素数の間隔の上限

Bounded gaps between primes

鹿を待った午後に、ふるいの直し方がひらめいた。

隣り合う素数の差が7000万より小さい所は、どこまで行っても現れる。双子素数の予想ではないが、何度でも現れる差の上限を初めて有限の数で示した。

年代
2013年
習う
大3以上・数論・素数の分布
レベル
大学(例題 5 問)
人物
張益唐、ジェームズ・メイナード、テレンス・タオ、ダニエル・ゴールドストン、ヤーノシュ・ピンツ、ジェム・ユルドゥルム、G. H. ハーディー、ジョン・エデンザー・リトルウッド
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

7000万という上限

7000万。隣り合う素数の差がこの数より小さくなる所は、数直線をどこまで先へ進んでもなくならない。2013年4月にこれを示す論文を専門誌へ送ったのは、ニューハンプシャー大学で微積分を教えていた講師の張益唐(英語の表記はYitang Zhang)である。差が2の組が無限にあるという双子素数の予想は今も解けていないが、何度でも現れる差の上限を有限の数で証明できたのは、このときが初めてだった。

素数は、先へ行くほどまばらになる。それでも寄り添う2つは現れる。たとえば1,000,003の次の素数は30も先の1,000,033だが、その次の1,000,037と1,000,039は2しか離れていない。

張がこの問題に取り組み始めたのは2009年である。ニューハンプシャー大学の同窓会誌によると、バスに乗るときも、森を歩くときも、校舎の階段を上るときも、問題は頭を離れなかった。それでも3年のあいだ、大きな進展はなかった。

古い大学の校舎の階段室に、高い窓から冬の光が差し込む。使い込まれた手すりが続き、人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
校舎の階段。階段を上るときも問題は頭を離れなかったと同窓会誌は伝える(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

2012年7月、コロラドの友人を訪ねていた張は、ある午後、鹿を見ようと外へ出た。鹿は現れなかった。ところが考えは素数の間隔に戻り、素数でない数を取り除いていく「ふるい」という計算の直し方がひらめいたという。うまくいくと、その場で分かったと同窓会誌は書いている。

夏の午後、山あいの家の裏から林の縁を望む。木の柵と乾いた草地が続き、遠くに山の稜線が見える。人も動物もいない。(画像生成 AI で描いたイメージ)
2012年7月、コロラド。鹿を見ようと出た午後に着想を得たと同窓会誌は伝える(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

原稿が『Annals of Mathematics』に届いたのは2013年4月17日だった。同じ日、学科の同僚ケビン・ショートは病院を訪ね、張を雇うために力を尽くした元学科長のケネス・アペルに知らせを伝えた。アペルは2日後に亡くなっている。

返事は異例の早さで来た。ふつうは1〜2年かかる採否の知らせが、同窓会誌によれば3週間後の5月9日に届く。雑誌のページに残る日付では、修正版の受け付けが5月16日、受理が5月21日で、最初の受け付けから34日である。そのあいだの5月13日、張はハーバード大学で講演した。論文は2014年の179巻に54ページで載り、要旨の1文目がこのページの頭の式になっている。

張益唐差が7000万未満の隣り合う素数の組が無限にあると示した

7000万という数に、張はこだわっていない。論文には「この結果は最良ではない」とあり、上限をできるだけ小さな値に置き換えることは「この論文では論じない未解決の問題」だと書かれている。同窓会誌も、ほかの数学者が縮めてくれると見込んで選んだ仮の上限だったと伝えた。

起源

平均の何分の一まで近づけるか

では、張の前に、素数の間隔について何が分かっていたのか。

平均の間隔は素数定理が教える。の近くでは整数のおよそ個に1個が素数で、隣との差は平均ほどになる。は対数の一種で、が10倍になるたびに約2.3ずつ増える。狭い組の数については、1923年にG. H. ハーディーとジョン・エデンザー・リトルウッドが予想の式を立てた。その式をもとにした見積もりはよく当たり、素数の記録を集めるPrimePagesの表では、1億までの双子素数が実際に440,312組、見積もりが440,368組である。

