めない。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
18世紀の書斎。素数の等差数列の問いは、このころの書物にさかのぼるとされる(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

1923年、ハーディとリトルウッドは、もっと広い予想の特別な場合として、以下の素数でできる項の等差数列の個数を予想した。1939年にはファン・デル・コルプトが、3項の列が無限にあることを証明する。ところが4項から先は、長いあいだ手がかりが無かった。

もう1本の道は、素数を忘れるところから始まる。1936年、ポール・エルデシュとパール・トゥラーンは、1からまでの整数のうち決まった割合以上を含む集合なら、必ず長い等差数列を含むと予想した。1953年にクラウス・ロートが3項の場合を、1969年にエンドレ・セメレディが4項の場合を示し、1975年の論文で全部の長さを片づけた。セメレディは2012年にアーベル賞を受け、授賞理由には加法的整数論とエルゴード理論への影響が挙がっている。

エンドレ・セメレディ1940–密度のある集合に長い等差数列があることを示した組合せ論の数学者

エルデシュの狙いは素数にあった。ティモシー・ガワーズは2015年の総説で、エルデシュがさらに強い予想を立てた主な動機は、素数にいくらでも長い等差数列があることを導けるからだった、と述べている。逆数の和が限りなく大きくなる集合には長い等差数列がある、という予想で、が限りなく大きくなる素数は、この条件を満たす(素数が無限にあること)。その予想は総説の時点でも未解決で、2004年の証明はこの道を通っていない。

ポール・エルデシュの肖像(Erdos budapest fall 1992 (cropped))
ポール・エルデシュ1913–1996組合せ論と確率の方法を広め、ラムゼー数を上と下から押さえた出典: Wikimedia Commons・Kmhkmh・CC BY 3.0

セメレディの定理をそのまま素数に使えばよさそうに見える。そう簡単にはいかない。素数の割合は、大きな範囲で見るほど0に近づいていくからである。

証明

長い列はあるが、終わらない列はない

この章の道すじ。 完全な証明は専門誌で67ページあり、高校までの数学ではたどれない。手で証明できるのは、終わらない列が無いこと(手順1〜4)までである。長い列がありそうな理由は数えて確かめ、セメレディの定理と移し替えは、何をつないだのかを図でつかむ。

言葉と記号

等差数列は、同じ数ずつ増えていく数の列である(等差数列の一般項)。増える量を公差といい、と書く。最初の数を初項といい、この定理ではで表す。

並ぶ個数を長さといい、で表す。公式のは初項に公差を回足した数で、が初項そのものなので、項あればはで終わる。

公式の読み方。どんな長さkでも初項pと公差dがあり、jを0からk − 1まで動かしたp + jdが全部素数になる。k = 5、p = 5、d = 6なら、5、11、17、23、29が並ぶ。

は「どんな〜でも」、は「〜がある」と読む記号である。形は、Allの頭文字Aを上下に、Existの頭文字Eを左右に返したものと覚えるとよい。は公差が1以上という条件で、これが無いと5, 5, 5, …のように同じ数が並ぶだけの列まで数えてしまう。

公式は左から順に読む。先に長さを言われ、その長さに合わせて初項と公差を選ぶ。長さごとに別の列を答えてよい、というところが大事である。

言われた長さに合わせて列を答える表。k = 100の列もあるが、まだだれも知らない。記号の順番を入れ替えると、1本の列がどこまでも続くという別の文になり、こちらは誤りである。

終わらない列は作れない

「いくらでも長い」と「無限に長い」は違う。前者は、どの長さを言われても、その長さの列がどこかにあるという主張だ。後者は1本の列が切れずに続くという主張で、こちらは誤りである。

証明は短い。初項、公差の列が、どこまでも素数だけで続くと仮定する。番号には好きな数を入れてよいので、初項と同じ数を入れてみる。

  1. 列の番号の項を書く

  2. に初項のを代入する

  3. 共通のでくくる(と同じ計算)

