7.9、8.4、8.8、9.0
地震は1回しか起きていないのに、規模の数字は3回書き換えられた。2011年3月11日14時46分に起きた東北地方太平洋沖地震で、気象庁が発表したマグニチュードである。変わったのは地震ではなく、物差しだった。揺れの幅から読む目盛りには天井があり、長い波から断層の大きさを測る目盛りに替えて、やっと9.0に届いた。
14時49分の発表は7.9、16時00分は8.4。どちらも地震計が記録した揺れの最大の振れ幅から計算する数で、気象庁マグニチュード()と呼ばれる。17時30分に8.8へ上がり、2日後の3月13日12時55分に9.0となった。
8.8と9.0は、測り方そのものが前の2つと違う。気象庁の報告によると、幅広い周期を測る国内の広帯域地震計はほぼ全点が振り切れ、海外の観測点を手で選び直して解析した。周期83〜333秒の波を使うと8.8、周期200〜1000秒の波に替えると9.0である。周期は、波が1回振れて戻るまでの時間をいう。1000秒なら約17分もかかり、人の体には感じられない。
長い波を使うほど、数字が上がる。
なぜだろうか。手がかりは断層の大きさにある。気象庁の解析では、この地震の断層は長さ約450 km、幅約200 kmに及び、主な破壊は約160秒続いた。8.8と9.0は、揺れの最大の幅ではなく、長い波の形から求めた量で決まる。断層の面積とずれの量と岩の硬さの積にあたる量だ。この物差しを、モーメントマグニチュード()という。
振れ幅の目盛りと、その天井
マグニチュードの始まりは、地震計の振れ幅だった。1935年にチャールズ・リヒターが発表した目盛りは、南カリフォルニアの地震を比べるために、ウッド・アンダーソン型という地震計の最大の振れ幅を使う。米国地質調査所(USGS)の説明では、振れ幅が10倍になるごとに数字が1上がる対数の目盛りである。

観測点が世界に増えると、遠くの地震にも使える目盛りが作られた。周期1秒ほどの波で測ると、周期20秒ほどの波で測るである。どれも波の振れ幅を読むので、原理の上では上限がない。
ところが、実際には上限があった。トーマス・ハンクスと金森博雄は1979年の論文の冒頭で、報告された最大の値はで約7、で約8.3であり、リヒターの目盛りも7に近いと書いている。USGSは今も、はM6.5ほど、はM8.3ほどから頭打ちになると説明する。の数が違うのは、報告された最大の値と、頭打ちが始まる所の違いだろう。この頭打ちを飽和という。
天井の上を測るには、長い波が要る。金森は2007年の京都賞の記念講演で、1960年より前には周期30秒を超える波を測れる地震計がほとんどなかったと語った。その1960年に起きたチリの地震では、カリフォルニア工科大学の記録紙に周期10分ほどの波が残り、その日の終わりごろになっても地球は揺れていた。金森はこの波を見て「大きな地震というのはこういうものかと大変感激して」、地震の大きさを決めようと解析を始めたという。

断層のずれも、金森は自分の目で見ている。1965年にカリフォルニアへ渡り、サンアンドレアス断層で、何回かの大地震によって川が数十メートルも横にずれた地形に出会った。

揺れの幅に代わる量を先に用意したのは、安芸敬一である。1966年、当時東京大学にいた安芸は、新潟地震(1964年)の地震波を調べた論文で、地震記録から地震モーメントを見積もる方法を示した。岩の硬さと断層の面積と平均のずれの積にあたる量だ。
では、桁の大きな地震モーメントを、どうすれば慣れ親しんだ目盛りに乗せられるのか。
1977年7月、金森は論文「巨大地震のエネルギー放出」で答えを出した。地震モーメントからエネルギーを見積もり、グーテンベルクとリヒターが作ったエネルギーの式に入れて、を定義したのである。1960年のチリの地震は9.5になり、破壊の大きさが100 kmほどまでの地震ではとがなめらかにつながった。
2年後、金森はUSGSのハンクスとともに、3ページの論文で式を1本にまとめた。でもでもでも、地震モーメントとの関係がほとんど同じ形になるからだ。こうしてできたのが、このページの頭にある式である。