G. H. ハーディーの肖像(Godfrey Harold Hardy 1)
G. H. ハーディー1877–1947解析的整数論を進め、遺伝の割合の釣り合いの式も書いた出典: Wikimedia Commons・作者不明・Public domain

ただ、当たる見積もりと証明は別の話だった。2005年8月、ダニエル・ゴールドストン、ヤーノシュ・ピンツ、ジェム・ユルドゥルムの3人が原稿を公開し、2009年に『Annals of Mathematics』170巻に載せた。平均の差にどんな小さな数を掛けても、それより近い隣り合う素数が無限にある、という内容である。式の分母のが、の近くの平均の差にあたる。

3人は、素数の分布についてのエリオット・ハルバースタム予想を認めれば差が16以下の組が無限にあることも示し、もっと弱い予想でも有限の上限が出ると書いた。つまり、足りないのは、その弱い予想の証明である。張は、その予想そのものではなく、割り算で割る数を限った形でこの穴を埋めた。

論文が出回ると、上限はすぐに縮み始めた。1週間後には数学の質問サイトの書き込みが63,374,611を、さらに1週間後には別の研究者の短い原稿が59,874,594を示し、数日後に計算機を使った59,470,640がブログに載る。参加者たちは話し合い、その記事を、ネットで大勢が進める共同研究Polymathの8番目の課題の第1回に改めた。取りまとめ役はテレンス・タオで、3か月ほどの作業で上限は4680に落ち着いた。

夜の机に、開いたノートパソコンと手書きの計算の紙、飲みかけのカップが置かれている。画面と紙の字は読めない。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
2013年の夏、上限はブログのコメント欄で少しずつ下がっていった(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

タオは振り返りの記事で、ほかの大学を訪ねるたびに最新の上限を聞かれたと書き、進み具合を「これほど単純で分かりやすい数」で示せたのは幸運だったと述べている。

2013年11月19日、次の一手は別の所から来た。ジェームズ・メイナードが公開した原稿は、ふるいの重みの形を変えて上限を600まで下げた。張の新しい定理は要らず、古くからあるボンビエリ・ヴィノグラードフの定理で足りる。タオも同じころ、独立に近い結論に達していた。

メイナードの方法を取り込んだPolymath8bは、2014年に上限を246まで下げた。同じ論文は、エリオット・ハルバースタム予想を広げた予想を認めれば上限は6になること、そして6より下へは、ふるいだけでは進めないことも示している。双子素数の2へ届くには、別の考えが要る。

メイナードは2022年にフィールズ賞を受けた。

ジェームズ・メイナード1987–素数どうしの間隔の研究で知られ、2022年にフィールズ賞を受けた

246は10年あまり動かなかったが、2026年8月末からは、それより小さい上限を示したとする原稿が続けて公開されている。どれも、ほかの専門家の審査(査読)を経る前の主張である。

証明

2つ以上が素数になる窓

この章の道すじ。 張の論文は54ページあり、高校までの数学ではたどれない。手でたどれるのは、式の読み方と、問題を「決まった形の窓に素数が2つ入る」に言い換える所(手順1〜2)までだ。手順3は、何が足りず、張とメイナードが何で補ったのかを数と図でつかむ所までで、証明そのものは追わない。

式の文字を読む

は番目の素数である。、、と続くので、は隣り合う素数の差になる。ならだ。

公式の読み方。pₙはn番目の素数、pₙ₊₁ − pₙは隣り合う素数の差、7 × 10⁷は7000万である。数直線に2から13までの素数を置くと、p₅ − p₄ = 11 − 7 = 4と読める。