  4. は2以上、も2以上なので、この項は2つの数の積で、素数ではない。仮定と矛盾する

p + p × d = p × (1 + d)を、p = 5、d = 6の点の並びで示した。5個の束が7つで35個になり、35は5で割り切れるので素数ではない。

長さの列では番号がまであるので、初項が以下だと、手順3の項が列の中に入ってしまう。だから素数だけの列の初項は、いつも長さ以上である。

図で見当をつける

なぜ長い列がありそうなのか。手がかりは素数定理である。以下の素数はおよそ個ある、つまり整数の個に1個が素数だという定理で、は対数の一種だ。

1のあとに0が個並ぶ数では、が約になる。だからの近くでは、整数のおよそ個に1個が素数だと見積もれる。ならで、100万の近くでは約14個に1個にあたる。

10の6乗、9乗、12乗、15乗、18乗の次の10万個にある素数を数えた棒グラフ。13.9個、20.7個、27.7個、35.7個、41.7個に1個にあたり、2.3nの13.8、20.7、27.6、34.5、41.4にほぼ合う。

そこで、素数を「ときどき当たるくじ」とみなしてみる。これは証明ではなく、グリーンとタオも論文の冒頭で触れる、見当をつけるための計算である。以下の範囲で長さの列を作るなら、候補はを満たす初項と公差の組で、その数は、横に、縦にをとった三角形の面積くらいある。

p + (k − 1)dがN以下の組は三角形の中にある。面積はN × N ÷ (k − 1) ÷ 2で、k = 5、Nが10の6乗なら1.25 × 10の11乗組になる。

とする。1つの項が当たる見込みはで、個の項が別々に当たるとすれば、この見込みを回掛ける。それを組の数に掛けると、全部当たる組の数の見積もりになる。

、を入れてみる。組の数はで、は約50万なので、当たる組は、つまり約25万個になる。

を10倍にすると、組の数は100倍になる。一方、見込みのはがに変わるだけなので、が大きいほどほとんど下がらない。だからをいくつに決めても、を大きくすれば見積もりはいくらでも大きくなる。

この見積もりと、筆者が100万以下の素数で全部の組を計算機で調べた個数を比べる。長い列の途中の部分も1本に数えた。

長さ見積もり数えた個数
3約9,500万157,300,309
4約460万17,636,879
5約25万1,495,343
6約1.4万227,456
7約87025,018
8約545,222
9約3984
10約0.2145

長さが伸びるほど、数えた個数は見積もりを大きく上回る。長さ10では見積もりが1個に満たないのに、145個もあった。くじの計算は控えめすぎるのである。

外れる大きな理由は、公差を選ぶと小さな素数の倍数を列から追い出せることにある。公差2なら3項に1つは3の倍数になるが、公差6なら、初項が3の倍数でない限り3の倍数は1つも現れない。

項を3で割った余りの表。公差2の5, 7, 9, …は3項に1つが3の倍数になり、公差6の5, 11, 17, …は余りがずっと2で3の倍数が現れない。

公差を割り切らない素数の段には項ごとに印が並び、公差を割り切る素数の段からは印が消える(初項もその素数の倍数なら全部に付く)。印の付いた項はその素数自身でなければ素数でないので、長い列には公差に小さな素数を入れておく必要がある。

ここまでの計算は、列がありそうだと言うだけである。では、どうすれば「ある」と言い切れるのか。

言い切るための3つの部品

1つ目の部品は、素数を一度忘れた定理である。

1からまでの整数から、決まった割合(デルタ)以上の数を選ぶ。どう選んでも、が十分大きければ長さの等差数列が必ず含まれる。これがセメレディの定理である。

3項の等差数列を作らないように選ぶと、すぐに行き詰まる。計算機で全部調べると、最大は1〜9で5個(56%)、1〜27で11個(41%)、1〜81で22個(27%)で、範囲が広いほど割合は下がる。セメレディの定理は、範囲を広げればこの割合がどんなよりも小さくなることを、どの長さの列についても保証している。

ところが、素数はこの定理の条件を満たさない。以下の整数の中で素数が占める割合は、の40%からの5.8%まで落ち、さらに下がり続ける。

Nが10から10の8乗までの、素数が占める割合の棒グラフ。40%から5.8%まで下がり、先に決めた割合10%の破線を10の5乗で下回る。

そこで2人は、比べる相手を替えた。2つ目の部品は、小さな素数で割り切れない数(ほぼ素数)の中で素数の割合を考えることで、ここにゴールドストンとユルドゥルムの計算を使う。タオは2006年の講演論文の注で、素数を、整数の中で割合0の集まりとしてではなく、ほぼ素数の中で割合が0より大きい集まりとして見ている、と説明している。