いま、USGSは巨大地震の大きさを最も信頼できる形で表すのがだと説明する。もっとも、プリンストン大学の同窓会誌によると、USGSが正式に切り替えたあとも世間は「リヒター・スケール」と呼び続けた。ハンクスは気にしなかったという。
岩のばねから式を組み立てる
この証明の道すじ。 断層を岩のばねとみて、硬さと面積とずれの積が力×長さになることを確かめる(手順1〜4)。その積からエネルギーを出し、観測で決まった式につなぐと−10.7が出る(手順5〜14)。単位を直して1上がると何倍かを出し(手順15〜22)、最後に目盛りが止まるわけを波の足し算で見る。
式の文字を読む
は地震の規模を表す数で、単位はない。(エムゼロ)は地震モーメント、(ミュー)は岩の硬さを表す剛性率、は断層の面積、は断層の両側がずれた量の平均である。
頭の式の−10.7は、をdyn·cm(ダイン・センチメートル)という古い単位で測るときの数だ。今のN·m(ニュートン・メートル)で測るなら、手順19で導くを使う。
(ログ・テン)は「1に10を何回掛けるとその数になるか」という回数を表す。なので、だ。回数は整数とは限らず、2なら約0.301回にあたる。
つまり、桁の大きな数を、桁の数に縮める道具である。はのように大きくなるが、を通すと22ほどになり、を掛けて目盛りをそろえる。掛け算は回数の足し算に、割り算は回数の引き算になる。はである。回数の考え方は対数の法則でもたどれる。
岩を横にずらす
ばねの伸びと力は比例する。フックの法則ので、はばね定数である(力の向きを除いた大きさの式)。小さく変形するあいだは、岩の塊も同じように振る舞う。
厚さの岩の塊を考える。下の面を止めて、面積の上の面を横へだけ押す。塊が傾く度合いは、ずれを厚さで割ったで表せる。
-
面積1 m²あたりの力は、傾く度合いに比例する。比例の定数が剛性率である
-
両辺にを掛ける。がばね定数の役をする
が硬さと呼ばれるのは、同じだけ傾けるのに要る力がに比例するからだ。単位はN/m²で、パスカル(Pa)とも書く。気象庁の解析はを30 GPa、つまり N/m²と置いている(Gは倍)。
たとえば、1辺1 mの立方体( m²、 m)の上の面を1 mm(0.001 m)ずらす力は、 Nになる。およそ3,000 tの物の重さにあたる力だ。
力×長さになるわけ
上の面を右へ押す力と、下の面を左へ支える力は、向きが逆で、だけ離れている。この2つの力は塊を回そうとする。シーソーと同じで、回す強さは力×間隔で決まる。この積を力のモーメントという。
-
回す強さを力×間隔で書く
-
手順2のを入れると、が約分で消える
厚さのつまみを動かすと、薄いほど力は大きくなるが、右の長方形の面積は変わらない。残るのはととだけで、これが地震モーメントである。単位はN/m² × m² × m = N·mとなり、たしかに力×長さになる。
岩の塊の話は、形をつかむための簡単な模型だ。正式には、断層のずれと同じ波を出す力の組を、力を除くと元に戻る物体(弾性体)の式から導き、その大きさが同じになる。
ばねのエネルギー
ばねを離すと、力はから0まで減りながらだけ動く。平均の力はなので、ばねが出すエネルギーはだ。断層でも、ずれる前にかかっていた応力(面積1 m²あたりの力)が抜けていく。抜ける量を応力降下といい、(デルタ・シグマ)と書く。
-
平均の力でだけ動くので、エネルギーは次の値になる
-
右辺にを掛けてで割り、をまとめる
金森は、浅い地震の応力降下がほぼ一定であることを使った。を約と置くと、分母のはになる。
-
手順6の係数をに置き換える
GPaなら、は約3 MPaにあたる(Mは倍)。ただ、応力降下は地震によって違い、阪神・淡路大震災の地震では平均8 MPaと求められた。だから手順7は「だいたいこのくらい」という見積もりである。
観測の式につなぐ
もう1本の式は観測から来た。ベノー・グーテンベルクとリヒターは1956年、地震波のエネルギーとの関係をまとめた。エネルギーの単位はエルグ(erg)で、1 J = ergである。1 ergは1 dyn·cmに等しく、ダイン(dyn)は古い論文で使われた力の単位だ。だから手順8から手順14までのはdyn·cmで測る。