は「をどこまでも大きくしたときに近づく値」を表す記号である(等比数列の極限)。ところが素数の差は1つの値に近づかず、30、4、2のように上下をくり返す。

そこで(リミット・インフ、下極限)を使う。番号を進めても何度でも戻ってくる値のうち、いちばん低いものを表す記号だ。差はいつも整数なので、公式は次の言い換えと同じ意味になる。は、左と右が同じことを言っているという記号である。

線の高さを6にして範囲を広げてみる。差が6以下の隣り合う組は、100までに23組、1万までに707組、100万までに29,862組あり、線以下の点は右の端まで出続ける。破線で描いた平均の差は、そのあいだにも上がっていく。

線の上の方にも目を向けたい。差は、いくらでも大きくなるからだ。とすると、が2からまでのとき、は掛け算の中にを含むので、はで割り切れる。

5! = 120のとき、122、123、124、125は順に2、3、4、5で割り切れる。113の次の素数は127で差は14になり、一般にm! + 2からm! + mまでのm − 1個はどれも素数でない。

だから公式は「全部の差が7000万未満」とは言っていない。7000万未満の差が何度でも現れる、と言うだけである。どの差が何度でも現れるのかも、この式からは分からない。差2かもしれないし、もっと大きな差かもしれない。

図で納得する

素数はまばらになっていく。、、、から続く100万個の整数を調べると、隣り合う素数の差の平均は14.2、20.8、27.6、32.4になった。どれも、素数定理から出る平均の差とほぼ同じになる。

それでも狭い所は消えない。同じ範囲の差が2の組は6,702組から1,286組へ減るだけで、ハーディーとリトルウッドの予想から出る見積もりとほぼ合う。

4か所で続く100万個の整数を調べた表。隣の素数との差の平均は14.2から32.4へ広がり、ln xにほぼ等しい。差が2の組は6,702から1,286へ減るが0にはならず、見積もりとほぼ合う。

平均は広がるのに、狭い所は何度でも出てくるように見える。ただ、数えて分かるのは数えた所までだ。張の定理は、差を7000万未満まで許すなら、どこまで先へ行っても必ず出ると言い切る。

式で確かめる

では、無限の先まで数えずに、なぜ「必ず出る」と言えるのか。筋は3つの手順に分かれる。数の組には、どの素数で割っても余りが全種類は現れない「許される形」を選ぶ(作り方は次の章)。

  1. 数の組を1つ決め、をずらしながら個の数の窓を見る

  2. 窓に素数が2つ以上入るが無限にあれば、隣り合う素数の差が窓の幅以下の所も無限にある

  3. 窓の中の素数の個数をとし、0以上の重みをかけた和が、どの範囲でも正になることを示す

は、を動かして足し合わせるという記号である。和が正なら、が正の、つまり素数が2つ以上入るが少なくとも1つある。重みをつけた平均が1を超えれば、どこかに2つ入る所がある。鳩を巣より多く入れれば2羽入る巣ができる、という鳩の巣の考え方と同じだ。

重みの役目は、素数になりそうなを重く見ることにある。いちばん素朴な重みは、小さな素数で割り切れないだけを残す「ふるい」である。窓を、、とし、を100万から200万まで動かすと、平均はふるわないとき0.21個で、3つの数がどれも11以下の素数で割り切れないだけにすると1.02個になった。

n、n + 2、n + 6のうち素数の数の平均。nは100万から200万まで。ふるわないと0.21、3までで0.63、7までで0.93、11までで1.02、31までで1.38で、11までふるうと平均1を超える。

もっとも、これは100万から200万までを数えた結果にすぎない。難しいのは、数えずに式だけで、どこまで大きな範囲でも1を超えると示すことだ。ふるう素数をどこまで大きくできるかは、素数が割り算の余りにどれだけ均等に分かれるかで決まる。