小さな素数の倍数を順に取り除くことを、ふるうという。

ふるう素数を増やすと素数でない数が減り、残りの中の素数の割合が上がる。2〜400を3までふるう(2と3の倍数を除く)と132個が残り、そのうち76個(57.6%)が素数になる。

範囲を広げるなら、ふるう素数の上限も広げたい。そこで筆者の簡単な模型として、上限をの4乗根(4回掛けるとになる数)に決めて数えてみる。なら上限は10で、なら100である。

筆者の模型で数えた素数の割合。全部の整数の中では12.3%、7.9%、5.8%と下がるが、Nの4乗根までの素数でふるった残りの中では53.6%、51.4%、47.9%である。

全部の整数の中の割合が半分以下に落ちるあいだ、残りの中の割合は53.6%から47.9%へしか動かない。をもっと大きくしても、計算上は約44.5%に近づくだけで0には向かわない。これなら、決まった割合の話に持ち込めそうに見える。

ただし、4乗根という上限は筆者が説明のために選んだもので、論文の値ではない。本物の証明では、数の集まりの代わりに、ほぼ素数に大きな重みを置く式を使う。

残る壁は、セメレディの定理が「全部の整数の中」の話だという点だ。3つ目の部品で2人が新しく示したのは、舞台を「十分でたらめに見える集合」に替えても同じ結論が成り立つ、という移し替え(transference principle)である。でたらめに見えるとは、ある数がほぼ素数であることと別の数がほぼ素数であることが、ほとんど無関係に起きるという意味にあたる。

証明の組み立て。セメレディの定理を移し替えで、でたらめに見える集合の中の定理に直し、ゴールドストンとユルドゥルムの計算で素数をほぼ素数の中に置く。3つを合わせると、素数の中にいくらでも長い等差数列がある。

証明の骨組みを式で見る

を1からまでの整数の集合の一部とし、をその個数とする。がとで決まる数以上のとき、セメレディの定理は次の形に書ける。は「ならば」という記号である。

移し替えでは、の代わりに、十分でたらめに見える集合の個数を使う。ここでもは十分大きいとする。は「はに含まれる」という記号である。

上の段は、全部の整数の中でAが割合δ以上を占める様子。下の段は、でたらめに見える集合Sの中だけでAが割合δ以上を占める様子で、Sに入らない数は描いていない。

難所は、この移し替えの証明にあり、高校までの数学では追えない。素数を表す関数を「規則的な部分」と「でたらめな部分」に分け、でたらめな部分は列の個数にほとんど響かないこと、規則的な部分はセメレディの定理で扱えることを示す。

公差の話は、証明の中にも現れる。論文のトリックでは、小さな素数を全部掛けたを取り、の形の素数だけを考える。番号が公差で進むと、もとの数は公差で進む。

、、なら、7, 37, 67, 97, 127(公差30)である。小さな素数の倍数を最初から追い出すこの一手を、2人は脚注で「トリックのように見えるが、実際には極めて大事な特徴」と呼んでいる。

W = 6のとき、番号nの1、6、11、16、21を6n + 1に写すと7、37、67、97、127になる。nの公差5は、6n + 1の公差6 × 5 = 30に変わる。

論文の定理は、どの長さの列も無限にあるという形で述べられている。個数は下限までで、見積もりの形の定数まで含めて数えたのは、そのあとのグリーン、タオ、タマル・ツィーグラーの論文である。

定理が答えないことも多い。第一に、見つけ方を教えない。2人の短い覚え書きが証明から取り出したのは、長さの列がこの数より手前に必ずあるという上限で、次の塔の形をしている。一番上は正確には(の定数倍まで)と書かれ、100で足りるだろうと添えられている。

2を7段積み、いちばん上に100kを載せた数。k = 3なら最上段の2の300乗だけで91桁あるが、実際の最初の列は3, 5, 7である。

この塔は、探す範囲の上限としては大きすぎて役に立たない。

第二に、隣り合う素数だけの列については何も言わない。5, 11, 17, 23, 29のあいだにも7, 13, 19という素数がある。第三に、差が2の素数の組(双子素数)のような決まった形の組が無限にあるかどうかについて、論文は「前進をもたらさない」と明言している。