ただしは頭打ちになるが、手順7のは頭打ちにならない。このは、断層にたまっていたエネルギーの減り方から出した値で、摩擦についての条件がそろえば地震波のエネルギーにあたる。そこで金森は手順7のを左辺に入れ、右辺のをと置いて新しい目盛りを定義した。
-
手順7の両辺のをとる。割り算は引き算になる
-
を入れる
-
観測の式の左辺を、手順9の右辺に置き換える
-
両辺に4.3を足す
-
16.1を左辺へ移す
-
両辺を1.5で割る。1.5で割ることはを掛けることで、である
ハンクスと金森は、3つの関係を見比べた。では定数が16.0で、とでは16.1である。1.5で割ると10.67と10.73で、どちらも小数第1位までなら10.7になる。
-
3つの目盛りをまとめて、定数を10.7と書く
論文の表で確かめると、 dyn·cmの地震はで、の6.6と合う。
1952年のだけが式の値7.5より低いのは、の天井が7のあたりにあるためだと論文は見ている。
N·mの形に直す
今は力をN、長さをmで測る。1 N = dyn、1 m = 100 cmなので、1 N·m = dyn·cmになる。同じをdyn·cmで測った数を、N·mで測った数をと書く。
-
dyn·cmで測った数は、N·mで測った数の倍である
-
両辺のをとる。を掛けることは、回数に7を足すことになる
-
手順11の左辺はである。これを手順16の右辺に置き換える
-
両辺から7を引く。ここから先のはN·mで測る
-
手順12と手順13と同じように、について解く
USGSの表と、地震調査委員会の強震動予測の手法は、この9.1の形を使う。ところが丸めた−10.7から出発すると、定数は9.1にならない。−10.7は手順11の16.1をに丸めたことにあたり、7を引くと9.05になる。
2つの形の差はだ。資料によって小数第2位がずれるのは、この差のせいでもある。
1上がると約32倍
-
手順18でを1増やすと、は1.5増える。回数が1.5増えるので、は倍になる
-
指数を1と0.5に分ける。は2乗すると10になる数で、と書く
-
を2増やすと、回数は3増える
手順7ではに比例するので、エネルギーの倍率も同じになる。気象庁の解説にある「マグニチュードが1違うと地震のエネルギーは約32倍」は、この計算にあたる。つまみを1に合わせ、長さと幅とずれが同じ倍率で伸びるとすると、それぞれ3.16倍で31.6倍に届く。
目盛りが止まるわけ
では、なぜ揺れの幅の目盛りは止まるのか。断層は一度には割れないからだ。東北の地震では、主な破壊が約160秒続いた。断層の各部分が順に波を出し、地震計にはその波の和が届く。
周期が破壊の時間よりずっと長い波なら、どの部分の波も同じ向きに振れているので、足すほど大きくなる。周期の短い波では、前の部分の山と後ろの部分の谷が重なって消し合う。
これは実際の地震波の計算ではなく、説明のための模型である。断層が端から同じ速さで割れるとし、速さを450 km ÷ 160秒 ≈ 2.8 km/sと置いた。実際の破壊は3つに分かれるなど、もっと複雑だ。
周期を20秒にして断層を長くしていくと、30 kmほどを超えたあたりから、足した高さは0と約18の間を行き来するだけになる。500 kmにしても18を超えない。天井の高さは、周期×割れる速さ÷円周率()で決まるからだ。周期を1000秒にすると天井は約890に上がり、450 kmの断層で約431まで伸びる。
金森の1977年の論文は、同じことを波長で述べている。断層の大きさが、測る波の波長(ふつう5〜50 km)を超えると、飽和が起きる。割れる速さと波の速さは同じくらいなので、周期と破壊の時間を比べることは、波長と断層の大きさを比べることに近い。波の速さを3 km/sに丸めると、波長(速さ×周期)は周期1秒で3 km、周期20秒で60 kmになる。
周期83〜333秒の波長の一部は450 kmの断層より短く、周期200〜1000秒の波長はすべて断層より長い。速さを丸めた目安ではあるが、気象庁の8.8と9.0の差は、この違いと矛盾しない。
東北の9.0を手で出す