素数をで割ると、と共通の約数を持たない余りに、ほぼ同じ数ずつ入る。たとえば100までの素数を3で割ると、余り1が11個、余り2が13個である。範囲がまでのとき、割る数を(の乗)くらいまで大きくしても平均としてこの均等さが保たれるなら、(シータ)を分布の水準という。なら、はである。

ボンビエリ・ヴィノグラードフの定理はが未満の所まで保証し、エリオット・ハルバースタム予想は1未満まで成り立つと見込む。ゴールドストンたちの重みをほぼ最もよい形に整えると、窓に入る素数の個数は、平均で次の値になる(ベン・グリーンの解説)。導くには長い計算が要り、グリーン自身、専門家にもうまく説明できそうにないと書いている。

窓の数の個数を大きくすると分母が1に近づき、平均はに近づく。ならで、をいくら大きくしても平均は1に届かない。これが張の前にあった壁である。

逆に、が1に近ければ、この式でもで1を超える。6個の許される形の最小の幅は16で、これが3人の条件つきの結果16にあたる。

張が証明したのは、割る数を大きな素因数を持たない数に限れば、まで均等さが保たれるという定理である。この証明が張の仕事でいちばん難しい部分で、ドリーニュが証明した深い定理まで使う。高校の数学で追えるのは、定理の使い方までだ。

が1をわずかに超えるので、を大きくとれば平均は1を超える。このを上の式に入れると、が341,640以上で1を超える計算になる。ただし、これは式から出る目安で、張が使った値ではない。上の式は割る数を限らない場合のものだからである。張はで証明し、論文でこの条件を粗いと書いている。

メイナードは重みの形を変えた。窓の数ごとに別の変数を持つ重みにすると、重みをつけた平均はになる。は、ごとに重みの選び方で決まる比べる量である。平均が1を超える条件の両辺にをかけると、判定の不等式が出る。

横軸が窓の数の個数k、縦軸が比べる量M。ゴールドストンたちの重みの曲線は4に近づくが届かない。メイナードの重みではk = 5で2を超え、k = 105で4を超える。

これまでの形の重みではが4を超えない。先の平均の式はにあたり、図の太い曲線がそれである。が未満なら右辺は4より大きいので、届かない。メイナードの重みではがとともにいくらでも大きくなり、が計算で示された。

4をわずかに超えたので、がのすぐ手前でも判定を満たす。105個の許される形に幅600のものがあるので、上限600が出る。

を1に近づけると、右辺は2に近づく。から、5個の許される形の最小の幅12が、エリオット・ハルバースタム予想のもとでの上限になる。

途中の計算

余りの表で窓の形を選ぶ

この計算の道すじ。 差2が2回続く組が3、5、7しかないことを、3で割った余りで示す(手順1〜4)。同じ考えで許される形を決め(手順5〜7)、窓に素数が2つ入れば差が窓の幅以下になること(手順8〜9)、7000万の出どころ(手順10〜12)、差6の組が差2の約2倍ある理由(手順13〜15)をたどる。

差2が2回続く組

、、がすべて素数になるを探す。

  1. を3で割った商を、余りをとする

  2. ならが3の倍数になる

  3. ならが3の倍数になる

  4. ならが3の倍数になる

n、n + 2、n + 4を3で割った余りの表。nの余りが0、1、2のどの行にも余り0が1つあり、3つのうち1つは必ず3の倍数になる。

素数である3の倍数は3だけなので、3つのうち1つが3に等しい。なら3、5、7がそろい、やではが1以下になって素数でない。差2が2回続く素数の組は、3、5、7だけである。

許される形

で割った余りは0からまで通りある。これを個の席に見立て、窓の数の余りがどの席に入るかを調べる。

  1. 窓の形0、2、4を3で割ると、余りの席が全部埋まる

  2. 窓の形0、2、6を3で割ると、余り1の席が空く

  3. 席が空いているので、を3で割って2余る数に選ぶと、窓のどの数も3で割り切れない

0、2、4を3で割ると席が全部埋まり空きがない。0、2、6は2で割っても3で割っても5で割っても空きが残る。

どの素数で割っても席が全部は埋まらない形を、許される形(admissible)という。席が埋まる素数があると、窓のどれか1つが必ずその素数の倍数になり、全部が素数になる窓は、ごく小さい所のほかに作れない。窓の数が個なら、より大きい素数では席が余るので、調べるのは以下の素数だけでよい。