途中の計算

公差に素数の積が現れるわけ

この計算の道すじ。 公差が素数で割り切れないとき、最初の項の余りが全部違うことを示す(手順1〜5)。余りの中に0が必ずあるので、その項はの倍数になり、素数だけの列ならそのものになる(手順6〜8)。これを2、3、5、…に当てはめると、公差はどれくらい大きくなければならないか、という1770年ごろの問いに答える決まりが出る。

で割った余りは、の倍数を引いて残る数で、0からまでの種類がある。は「はを割り切る」、は「割り切らない」という記号だ。

公差6の列を5で割った余りの表。初項7では余り0の25 = 5 × 5が素数でなく、初項5では余り0の項が5そのものなので素数のままである。

を以下の素数とし、はで割り切れないとする。余りが全部違うことは、背理法で示せる。背理法は、示したいことの反対を仮定し、矛盾が出ることから仮定の誤りを導く方法である。

  1. 最初の項を並べる

  2. 番号と()の項の余りが同じだと仮定する。余りが同じ2数の差はの倍数なので、差を計算する

  3. は素数なので、積を割り切るなら、かのどちらかを割り切る

手順3は、素因数分解(素数だけの積に直すこと)を使うと言える。積の素因数は、2つの数の素因数を合わせたものになるからだ。素数でないと成り立たず、4はを割り切るが、2を割り切らない。

公差6の項7、13、19、25、31、37を5で割った余りは2、3、4、0、1、2である。余りが2に戻るのは番号の差が5のときで、7と37の差30 = 5 × 6は5の倍数になる。
  1. は1以上以下なので、では割り切れない。も仮定から割り切れないので、手順3と矛盾する

  2. 仮定が誤りだったので、項の余りはどれも違う。余りは種類しかないので、全部が1回ずつ現れる

  3. 余り0の項が1つある。その番号をとすると、この項はの倍数である

  4. この項が素数なら、の倍数である素数はだけなので、次の式になる

  5. は正では0以上なので、初項はこの項以下である

手順8を裏返すと、決まりが出る。なのにがを割り切らなければ、素数だけの列にはならない。証明の章で見たとおり初項は以上なので、場合は2つに分かれる。

のときは、以下のどの素数でもなので、は以下の素数すべての倍数になる。のときは自身が素数で、未満の素数はすべてを割り切る。はを割り切らず、もし割り切ると第2項のがより大きいの倍数になってしまう。

5項の列を初項で分けた図。p < 5ならそろわず、p = 5ならdは2と3の倍数で5の倍数ではなく、p > 5ならdは30の倍数になる。

以下の素数を全部掛けた数は、長さとともに急に大きくなる。

長さの公差は列の例
36の倍数5, 11, 17(公差6)
530の倍数7, 37, 67, 97, 127(公差30)
7210の倍数47, 257, 467, 677, 887, 1097, 1307(公差210)
112310の倍数60858179から始まる列(公差2310)

のときだけ、公差はで割り切れない。たとえば3, 5, 7(公差2)、5, 11, 17, 23, 29(公差6)、7, 157, 307, 457, 607, 757, 907(公差150)がそうである。

応用

27項の公差を割ってみる

途中の計算の決まりは、記録の表(2026年10月12日更新)で最長の列にもそのまま現れる。2019年9月19日、分散計算のプロジェクトPrimeGridの参加者Rob Gahanが見つけた、最初の27項である。

初項は18桁で27より大きいので、公差は27以下の素数すべての倍数のはずだ。27以下の素数は2、3、5、7、11、13、17、19、23の9個で、積は223,092,870になる。計算機で割ると、公差はで、割り切れる。

27項の列の公差18135696597948930は、81292139 × 223092870と分解できる。223092870は27以下の9個の素数の積で、次の素数29は27より大きいのでなくてもよい。

探す側にとって、この決まりは計算量を大きく減らす。18桁の数では、素数はおよそ40〜41個に1個しかない。ところが公差に23までの素数を入れ、初項もそれらで割り切れない数に選ぶと、どの項からも小さな素数の倍数が消え、見込みは約6.11倍になる。

2の倍数を除くと候補は半分になり、残りの中の素数の割合は2倍になる。3の倍数は残りの3分の1なので、除くと倍になる。5以降も、素数ごとに倍が続く。

2から23までの素数の倍数を順に除くと、素数の見込みは2、3、3.75、4.38、4.81、5.21、5.54、5.85、6.11倍と増える。

1項あたり約6.11倍なら、27項そろう見込みは倍、およそ倍になる。それでも28項は、この表に載っていない。

定理の強い形にも使い道がある。素数の中で一定の割合を占める集合なら、どれでも長い列を含むという形で、4で割って1余る素数にも当てはまる。そうした素数は2つの平方数の和なので、2つの平方数の和だけの等差数列もいくらでも長く作れる、と論文は指摘する。小さな例が公差12の5, 17, 29, 41, 53で、、、、、と書ける。