この計算の道すじ。 気象庁の値から断層の面積とを出し、まで計算する(手順1〜6)。同じ式で阪神・淡路大震災の地震を調べ(手順7〜9)、チリの地震はからへ逆にたどる(手順10〜12)。
面積から積を出す
気象庁の暫定の解析は、断層面を細かく分けて各部分のずれを求め、を30 GPaと置いて、 N·m、を出している。断層の大きさは長さ約450 km、幅約200 kmである。平均のずれは資料に無いので、をと長方形の面積で割ると15.1 mになる。計算には15 mに丸めた値を使う。
-
長さと幅をmに直す
-
面積は長さ×幅である
-
3つの量を掛ける。前の数の積と、10の指数の和を分けて計算する
ずれは断層のどこでも同じではない。この解析では、最も大きい所で28 mに達した。15 mは、それを長方形の全体にならした値である。
対数で9.0に戻す
-
積の対数は対数の和になる
-
電卓でを求める。のすぐ上である
-
9.1を引いて、を掛ける
同じ地震を、USGSは別の解析でM 9.1としている。USGSのは N·mで、気象庁の値の約1.4倍だ。4割近い差が、では0.1にも満たない。対数で縮めるとは、こういうことである。
阪神・淡路の地震
菊地正幸と金森の1996年の解析によると、1995年の兵庫県南部地震は N·m、断層の長さ40 km、平均のずれ2.1 mである。幅は、同じを仮定して逆算する。
-
をについて解き、数を入れる。およそ10 kmになる
-
2.5はなのでである。これでの対数をとる
-
手順6と同じ計算をする。菊地と金森が示した6.9と同じになる
気象庁マグニチュードでは、この地震は7.3である。東北の詳細な解析の8.4とは1.1しか違わない。一方でを比べると倍になる。振れ幅の目盛りの差からは、この開きを読み取れない。
チリの地震を逆算する
1960年のチリの地震は、USGSでM 9.5、気象庁の表でもモーメントマグニチュード9.5である。今度はからへ戻る。
-
証明の手順18に9.5を入れる
-
回数を整数と小数に分ける。電卓でである
-
阪神・淡路の地震との差はなので、電卓で倍率を出す
金森は京都賞の記念講演で、チリの地震のエネルギーを阪神・淡路大震災の8000倍と語っている。約7900倍は、この数に近い。どうしを割ると倍で、を小数第1位に丸めたぶんだけ開く。
数字を待たない津波警報
は起きた地震の大きさを測る式で、次の地震がいつ起きるかは教えない。それでも飽和の問題は、津波警報の出し方に表れている。
津波警報の第1報は、地震の約3分後を目標に出す。周期200秒の波は、1回振れるだけで3分20秒かかる。長い波を待っていては間に合わない。気象庁は2011年5月の報告で、第1報は「技術的な限界から」マグニチュードを7.9と過小評価し、津波の高さを最大6 mと予想したと振り返った。
では、この差は断層のずれでどれほどか。の8.4を仮にと読むと、証明の手順18から N·mで、気象庁の解析の約8分の1になる。面積と硬さを東北の値のままにして、ずれを求める。
約15 mと約1.9 mでは、断層のずれの見積もりがまるで違う。ただし、これは面積を固定した単純な計算で、気象庁の予想の計算そのものではない。
今の気象庁の案内では、マグニチュードが8を超えるような巨大地震は「精度のよい地震の規模をすぐに求めることができない」ため、その海域で想定される最大の津波などをもとに警報を出す。最初の発表では、高さを数値ではなく「巨大」や「高い」という言葉で伝え、規模が精度よく求まってから数値に改める。
震源が陸に近いと、警報が津波に間に合わないこともある。だから気象庁は、強い揺れや、弱くても長い揺れを感じたら、すぐに避難を始めるよう呼びかけている。
断層の数で確かめる
例題 1基本小さな断層の規模
長さ20 km、幅10 km、平均のずれ1.0 mの断層がある。 N/m²として、とを求めよ。を使ってよい。
解説を見る
面積は m²である。
対数はなので、次の値になる。
例題 2基本倍率を読む
(1)が7.0の地震と9.0の地震で、は何倍違うか。
(2)が0.2大きいと、は約何倍か。を使ってよい。
解説を見る
(1)差は2.0なので、倍である。
(2)差は0.2なので、倍率はである。はと同じことなので、約2倍になる。