窓に2つ入れば

  1. 窓の中のと()が素数なら、2つの差は窓の幅以下である

  2. をとすると、次の素数は以下にある

n = 25に0、2、6、8、12の窓を置くと、25、27、31、33、37のうち31と37が素数になる。隣り合う素数の差は6で、窓の幅12以下である。

が大きくなれば、見つかる組も先へ進む。だから、窓に素数が2つ以上入るが無限にあれば、差が窓の幅以下の組も無限にある。

7000万の出どころ

  1. より大きい素数を小さい順に個並べると、以下の素数では余り0の席が空く

  2. より大きい素数では、個の数が個の席を埋めきれない

  3. なら、並ぶのは3,500,017から63,374,611までで、幅は次の値になる

0から7000万までの数直線に、3,500,017から63,374,611までの350万個の素数の窓を置いた図。幅は59,874,594で7000万より小さい。

張の論文が確かめたのは、この組が7000万までに収まることだけである。7000万までの素数は4,118,064個あり、350万までの250,150個を引いても3,867,914個残る。350万個より多いので、組の数はどれも7000万未満になる。論文に書かれているのはこの比較までで、手順12の値は論文が出回ったあとに指摘された。筆者が計算機で素数を並べても、同じ値になった。

差6が約2倍ある理由

とがどちらも素数の組を数える。隣り合っていなくてもよい。は3より大きいとすると、3で割った余りは1か2である。

  1. 差2では、余り1のは使えない

  2. 差4では、余り2のは使えない

  3. 差6では、の余りが1でも2でも、は3で割り切れない

pとp + dが両方とも3で割り切れない余りは、差2と差4で1通り、差6で2通りある。1億までの組の数は440,312、440,258、879,908である。

残る余りは、差2と差4で1通り、差6で2通りある。5で割った余りでは、どの差も3通りで変わらない。実際に1億までを数えると、差2が440,312組、差4が440,258組、差6が879,908組だった。

この比まで含めて組の数を見積もるのが、ハーディーとリトルウッドの予想である。予想は予想で、差2の組が無限にあることさえ、まだ証明されていない。

応用

近すぎる2つの素数は鍵にしない

素数の間隔は、暗号の鍵の作り方にも関わる。RSA暗号は、大きな2つの素数、の積を公開し、とを秘密にする。ところが2つの素数が近すぎると、はすぐに分解できてしまう。

との真ん中を、差の半分をとすると、は2つの平方の差に書ける。

正方形aの2乗から小さな正方形bの2乗を切り取り、残りの片側を移すと、横がa + b、縦がa − bの長方形になる。a = 102、b = 1なら10403 = 101 × 103である。

が小さいと、はをほんの少し上回るだけになる。の次の整数から順にが平方数かどうかを調べれば、すぐに当たる。フェルマーの因数分解法と呼ばれるやり方である。たとえば双子素数101と103の積なら、1回目で当たる。

米国国立標準技術研究所(NIST)が2023年に公開した電子署名の標準FIPS 186-5は、RSAの2つの素数の差に下限を設けている。付録A.1.1によると、2進法で2048桁のを使う2048ビットの鍵では、差が次の値を超えなければならない。

2048ビットの鍵の桁数の比較。平均の差710は3桁、差の下限2の924乗は279桁、素数は2の1024乗未満で309桁である。

は279桁の数で、1024ビットの素数の近くの平均の差とは桁が違う。隣り合うほど近い2つの素数は、この下限に遠く届かない。張の定理が保証する狭い所は、鍵を作る側から見れば、避ける場所である。