ただ、定理そのものを部品にして動く製品や暗号は、筆者が調べた範囲では見当たらない。ほかの分野へ渡ったのは列そのものより、証明のために作られた考え方である。

例題と解説

切れ目を予言する

例題 1基本7から30ずつ増える列

初項7、公差30の等差数列を順に書き、初めて素数でなくなる項を素因数分解せよ。

解説を見る

順に7, 37, 67, 97, 127, 157, 187となる。187を小さい素数で割ると、2、3、5、7では割り切れず、11で割り切れる。

6項までが素数である。公差30は7で割り切れないので、7項そろうなら初項は7以下に限られる(途中の計算の手順8)。初項2、3、5は第2項の32、33、35が素数でなく、初項7の列はここで切れたので、公差30で7項はそろわない。

例題 2基本差が2の3つ組

、、がすべて素数になるをすべて求めよ。

解説を見る

3つの数を3で割った余りを調べる。公差2は3で割り切れないので、余りは全部違い、どれか1つは3の倍数である。

素数である3の倍数は3だけなので、その数は3に等しい。なら3, 5, 7ですべて素数になる。ならで素数ではなく、ならが負になる。

例題 3入試初項11の5項

初項が11で、すべて素数である長さ5の等差数列のうち、公差が最も小さいものを求めよ。

解説を見る

初項11は長さ5より大きいので、公差は5以下の素数2、3、5すべての倍数、つまり30の倍数である(途中の計算の章)。いちばん小さい30を試す。

131は13の2乗の169より小さいので、2、3、5、7、11で割り切れないことを見ればよく、素数である。ほかの4つも同じように素数なので、公差30が最小である。

例題 4難関2299を割らずに見つける

列について、次の問いに答えよ。

(1)199と210を11で割った余りを求めよ。

(2)の項が11の倍数になることを、余りを使って示せ。

(3)公差210で初項が11より大きい列は、素数だけで何項までか。上限を答えよ。

解説を見る

(1)、なので、余りはどちらも1である。

(2)2つの式を列に代入し、11でくくる。

ならなので、この項は11の倍数である。実際にとなる。

(3)公差210は11で割り切れないので、最初の11項のどれかは11の倍数である。初項が11より大きければ、その項は11より大きく、素数でない。したがって10項までで、初項199の列は実際に10項そろう。

例題 5難関2を使わない3進法

3進法は0、1、2だけで数を書く方法で、は()と書く。3進法で書いたときに数字の2が現れない0以上の整数を集めた集合には、3項の等差数列が無いことを示せ。また、未満の整数の中でこの集合が占める割合を求めよ。

解説を見る

3項の等差数列をとすると、真ん中の項の2倍は両端の和に等しいので、である。

との数字は0か1なので、足しても各桁は2以下で、繰り上がりは起きない。の各桁は0か2である。3進法の書き方は1通りなので、各桁での数字 + の数字が0か2になる。

和が0か2になるのは、2つの数字が等しいときだけである。全部の桁が等しいのでとなり、に矛盾する。

未満の数は桁で書ける。各桁が0か1の数は個あるので、割合は次のようになる。

なら約30%、なら約1.7%で、0に近づく。割合が決まったを下回っていくので、セメレディの定理と矛盾しない。1〜27から小さい順に選ぶと現れる1, 2, 4, 5, 10, 11, 13, 14は、この集合に1を足したものである。

図示

階段で伸びた記録

1958年の12項から2019年の27項までの、知られている最長の列の階段のグラフ。2004年の定理のあとも、計算機の記録は1項ずつしか伸びていない。

定理が出たあとも、記録の階段の形は変わらない。縦の破線の右で進んだのは、22項から数えて5項ぶんである。

シミュレーション

公差と長さを変えて探す

長さと公差を選ぶと、その公差で初項がいちばん小さい列が、数直線の上を跳びながら光る。そろわない組では、最も長く続く列と、切れる項の素因数分解が出る。公差を6から12、30、210へ替えていくと、長い列が現れ始める境目が見える。下のグラフは公差を問わない最小の値(27項だけは見つかっている中で最小)で、長さ10の4桁から長さ11で6桁へ跳ぶ。

