ランダー・ウォーターマンの式

Lander–Waterman equation

1025本のクローンは70の島に割れた。式の見積もりは67だった。

長さLの断片N本で長さGのゲノムを読むと、1か所は平均c = LN/G回読まれる。一度も読まれない割合はe⁻ᶜで、何倍読めば足りるかを決める。

年代
1988年
習う
大2・確率・統計・ポアソン分布
レベル
大学(例題 4 問)
作成日
更新日
執筆・監修
佐々木 航
逸話

70の島に割れた地図

ゲノムと同じ長さだけ読んでも、そのおよそ37%は一度も読まれない。ゲノムは生き物のDNAのひとそろいで、A、T、G、Cの4種類の塩基が長い鎖に並んでいる。この鎖のでたらめな位置から断片を切り出して読むかぎり、平均で回読んだときに読み残す割合はになる。平均5回でも0.7%、約30億塩基の人のゲノムなら約2,000万塩基を読み残す計算だ。

では、残った隙間はいくつでき、どれだけ読めば消えるのか。断片の長さと本数から隙間の数を見積もる式を、1988年にエリック・ランダーとマイケル・ウォーターマンが示した。もとは塩基を読む計画ではなく、断片の切れ方を比べて地図をつくる計画のための式で、2人が最初に当てはめたのも大腸菌の地図の切れ目の数である。

1987年7月、名古屋大学の小原雄治らは、大腸菌の染色体およそ470万塩基の地図を学術誌Cellに発表した。染色体の断片を1つずつ、大腸菌に感染するウイルスのラムダファージに入れて増やす。増やした断片(クローン)ごとに、決まった塩基の並びでDNAを切る制限酵素を8種類使い、切れる位置を調べる。切れる位置の並びをコンピューターで比べ、並びの一部が一致する2本を、染色体の上で重なっているとみなしてつないでいった。

実験台の上に、小さな斑点の並ぶ寒天の皿が何枚も重なり、そばにピペットと試験管立てがある。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
大腸菌の地図づくりでは、断片を入れたファージを皿で増やし、多くのクローンを調べた(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

ランダーとウォーターマンの論文によると、つなぐ作業に使ったのは1025本のクローンで、1本の長さは平均15.5 kb(kbは1000塩基)だった。全部を足すと、染色体の3.4倍ほどになる。それでもクローンは70の島に分かれ、そのうち7つは、どれともつながらない1本だけの島だった。

小原らは島の端に重なるクローンを別の方法で探し、切れ目のほとんどを埋めた。

翌1988年、ランダーとウォーターマンはこの数を式で見積もった。島は67.16個、1本だけの島は4.39個。

起源

指紋で重なりを見つける

1980年代の後半、遺伝子を探す研究者が欲しがったのは、生き物のDNA全体を、重なり合うクローンの列で端から端まで覆った地図だった。ランダーとウォーターマンの論文は、この地図を物理地図と呼び、大腸菌、パン酵母、線虫で進む3つの計画を出発点にしている。

3つの計画は、同じ手順をとっていた。ゲノムを切ってつくったクローンの集まり(ライブラリー)から、でたらめに選んだクローンごとに、制限酵素で切った断片の長さを測って「指紋」とする。指紋が十分に似た2本は、重なっているとみなす。線虫の計画は、どこまで進むかの見通しを、コンピューターのシミュレーションで立てていた。

ランダーとウォーターマンは、その見通しを紙と鉛筆で出せる形にした。クローンの長さはどれも塩基、ゲノムの長さは塩基、調べたクローンは本とする。重なりは、長さの割合で以上を共有したときだけ見分けられるとし、塩基の数で表した重なりを使ってと書いた。

そのうえで2人は、を「redundancy of coverage」と名づけ、島の数、1つの島に入るクローンの数、島の長さを、との短い式で表した。今は、このをカバレッジや読む深さと呼ぶ。論文は1988年1月13日に受け付けられ、4月にGenomicsの第2巻に載った。

2本以上がつながった島には、コンティグ(contig)の名を使った。論文によると、ステイデンが1980年に作った言葉である。島と島のあいだの隙間は「海」と呼んだ。

ランダーは当時、ホワイトヘッド生物医学研究所とハーバード大学に籍を置いていた。数学を学び、1981年にオックスフォード大学で博士号を得たあと、ハーバード・ビジネス・スクールで准教授を務めた人である。