例題 3入試断層を2倍にする
ある地震のは N·mである。
(1)を小数第1位まで求めよ。
(2)断層の長さと幅とずれをすべて2倍にすると、は何倍になるか。
(3)このときはいくつ増えるか。を使ってよい。
解説を見る
(1)なので、である。
(2)で、は長さ×幅なので、倍になる。
(3)の増分は×(の増分)である。8は2を3回掛けた数なので、はの3倍になる。
例題 4大学応力降下とエネルギー
阪神・淡路の地震を N·m、 MPa、 GPaとする。
(1)を計算せよ。
(2)の値と比べ、何倍かを求めよ。
(3)(2)の倍率が1でない理由を、の値から説明せよ。
解説を見る
(1)なので、次の値になる。
(2) Jなので、約2.7倍である。
(3)で、証明の手順7が置いたの約2.7倍にあたる。この地震の応力降下が、見積もりの前提より大きいからである。
天井と、伸び続ける線
破線と点線は実測の式ではなく、USGSが説明する天井の高さに合わせて描いた模型である。2つの点だけが実際の値で、どちらもなので、やの曲線に乗るとは限らない。阪神・淡路の地震のように、揺れの幅の数のほうがを上回ることもある。
断層を広げて目盛りを比べる
長さと幅とずれのつまみを動かすと、とがその場で計算される。例の「東北」のずれは丸めた15 m、「阪神・淡路」の幅は逆算した10 kmだ。塗りつぶした点はで、断層を広げるほど上がる。破線の上の中が空いた丸は揺れの幅の目盛りの模型で、8.3のあたりから動かなくなる。
断層の積が届く学問
- 地球科学 プレート境界がどれだけ地震で動いたかを見積もるとき、地震モーメントを足し合わせる。プレートの動きの全体と比べると、境界の動きのうち地震で動いた割合が分かり、長い目で見た地震の危険度の見積もりに使われる。
- 物理学 地震の波を弾性体の中の力の組として計算するとき、地震モーメントがその力の組の大きさになる。長い周期の波の強さも地震モーメントで決まるので、地震計の記録から逆にを求められる。
- 工学 建物の揺れを事前に計算するとき、想定する断層の面積から地震モーメントを決める。地震調査委員会の強震動予測の手法は、断層の面積から平均のずれをで出す。
揺れを読まずに断層を測る
- 2018年Satoshi Kawamotoら(国土地理院と東北大学など) 全国約1,200点の衛星測位の動きから、断層のずれをリアルタイムで推定するシステムREGARDを報告した。揺れの幅を読まないので飽和が無く、のとを地面の動きから直接求める。東北地方太平洋沖地震などで試験し、2016年の熊本地震では、実運用で断層モデルを出した(Journal of Disaster Research 13, 440)。
- 2008年〜 金森博雄とルイス・リベラ、米国地質調査所 周期の長いW相という波から、地震モーメントを素早く求める解析を提案した。USGSは周期約50〜2000秒の波で解くこの方法のを、計算できれば最優先の値として使う(USGSの表)。2025年7月のカムチャツカ半島の地震はこの値でM 8.8となり、証明の手順18から N·mにあたる。
- 2023年 小林昭夫(気象庁気象研究所) 衛星測位の日ごとのデータから、1998〜2001年に日向灘南部で起きたスロースリップを検出し、規模をMw 6.7相当と見積もった。断層がゆっくりずれる現象でも、を通せば、揺れの大きさを読まずに同じ目盛りで比べられる(Papers in Meteorology and Geophysics 71, 13)。
参考文献
- H. Kanamori, "The energy release in great earthquakes", Journal of Geophysical Research 82 (1977), 2981-2987.(抄録はEarthRef)
- T. C. Hanks, H. Kanamori, "A moment magnitude scale", Journal of Geophysical Research 84 (1979), 2348-2350.