広がる学問

まばらな集合の中の模様

  • 数学 まばらな集合の中に決まった形の模様があるかを調べるとき、この定理の移し替えが手本になる。2人は論文の終わりで、ガウス素数(複素数の世界の素数)にどんな形の配置もあるか、多項式の形の列はどうかという問いにも、同じ考えが使えるはずだと述べた。校正中の注によれば、どちらも実際に証明された。
  • 情報科学 計算機が本物の乱数と見分けられない「擬似乱数」を研究するとき、でたらめに見える集合の中の濃い部分を、全体の中の濃い集合に置き換えて考える。2008年、Reingold、Trevisan、Tulsiani、Vadhanは、グリーン、タオ、ツィーグラーの定理をこの形で言い直し、必要な計算量がずっと少ない証明を与えた。
  • 哲学 数学者が証明の前に予想を信じる根拠を考えるとき、計算の例や確率の見積もりが論点になる。スタンフォード哲学百科事典の項目は、ゴールドバッハ予想などを例に、演繹によらない方法を論じている。この定理では、1923年に個数まで予想された列の存在が、見積もりで信じられたまま81年後に証明された。
いまの研究と事業

28項と、割合の下限を追う

  • 2026年 ケンブリッジ大学とEPFLの研究者: Joni TeräväinenとMengdi Wangは、素数の中で割合の集合が長さの列を持たないなら、になることを示した。は定数倍を除いて以下という記号である。定理の「割合なら列がある」を、に応じてをどこまで小さくできるかの形に直した結果だ。(出典: Teräväinen, Wang「On the Green-Tao theorem for sparse sets」arXiv:2603.09281)
  • 2026年 記録の表: Joris Perrenetは2月、25項の列で最後の項が最小になるものを見つけ、26項についても2012年にJames Fryが見つけた列が最小だと確かめた。どちらの公差も(23以下の素数の積)の倍数である。定理は最小の列を教えないので、の最小値は計算機で探して確かめるほかない。(出典: Primes in Arithmetic Progression Records)
  • 2025年 イリノイ大学の学生と教員のグループ: Illinois Mathematics Labは、28項()を探すソフトウェアを作った。候補を早い段階でふるい落とす方法を広げ、分散計算のPrimeGridへ載せることをめざしている。(出典: Developing Software to Find Arithmetic Progressions of 28 Primes)
  • 2024年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校とMITの研究者: James Leng、Ashwin Sah、Mehtaab Sawhneyは、長さの列を含まないの部分集合の最大の大きさについて、を示した。セメレディの定理のがとともにどこまで下がるかの評価である。(出典: Leng, Sah, Sawhney「Improved Bounds for Szemerédi's Theorem」arXiv:2402.17995)
  • 2023年 イリノイ大学とUCLAの研究者: Zander KelleyとRaghu Mekaは、3項の場合に、大きさ以上の集合は等差数列を含むことを示した。(出典: Kelley, Meka「Strong Bounds for 3-Progressions」arXiv:2302.05537)

参考文献

  1. Ben Green, Terence Tao, "The primes contain arbitrarily long arithmetic progressions", Annals of Mathematics 167 (2008), 481-547.
  2. Ben Green, Terence Tao, "A bound for progressions of length k in the primes" (2004).
  3. Endre Szemerédi, "On sets of integers containing no k elements in arithmetic progression", Acta Arithmetica 27 (1975), 199-245(誌面は199ページから。299-345と引く論文もある)
  4. Paul Erdős, Paul Turán, "On some sequences of integers", Journal of the London Mathematical Society 11 (1936), 261-264.
  5. Terence Tao, "The dichotomy between structure and randomness, arithmetic progressions, and the primes" (International Congress of Mathematicians, 2006).
  6. W. T. Gowers, "Erdős and arithmetic progressions" (2015).
  7. Omer Reingold, Luca Trevisan, Madhur Tulsiani, Salil Vadhan, "Dense Subsets of Pseudorandom Sets", FOCS 2008, 76-85.
  8. "Primes in Arithmetic Progression Records"(Jens Kruse Andersenが始めた記録の表。2026年10月12日更新の版を参照)

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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