エリック・ランダーでたらめに選んだクローンで地図をつくるときの島の数を式にした

ウォーターマンは南カリフォルニア大学の数学科と分子生物学科にいた。1980年代の初めには、同僚のテンプル・スミスと、DNAやタンパク質の配列の似た部分を探すスミス・ウォーターマン法を発表している。

マイケル・ウォーターマン1942–配列を比べる計算と、ゲノムの地図づくりの確率の式をつくった

2022年、ウォーターマンは計算生物学で最初に書いた論文が突き返されたころを振り返り、こう語った。「分野と分野のあいだを扱おうとする論文は、たいてい価値がない。価値があるときを除けば」。

2人は自分たちの式を、1976年にクラークとカーボンが示した、決まった1つの配列がライブラリーに入っている確率の式になぞらえた。そして、同じ結果が、ゲノムをでたらめに細かく切って塩基の並びを読むショットガン法にも当てはまると書き添えた。断片の塩基の並びそのものが、考えうるいちばん細かい指紋になるからだ。

証明

1か所が読み残される確率

この証明の道すじ。 まず、1本の断片が決めた1か所を覆う確率から、本とも外れる確率を掛け算で出す(手順1〜3)。それをネイピア数の極限につないでにする(手順4〜6)。同じ考えで、1か所が回読まれる確率(手順7〜11)と、つながった島の数(手順12〜15)も出す。

式の文字を読む

はゲノムの長さ、は1本の断片の長さで、どちらも塩基の数で数える。は読んだ断片の本数、は1か所の塩基が平均で何回読まれるかで、単位は回だ。は、決めた1か所が一度も読まれない確率を表す。

公式の文字を、長さGの帯と、その上に置いた長さLの断片6本で指した図。Gはゲノムの長さ(塩基)、Lは断片1本の長さ(塩基)、Nは断片の本数(本)、cは1か所が読まれる平均の回数(回)、P₀は1か所が一度も読まれない確率で、帯にはどの断片も届かない所が残る。

は、全部の断片の長さの合計を、ゲノムの長さで割った数である。塩基のゲノムを塩基の断片で本読むと、合計は3000塩基で、ゲノム3本分になる。

1000塩基の帯の下に、100塩基の断片10本を端から端まで並べた段を3段置いた図。30本で3000塩基は帯の3本分なので、c = 3000 ÷ 1000 = 3回になる。

ただし平均3回は、どの塩基もちょうど3回読まれるという意味ではない。断片をでたらめな位置に置けば、厚く重なる所も、どの断片も届かない所もできる。

1か所が残る確率

断片の左端は、ゲノムのか所のどこにも同じ確からしさで落ちるとする。ゲノムの両端はつないで輪とみなし、端からはみ出した断片は、反対の端へ続ける。

  1. 決めた1か所を覆うのは、左端がから左へか所のどこかに落ちたときで、か所のうちのか所

帯の上の1か所xと、その左に長さLの斜線の区間を描いた図。断片の左端が斜線のL通りのどこかに落ちたときだけxを覆うので、覆う確率はL/G = 0.1になる。
  1. 1本の断片が外れる確率は、1から覆う確率を引いた値

  2. 本の置き場所は互いに関係なく決まるので、本とも外れる確率は、外れる確率を回掛けた値

片方の結果が、もう片方の起こりやすさを変えないことを独立という。1本目がどこに落ちても、2本目が落ちやすい場所は変わらない。硬貨を何回投げても、次に表が出る確からしさが2分の1のままなのと同じだ。

つまり、平均3回読んでも、ゲノムの約4%が読まれずに残る。この掛け算は、が大きくなるとネイピア数の式に変わる。

  1. と置くと、1本が覆う確率はで、をについて解くと

  2. 指数のをと見て、乗をかっこでくくる

0.9を30個並べて10個ずつ3組に区切り、1組の積0.9¹⁰ ≈ 0.349を3回掛けたものが0.9³⁰ ≈ 0.0424であることを示した図。1組をn個にしてnを大きくすると、1組の積は1/e ≈ 0.368に、3組の積はe⁻³ ≈ 0.0498に近づく。
  1. を大きくすると、かっこの中はに近づく

手順6で使ったのは、当たる確率がのくじを回引いて外れ続ける確率が、に近づくことだ。は2.718…と続く決まった数で、導き方はネイピア数の記事の例題1でたどれる。

は「の乗」と読み、を回掛けた数を表す。ならで、手順3の0.0424とはまだ15%ずれる。

ただ、このずれはゲノムを長くするほど小さくなる。断片の長さを100塩基、平均の回数を3回のままにして、だけを変えると次のようになる。本数はで、ずれはと比べた値である。