例題と解説

窓をずらして確かめる

例題 1基本0、4、6の窓

窓の形0、4、6が許される形であることを確かめ、、、がすべて素数になる最小のを求めよ。

解説を見る

2で割った余りは0、0、0で、余り1が空く。3で割った余りは0、1、0で、余り2が空く。数は3個なので、3より大きい素数では席が埋まらない。よって許される形である。

小さい素数から順に調べる。は、は、はが素数でない。なら7、11、13がすべて素数になる。

例題 2基本素数の無い区間

(1)からまでの5つの数が、どれも素数でないことを示せ。

(2)連続する100個の整数で、どれも素数でないものがあることを示せ。

解説を見る

(1)である。は720を割り切るので、はでくくれる。

は2以上で、かっこの中も2以上なので、どれも素数でない。

(2)からまでの100個を考える。についてはで割り切れ、より大きいので素数でない。

例題 3入試フェルマーの方法

とする。

(1)を計算せよ。

(2)(1)を使ってを素因数分解せよ。

(3)2つの素因数の差を答えよ。

解説を見る

(1)なので、である。

(2)なので、平方の差の形にできる。

61と67は、2、3、5、7で割り切れないので素数である(がどちらより大きいので、7までで足りる)。

(3)である。2つの素数が近いので、の次の整数64で、1回目に当たった。

例題 4難関素数で作る窓

を2以上の整数とする。より大きい素数を小さい順に個並べた組は許される形であることを示せ。またのときの組と幅を求めよ。

解説を見る

素数で割ったときに、空いた余りがあることを示す。

のとき、組の数はどれもより大きい素数なのでで割り切れず、余り0が空く。

のとき、余りは通りあり、組の数は個しかないので、使われない余りが残る。

どちらの場合も空きがあるので、許される形である。

なら、5より大きい素数を5個並べて7、11、13、17、19となり、幅は次の値である。

筆者が全部の形を調べると、5個の許される形の最小の幅も12(0、2、6、8、12)だった。

例題 5大学平均から2つを取り出す

とし、窓の中の素数の個数をとする。有限個のについてなら、となるがあることを示せ。また窓の形を0、2、6とし、で重みをすべて1とするとき、この和を計算せよ。

解説を見る

すべてのでだと仮定する。このときで、なので、どの項も0以下になる。0以下の数をいくつ足しても0以下なので、和が正であることに反する。よってのがある。

数を入れる。は5、7、11で、は7、9、13で、は9、11、15で、は11、13、17でである。

の平均はで、1を超えている。

図示

桁を下りていった上限

上限の移り変わりを、1目盛り100倍の棒で比べた図。張の7000万、Polymath8aの4680、メイナードの600、Polymath8bの246と下がり、2026年の原稿の186〜240は破線の枠で示した。双子素数の予想の2も破線で示す。

7000万と600と246は、査読を経て学術誌に載った値である。4680はPolymath8aの原稿の第1版の値で、学術誌の版からは外された。張からメイナードまでの7か月で、上限は5桁下がった。そこから先の歩みは、ずっと遅い。

シミュレーション

どこまで行っても組が出る

場所をからまで選ぶと、その先の240個の数が2段の数直線に並び、素数に点が打たれる。差を選ぶと、とがどちらも素数の組が弧でつながる。窓は止まっては右へ進み、どの場所でも弧が現れ続ける。下のグラフは100万までの組の数で、差4の線は差2とほぼ重なり、差6の線は約2倍の高さを進む。

