16人で戦うと15試合
16人でトーナメントを組むと、試合は全部で何回あるだろうか。決勝が1回、準決勝が2回、準々決勝が4回、1回戦が8回で、足すと15回になる。1試合で1人ずつ負けて消え、優勝者のほかの15人が1回ずつ負けると数えても、同じ15が出る。
のように同じ数を掛けて並ぶ数の和は、項がいくら増えても引き算1回で片づく。紀元前300年ごろのエウクレイデス『原論』第9巻の命題35は、その規則を比の言葉で述べている。クラーク大学のジョイスの英訳によると、同じ比で続く数(連比)の2番目と最後からそれぞれ最初の数を引くと、2番目の残りと最初の数の比は、最後の残りとそれより前の数の和の比に等しい。
ジョイスの注にならって最後の数をとするとで、これをについて解くと公式の2つ目の形になる。原典に式はなく、小さい数から大きくなっていく自然数の並びを言葉で述べている。
ずらして引いて和を出す
この計算の道すじ。 記号を読み、和を倍した式を引いて1つ目の形を作る(手順1〜5)。だけは別に数える(手順6)。最後に、2つの形は分子と分母にを掛けただけだと確かめ(手順7〜8)、の大きさで使い分ける。
等比数列は、前の項に同じ数を掛けて作る数の並びである。最初の項を初項といってと書き、掛ける数を公比といってと書く。は初項から第項までの和で、は和を表す英語sumの頭文字だ。
項が金額(万円)なら、もも同じ単位をもつ。とは回数や倍率なので、単位は付かない。
同じ数をずらして消す
足す数は多いが、全体を倍すると同じ数が1つずれて現れる。第項はを回掛けた数なので、指数はまでになる。
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和を書き出す
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両辺にを掛ける
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手順1の式から手順2の式を引く
手順1と手順2の右辺には、からまでが両方にある。引くとそれらが消えて、先頭のと末尾のだけが残る。
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左辺をで、右辺をでくくる
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なので、両辺をで割る
は、と同じ計算である。項が無限に続く和は等比級数で読める。
公比が1なら掛け算で済む
だと手順5の分母が0になり、割り算ができない。公式にの条件が付いているのはこのためだ。もっとも、和そのものは簡単に出る。
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どの項もなので、を個足す
分数の式が使えないのは、ちょうどのときだけである。、なら、で約4.90、で約5.10となり、両側からに近づく。だから2つの答えは別々の話ではない。
2つの形は同じ値
では、なぜ形が2つあるのか。分子と分母に同じ数を掛けても、分数の値は変わらない。
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1つ目の形の分子と分母にを掛ける
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かっこの中の符号を入れ替える
どちらで計算しても答えは同じで、選ぶ理由はマイナスを減らすことだけだ。
ならもも正になる。ならもも正になる。公比が負のときは、が必ず正になる1つ目の形が扱いやすい。
棒の高さは初項1から公比倍ずつ変わり、右の塔が和を表す。では塔の高さが次の棒より1だけ低いまま伸びていく。では8本足しても塔は2を超えず、では同じ高さの棒が本重なる。
和の求め方は数列の種類で変わる。等差数列の和は逆の順に並べて足すと項がそろい、等比数列はずらして引くと項が消える。
紙を折る、毎年積み立てる
紙を折ると、重なりは1回ごとに2倍になる。1枚を1回折れば2枚で、増えたのは1枚だ。次の回は2枚、その次は4枚増える。
折った回数をとして、増えた枚数を足した和は、、の公式で出る。
はじめの1枚を足せば、ちょうど枚だ。冒頭のトーナメントもで、試合になる。ここは数え方の例で、実際の紙を何回まで折れるかは別の話である。
もう1つは積み立てである。毎年はじめに10万円を入れ、年3%の複利で増やすとする。
複利は、付いた利息を元金に足して次の年の利息を計算する増やし方で、1年で1.03倍になる。数は作った例で、税や手数料は考えない。
10年目の終わりに残高を見ると、最後に入れた10万円は1年だけ増えて万円、最初に入れた10万円は10年増えて万円になっている。足すと次の和だ。
初項は、公比は1.03、項の数は10である。なので2つ目の形を使う。
なので、分子は約3.54、分母は0.03だ。入れた100万円が約118万円になり、18万円ほどが利息である。
公比の形で式を選ぶ
例題 1基本公比が3と1/2の和
(1)初項5、公比3の等比数列の、初項から第6項までの和を求めよ。
(2)初項16、公比の等比数列の、初項から第5項までの和を求めよ。
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(1)なので2つ目の形を使う。である。
(2)なので1つ目の形を使う。である。
と合う。
例題 2基本公比が負と1の和
(1)を公式で計算せよ。
(2)初項7、公比1の等比数列の、初項から第20項までの和を求めよ。
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(1)初項1、公比、項の数5である。公比が負なので1つ目の形を使う。なので、分子はになる。
順に足してもである。
(2)公比が1なので分数の形は使えない。どの項も7である。
例題 3入試3項ずつの和から公比を出す
実数を公比とする等比数列で、初項から第3項までの和が7、第4項から第6項までの和が56である。初項と公比を求めよ。
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第4項は第1項の倍で、第5項と第6項も同じだ。だから後ろの3項の和は、前の3項の和の倍である。
数を入れる。
両辺を7で割るとで、は実数なのでである。
を初めの和に入れる。
よって、である。、と合う。
例題 4入試毎年同じ額を返す
100万円を年5%の複利で借り、1年後から毎年末に同じ額万円を返して、3回で返し終える。を小数第2位まで求めよ。数は作った例である。
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3年後の時点で比べる。借りた100万円は、返さなければ万円になる。返したお金も同じ利率で増えるとみて、2つの額が等しくなれば返し終わったことになる。
1回目に返した万円は2年分増え、3回目に返した分は増えない。3年後の価値を足すと、公比1.05の等比数列の和になる。
2つを等しいとおくと、次の式でが決まる。
返す額は年に約36.72万円で、3回の合計は約110.2万円である。残高を順に追っても、100万円が68.28万円、34.97万円と減り、3回目で0になる。
共通テストの和
- 2025年 大学入学共通テスト 本試験 数学II・数学B・数学C第4問(2):曲線と軸、軸、直線で囲まれた図形の内部にある格子点を数える。直線の上の個数を足す計算で、等比数列の和が要る。出典は大学入試センター「令和7年度 本試験の問題」。
- 2024年 大学入学共通テスト 追試験 数学II・数学B第4問(2)(ii):点を順に結んだ折れ線の長さを求める。隣り合う線分の長さの比から、折れ線の長さが公比の等比数列の和で表せることを読み取る。出典は大学入試センター「令和6年度 追・再試験の問題」。
参考文献
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第5節「数学B」3(1)数列、102〜103ページ(「等比数列の和の公式では,各項に公比をかけることで等しい数列を一部にもつ新たな数列を考えていること」)
- D. E. Joyce, "Euclid's Elements, Book IX, Proposition 35", Clark University
- 大学入試センター「令和7年度 大学入学共通テスト 本試験 数学Ⅱ,数学B,数学C」「令和6年度 大学入学共通テスト 追試験 数学Ⅱ・数学B」問題と正解