ずれ
1,000100.0424−15%
1万1000.0490−1.5%
10万1,0000.04971−0.15%
100万1万0.049780−0.015%
30億3,000万0.0497871−0.000005%

を10倍にするたびに、ずれはほぼ10分の1になる。人のゲノムのようにが断片よりずっと長ければ、をそのまま答えとして使ってかまわない。掛け算をの式に置き換える同じ近似は、誕生日のパラドックスにも出てくる。

図で納得する

平均3回読んでも、ちょうど3回読まれる塩基は4分の1に満たない。

つまみで平均の回数を選ぶと、5,000塩基の輪に、長さ50塩基の断片を本でたらめに置く。読まれた回数ごとに塩基を分けた割合が棒で、点は次の式の値だ。左端の0回の棒が、読み残しの割合にあたる。

は、1か所がちょうど回読まれる確率である。は「の階乗」と読み、から1まで掛けた数で、、と決める。を入れるとなので、に戻る。

なら、0回が5.0%、1回が14.9%、2回と3回がどちらも22.4%、4回が16.8%になる。こうして0回、1回、2回、…に確率を配る並びを、ポアソン分布という。

では、1回だけ読まれる確率はどう出すのか。本のうち、どの1本がその1か所を覆うかで通りある。覆う1本の確率と、残りの本が外れる確率を掛ける。

30本の断片を1列に並べ、2本目だけが1か所を覆い、残りの29本が外れる場合を描いた図。覆う1本の選び方は30通りあり、2本目が覆う確率は0.1、残りの29本が外れる確率は0.9²⁹である。

はそのもので、は手順6と同じくに近づくから、となる。の例ではで、に近い。

式で確かめる

回のときも、覆う本の選び方を数えれば同じ形になる。個から個を選ぶ選び方の数を、と書く。たとえば5本から2本を選ぶ選び方は10通りで、である。

  1. 覆う本を選び、その本が覆う確率と、残り本が外れる確率を掛ける

  2. を、から1ずつ減らした個の数の積をで割った形で書く

  3. がよりずっと大きいと分子はに近く、と合わせてになる

平均の回数c = 3、k = 3のまま、断片の数Nを30、300、3000と増やした図。選び方と覆う確率の積は4.06、4.46、4.50と破線のc³/3! = 4.5に、外れる確率は0.058、0.051、0.050と破線のe⁻³ ≈ 0.0498に近づき、掛けたP₃は0.236、0.225、0.224になる。
  1. 外れる側は乗を乗で割った形で、が小さいと分母は1に近い

  2. 手順9と10を手順7に入れる

手順7の形の確率の並びを二項分布といい、は二項定理の係数と同じ数である。手順9の近似は、人のゲノムでは誤差にならない。30億塩基を100塩基の断片で平均3回読むとは9000万本で、でも分子との差は約3,000万分の1にとどまる。

つながった島を数える

読まれた所は、重なり合った断片がつながった島になる。どの島にも右端の断片が1本ずつあるので、島の数は右端になる断片の数と等しい。

  1. ある断片が島の右端になるのは、その断片の中に、ほかの本のどの左端も落ちないとき

2つの島をつくる5本の断片の図で、島の途中の断片には次の断片の左端が入り、右端の断片の長さLの中にはほかの左端が1つも無い。右端になる確率は約eの−c乗で、島の数は右端の数に等しく、約N × eの−c乗になる。
  1. どの断片も右端になる見込みは同じなので、島の数の平均はその倍

、、なら、島は平均個になる。

重なりを見分けるのに塩基以上の共有が要ると、島はもっと細かく切れる。次の断片の左端が右へ寄りすぎると、2本は重なっていても、共有がに届かないからだ。見分けられた重なりだけでつないだ島を、論文は見かけの島と呼んだ。

  1. 島が続くには、次の左端が断片の左端から塩基の中に落ちる必要があり、落ちない確率は

  2. を使い、見かけの島の数の平均を倍で出す

長さLの断片の左端から、長さL − Tの区間に斜線を引いた図。次の断片の左端が斜線の中なら重なりはT以上で島がつながり、斜線より右なら、重なっていても見分けられずに島が切れる。