広がる学問

素数の間隔が届く学問

  • 数学 決まった形の窓に素数がいくつ入るかを調べるとき、メイナードとタオのふるいの重みが道具になる。この方法で、隣り合う2つだけでなく、個の素数が決まった幅に入る所も無限にあると初めて示された。Polymath8bの論文は、この方法を使った後続の仕事を10本以上挙げている。
  • 情報科学 暗号の鍵に使う2つの素数を選ぶとき、差が小さすぎないかを調べる。許される形の幅をできるだけ小さくする探索も計算機の仕事で、Polymath8は見つけた形を公開のデータベースに集めた。
  • 社会学 大勢がネットの上で1つの研究を進めるやり方を調べるとき、Polymath8は事例になる。2014年の振り返りの記事は、参加者の感想を集めて「オンラインの共同の数学研究の事例研究」と位置づけ、ほかの研究にも向くかを論じている。
いまの研究と事業

246が動いた2026年

  • 2026年Julia Stadlmann: 8月31日、ボンビエリ・ヴィノグラードフの定理と、大きな素因数を持たない割る数についての新しい均等さの評価を組み合わせ、上限を240に下げる原稿を公開した。246は50個の、240は49個の許される形の最小の幅で、原稿は「最も小さな改良」と認めたうえで、方法にはまだ余地があると書く。同じ著者は2025年の『Advances in Mathematics』の論文で、この種の均等さの指数をまで上げている。(出典: Stadlmann「Bounded gaps between primes」arXiv:2608.31126・arXiv:2309.00425)
  • 2026年OpenAI: 8月30日付の原稿で、40個の許される形(幅186)に素数が2つ入るとして、上限186を主張した。Stadlmannの240とは独立に同時期に進めた仕事だという。原稿は証明を自社のAIモデルによるものと書き、証明を計算機で検査するLeanでの形式化は、数値の評価などを前提に置いた条件つきだとしている。(出典: OpenAI「Improved short gaps between primes」)
  • 2026年Axiom Math: 9月3日付の下書きで、Ken OnoやJesse Thornerら9人は、Stadlmannの方法を計算機の大規模な数値探索で詰め、上限212を示したとする。解析の考えはStadlmannに由来すると明記している。付録によると、同社が開発中のAIがLeanの形式化を作ったが、均等さの評価などは前提に置いている。(出典: Chartonほか「A new bound for small gaps between primes」)
  • 2026年Zhao SongとSong Yue: 9月4日に受け付けられた原稿で、Stadlmannの240を受けて上限236を示したとする。(出典: Song, Yue「Bounded Gaps Between Primes: An Upper Bound of 236」Cryptology ePrint Archive 2026/1893)

4本はどれも原稿の段階で、2026年11月5日の時点で、学術誌に載ったという記録は各ページに無い。査読を経た値で最も小さいのは、確かめられた範囲では今も246である。どの値も、ふるいだけで届く限界の6よりずっと上にある。

参考文献

  1. Yitang Zhang, "Bounded gaps between primes", Annals of Mathematics 179 (2014), 1121-1174.
  2. D. A. Goldston, J. Pintz, C. Y. Yıldırım, "Primes in tuples I", Annals of Mathematics 170 (2009), 819-862.
  3. James Maynard, "Small gaps between primes", Annals of Mathematics 181 (2015), 383-413.
  4. D. H. J. Polymath, "New equidistribution estimates of Zhang type", Algebra & Number Theory 8 (2014), 2067-2199(上限4680はarXivの第1版)
  5. D. H. J. Polymath, "Variants of the Selberg sieve, and bounded intervals containing many primes", Research in the Mathematical Sciences 1 (2014), article 12.
  6. D. H. J. Polymath, "The 'bounded gaps between primes' Polymath project: a retrospective" (2014).
  7. Ben Green, "Bounded gaps between primes" (2014).
  8. G. H. Hardy, J. E. Littlewood, "Some problems of 'Partitio numerorum'; III: On the expression of a number as a sum of primes", Acta Mathematica 44 (1923), 1-70.
  9. Virginia Stuart, "Prime Time", UNH Magazine (Fall 2013).
  10. K. Soundararajan, "Small gaps between prime numbers: the work of Goldston-Pintz-Yıldırım" (2006).

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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