- C. F. Richter, "An instrumental earthquake magnitude scale", Bulletin of the Seismological Society of America 25 (1935), 1-32. B. Gutenberg, C. F. Richter, "Magnitude and energy of earthquakes", Annali di Geofisica 9 (1956), 1-15.
- K. Aki, "Generation and propagation of G waves from the Niigata earthquake of June 16, 1964. Part 2. Estimation of earthquake moment, released energy, and stress-strain drop from the G wave spectrum", Bulletin of the Earthquake Research Institute 44 (1966), 73-88. P. G. Richards「Keiiti Aki(1930-2005)」Seismological Research Letters 76 (2005), 551-553.
- 気象庁『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査報告』気象庁技術報告 第133号(2012)、第1章1.3節。「東北地方太平洋沖地震への気象庁の対応について」(2011年5月31日)。「遠地実体波による震源過程解析(暫定)」。「東北地方太平洋沖地震について(第15報)」(2011年3月13日)。
- 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」。「過去の地震津波災害」。「震度とマグニチュード」。
- USGS, "Magnitude Types"; "Earthquake Magnitude, Energy Release, and Shaking Intensity"; "Moment magnitude, Richter scale"; "M 9.1 - 2011 Great Tohoku Earthquake, Japan"; "M 9.5 - 1960 Great Chilean Earthquake"; "M 8.8 - 2025 Kamchatka Peninsula, Russia Earthquake".
- M. Kikuchi, H. Kanamori, "Rupture process of the Kobe, Japan, earthquake of Jan. 17, 1995, determined from teleseismic body waves", Journal of Physics of the Earth 44 (1996), 429-436.
- 公益財団法人稲盛財団「金森博雄 第23回(2007)京都賞」、記念講演録「波に魅せられて」。
- E. H. Daugherty, "Thomas C. Hanks '66 changed how we understand earthquakes", Princeton Alumni Weekly (2025).
- 地震調査研究推進本部 地震調査委員会「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」(2020年3月)。
- H. Kanamori, L. Rivera, "Source inversion of W phase: speeding up seismic tsunami warning", Geophysical Journal International 175 (2008), 222-238.
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』(2018)、第1部 第2章 第9節「地学」3(2)ア(ア)㋑ 地震と地殻変動、167ページ。