手順15は、ランダーとウォーターマンが論文の最初に挙げた結果である。論文はさらに、1本だけの島の数を、1つの島に入るクローンの数の平均をとした。

つまみで平均の回数と、見分けるのに要る重なりの割合を変える。を上げると、重なっていても見分けられないつなぎ目が増え、帯の下の島が細かく割れていく。数えた島の数は、読み出しののまわりでばらつく。

途中の計算

大腸菌の70の島を計算する

この計算の道すじ。 小原らの数を、手順15の式に入れる。とを出し(手順1・2)、指数を計算して(手順3・4)、島の数と1本だけの島の数を出す(手順5・6)。

ランダーとウォーターマンは、小原らの報告から、見分けられる重なりを約3 kb、染色体の長さを4704 kbとした。ここでの断片はクローンで、平均の回数は、染色体の1か所が平均でいくつのクローンに覆われるかを表す。

大腸菌の計画の数と式の文字の対応表で、N = 1025本、L = 15.5 kb、G = 4704 kb、見分けられる重なりT = 3 kbから、c ≈ 3.38、θ ≈ 0.19になる。島の数の予想は約67(実際は70)、1本だけの島は約4.4(実際は7)。
  1. 平均の回数を出す

  2. 見分けるのに要る重なりの割合を出す

  3. 1からを引く

  4. 指数のを掛け算で出す

  5. を1025倍して、島の数を出す

  6. 指数を2倍にしたから、1本だけの島の数を出す

論文の予想は67.16個と4.39個で、丸め方の差を除けば同じ値になる。実際の70個と7個にも近い。論文は、残った小さな差も、クローンごとに長さや見分けやすさがばらつくと島が少し増える、という別の結果と向きがそろうと述べている。

見分ける力がもっと鋭ければ、島はどこまで減ったのか。なら個で、半分ほどになる。もっとも論文は、見分けに要る重なりを50%から25%に縮めると進みが大きく速まる一方、25%から0%への改良は効きが小さいと見て、を0.15〜0.20にするのが手ごろな目標だとした。

応用

人のゲノムを30倍読む

何倍で何塩基残るか

明るい部屋の長い台の上に箱形の装置が数台並び、手前に小さな試料の管を立てた台がある。人の姿は無い。(画像生成 AI で描いたイメージ)
短い断片をまとめて読む、今の装置(様子を想像して描いた)画像生成AIで描いたイメージ

今の大型の装置は、短い断片を一度に1億本以上読める。読んだ1本1本をリードと呼ぶ。人のゲノム約30億塩基にを当てはめると、一度も読まれない塩基の数は次のとおりである。

読み残し残る塩基の数
137%約11億
214%約4億600万
35.0%約1億4,900万
50.67%約2,000万
100.0045%約14万
30%約0.0003

1回ぶん増やすごとに、残りは約37%、つまり倍に減っていく。放射性崩壊で原子核の数が時間とともに同じ割合で減っていくのと同じ形で、平均の回数が時間の役をしている。を約0.69増やすと、残りはほぼ半分になる。がほぼ2だからだ。

4回以上読むために

でも、隙間がほとんど消えても、10倍で読むのをやめるとは限らない。1か所を何回か読まないと、その塩基を確かに決められないからだ。DNAを読む装置の会社Illuminaの技術資料は、会社としての推奨は無いと断ったうえで、人のゲノムの変異を調べる論文の多くが10倍から30倍を求めると書く。変異を判定するソフトウェアの多くは、1か所に4回以上の読みを要するという。

3回以下しか読まれない割合は、ポアソン分布のから3までを足すと出る。

平均の回数10倍、15倍、20倍、30倍で、30億塩基のうち3回以下しか読まれない塩基の数を、目盛り1つで100倍ずつ変わる横棒で描いた図。10倍で約3,100万、15倍で約63万、20倍で約9,600、30倍で約1.4塩基。

10倍では1.0%、約3,100万塩基が3回以下にとどまる。30倍なら式の上では約1.4塩基まで減るが、同じ資料は、読みにくい領域があればさらに読み足すことにも触れている。

同じ資料は、この式で例も計算している。100塩基のリードを1億8,900万本読むと倍になり、読み残しは、隙間の数は島の数と同じで約35万か所だ。資料は割合を0.2%に丸め、約600万塩基、37万8,000か所としている。

ヒトゲノム計画の地図

1990年に始まったヒトゲノム計画で、国際チームは100〜200 kbの大きなクローン(BAC)を指紋で並べる地図づくりと並行して、BACを1本ずつ細かく切って読んだ。ランダーとウォーターマンが式にしたのと同じ、指紋で重なりを決める地図である。一方、セレラ社はゲノム全体を一度に細かく切り、約500塩基のリードをつないだ。

2000年6月の下書きの配列はゲノムの90%を覆い、隙間は15万か所を超えていた。2003年4月に「ほぼ完全」と発表された配列は92%を覆ったが、隙間は400か所弱残った。

でたらめさだけなら、隙間は読む量を増やすほどに沿って消えていく。それでも残ったのは、式の前提にある「重なりを見分けられる」が、くり返しの多い配列で崩れるからだと読める。人のゲノムは半分以上がくり返しの配列で、似た配列が何か所にもあると、2本の断片が本当に重なっているのか、別の場所から来たのかを決められない。米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)も、とても複雑な配列やくり返しの多い配列は読み切れなかったと説明している。

例題と解説

本数と深さを手で見積もる

ランダー・ウォーターマンの式は高校では習わない。大学の確率・統計で二項分布とポアソン分布を学ぶと、証明の筋をそのまま追える。

例題 1基本細菌のゲノムを読む

長さ500万塩基の細菌のゲノムを、150塩基のリード10万本で読む。リードの位置はでたらめとする。

(1)平均の回数を求めよ。

(2)一度も読まれない塩基は、およそ何塩基か。とする。

(3)読まれた所がつくる島は、平均いくつか。

解説を見る

(1)に数を入れる。

(2)読み残しの割合はなので、で、約25万塩基である。

(3)島の数はで、、約5,000個になる。1つの島には、平均で本のリードが入っている。

例題 2入試1塩基も残さない深さ

約30億塩基の人のゲノムで、一度も読まれない塩基の数の平均を1より小さくしたい。平均の回数は、最小でいくつの整数にすればよいか。、とする。

解説を見る

残る塩基の数の平均はである。これが1より小さい条件を、両辺にを掛けて書き直す。

はを底とする対数で、のときである。両辺のをとり、掛け算を足し算に分けるを使う。

答えは22である。21倍では約2.3塩基、22倍で約0.84塩基が残る。cを1増やすごとに、残りはeで割られて約0.37倍になる。

例題 3大学島の数の頂上

を0以上1未満の定数とする。平均の回数の関数が最大になると、最大値を求めよ。

解説を見る

と置き、積の微分を使う。

はいつも正なので、の符号はで決まる。で増え、で減るから、で最大になる。

大腸菌の計画の、なら、頂上はで、島はおよそ138個になる。

例題 4大学4回以上読まれる確率

平均の回数をとする。ポアソン分布を使って、1か所が4回以上読まれる確率を小数第3位まで求めよ。とする。

解説を見る

4回以上の確率は、1から3回以下の確率を引けば出る。

かっこの中はで、になる。答えはで、約0.958である。100か所のうち4か所ほどは、平均の半分の4回にも届かない。

図示

島の数の山

横に平均の回数c、縦に島の数をG/Lの何倍かで描いた3本の曲線。θ = 0の実線はc = 1で頂上0.37、θ = 0.25の破線はc ≈ 1.33で頂上0.49、θ = 0.5の点線はc = 2で頂上0.74に達し、そこから先はどれも減っていく。

島の数にを入れると、になる。読み始めは断片どうしが離れているので島が増え、で頂上に達してから減る。論文も同じ頂上の位置と高さを示した。そのうえで、隙間を全部でたらめなクローンで埋めるには膨大な手間がかかるので、どこかで隙間をねらって橋を架ける方法に切り替える必要があると書いた。

シミュレーション

断片を落として、隙間を数える

帯は長さ4,800塩基のゲノムで、6段に折り返してあり、最後の段の右端は最初の段の左端につながる。平均の回数を上げると、長さの断片がでたらめな位置に1本ずつ落ち、読まれた回数の厚みが積もっていく。斜線は一度も読まれていない所で、その割合はグラフの太い線になり、破線のに沿って下がっていく。

数えた値は、置き方ごとにばらつく。、断片80塩基でも、多くの置き方で読まれていない所は3〜7%、島は6〜12個のあいだに入る。「別の置き方」を何度か押すとその幅が見え、断片の長さを変えても、行き着く先は同じ曲線のまわりである。

広がる学問

読み残しの式を使う学問

  • 生物学 新しい生き物のゲノムを読む計画で、何本の断片を読めば読み残しと島の数がどこまで減るかを見積もる。必要な本数はで、ゲノムの長さと1本の長さから決まる。
  • 医学 患者のゲノムで病気に関わる変異を探すとき、1か所を何回読めるかをポアソン分布で見積もり、読む深さを決める。3回以下の塩基の割合が、見落としの目安になる。
  • 情報科学 短いリードをつないで長い配列を組み立てるとき、でたらめさだけで生じる切れ目の数をで見積もる。DNAに書いたデータを読み出す研究でも、読んだ回数と読み残しの関係に同じが出てくる。
いまの研究と事業

長いリードと、DNAに書いたデータ

  • 2021年Gencove社のリー、ピックレルら4人: 1000ゲノム計画の120人分のDNAを平均0.5倍と1倍だけ読み、読まなかった場所の遺伝子型を、参照用の配列の集まりから推定して補った。この「ローパス・シーケンシング」を遺伝子型を調べるチップと比べ、0.5倍以上なら病気のなりやすさの点数をより正確に出せたと報告した。式の上では、0.5倍で、1倍での塩基が一度も読まれず、その分を推定で補うことになる。(出典: Genome Research 31(2021), 529-537)
  • 2022年T2Tコンソーシアム(NHGRI、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、ワシントン大学ほか): 1本で約2万塩基をほぼ正確に読む方法と、1本で最大100万塩基を読む方法を組み合わせた。ヒトゲノム計画で残った約8%を埋め、隙間の無い人のゲノムの配列を初めて発表した。新たに加わった配列の多くは、くり返しの多い染色体の端(テロメア)と中ほど(セントロメア)の近くにあった。島の数は同じならに反比例し、くり返しより長く読めば、重なりを見分けられないつなぎ目も越えられる。(出典: NHGRI「Researchers generate the first complete, gapless sequence of a human genome」2022年3月31日)
  • 2023年 ダニエラ・バルレフ、エイタン・ヤーコビら4人: DNAに書き込んだデータを読み出すとき、要るリードの数をどこまで減らせるかを「カバレッジ深さの問題」として立てた。雑音が無く、どの断片も同じ確からしさで読まれるときは、決まった本数さえ読めば元に戻せる符号(MDS符号)が、要るリードの数の期待値を最も小さくすることも示した。本の断片を回でたらめに読むと、まだ一度も読まれていない断片がの割合で残る。符号を使えば、その残りまで読み切らなくても元のデータに戻せる。(出典: arXiv:2305.05656)

70の島に割れた大腸菌の地図も、30倍で読む人のゲノムも、同じの上にある。違うのは、をどこまで上げられるかと、重なりをどこまで見分けられるかだ。

参考文献

  1. E. S. Lander, M. S. Waterman, "Genomic mapping by fingerprinting random clones: a mathematical analysis", Genomics 2 (1988), no. 3, 231-239(1988年1月13日受付。スタンフォード大学の講義資料の写し).
  2. Y. Kohara, K. Akiyama, K. Isono, "The physical map of the whole E. coli chromosome: application of a new strategy for rapid analysis and sorting of a large genomic library", Cell 50 (1987), no. 3, 495-508. 小原雄治「染色体分子構成解析技術の開発」科研費62615511(1987年度).
  3. L. Clarke, J. Carbon, "A colony bank containing synthetic Col E1 hybrid plasmids representative of the entire E. coli genome", Cell 9 (1976), no. 1, 91-99. R. Staden, "A new computer method for the storage and manipulation of DNA gel reading data", Nucleic Acids Research 8 (1980), 3673-3694.
  4. Illumina, "Estimating Sequencing Coverage", Technical Note, Pub. No. 770-2011-022(2014).
  5. NHGRI, "Human Genome Project Fact Sheet". V. Choi, M. Farach-Colton, "Barnacle: An Assembly Algorithm for Clone-based Sequences of Whole Genomes"(arXiv:cs/0302005、2003).
  6. J. H. Li, C. A. Mazur, T. Berisa, J. K. Pickrell, "Low-pass sequencing increases the power of GWAS and decreases measurement error of polygenic risk scores compared to genotyping arrays", Genome Research 31 (2021), no. 4, 529-537. D. Bar-Lev, O. Sabary, R. Gabrys, E. Yaakobi, "Cover Your Bases: How to Minimize the Sequencing Coverage in DNA Storage Systems"(arXiv:2305.05656、2023).
  7. MacArthur Foundation, "Eric Lander". P. McQuiston, "An architect of the landmark Human Genome Project looks back", USC Today(2022年5月18日).

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この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆した。執筆・監修: 佐々木 航(株式会社Game)。

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